「BRIAN ENO アンビエント・シリーズ」 Vol.3 

1970年代後半にブライアン・イーノが、日常の中に溶け込む静かな音楽という概念で提唱した環境音楽「アンビエント」。
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そして1978年から1982年の間にそのアンビエントを表現する4枚の「Ambient」と名付けられたレコードがリリースされました。以前(1年程前ですが・・・)に、この「Ambient」シリーズの「1」「2」を紹介させてもらいましたが、今回は「3」を紹介しましょう。

Laraaji [Ambient 3: Day of Radiance](1980)

f0045842_12504256.jpg実はこの「Ambient 3」ですが、少し今までの前2作品とは違います。実は、この作品だけはブライアン・イーノという名義が入っていないのです。「1」、「2」、そして「4」はブライアン・イーノ名義(「2」ハロルド・バッドとの共同名義)ですが、この「Ambient 3」だけはある人物の単独名義になっています。

その人の名はLaraajiララージ)。

1943年生まれのアメリカ人。チター奏者でありハンマー・ダルシマーも演奏するこのララージ。正直あまり有名ではない人だと思います。本名エドワード・ラリー・ゴードン。フィラデルフィアで生まれ、幼少よりニュー・ジャージーでピアノやヴァイオリン、トロンボーンなどさまざまな音楽を学んだ人だそうで、ニューヨークの大学ではピアノの作曲も学んでいます。俳優としても活動していた時期もあったそうでなかなかユニークな経歴を持っています。そのララージが1978年にニューヨークでチターを演奏しているところをブライアン・イーノがたまたま通りかかったというのがこの2人の邂逅らしいですね。
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そもそもチターという楽器自体馴染みが薄い楽器ですが、板状のボディに弦が平行に張られただけの単純な楽器。今から500年以上も前の1500年代にイタリアやスペインなどを通ってドイツやオーストリアに持ち込まれたものだそうです。ハープのようにとても美しい音を出す楽器です。

さて、そのララージの単独名義となったこの「Ambient 3」ですが、ブライアン・イーノはプロデュースを担当。ララージの演奏するエレクトリック・チターやハンマー・ダルシマーの音にイーノがうっすらと電子処理を施しています。サブ・タイトルに記された「Day Of Radiance」。「輝く日」とでも訳せばいいのだろうが(当時の日本盤のタイトルは「発光」)、非常に明確な2部構成になっています。

前半はThe Danceと名付けられた曲が「#1」「#2」「#3」と続きます。こf0045842_12525531.jpgThe Danceはチターとハンマー・ダルシマーの煌びやかな音が延々と重ねられた曲で、結構アンビエントのわりには肉体的であり、躍動感があります。要するに「結構うるさい」んですね(笑)。環境音楽というよりは、チターやハンマー・ダルシマーのあの独特な音が延々と無限のループを繰り返すある種のサイケデリック感覚を誘発する音楽ですね。ヨーロッパ発祥の楽器でありながら、どこかアジア圏の音楽のような響きがあるのがとても興味深いです。

そして後半はMeditationというタイトルが付けられた曲が「#1」「#2」と並びます。このMeditationではチターの音はかなり抑制され、イーノのアンビエントな電子音を中心にして、そこにララージのチターが静かに絡まっていく非常に浮遊感のある音になっている。今までの前2作のアンビエントな音に最も近いと言えるでしょう。特にMeditation #1は18分にも及ぶ霧の中で彷徨っているような感覚に陥るアンビエントです。弱冠やかましめの前半(アナログではA面)と、浮遊感のあるアンビエントな後半(アナログB面)の対比も明確でアルバムを通してコンセプチュアルな構成がされているように思えます。
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さて、この「Ambient 3:Day Of Radiance」ですが、ララージの単独名義という事もあってか、過去ブライアン・イーノの作品が幾度もリマスターで再発されているにも関わらず、この「Ambient 3」だけが再発を見送られスルーされるという憂き目に遭っています。是非ともこの作品もイーノの一つの作品としてもしっかりと評価してもらいたいものです。音は今までのアンビエント・シリーズに比べると少し輪郭のハッキリした作品ですが、後半のアンビエントな展開は今までの2作品に比べても何の遜色もない素晴らしい音ですからね。

4作品の中で3作目にこの作品を持ってくるイーノもなかなかニクいです。他の作品と聴き比べてみるのも面白いでしょう。

そしてこの2年後、「Ambient」4部作の最終作として登場するのが「Ambient 4: On Land」。この盤の紹介はまたいずれ。
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by Blacksmoker | 2007-06-29 00:13 | BRIAN ENO
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