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XASTHUR [Defective Epitaph]


聴いていると死んでしまいたくなるような音楽だ。この音楽には何の希望も未来もない。

XASTHUR [Defective Epitaph]_f0045842_23385591.jpgブラック・メタルの世界において、最近特に注目を集めているのがアメリカ。ブラック・メタルと言えばノルウェーを発祥とするものだが、ここ最近は「ブラック・メタルの第三国」であるアメリカから強力なバンドが多く登場しています。そのアメリカのブラック・メタル・シーンの中で最高峰とも言えるのがこのXASTHURザスター)です。そのXASTHURの6枚目となる最新作「Defective Epitaph」が奇跡的に日本盤発売ということで、是非ともこの恐ろしいアルバムを紹介しましょう。

MAYHEMBURZUMの精神を受け継ぐ現在最も過激で、最も鬱なこのXASTHUR。実はバンドではなくカリフォルニア出身のMaleficマレフィック)という男による一人ブラック・メタル・プロジェクトなのです。
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カリフォルニアという圧倒的に開放的な環境にありながら、人との関わりをほとんど拒絶し、自宅にてもくもくと陰鬱なブラック・メタルを作り続けるこのMalefic。一人ブラック・メタルなのでもちろんライヴ活動もしたことがありません。「人々の絶望・憎しみ・怒りといった全てのネガティヴな感情を引き出すためにXASTHURをやっている」と平然と言ってのけるMaleficよる、あまりにも救いようの無い絶望感に包まれたこの音楽は、全世界の自殺志願者達の気分をさらにドン底まで突き落としてくれるに違いない。

このXASTHURの名をブラック・メタル界以外の外界へ知らしめたのは、やXASTHUR [Defective Epitaph]_f0045842_0123661.jpgはりSUNN O)))の現在のところ最新作であり最高傑作でもあるアルバム「Black One」(左写真)への参加でしょう。ブラック・メタルへのオマージュでもあるこの作品でMaleficはヴォーカリストとして参加。その絶望的な断末魔であのアルバムを更に恐ろしい作品にする事に手を貸している。ちなみにSUNN O)))のライヴ・ツアーにも参加していました(その時の強烈な映像はコチラです)。

このXASTHURしかり、XASTHURと並びアメリカのプリミティヴ系ブラック・メタルの2大巨頭とも言われるLEVIATHANしかり、北欧のブラック・メタル勢とこのアメリカ産ブラック・メタルの決定的な違いは威圧的でデカダンスな宗教色があまり濃くない事。まあ、最近は北欧のブラック・メタル・バンド達も、あくまでキリスト教的範疇の中にあるサタニズム主義を捨て、キリスト教以前の北欧神話の世界を崇拝するようになっていますが…。XASTHURの表現するのは退廃・荒涼・殺伐的な精神的に絶望的な世界。その点において、その世界観はKHANATE(昨年解散してしましましたが…)に近い。
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前作と今作とリリース元がISISアーロン・ターナーが主宰するレーベル「HYDRA HEAD」(ハイドラ・ヘッド)というのもなかなか興味深い。HYDRA HEADのアーティスト達(PELICANや、ISIS)の表現する世界と、このXASTHURが表現する世界には共通点を見い出せます。

しかしHYDRA HEADからのリリースではありますが、音楽性に関しては正真正銘の純度120%混じりっ気なしの真正ブラック・メタル。先程「宗教色が濃くない」と言いましたが、アルバム後半はそれを嘲笑うかのように荘厳なキーボードをフィーチャーした禍々しいスロー・テンポなナンバーの応酬。今回のアルバムは今までより一層この荘厳なキーボードが使われていますね。残響音まみれのギター・リフのカオス・ノイズと相まって、アンビエント感すら漂わせています。今回のレコーディングにはチェロなども使われているようですがハッキリ言ってどこで使われているのか分かりません…。
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そしてブラック・メタルの最大の特徴と言ってもいい「くぐもったサウンド」はここでも健在。禍々しさを表現するためにあえて質の低い録音機材を使って生々しさを出すバンドが多いブラック・メタル界(最近は4トラックでレコーディングした生々しいRAWなサウンドを創るブラック・メタル・バンドまで出てきている始末ですが・・・)。このXASTHURも8トラックによる録音だそうで、その独特なモコモコした生々しすぎるカオスなサウンドが強烈です。ドラムの音なんてモノラル音源かと思うくらいのリアルな音です。シンバルの音がヤバいです。個人的にはコリン・リチャードソンにプロデュースさせれば整合感のある最高にカッコ良いサウンドになると思うんですが、まあそんな事は誰も望んでいないでしょうね…。

Maleficによる断末魔のような呻き声によるヴォーカルも絶望感たっぷり。聴いてると段々鬱になってきます。最終曲まで聴き終える頃には冥府の扉が開いて引き込まれそうになりますね。まさに病的な世界です。
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自殺志願者は間違いなく聴かないほうが良い危険極まりないサウンドです。これこそが本物のエクストリーム・ミュージック

是非とも絶望の淵を経験して欲しい。
 
by Blacksmoker | 2007-10-06 00:18 | 極北
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