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TALIB KWELI @ 心斎橋Triangle 11/4(土) 2006

昔の話になるが、9人のメンバーが勢揃いしたWu-Tang Clanのライブを観たことがある。その他にも全盛期のA Tribe Called Questのライブも観たことがある。Rakimのライブも観た(しかもRakimにダイブ喰らったし)。Gang Starrのライブも観たことがある。これらは今となっては貴重な体験であり、自慢だったりする。

そしてもう一つ自分のヒップホップ史の中で、他人に自慢できるライブを経験したことがある。

それがBlack Starのライブだ。

Black Starとはブルックリン出身の2人のMC、モス・デフタリブ・クウェリによる今や伝説のヒップホップ・ユニット。
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モス・デフは今やラッパーとしての活動だけでなく映画俳優としても大活躍している(ブルース・ウィリス主演の映画「16ブロック」では堂々の準主役!)。そのTALIB KWELI @ 心斎橋Triangle 11/4(土) 2006_f0045842_23335428.jpg彼らが98年に放った唯一のアルバムはヒップホップ・クラシックとなっている。そのアルバムの中の「Definition」という曲は、シングルカットもされたクラシック中のクラシック!そのBlack Starは1998年、アルバムのリリース前にRawkusレーベルのショーケースとして来日した事がある。しかもゲストにはCommonという豪華さでした(それでも客は50人くらいしかいなかった…)。

当時はモス・デフが「今最もヤバいMC」としてヒップホップ界では話題をさらっていた時期で、個人的にもBlack Starというよりはモス・デフを観たかったとも言える。だから「モス・デフ派」だった私はそのライブではあまりタリブ・クウェリは印象に残っていない。だが時間は流れてモス・デフタリブ・クウェリもそれぞれソロ活動をしている今となっては、私は完璧に「タリブ派」だ(もちろんモス・デフも好きですが)。そしてヒップホップ界の中で最も好きなMCの一人だ。
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ブルックリン出身のタリブ・クウェリはアラビア語で「真実の徒(Student Of Truth)」という意味。90年代後半の超良質なアンダーグラウンド・ヒップホップ・レーベルであるRawkus(数年前に倒産しちゃいました…)の看板MCであり、前述のBlack Starの活動の他にもDJ Hi-TekとのユニットのReflection Eternalなどでも活躍する。

自身のソロ・アルバムは2枚リリースしていて、いずれも傑作。特TALIB KWELI @ 心斎橋Triangle 11/4(土) 2006_f0045842_23452970.jpgネプチューンズジャスト・ブレイズカニエ・ウェストがトラックを提供し、メアリー・J・ブライジフェイス・エヴェンスジョン・レジェンドアンソニー・ハミルトンらが参加した2nd「The Beautiful Struggle」は個人的には名盤です。自らを「ドキュメンタリスト」と呼ぶそのリリックは金・女・車というトピックが出てこないコンシャスやもので、人生や愛を説き、そしてフッドの現状や人種差別問題などに鋭く切り込んでいる。今やヒップホップ界最高のリリシストの一人だ。

かのJay-Zも「Moment Of Clarify」という曲の中でこう言っている。

もし俺のスキルをちゃんと売り込む事が出来て、真実が語られるなら、俺がタリブ・クウェリみたいになってたんだ。

タリブの実力はJay-Zにこんな発言までさせる程なのだ。
ちなみに、それに答える形でタリブは「Ghetto Show」という曲で「もし俺のリリックを売る事が出来て、真実が語られるなら、俺はJay-Zのように金持ちで有名になってただろう。でも本当のところ俺はCommonのようにライムがしたいんだ。」という素晴らしい返しをしている。

前置きが長くなったがその最高のリリシストが久々に日本にやってきました。しかももうすぐ3rdアルバム「Ear Drum」がリリース間近でそのアルバムからの先行シングル「Listen」もヒット中というタイミングでの来日です。

まず前座でマサチューセッツ州出身のMaspykeというラップ・グループからハニフ・ジャミールというMCが登場。イイですね、こういうストイックなMCは!!Oh NoとかOthelloとか、こういうアンダーグラウンドMCは個人的に大好きです。自らフロアに下りていってかなり盛り上げてましたね。終ってからアナログ買っちゃいました(彼はMitsu The Beatsの新作にも参加しているそうだ)。

そして深夜2:30を回った頃に登場したタリブ・クウェリのステージは、まさしく本物のリリシストの真髄を見せ付けられた圧巻のステージ。NYの空気をそのまま運んできたようです。切れ味の鋭いシャープなラップが息継ぎなしに繰り出されるカッコよさはハンパないが、ヒップホップを愛するそのストレートな姿勢にも感動しましたね。
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序盤からBlack Starのクラシック「Definition」をドロップして、もうフロアは狂喜の大合唱!野郎ども男泣きです。「I Try」や「Never Been In Love」といった2ndアルバムの曲を中心に代表曲を網羅したセット。Danger Doomに客演した「Old School」に続けてGrandmaster Flash&Furious Fiveの「The Message」、そしてM.O.P.Ante Up」のトラックでライミングするという反則級連打にフロアは最高潮の盛り上がり。

そして最近出たばかりのHi-Tekのアルバムからの「Where It Started At [NY]」も披露していましたね(ちなみにHi-Tekのニューアルバム「Hi-Teknology 2」はタリブが大活躍で必聴!)。これはバスタ・ライムスの2006年のアンセム「New York Shit」に続くニューヨーク・レペゼンSHITです。

その他にも何とReflection Eternal時代のクラシック「The Blast」や「Get ‘Em High」など披露してもう感激でしたね。もちろん新曲「Listen」もやってました。そしてもうお腹一杯のところに大ヒット曲「Get By」をドロップ!これはヤバイくらいの盛り上がりでした。その後も「We Got The Beat」でガッチリとフロアをロックさせてました。さすがステージも完全に掌握していましたね。

そう言えばライブの途中で、ちょっとラリッたジャマイカンの男がセキュリティに連TALIB KWELI @ 心斎橋Triangle 11/4(土) 2006_f0045842_23492136.jpgれ出されそうになった時にタリブが「ちょっと待て」とセキュリティを制止して、そのジャマイカンに「俺も音楽を愛してる。そしてお前も音楽を愛してるんだろ?俺たちの求めるものは同じだよな?」と言って、そいつを見事に言葉だけでおとなしくさせたシーンがあり、まざまざと本物のリリシストの言葉の力というものを見せ付けられました。言葉は全て理解出来るわけではないけど、タリブのメッセージと熱いヴァイヴはひしひしと伝わって来ましたよ。神々しさも感じたと言っても過言ではないです。

ヒップホップ界最高峰のMCの力を肌で感じることが出来て本当に素晴らしい体験でしたね。タリブ・クウェリ、この男は真のリリシストでした。
by Blacksmoker | 2006-11-08 00:13 | ライブレポート
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