湯川潮音 @Big Cat 1/27(木) 2010


湯川潮音は「正統派フォークシンガー」としてコアなファンを持っている。
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インディーズ盤「逆上がりの国」から始まり、メジャー・デビュー盤「湯川潮音」でその幽玄なフォーク・ミュージックでファンを獲得し、最近作である2008年の「灰色とわたし」ではもろにトラッド・フォーク色を強めた素晴らしい音楽でファンを唸らせてきました。

f0045842_23343520.jpgそれゆえに初のカヴァー・アルバムとなった「Sweet Child O’ Mine」は賛否両論だった(いや、むしろ否の方が多かったように思える)。「灰色とわたし」を録音したイギリスのスタジオに再び単身渡り出来上がったのは、何と全編英語詞による、いわゆる「洋楽ヒット曲カヴァー集」でした。

その選曲がOasisGuns N’ RosesMR.BIG、さらにはAerosmithThe PretendersRadioheadというまるで中学生のような「浅い」選曲にファンは腰砕けになったに違いない。まあカヴァー曲集なんで、そこまで怒るもんでもないとは思うんですが、たしかに最初は驚きましたね。(ほぼ時期を同じくしてリリースされた中山うりのカヴァー・アルバム「7 Colors」が昭和歌謡曲を中心とした選曲で、彼女のイメージを崩さず、さらに鋭い選曲が評価高かったのとは対照的でしたね)。

さて今回のツアーはそのカヴァー・アルバム「Sweet Child O’ Mine」リリース後のツアー。僕は今までに彼女のライヴを観た事がなかったので、今回初めて観てきました。

Big Catにイスが置かれているのも初めてですが、客席はだいたい7割くらいだったでしょうか。ギター1本で湯川潮音が歌うステージを想像していたら、ギター、ベース、ドラムを従えての4人組バンド編成。ベースはLittle Creaturesの鈴木正人、ドラムはBoredomsウリチパン郡でお馴染みの千住宗臣という凄腕揃い。
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1曲目からバンド・サウンド全開。イントロを聴いても何の曲だか分かりませんでしたが、英語詞のヴォーカルが入りやっとOasisDon’t Look Back In Angerだと分かりました。原曲のじわじわ盛り上がってくる感じではなく淡々としたフォーク調にアレンジされています。湯川潮音の凛としたキーの高い歌声が非常に逞しくヴォーカリストとしての力量も充分ですね。

続いては、またまたコーラスが来るまで分からなかったJackson 5I Want You Back。これも大胆すぎるアレンジで見事にオリジナル曲に変貌してました。バンドという編成なので、湯川潮音本人もヴォーカリストとして、アコースティック・ギターを弾きながらステージを縦横に動き回ります。
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カヴァー曲を2曲通してようやくオリジナル曲風よ吹かないでが登場。重厚なトラッド・フォークに日本語詞による透き通る美しい声のこの曲を聴くと、やはりこういったフォーク・タイプの曲をやらせたら右に出るものはいないくらいハマります。

この後もAerosmithAngelMR.BIGTo Be With Youとカヴァー曲は続きます。完全にレゲエ/ダブな曲調に大変身したGuns N’RosesSweet Child O’MIneなどバンドという特性を最大限に活かして、いろんなタイプの曲を披露していきます。フォーク・シンガー以外の側面も見せていて、聴いていると「まあ、こっちもありなんじゃないかなぁ」なんて気にもなっていきす(「誰もが知ってる曲」というのもポイントかもしれませんが)。
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中盤以降はHarlemしずくのカーテンひなげしの丘など代表曲も盛り込んできますが(そういや逆上がりの国もやってました!)、ロック・バンドのようにかなりラウドな音を出してる曲もありましたね。本人もMCで「今まで私のコンサートを観に来てくれてる人はうるさくてビックリしたんじゃないかな?」と言ってたくらい。今までの大人しいイメージとかなり違ってて面白い。メジャー・デビュー曲となった緑のアーチなどもちゃんと演奏してくれたのは嬉しかったですね。

その後はしっとりとRadioheadNo SurprisesThe PretendersDon’t Get Me Wrongのカヴァーも登場。どの曲も知ってる曲だけあって、崩し方が面白くてついつい最後まで聴いてしまいます。もう今後こういった変わった形態のツアーはないと思うので、これはある意味貴重な体験かもしれないですね。

アンコールは、独りでギターを抱えて登場。以前からライヴでは演奏しているがまだレコーディングされていないという曲ルビーを弾き語り。これは「今までの湯川潮音像」を踏襲した歌で、これならばレコーディングして発表すれば従来のファンを充分に喜ばせられるでしょう。
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今回は湯川潮音にとって、従来の音楽性と新しい音楽性のちょうど中間地点に位置するミュージシャンとしての過渡期のライヴだったと思います。そしてファンの戸惑いと新たな驚きが混在したとても興味深いライヴでした。個人的にはもう少しオリジナル曲を聴かせて欲しかったと思いますが、それはまた新作がリリースされた時を楽しみにしておこう。そして彼女には紆余曲折を経て独自の道を進んで行って欲しいですね。

  
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by Blacksmoker | 2010-02-27 23:08 | ライブレポート
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