艶やかなラテンのリズムの上に乗る、キューバ録音による現地ミュージシャンの情熱的な演奏。そして生演奏とプログラミングの絶妙なブレンド。ラテン・ジャズやキューバ音楽、そしてハウスやダブ・ステップまでも通過したサウンド。そして25年もの間、DJの現場で活躍するキャリアの中で培った説得力のある豊潤な音楽性。これぞ2008年、ラテン・ブレイクビーツの最高傑作です。 90年代にクラブ・ジャズ・シーンを牽引したUnited Future OrganizationのDJ、ラファエル・セバーグ。 実はこのアルバムに先駆けること2年前の2006年、アルバムの顔見せ的ミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」(右写真)がリリースされており、本作にも収録されている「Besos」と「El Fantasma De La Libertad」がいち早くお披露目され、その曲の素晴らしさが更にアルバムへの期待を高めていたわけですが(ちなみにRemixも収録されていて、そこには何とThink TankのKiller Bongなんかも参加していました)、それから2年という長い年月を掛けこのアルバムは完成したわけです。 「from “El Fantasma De La Libertad”」で垣間見れたラテン・ミュ-ジックへの傾倒はより深くなり全編に渡ってラテン・ミュージックへの愛に溢れている。 そのテーマを受けてオープニング曲「Alegria Africana」に登場するのは、キューバ人女性ラッパーのテルマリー(左写真)。キューバ新世代ミュージシャンを代表するこのテルマリーの歌うこの曲がもうホントに素晴らしい!前述のミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」にも既に参加していた彼女だが、本作にも再び登場して「アフリカの自由」を訴えかける。ソリッドな切り口で弾丸のように詰め込んだポエットリー・リーディング調のラップを披露しているのだが、コレが鳥肌の立つほどカッコイイ。全編に歌うように流れる情熱的なピアノ、そして日本が誇るサルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスのGenta氏によるアフロ・キューバンなパーカッションも加わってその素晴らしさは感動的です。しかしこの後にも何曲かで登場するテルマリーはほんと素晴らしい働きをしています。 そして次に登場するのは待望の新作がリリース間近のジューサ(Yusa)。こちらもテルマリーと同じくキューバ新世代ミュージシャンの1人で、ブエナ・ビスタ地区出身の天才シンガーソングライター(下写真)。シンガーソングライターでありながら、ブラジルの才人レニーニのワールド・ツアーに「ベーシスト」として参加するマルチ・インストゥルメンタリストでもあります。 キューバ録音による「サルソウル」の大御所ヴィンセント・モンタナのカヴァー「Los Bravos」。これはホントに痺れますよ。インタラクティボ、ジューサ、そしてオルケスタ・デ・ラ・ルスの3者が渾然一体となって奏でるファニアオールスターズばりの素晴らしいサルサ・ナンバー。トランペット、サックス、トロンボーンのファンキーなブラスに、ヴァイオリンの旋律が絡んでくる瞬間は何度聴いても痺れます。ロベルト・カルカセスの跳ねるようなピアノ、そしてファンキーに唸るベース、リズムチェンジして展開される後半のジャムっぽい演奏もカッコ良すぎますね。必聴です。 哀愁漂うナンバー「Besos」もオススメ。これは前述の「from “El Fantasma De La Libertad”」に収録されていたのもですが、テルマリーが他の曲で見せていた攻撃的なラップを封印し、歌う様な知的なポエットリー・リーディングで聴かせます。しかしテルマリーという人は、色んな側面を見せてくれますね。ちょっと只者ではないですね。 とにかく徹頭徹尾ラテンへの愛情に溢れた一枚。そして世界的にも注目を集めるキューバ新世代ミュージシャンの起用も素晴らしい効果を生み出しています。特にテルマリーの働きは想像以上の素晴らしさです。彼女がいなければこのアルバムの印象も大きく変わっていたでしょう。そしてラテンへの郷愁だけでなく、未来も見据えた豊潤で刺激的なサウンド。何度も言うがこれはラテン・ブレイクビーツの最高傑作。
by Blacksmoker
| 2008-05-25 00:47
| TECHNO
|
by Blacksmoker カレンダー
ブログパーツ
ライフログ
最新のトラックバック
カテゴリ
全体 ライブレポート レゲエ馬鹿道場(VERSION) TECHNO HIP HOP JAZZ FOLK ROCK R&B / SOUL COUNTRY / BLUEGRASS アフリカ ブラジル ELECTRONICA DOOM NEW ORLEANS BLUES REGGAE METAL PSYCHEDELIC TRANCE 映画 サウンドトラック BRIAN ENO 金の亡者 「THE BLUES」 DVDシリーズ UK GARAGE / GRIME 極北 GOSPEL スペイン DRUM & BASS 2006年総括 2007年総括 2008年総括 2009年総括 2011年総括 2012年総括 2013年総括 2014年総括 2015年総括 2016年総括 2017年総括 2018年総括 2022年総括 2023年総括 告知 Live Shots お気に入りブログ
超ブルーグラス入門 Rhymes Of An... 聴くまで死ぬな、この曲を... SHOWCASE CATCH A FIRE ■□ between t... 雑派日誌 ~SHINGO☆西成~ ... coffee days/... 以前の記事
2023年 12月 2022年 12月 2018年 12月 2017年 12月 2016年 12月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 05月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 09月 2012年 05月 2011年 12月 2010年 08月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||