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SPINNERS [Spinners]

先月2月2日、ひっそりとこんなニュースが世界に報道されました。

スピナーズのオリジナル・メンバー、ビリー・ヘンダーソン糖尿病の合併症のため死去。享年67歳。

個人的には昨年末からガンガンにソウルを聴いていて、中でもかなり入れ込んでいたソウル・コーラス・グループのスピナーズ。そのメンバーがこのタイミングで亡くなるなんて非常に残念です・・・。

SPINNERS [Spinners]_f0045842_17501049.jpg今回紹介するのは、そのスピナーズの傑作アルバムの1つ「Spinners」。これはモータウンからアトランティックにレーベルを移籍しての初のアルバムにして、スピナーズの黄金期の始まりとなった1973年の大ヒット作。そして後にクラシックとなるナンバーを多数含む名盤です。スピナーズには傑作アルバムが多くありますが、このアルバムの存在抜きには彼らの歴史は語れません。

1955年ミシガン州で結成された彼ら(当初はドミンゴスと名乗っていたそうです)。その後モータウンに所属し、数曲のヒット曲を出すも決して満足したサポートを得られず、ジャクソン5の運転手をさせられたりとかなりの不遇な扱いを受けていたようです(実はスティーヴィー・ワンダーのプロデュースで曲をリリースしてたりもします)。

その後、1970年代に入り彼らはモータウンを離れ新天地アトランティックに移籍。これにはあのアレサ・フランクリンからの誘いもあったそうだ。そして製作スタッフも一新して作られたのがこのアルバム「Spinners」なのです。
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まずプロデューサーとして迎えられたのがトーム・ベルという人物。ジャマイカ生まれのフィラデルフィア育ちのトーム・ベルは数々のコーラス・グループを手掛けたアレンジャーでもあり、なんとあのデルフォニックスまでも手掛けた人物。この男が関わったことでコーラスワーク、ストリングス、歌詞にいたるまで徹底的にコントロールされ、劇的にスピナーズを変化させ、成功に導いたのです。

やはり私がスピナーズを好きな理由も、曲の良さももちろんありますが、その完璧に近い曲のアレンジぶりと完璧なコーラスワークですね。ほとんどの曲でメインを務めるフィリップ・ソウル・ウィンの安定SPINNERS [Spinners]_f0045842_1758543.jpg感抜群のテナー・ヴォーカル、そしてそのヴォーカルを最大限に活かす他の4人のコーラスの引き立てぶりがまさに隙なしです。普通なら「俺も目立たせろ」的なエゴの衝突(それこそ「ドリームガールズ」的な!)があるが、スピナーズの凄いところは他の4人がしっかり自分の役割を理解しバックに徹しているところです。もちろん他のメンバーのソロ・パートもありますが、あくまで主役はフィリップ・ソウル・ウィンという構図は変わらず。

プロデューサーのトーム・ベルはこのスピナーズのアルバムに対し相当な入れ込みを持っており渾身の10曲を用意しました。特にストリングスを多用し、ドラマティックに盛り上げる曲が素晴らしいです。その中で、「I'll Be Around(いつも貴方と)、Could It Be I’m Feeling In Love(フィラデルフィアより愛を込めて)、One Of A Kind(Love Affair)(たわむれの愛) の3曲が全米No.1ヒットを記録。その他の曲もヒットし、まさしくスピナーズの黄金期が始まるわけです。この年に新設されたというグラミー賞の「ベスト・プロデューサー」部門においてトーム・ベルはこのアルバムで受賞しているのも納得の働きです。
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現在でも素晴らしい音楽を生み続けるフィラデルフィアの街の空気、いわゆる「フィリー・ソウル」を70年代という時代に体現していた素晴らしい愛のアルバムですね。

是非一度お試し下さい。

そしてR.I.P. ビリー・ヘンダーソン
by Blacksmoker | 2007-03-30 00:36 | R&B / SOUL
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