RECOMPOSED BY CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD


世界で最も長い歴史を持つクラシック・レーベル「ドイツ・グラモフォン」。

1898年に創設された由緒正しきこのレーベル。クラシックに疎い人でもこの「黄色いラベル」は目にしたことはあるでしょう。ソウルで言うところの「モータウン」、ジャズで言うところの「ブルー・ノート」、テクノで言うところの「ワープ」、ヒップホップで言うところの「デフ・ジャム」みたいなものでしょうか。

そんな由緒正しき「ドイツ・グラモフォン」が贈る「ReComposed」シリーf0045842_956798.jpgズ。グラモフォンの所有するクラシック音源をエレクトロニック系のミュージシャンが再構築(Remix)するというこのシリーズは、2005年にドイツのMatthias Arfmann、そして2006年にはフィンランドのJimi Tenorがそれぞれ担当しましたが、今回の第3弾に選ばれたのは何とデトロイト・テクノの革新者カール・クレイグ。そしてもう1人はミニマル・ダブのパイオニアであり、Basic Channnelの創設者モーリッツ・フォン・オズワルド。この2人によるクラシック音楽の究極のエレクトロニック再構築版が今回紹介する「RecComposed by Carl Craig & Moritz Von Oswald」。これは同時にエレクトロ・ミュージックを新たな次元まで高めた革新的な作品だ。
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この2人がグラモフォンから選んだ素材はあの「指揮者の帝王」ヘルベルト・フォン・カラヤン(下写真)が指揮するベルリン・フィルハーモニーの演奏するラヴェルボレロスペイン狂詩曲、そしてムソルグスキー/ラヴェル展覧会の絵など。
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所謂クラシック門外漢でも一度は耳にしたことのある超有名曲をズタズタに分解して新たに構築し全く新しいテクノとして提示しています。

ジャケット写真に映るのはおそらく今回使用した音源のオリジナル・マスターテープでしょう。こんな超貴重な写真を見るとさぞやクラシック・マニアのオジサン達は興奮するでしょうが、そんなオジサン達を地獄の底に叩き落すかのような容赦ない再構築ぶりが凄い。 カール・クレイグと同郷のRichie HawtinによるMix CDの新境地「DE9シリーズ」と同じ方法論で作られた「踊るだけではないテクノ」の提示とも言えるでしょう。ただクラシック・マニアはこれを聴いたら多分激怒するんじゃないかな。
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クラシック音源を使用しているからと言ってここにはおなじみのメロディも使われてないし、ボレロのクライマックスへ向かうカタルシスも全く存在していません。主旋律よりもオーケストラの中の楽器の一部を抜き出し、ひたすらストイックに余分な贅肉を削ぎ落としたかのようなミニマル・テクノが延々と反復を繰り返されます。テクノ・ファンでさえ前半部分のキックの無いノンビートなリズムが延々と繰り返される様には「これからどうなってしまうんだ?」という不安と期待に襲われるでしょう。

しかしそうしているうちにいつの間にか我々はこのレコードの深い音の迷宮の中に知らずに取り込まれてしまっています。気が付くと完全にミニマルなビートの中にいるのです。「あれ?いつのまにこんなビートになってたんだっけ?」と気が付いた頃にはもうこの音世界からは抜け出せないでしょう。緻密に計算されたカール・クレイグの作る音世界ですが、この抜け出せないズブズブ感は完全にモーリッツ・フォン・オズワルドの成せる技でしょう。
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1~6楽章から構成されており、1~4章までが第一部。インタールードを挟み5~6章が第二部といった分類がなされている。約30分に及ぶ第一部でミニマル・ダブを突き詰め、第二部はカール・クレイグのRemixした5章と、モーリッツ・フォン・オズワルドのRemixした6章。それぞれの構築の方法の違いを聴いてもらうという意図だろうか。

第一部でクラシック音楽のカタルシスを究極的に一切排除したミニマル・ダブを展開させましたが、このカール・クレイグによる5章ではオーケストラの迫力を組み入れた展開をみせる。逆に最後のモーリッツ・フォン・オズワルドの6章はBPMをぐっと落とし、パーカッションをも組み込むディープなダウンビート。この2人の性質の違いが明確に分かって面白い。
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企画物という体裁でありながら、全く他者を寄せ付けない程の圧倒的なクオリティ。何でも1年以上掛けてじっくり作りこまれたというからこの2人の気合いを感じます。中ジャケの写真ではクールにキメて写っている2人ですが、その写っている場所が誰もいないオーケストラ・ホールで、その中でキメキメな2人というのが結構笑えます。2人のこの作品の出来に対する自信の表れのようでもありますね。

芸術性」を冷酷なまでに排除した「素材」としてのクラシック音楽の再構築には、クラシック音楽のファンの拒絶反応が目に見えるかのようですが、エレクトロニック・ミュージックとしては、新たな可能性を追求しそれを見事に結実させた画期的な作品とも言えるでしょう。是非ともチェックしてみて下さい。Ricardo VillalobosによるRemixを収録した12インチ盤(下写真)も超ヤバイのでコレもチェックです!
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しかしカール・クレイグはどこまで進化していくんでしょう!
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by Blacksmoker | 2009-03-04 08:59 | TECHNO
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