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RAPHAEL SEBBAG [El Fantasma De La Libertad]


RAPHAEL SEBBAG [El Fantasma De La Libertad] _f0045842_1151516.jpg艶やかなラテンのリズムの上に乗る、キューバ録音による現地ミュージシャンの情熱的な演奏。そして生演奏とプログラミングの絶妙なブレンド。ラテン・ジャズやキューバ音楽、そしてハウスやダブ・ステップまでも通過したサウンド。そして25年もの間、DJの現場で活躍するキャリアの中で培った説得力のある豊潤な音楽性。これぞ2008年、ラテン・ブレイクビーツの最高傑作です。

90年代にクラブ・ジャズ・シーンを牽引したUnited Future OrganizationのDJ、ラファエル・セバーグ
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1990年にUnited Future Organizationを結成し2002年までに5枚のアルバムをリリースし、日本だけでなく世界に認められる存在となったわけですが、それから6年。遂に初のソロ・アルバム「El Fantasma De La Libertad」をリリース。これはホントに素晴らしいアルバムです。

実はこのアルバムに先駆けること2年前の2006年、アルバムの顔見せ的ミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」(右写RAPHAEL SEBBAG [El Fantasma De La Libertad] _f0045842_1324447.jpg真)がリリースされており、本作にも収録されているBesosEl Fantasma De La Libertadがいち早くお披露目され、その曲の素晴らしさが更にアルバムへの期待を高めていたわけですが(ちなみにRemixも収録されていて、そこには何とThink TankKiller Bongなんかも参加していました)、それから2年という長い年月を掛けこのアルバムは完成したわけです。

「from “El Fantasma De La Libertad”」で垣間見れたラテン・ミュ-ジックへの傾倒はより深くなり全編に渡ってラテン・ミュージックへの愛に溢れている。
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タイトルになった「El Fantasma De La Libertad」とは「自由の幻想」という意味らしく、ルイス・ブニュエルの映画からそのタイトルは取られている。「本当の意味での自由とは?」をテーマにしたアルバムだそうだ。

そのテーマを受けてオープニング曲Alegria Africanaに登場するのは、キューバ人女性ラッパーのテルマリー(左写真)。キRAPHAEL SEBBAG [El Fantasma De La Libertad] _f0045842_126739.jpgューバ新世代ミュージシャンを代表するこのテルマリーの歌うこの曲がもうホントに素晴らしい!前述のミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」にも既に参加していた彼女だが、本作にも再び登場して「アフリカの自由」を訴えかける。ソリッドな切り口で弾丸のように詰め込んだポエットリー・リーディング調のラップを披露しているのだが、コレが鳥肌の立つほどカッコイイ。全編に歌うように流れる情熱的なピアノ、そして日本が誇るサルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスGenta氏によるアフロ・キューバンなパーカッションも加わってその素晴らしさは感動的です。しかしこの後にも何曲かで登場するテルマリーはほんと素晴らしい働きをしています。

そして次に登場するのは待望の新作がリリース間近のジューサ(Yusa)。こちらもテルマリーと同じくキューバ新世代ミュージシャンの1人で、ブエナ・ビスタ地区出身の天才シンガーソングライター(下写真)。シンガーソングライターでありながら、ブラジルの才人レニーニのワールド・ツアーに「ベーシスト」として参加するマルチ・インストゥルメンタリストでもあります。
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そんな実力派ジューサをボーカルを据えて、チューチョ・バルデスYemayaを哀愁たっぷりにカヴァー。情熱的なジューサの歌声も素晴らしいですが、この曲でバックを務めるのが、キューバのピアニストのロベルト・カルカセス率いる14人編成の大所帯ラテン・ファンク・バンド、インタラクティボ(Interactivo)。このキューバ最先端バンドのホーン・セクションが俄然盛り上げてくるラテン・ナンバーはかなりアツイ。特に中盤のトランペット・ソロからなだれ込む後半の展開はコーラスも被さって凄いです。しかしこの現代のキューバ新世代の筆頭とも言えるテルマリージューサインタラクティボ(下写真)という3者が揃って登場するなんて凄いですね。
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次はラテン・パーカッションが乱れ飛ぶダブ・ステップ的ダンス・ナンバーAndalu。ここでもピアノが効果的な演出でラテン的ムードを盛り上げます。そして、再びテルマリー登場のダブ・ステップ的なナンバーWindows And Mirrorsでは不穏な旋律にわざと感情を抑えたテルマリーのクールな高速ラッピングがむちゃくちゃカッコ良いです。

キューバ録音による「サルソウル」の大御所ヴィンセント・モンタナのカヴァーLos Bravos。これはホントに痺れますよ。インタラクティボジューサ、そしてオルケスタ・デ・ラ・ルスの3者が渾然一体となって奏でるファニアオールスターズばりの素晴らしいサルサ・ナンバー。トランペット、サックス、トロンボーンのファンキーなブラスに、ヴァイオリンの旋律が絡んでくる瞬間は何度聴いても痺れます。ロベルト・カルカセスの跳ねるようなピアノ、そしてファンキーに唸るベース、リズムチェンジして展開される後半のジャムっぽい演奏もカッコ良すぎますね。必聴です
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人的パーカッションがハウス的な高揚感を感じさせるViento Misterio、ダビィなベースラインがウネリまくるダブ・ステップ246‐20El Fantasma De La Libertadテルマリーの超高速ラップが炸裂)は古き良き伝統音楽とは一味違った近未来感を出しています。

哀愁漂うナンバーBesosもオススメ。これは前述の「from “El Fantasma De La Libertad”」に収録されていたのもですが、テルマリーが他の曲で見せていた攻撃的なラップを封印し、歌う様な知的なポエットリー・リーディングで聴かせます。しかしテルマリーという人は、色んな側面を見せてくれますね。ちょっと只者ではないですね。
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最後を飾るのは、ラファエル・セバーグ自身もヴォーカルで参加した実に落ち着いたラテン・ジャズ・ナンバーTout Oublie。サウダーヂ感のあるムーディなスロー・ジャズでしっとりと幕を下ろします。

とにかく徹頭徹尾ラテンへの愛情に溢れた一枚。そして世界的にも注目を集めるキューバ新世代ミュージシャンの起用も素晴らしい効果を生み出しています。特にテルマリーの働きは想像以上の素晴らしさです。彼女がいなければこのアルバムの印象も大きく変わっていたでしょう。そしてラテンへの郷愁だけでなく、未来も見据えた豊潤で刺激的なサウンド。何度も言うがこれはラテン・ブレイクビーツの最高傑作。
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個人的には2008年度ベスト・アルバム候補の1枚!是非チェックして下さい。
by Blacksmoker | 2008-05-25 00:47 | TECHNO
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