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ABIGAIL WASHBURN [Song Of The Travelling Daughter]

夏が終わりに近づいてきましたねぇ。これからは涼しくなってきますが、そんな季節に最適なアルバムを紹介しましょう。これは昨年の私的ベスト10に入る素晴らしいアルバムでした。

ABIGAIL WASHBURN [Song Of The Travelling Daughter]_f0045842_22381937.jpg昨年リリースされたこのイリノイ州出身の女性バンジョー奏者アビゲイル・ウォッシュバーンの1stアルバム「Song Of The Travelling Daughter」。これはブルーグラス界に衝撃を与えたアルバムだ。私が良く行くブルーグラス歴40年を誇る日本最古のカントリー・レコード店「B.O.M.」の店長からも「凄い女性がいる」と教えてもらったのがこのアルバムです。

このとても華奢そうな彼女がクロウハンマー・バンジョーを奏でる弾き語りというスタイルが非常に斬新だが、その音楽性は更に斬新。なんとブルーグラスというアパラチア山脈の伝統音楽に東洋音楽を融合させてしまったのです。しかもそれを自分の音楽として見事消化してしまっています。何でも彼女は中国の文化に関心を持ち留学経験もあり、中国語もマスターした才人。単なるお遊びな感覚ではない。バンジョーの腕も相当なもので、歌声も非常に優雅でちょっぴりハスキーでキュートな声で、高音でファルセットになるところなどブルース・フィーリングたっぷりです。
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東洋音楽(むしろ中国音楽)の幽玄さでブルーグラスを描いたまるで山水画のような世界を創り上げています。幻想的な美しいアパラチアン・ミュージックにうっとりします。数曲のトラディショナルを除いて全曲が彼女の手によるオリジナル。弦の響く音が非常に丁寧に録音されている。プロデュースに名を連ねるのは奇才ベラ・フレック(昨年出た新作は凄かったです)。この音作りはベラ・フレックのものだろう。彼もギター&バンジョーで参加。その他にも若手を中心としたブルーグラス・ミュージシャンがフィドル、チェロ、アコーディオン、スティール・ギターなどを駆使して見事なアンサンブルを創り上げている。

そして見所はアビゲイルが中国語で歌うABIGAIL WASHBURN [Song Of The Travelling Daughter]_f0045842_2393577.jpg2曲。ブルーグラスを中国語で歌うなんて発想自体が凄いですが、これがとても自然に溶け込んでいて見事なのです。こんな今までにはない曲が全く違和感なく、まるで昔からそうであったような自然な佇まいに驚くでしょう。これはブルーグラスの基礎が出来ていないと到底出来ない音楽ですね。

実は彼女は女性5人によるオールドタイム・ストリング・バンド「UNCLE EARL」(下写真)のメンバーでもあり、そこではバンジョーを担当している(今回のソロで初めて歌声を披露したそうです)。UNCLE EARLは2005年に「Rounder Records」と契約してブルーグラス界では話題を集めたバンドで、アルバム「She Waits For The Night」もリリースしている。私もアビゲイルのアルバムで初めてこのUNCLE EARLを知って、聴いてみましたが非常に良質なオールドタイムなブルーグラスを聴かせてくれます。
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アメリカの古き良きアパラチア山脈に伝わる音楽を現代的な要素を加えて伝承する彼女のこの素晴らしい音楽は、ブルーグラス・ファンだけでなくアコースティック・サウンドが好きな人や女性ヴォーカルの好きな人なども是非とも聴いて欲しい。もちろん頑固なブルースグラス・ファンをも唸らせる実力も見逃せませんよ。

彼女の所属するレーベル「Nettwerk」のサイトで全曲視聴可能ですので、是非チェックして下さい。
by Blacksmoker | 2006-08-30 00:01 | COUNTRY / BLUEGRASS
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