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映画「O Mistério do Samba」


現在、大阪の西九条シネヌーヴォーで行われている「ブラジル映画祭2009」(ちなみに東京は終了し、大阪は明日16日まで)。そこで日本初上映となる映画「O Mistério do Sambaミステリー・オブ・サンバ ~眠れる音源を求めて」を観てきました。
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マリーザ・モンチが共同プロデュースを務めたこの映画。これは、1998年から2007年の9年間にマリーザ自身がブラジルのリオ市の北西部にある街「オズヴァルド・クルス」にある最も伝統のあるサンバ・チーム(エスコーラ・ヂ・サンバ)の「ヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラ」を訪れて、彼らの作ったサンバの中でも未だに録音されずに埋もれたままになっているサンバを録音しレコードに残そうというプロジェクトを追ったドキュメンタリー映画です。ブラジル音楽ファンにとっては、素晴らしく美しいシーンの連続で感涙の映画ですね!熱心なファンでなくともブラジル音楽に少しでも興味のある人は観ておいて損はないでしょう。

そもそも、この映画の存在は最近まで全く知らなかったのf0045842_9442742.jpgですが、これによって2000年にリリースされたヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラのアルバム「Tudo Azul」(右写真:日本盤オリジナル・ジャケット)をマリーザ・モンチがプロデュースしていたこと、そして2006年にリリースされたマリーザの2枚の傑作アルバムのうちの1枚「Universo ao meu redor/私のまわりの宇宙」がサンバ・アルバムだったことの理由がようやく分かりましたね。このプロジェクトがその2つを繋ぐミッシング・リンクだったのです。

さて、このヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラは、1926年結成というとてつもなく長い歴史を誇るエスコーラ。それゆえに初期の中心的メンバーはここ数年で相次いでこの世を去っているが、現在の主要メンバーであるモナルコ(ちなみに彼の息子のマウロ・ヂニスはマリーザの2007年の来日公演でバック・バンドのメンバーでした)や、カスキーニャらを中心にいまだその勢力は健在だ。その彼らや、さらにはヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラのメンバーでもあり、その後「サンバの貴公子」とも言われる天才サンビスタのパウリーニョ・ダ・ヴィオラのインタビューを中心に、このオズヴァルド・クルスという街に根付くこの美しいサンバの生い立ちが次々と語られていく様は、非常に興味深く、観るものの心を捉えます。
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そして全編に渡って登場するマリーザ・モンチのサンバに対する真摯な姿勢にも目が行きます。実はマリーザは父親がヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラの役員を務めていたこともあり、幼少の頃から彼らのサンバが身近にあったらしいですね。そもそもマリーザはデビュー・アルバムでも、カルトーラの作曲したサンバを取り上げていたし、続く2ndや3rdアルバムでもこのヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラのメンバーと共に録音したサンバを収録している。特に3rd「Verde Anil Amarelo Cor de Rosa & Carvão/ローズ & チャコール」でラストを飾るEsta Melodiaは素晴らしいです。
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当初はミュージシャンでもなく、普通に大工など仕事をしていたというヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラのメンバー達の様々な話は、酔っ払いの昔話のようでもあるが、自由奔放な男達のなかなか魅力的なエピソードばかり。

しかし、この映画で本当に語られるべきは、この男達を支える奥さんら女性達の力強さでしょう。
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どちらかと言うと勝手気ままな男達を、呆れながらもしっかりと支える彼女達がいなければ、この地のサンバはなかったと言っても過言ではないでしょう。単純な恋愛だけでなく、失恋相手への怒りや、妻への謝罪、人生訓など様々な感情が込められた魅惑的なサンバは、やはり女性という存在があってこそなんですね(あとマリーザと共に共同で監督を務めるカロリーナ・ジャボールが女性という事も関係しているかもしれませんが)。

そして個人的なハイライトは、既に亡くなった初期のメンバーのマナセーアの家でマリーザが未発表の歌詞やテープなどを発見し、「これは宝物を発見したわ!」と興奮するシーン。家族の結構ずさんな管理状態も凄いが、こうやって歴史から抹消されるところだった曲が救出される様子はほんと感動的ですね。

最後は、ヴェーリャ・グァルダ・ダ・ポルテーラのメンバーがマリーザと共に歌うEsta Melodia
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前述したようにマリーザの3rdアルバム「Rose & Charcole」にも入っているこのサンバが歌われるシーンは壮観ですよ。

そしてこの映画の全編に渡って漂っているのは、この街のサンバに対する深い愛情です。とある街角でサンバを演奏するメンバー達を見て、たまたま通りかかったお婆さんがその音に合わせてステップを踏むシーンなんてホント最高です。いかもこの街にサンバが根付いているのかが分かりますね。エンドロールで流れる演奏でももうお爺さんお婆さんにもなる人達が踊り始める姿は微笑ましいですね。
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このオズヴァルド・クルスに住む若者達が抱くサンバ感というものも聞いてみたかったりもしますが、やはり伝統というのは大事にしていかなければいけません。テープレコーダーも存在しなかった時代から口承文化として受け継がれてきたこの美しいサンバの名曲達が形として残り、こうやって現代に生きる私達の耳に届くという歴史的意義は非常に大きいです。マリーザのこういう高尚な意識を持った姿勢にもリスペクトです。
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観終わった後に、清涼感を感じつつも、何か心の中が熱くなるような映画でした。映画を観る前にレコード屋でマライア・キャリーの新作を買ってしまった自分が少しだけ恥ずかしく思えてしましました・・・。
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by Blacksmoker | 2009-10-15 09:31 | 映画

映画「My Blueberry Nights」


ウォン・カー・ウァイ監督による「マイ・ブルーベリー・ナイツ」観てきました。
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主演にはこれが映画初主演となるノラ・ジョーンズを起用するなど音楽ファンには公開前より話題になっていた作品です。ラヴ・ストーリー的な要素が前面的に宣伝されているように思いますが、実はラヴ・ストーリー的な要素は希薄。どちらかと言うと、これは「ロード・ムーヴィー」だ。主人公が旅を通して成長するプロットはまさしくロード・ムーヴィー(後半は特にその色合いが強くなってきます)。
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個人的な事を言わせてもらうとロード・ムーヴィーというものにハズレはない。昨年だと「リトル・ミス・サンシャイン」など良い作品があったし、今年に入って公開された「ダージリン急行」「団塊ボーイズ」なども(まだ観てないですが)間違いなく良い作品でしょう。(個人的にお気に入りのロード・ムーヴィーは「シティ・スリッカーズ」「ストレイト・ストーリー」ですね。)

今回の「マイ・ブルーベリー・ナイツ」も、もちろん素敵な(素晴らしいではなく)作品。
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そしてロード・ムーヴィー的要素だけに終わらないのはウォン・カー・ウァイ監督。今回のこの映画は彼の創る映像美を堪能出来るだけでも観る価値がある。全てのシーン1つ1つのコマ割りまでこだわり抜いた美しい映像の連続は、映像の美しさを売りにしている現在公開中の映画「潜水服は蝶の夢を見る」なんかよりも圧倒的に美しい。

特に赤を基調とした照明やネオンの使い方、空の描き方、登場人物を真っ直ぐに捉えないカメラのフレームワークなどは非常に印象的。
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上海出身のウォン・カー・ウァイ監督らしくアメリカを舞台としながらもどこか異国の雰囲気が漂っています。新境地を見せるナタリー・ポートマンの演技などなかなか見所は多いです。

さてこの映画は、音楽面に関しても注目です。

映画内で使われるスコアを担当しているのはライ・クーダー
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最近のライ・クーダーの得意とする広大なアメリカの大地に根付く土臭いサウンドがこのロード・ムーヴィーにばっちりハマっています。同じくライ・クーダーがプロデュースし、土臭いサウンドが素晴らしかったメイヴィス・ステイプルズのアルバム「We’ll Never Turn Back」からEyes On The Prizeも使われています。

そしてノラ・ジョーンズの注目の新曲The Storyをもったいぶらずにオープニングでさらっと使ってしまうセンスも好きですね。ノラ・ジョーンズ絡みでデビューし、2ndアルバムでルーツ寄りのサウンドん接近したエイモス・リーSkipping Stoneも中盤に使われていてこれもハマってましたね。
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オーティス・レディングTry a Little Tendernessルース・ブラウンLooking Backなどソウルの名曲がシーンを盛り上げるのに一役買っています。カサンドラ・ウィルソンによるニール・ヤングのカヴァーHarvest Moonも印象的です。

そして何と言ってもこの映画で最も目立っていたのがCat Powerの曲。
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特に2006年にニューオーリンズ録音のアルバム「The Greatest」からのタイトルトラックThe Greatestは映画中3回も使われている入念振り。TVのCMで使われていたのもこの曲でしたね。Cat Power = ショーン・マーシャルの独特な声が映画の色を決定付けていると言っても良いでしょう。このアルバム「The Greatest」からは前述のThe Greatest以外にもLiving Proofも使用されています。しかも、このショーン・マーシャル、映画中盤にスクリーンにも登場します!(下写真)
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唐突に出てきたので驚きましたが、ジュード・ロウとの会話がとても印象的。しかも素性はあまり明らかにされない役柄ですが、ジュード・ロウとのキス・シーンもありインパクトは絶大です。Cat Powerのファンは絶対にチェックです。

色の使い方、カメラワークなどの映像美だけでなく、音楽面でもとても素敵なロード・ムーヴィー。

観た人なら必ず何かを発見出来る映画です。
 
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by Blacksmoker | 2008-04-21 00:59 | 映画

映画「Persepolis」


チューバイカ・クルーのマイメンDJ hino氏から教えてもらった映画「ペルセポリス」。これが非常に素晴らしい映画だったので是非とも紹介しましょう!
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全世界30ヶ国で翻訳されベストセラーとなったフランス在住のイラン人マルジャン・サトラピによる自伝的グラフィック・ノベル「ペルセポリス」。この本をマルジャン・サトラピ本人とグラフィック作家ヴォンサン・パロノーの2人によって映画化されたのが本作で、フランスでは大ヒットを記録しカンヌ映画祭をはじめとして数々の賞を受賞、今年のアカデミー賞でも「長編アニメーション賞」にノミネートされている話題作です。
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1970~1990年代にかけて激動期の混迷するイランの中で逞しく育つマルジの半生を描いた物語。

何と言っても圧倒的な画力!ほぼ全編に渡ってモノクロームなアニメーションなのですが、これが実にアイデア豊富で斬新な映像なのです。モノクロームなのに実に「カラフル」とでも言ってしまいたくなるような表情豊かな驚異的なアニメーションの世界に一気に引き込まれます。かわいらしく、どこか毒のある映像がほんとに素晴らしいです。この映画制作にあたり、相当な時間と労力を費やした事が容易に推測できるハイクオリティさです。
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そしてストーリーとしても俄然面白い。なぜそんなに面白いかというと、この主人公のマルジが反体制に憧れるロック気質なこと。イランの厳しい戒律に疑問を持ち、国内の政情悪化に怒りを覚えるロック少女であるマルジ。舞台がイギリスなら、おそらく一般的な少女の話で終わるんだろうが、マルジが生まれたのは激動期のイラン。普通が普通でない状況なのでマルジは様々なトラブルを経験し大きくなっていく。その彼女の幼少期から学校生活、留学、恋愛、失恋、帰国、結婚、離婚などの半生をユーモアたっぷりに描いており、とても愉快だが時に悲しく、そして実に共感出来るエピソードが満載。観ている人はどんどんマルジの生き方に共感していくでしょう。特にマルジと同じ音楽好きな女性には共感出来る事がたくさんあると思います(もちろん男も共感出来ます)。
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実際の作者マルジャン・サトラピは1969年生まれなので私より少し上の世代ではありますが、何たってロック好きの少女。ヘヴィメタルを聴いたり、フォークにはまったり、クラブで踊ったりと、やってることは僕らとちっとも変わりません。でも違うのは宗教戒律の厳しいイランであること。女性はヴェールを被らされ、街中でカップルで手を繋いで歩く事さえ許されない(1990年代になってさえも!)、パーティだってお酒だって禁止という抑圧された社会にいるわけなので、マルジの生き方はそれはそれは困難な事なのだが、実はそういったエピソードが気の毒ではあるが面白い。
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闇市でアイアン・メイデンのカセットを闇商人から手に入れるシーンなんてホント面白すぎる(ピンク・フロイドマイケル・ジャクソンのカセットは素通りして一発でアイアン・メイデンをゲットし、家でヘッド・バンギング!音楽が本物のアイアン・メイデンではないところがマイナス・ポイントですが・・・)。ヴェールの上から「PUNK IS NOT "DED"」と書かれたGジャンを来て怒られたり、学校で「やっぱりアバよりビー・ジーズ」とコソコソ話をしたり、また留学先のウィーンでの話が面白く友人に連れらf0045842_1211976.jpgれて行くのが、UKクラスト系のハードコア・バンドのライヴ(The Expoitedみたいなモヒカン・パンクバンド)だったり、ヒッピー系のコミュニティーに参加したり、テクノのパーティに行ったりと、音楽好きなら必ずと言っていいほど経験するようなエピソードです。マルジが一念発起して立ち上がるというシーン(映画「Team America」でいうところのモンタージュ!)では彼女が歌うサヴァイヴァーEye Of The Tigerがとても笑えます。

正直、全世界どの国でも音楽バカのやることなんて本質的に同じなんですよね。「反体制で、理屈っぽく、そのくせ実は頼りない」という性格なんて(私も含めて)みんな同じ。

そして音楽面だけでなく、この物語の芯になるのは家族の絆の物語だ。父・母・伯父・祖母などマルジを静かに見守る家族の存在が非常に重要な役割を担っている。特にマルジの祖母の、毒舌だがとても優しく含蓄のある言葉が映画を観終わった後でもじんわり心に残ります。
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この先お前はたくさんのバカに出会うだろう。そいつらに傷つけられたら自分にこう言うんだ。こんなことをするのは愚かな奴だからだって。そうすれば仕返しなんてしないで済む。恨みや復讐ほど愚かなものはないんだから。

是非とも映画館で観て欲しい素晴らしい作品です。

そして映画だけでなく原作もオススメ。2005年に日本語版(全2巻)も出版されていて、この原作が日本語で読めます。映画ではカットされているエピソードがいっぱいで、これもとても面白いので是非読んで頂きたいですね。
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ちなみに映画ではアイアン・メイデンのカセットを買いますが、原作ではキム・ワイルドのカセットを買ってます(笑)。
 
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by Blacksmoker | 2008-02-13 00:58 | 映画

映画「American Gangster」


1970年代に実在したギャングのボス、フランク・ルーカス。純度の低いヘロインが蔓延するNYで、タイから密輸した純度100%のヘロイン「Blue Magic」を異常な安値で売りさばくことで巨万の富を築きギャングの頂点に登り詰めたフランク。そして彼を追いつめる麻薬捜査班チーフのリッチー・ロバーツ。この2人を描いたリドリー・スコット監督による映画「アメリカン・ギャングスター」。主演はデンゼル・ワシントンラッセル・クロウのアカデミー主演男優賞コンビという超話題作です。
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個人的に「ゴッドファーザー」や「スカーフェイス」、「グッドフェローズ」、そして「アンタッチャブル」や「ミラーズ・クロッシング」などギャング映画(全部イタリア系じゃん!)は好きなモノが多いです。しかも今回は監督・俳優陣だけでも、もう観たくなるような豪華キャストで、公開前から異常に期待が高かったこの映画ですが、これがクラシックなクライム・アクションとしてなかなかの出来。デンゼル・ワシントンの感情を抑えた演技と、ラッセル・クロウの人情感溢れる演技の対比も見事で、その2人が初めて対峙するクライマックスはかなりのカタルシスです。
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さてそんな「アメリカン・ギャングスター」ですが、実はヒップホップやR&B好きには堪らないくらいのトピックが満載の映画なのです!

まずはデンゼル・ワシントン演じるフランク・ルーカスの弟役でコモン(写真左)が出演!最近は「いつも売れるか売れないか心配しなければいけないラッパーよりも俳優の方がいい」と身も蓋もない発言してるようで、映画出演が続いているコモンf0045842_4431067.jpg生(アリシア・キーズLike You’ll Never See Me AgainのPVにも出てましたね)。セリフは少ないながらも自然体な演技と持ち前のオーラで存在感を放っています。あと予想以上に体つきがゴツく腕とか異常に太かったのも印象的。何と言っても知性を感じさせる男前なんで、これからも映画仕事が増えるんじゃないでしょうか?モス・デフの次はコモンですかね。

そしてそのコモンの息子役でヤンキースに入ることにf0045842_4454217.jpg憧れる野球少年を演じているのが何とT.Iなんです!先日逮捕・起訴され実刑は免れないだろうというマジでヤバイ状況にあるサウスのキングがあどけなさの残る少年役というのも笑えますが、フランクに憧れて道を外し、ヤクの運び屋になり最後はあっけなく撃たれるというザコ・キャラをT.Iがフレッシュに演じています(エンド・ロールには丁寧にも「TIP Harris」の名前でクレジット!)。

そしてこの2人を差し置いて一番目立っているのがラッセル・クロウ演じるリッチー・ロバーツの麻薬捜査班の一員を演じるのウータン・クランの総帥RZA(下写真右)!
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正直RZAが出演してるなんて知らなかったので、これにはかなりビックリしましたね。しかも最後までずっと出てきます。アフロ・ヘアにサングラスでいつも無表情な役ですが、クライマックスの麻薬製造工場への突入シーンではかなり重要な役回りを演じています。細身のタイトなジーンズを着こなすファッションにも注目です。

そしてこの映画の個人的に最大の見どころは、フランクの経営すf0045842_455486.jpgるクラブで歌うシンガー役で出演しているアンソニー・ハミルトン!R&Bファンはこのシーンを大画面で観れるというだけでも観に行く価値はありますよ。白いラメのシャツを着こなすアンソニー・ハミルトンが、ダイアン・ウォーレン作のメロウ・チューンDo You Feel Meハンク・ショックリーボム・スクワッド!)作のファンク・チューンStone Coldをソウル度120%のいぶし銀ヴォーカルで披露しています。ほんとに素晴らしい声です。もっと聴かせてくれ!

さて他にもサム&デイヴHold On I’m Cominステイプル・シンガーズI’ll Take You Thereなどサザン・ソウルの名曲も印象的に使われていたりしてソウル・ファンも必見。
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そしてラスト・シーンのフランク・ルーカスが刑務所から出所するシーンで流れるのがパブリック・エネミーCan’t Truss It!この曲は1991年の曲ですが、これはフランクが実際に出所した年が1991年という時代に合わせた実に憎い選曲。チャック・Dの声が映画館に響くのが痛快です。これはやはり劇中で使われるスコアを手掛けたハンク・ショックリー繋がりでしょう。このハンク・ショックリーの手掛けたファンクなスコアもめちゃくちゃカッコイイので必聴です。JAY-Z「American Gangster」もいいと思いますが、このサウンドトラック盤(下写真)も必聴です(前述のアンソニー・ハミルトンの2曲も収録)!
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映画の内容だけでなく、音楽面でも見どころ満載ですので是非チェックして下さい!


<ここからはネタばれ>

最後に、なかなか面白かったこの映画ですが一つだけ腑に落ちないシーンがあります。それはラストで服役中のフランクリッチーに協力して悪徳警官やギャングの情報を売るシーン。いわゆるこの「チクリ」。昨今のヒップホップ界ではもはや合言葉となっている「Stop Snitching」(チクリはしない⇒いわゆる警察に仲間を売らない)。ストリートではチクリはすなわち死を意味するわけで、最近ではボディ・ガードを殺されたバスタ・ライムスもこの掟を守り沈黙を貫き、先日銃撃されたNYのラッパー、アンクル・マーダーも「警察には一切協力はしていない」と声明を出したりと、「Stop Snitching」はストリートで生きるための掟と言ってもいいでしょう。フランクのチクリによって、彼が得たものは刑期の短縮というものだったが、その代償で失ったものはあまりにも大きかったんじゃないか?今まで警察を信用しなかったフランクがあっさりと警察側に寝返るという描き方は個人的に少々不満の残るものだったかも・・・。ボディガードのチクリにより逮捕された(ハメられた)T.Iはこのラストを観てどう思ったろう?そんなわけでヒップホップ・アーティストが挙って参加しているが、実に「ヒップホップ的ではない」映画かもしれません。


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by Blacksmoker | 2008-02-02 03:58 | 映画

映画「Little Miss Sunshine」

アメリカでは公開当初は7館のみの上映だったインディペンデント映画が口コミで話題を呼び、上映館が全米各地に拡がり、おまけに2007年のアカデミー賞において作品賞を含む主要部門4部門ノミネートまでされてしまった映画「リトル・ミス・サンシャイン」
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それぞれに問題を抱えた家族が娘のミスコンに出場するため壊れかけた黄色いバンに乗ってアメリカを横断するいわゆるロード・ムーヴィー。途中で様々な苦難に遭遇する家族の面々が、次第に絆を強めていくという単純なストーリーながら、個性豊かなキャラ達が非常に良い演技をみせています。テンポ良いコミカルな流れの中に少しホロリとさせる感動を盛り込んだ温かみのあるアットホームな雰囲気がとても清々しい。最f0045842_11411549.jpg後のシーンもかなりあっさりしていて、状況的には何も解決していないんですが、「そんな日常はこれからも続いていくんだよ」と言いたげな印象的な終わり方が逆に余韻を残しています。昔のロン・ハワード監督が得意とする作風で個人的に大好きな映画でもある「バックマン家の人々」のように素敵な映画でしたね(でもオスカーには選ばれないような気もするけど)。

さて、この映画の感動的な演出に一役買っているのが音楽です。この素晴らしい音楽を抜きに「リトル・ミス・サンシャイン」は語れません。このアメリカ大陸を横断するロード・ムーヴィーのサウンドトラックを担当しているのがDeVotchka(デヴォーチカ)というバンド。
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このバンドはデンヴァー出身の4人組。現在までに3枚のアルバムをリリースしています。「デヴォーチカ」という言葉はキューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」で使われてた言葉ですね。その音楽性は、メキシコ音楽を基盤にジプシー音楽やマリアッチやタンゴをブレンドし、そこに西部劇のウェスタン風味も加えた中々素晴らしいものです。音楽性から言えば、先日のf0045842_1281260.jpg来日公演も素晴らしかったキャレキシコのような音ですね。もちろんアコーディオンやトランペットも大活躍しています。でもこのDeVotchkaキャレキシコと違う点は、まず1つはヴァイオリンの音。このヴァイオリンの哀愁のある音色がふんだんにフィーチャーされているのが特徴です。そしてもう1つの違いはヴォーカルです。DeVotchkaのヴォーカルは伸びやかではあるが粘着力のある個性的な歌声。例えて言うならデイヴィッド・バーンのような独特な声質をしています。

そのDeVotchkaがこの映画の全編にわたる音楽を担当しています。これはロード・ムーヴィーとしては最適な人選。彼らを起用した人物は相当センスが良いですね。
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映画の中で使われる音楽は、彼らの以前のアルバムからの既発曲が多いですが、インスト・ヴァージョンにアレンジされた曲と新曲「'Til The End Of Time」も収録されていてこの映画の世界を見事に創り上げています。エレクトロ調の曲から、まんまマカロニ・ウェスタンな曲、マリアッチな曲といった個性豊かな幅の広い楽曲が並んでいます。エンドロールで流れるこの映画のメインテーマ曲「How It Ends」が実に効果的に使われています。

そしてもう1つの注目は、2曲を提供したスフィアン・スティーヴンス
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スフィアンは前回紹介しましたが、この人の存在も非常に大きい。スフィアンの提供した曲「Chicago」はアメリカ50州シリーズ第2弾アルバム「イリノイ」からの曲で、これが映画の中でも実にイイ使い方をされています。もう1つの曲「No Man’s Land」も美しく優しい名曲です(これはアルバム「ジ・アヴァランチ」に収録されています)。

f0045842_12161014.jpgそして映画のハイライトともいうべきシーンで使われるのがリック・ジェイムス(右写真)の「Superfreak」 !この曲を知らない人でも、MCハマーの大ヒット曲「U Can’t Touch This」のトラックがこの「Superfreak」だと言えば分かるでしょう。この曲もサントラにはしっかり収録されています。聴くと映画の中のあのシーンが思い出されて笑えますね。そういやリック・ジェイムスって50 Cent主演の映画「Get Rich Or Die Tryin’」でもばっちりリスペクトされてましたね。さすがマリファナ魔人!

それにしてもDeVotchkaスフィアンの両者によってこの映画は実にカラフルに彩られています。これはインディペンデント映画だからこそ出来た人選で、これがメジャー配給で製作されていたなら全く違う音楽になっていたでしょう。サントラの隠れた名盤(いやもう隠れてないか)。聴いてから観ても良いし、観てから聴くのも十分楽しめるサントラです。
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是非映画と共にチェックして下さい。

ちなみにこの映画の監督ジョナサン・デイトンはミュージック・ビデオ出身の監督。

彼の今までの作品は、、、

The Smashing Pumpkins「Tonight, Tonight」
The Smashing Pumpkins「1979」
R.E.M.「Star 69」
Weezer「Say It Ain't So」
Red Hot Chili Peppers「Califolnication」
Red Hot Chili Peppers「By The Way」
Janet Jackson「Go Deep」

などなど。

なるほど、こういう人だったんですね!
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by Blacksmoker | 2007-02-08 00:01 | 映画

STOP-ROKKASHO.ORG

先日、十三の第七藝術劇場で「六ヶ所村ラプソディー」という映画を観ました。

2004年、青森県上北郡六ヶ所村に完成したプルトニウムを製造する使用済核燃料再処理工場の稼動をめぐって、賛成派も反対派も含めたそこに住む人々の「核と共存生活」を描いたドキュメンタリー映画で、それぞれに生きる道を選択した住人の心情を捉えた興味深い作品でした。
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人口1万2千人という小さな村に生きる彼らの生活は再処理工場の完成によって大きな転換を迎える。心的不安を与えられる人々、逆に再処理工場のおかげで仕事が出来た周辺住民などさまざまな立場の人が存在する。国家規模のプロジェクトに選択を余儀なくされた彼らの選択は人生を賭けた選択であり、もっと大きな視点で捉えるとこの構図は現代社会に生きる我々の生活にも少なからずあてはまる社会の縮図と言って良い。監督の鎌仲ひとみの立場はかなり「再処理工場稼動反対」という立場が強調されてましたが、なかなか面白かったです(NHKスペシャルみたいな作りでしたが)。

そして、ここに六ヶ所村再処理工場の稼動に反対するミュージシャンがいます。

坂本龍一です。
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彼は以前より六ヶ所村再処理工場に対して大きく「NO」を唱えてきた人間の一人で、彼のホームページにもリンクが張ってあったり、大学で講演会を開いたりと進んで活動している。

その彼がf0045842_14122999.gif今行っているのがプロジェクトが「Stop-Rokkasho.org」というもので、彼の提唱に賛同するアーティストがこの問題に対してプロテストするというものだ。大貫妙子や我がピーター・バラカン師匠も名を連ねている。詩人や画家なども参加しているが、やはり一番注目したいのがミュージシャン達です。サイトも立ち上がっており(かなり以前からですが)、ここではさまざまなアーティスト達のプロテスト・ソングがUPされているので注目です。

まずRokkashoというメイン・テーマとなる曲に参加したミュージシャンが凄い。「Team 6」というユニット名ですが、そのメンバーはまず坂本龍一はもちろんですが、何とあのFENNESZが参加しています!
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このオーストリア出身の電子音楽家クリスチャン・フェネス(上写真右)のソロ・ユニット。2002年にリリースされたラップトップの未来を変えたと言われる大傑作「Endless Summer」においてラップトップという表現形態の可能性を大きく切り開いた孤高の奇才。そのフェネスが参加しているのも面白いが、もう一人Shing02(下写真)もラップで参加しています。2007年はいよいよ新作がリリースされそうですが、彼の英語詩f0045842_14254838.jpgよるラップが披露されている。フェネスによるあの独特なグリッチ・ノイズの残響の中でShing02のラップが際立つ曲だ。この曲かなりイイ。この曲は[A Cappella Version]や[Piano Version]などがUPされており、どんな人でもリミックスが出来るようになっています。実は1年位前にこのサイトを訪れた時はこのRokkashoだけしかUPされていませんでしたが、久しぶりに見てみたら膨大な数の曲がUPされていてビックリ!

RokkashoのRemix Versionだけでなく、アーティストの新曲などもかなりUPされています。全然知らないアーティストの曲もいっぱいありますが、有名なミュージシャンのものを少し紹介しましょう。

f0045842_14362485.jpgまずはDJ Krush
Time To Meltという新曲が聴けます。和モノのコラージュ・サンプリングにKrush先生独特のあの硬質なスネアの音の入ったビートが言葉以上に雄弁に「NO」を物語る。最近の作品に見られるビートの延長線上ですが、やはりこのオリジネーターのビートはストイックで力強いです。


f0045842_14421981.jpgそして元JAPANミック・カーン
Chocolateという曲を提供しています。坂本龍一JAPANと言えば、やはりデイヴィッド・シルヴィアンの名が挙がりますがミック・カーンとも繋がりがあるんですね。この曲ではピアノをメインにした悲しくも美しいインスト。原発に悲しむ暗い海のような何とも言えない感情が漂っています。


青木孝允Aoki Takamasa)も曲を提供していますね。
f0045842_14434993.jpgフランス在住のラップトップ・ミュージシャン(実は大阪出身)。高木正勝とのプロジェクト「SILICOM」でも知られてますが、Her Next Morningというかなり15分以上に及ぶ長尺な曲。フェネス以降に代表される不規則なグリッチ・ノイズが飛び交う抑揚の少ない浮遊感のある深遠な曲ですね。後半にはSketch Showの曲の断片も混じってます。薄っすらと暗い朝に明るい朝日が差し込んできそうな曲ですが、朝に聴くと絶対起きれなさそうな夢のような曲。

ジャキス・モレレンバウム+坂本龍一
f0045842_1446424.jpgCASA」というアルバムで坂本龍一とはボサノヴァをやっていましたが、個人的にはカエターノ・ヴェローゾのバック・バンドで知ったチェリスト。もっと古参ボサノヴァ・ファンであればアントニオ・カルロス・ジョビンとの活動の方が有名でしょう。このIARA (Mother Of The Waters)という曲はホラー映画のサントラに入ってそうなチェロの旋律が不気味な曲。中盤に入ってくる教授のピアノにほっとするのも束の間、再び不気味な戦慄と虫の鳴く音で終焉を迎えます。

その他にもCarl StoneKangding Rayなどの電子音楽家が新曲をUPしていているので注目です。ラップトップ系の音楽が好きな人には堪らないでしょう。近藤等則SUGIZOのコラボレート曲なんてのもあります。

是非ともこれらの音楽を聴いて、同時に原発についてもいろいろ考えてみたら面白いんじゃないでしょうか。

あともう一つあわせて紹介したいのがShing02が発表した論文「僕と核」
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科学者へのインタビューとリサーチをまとめた原子力についてのレポート。かなり渾身の内容になっています。ちょっと長いですが是非一読をオススメします。ココで読めます。
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Shing02の活動にはいつも驚かされますね。ちなみにBlacksmokerは彼のドキュメンタリー映画に映った事があります。懐かしい思い出ですが。
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by Blacksmoker | 2007-01-11 00:04 | 映画

映画「Get Rich Or Die Tryin’」

ギャングスタ・ラップの時間だぜ!

f0045842_10301199.jpg50セントが初めて主演したギャングスタ・ムーヴィー「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」。50セントが映画初主演というだけでBなヘッズはマストですが、普通の人でももう余計な事は何も考えずに観に行けるギャングスタ・ムーヴィーです!エミネムの「8マイル」のように、50セントが自分の半生を映画化したものだ。もちろん映画なのでフィクションも多々あるだろうが、大筋ではこのギャングスタの人生をしっかり描いている。実際に9発の銃弾を喰らっても生きていた50セント。そのシーンもちゃんと登場します。監督が何とジム・シェリダン。「マイ・レフト・フット」とか「父の祈りを」とかあの重厚で素晴らしい作品を監督した人で、50セントとどう繋がりがあるのか全く分かりませんが、こんな人が監督とは意外だ。

さて、内容はもちろん典型的なギャングスタもの!スラムで育ったマーカス少年(50セント)が、母親が殺され、ドラッグf0045842_10313533.jpgディーラーに身を落とし、刑務所に入れられ、ラッパーに目覚め、銃で撃たれ瀕死の重症を負い、そこから復活するという何のひねりもないギャングスタ・ムーヴィーです。そこに幼い頃からの憧れの女性とのロマンスを入れ実に分かりやすい内容になっています。

ストーリーはともかくとして、面白いシーンがふんだんにあります。なぜ50セントがあんな独特なラップなのかも分かるし、9発の銃弾を喰らったシーンもなかなか壮絶。顔面を撃たれるとこなんて強烈だし、当時の社会問題となったクラックが生成されるシーンもあって興味深い。細かい音楽ネタも豊富で50セントの家にマリファナ魔人リック・ジェイムスの切り抜きが何年も張ってあるのが笑えるし(大きくなったマーカス少年の部屋にはGANG STARRのポスターが張ってある)、幼い頃のマーカス少年がラップをするのがブギ・ダウン・プロダクションの「South Bronx」だったり、KRSワンをネタにした会話もあるし、たしかエミネムも一瞬出てたような気も・・・。

f0045842_10345478.jpgとくに50セントのラップがどれだけ過激で危ないのかがしっかり分かります。昨年の2ndアルバム「The Massacre」に入ってる「Piggy Bank」もファット・ジョーやジェイダキッスやDMXを実名入りでディスしまくってて話題になりましたが、映画でも命の危険に晒されても危ないラップを披露するシーンもありました。おまけに自分だけでなく家族や仲間も命の危険に晒されるので周りも迷惑極まりないでしょうね。それでも信念を貫いて突き進む根性が凄いです。

最後に、この映画の中でエロネタのラップをしているマーカス少年に母親が「女性はちゃんと扱いなさい!」ときつく叱るシーンがあって、そういう考えも盛り込まれているのかと思いきや、マーカスの恋人となる女性が当初ギャングスタやラッパーを気嫌いしていたくせにクラブでは思いっきりビッチな格好してたり(下写真)、銃撃を受けて自宅静養中のマーカスに「こんな生活耐えられない!」と言い出してギャングスタ・ラッパーに戻るようにけしかけたりと良く分からない描かれ方でした。まあギャングスタだし関係ないか・・・。
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f0045842_10473265.jpg最近はモブ・ディープM.O.P.も加入し巨大化するG-UNITですが、トニー・イェイヨーのアルバムもセールス的にはイマイチで、ザ・ゲームとの内紛もあったり、オリヴィアのアルバム・リリースも一向に目処が立っていない状況。焦った50が自身の新作をリリースしようとしてボスのエミネムに怒られたりとあまり良い話を聞かないのが気になります。新作をリリースしたばかりのモブ・ディープも大ヒットするカンジもなさそうだし・・・。早くも正念場に立たされているとの見方もあるが、もう一度体勢を立て直してチャートを賑わして欲しいですね。

ちなみに50セントは1975年生まれの30歳。俺と同い年じゃん!すげぇーな。
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by Blacksmoker | 2006-06-23 00:15 | 映画

映画 「Walk The Line」

2003年に他界したジョニー・キャッシュ とその妻ジューン・カーターの自伝映画「Walk The Line」

f0045842_044442.jpg何でも今年度アカデミー賞主演男優賞&女優賞など5部門にノミネートされているそうで、昨年の「Ray」を思い出します。主演はジョニー役にホアキン・フェニックス、ジューン役にリーズ・ウィザースプーンという配役。二人ともあまりよく知りませんでしたが(リヴァー・フェニックスの弟くらいの認識)、かなりの好演です。まあ似てる似てないかという二元論でいうとジェイミー・フォックス「Ray」で自伝映画のハードルを上げてしまったせいか「あまり似てない」という結論になりますが、何でも彼らは歌に関しては全くの素人だったようで、必死に特訓を積んで劇中の演奏シーンや歌は全部自分で演じれるようになったらしく、その役者ぶりには頭が下がります。特にジューン・カーターを演じるリーズ・ウィザースプーンの歌のうまさには驚きです。とても初めて歌ったとは思えません。ホアキン・フェニックスも熱演ですが、やはりジョニー・キャッシュのあの低音ボイスを再現するには今一歩低くなりきれていませんでしたね。
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さてストーリーですが非常に単純明快。 出会い別れヤク中リハビリ復帰復縁というハリウッド王道スタイル。正直「Ray」 とどう違うのか分からないくらいのストーリー展開です。まあそれは置いといてジョニー・キャッシュやカントリー・ミュージックが好きならニヤリとするシーンが満載です。サン・レコードにオーディションを受けに行くシーンや、ジェリー・リー・ルイスエルヴィス・プレスリーとツアーを回るシーンも面白い(ちなみにジョニーにドラッグを渡すのはプレスリーという設定が笑える)。ディランも話題にでてくるし、ジューンの母親でカーター・ファミリーの一員メイベル・カーターも登場するというカントリー・ファンにはたまらないシーンが楽しいです。

そしてこの映画のハイライトはなんといっても1968年の「フォルサム刑務所」でのコンサート模様。ジョニー・キャッシュのあのライブの名盤「At Folsom Prison」の再現です。映画をまだ観ていない人はこの名盤を先にチェックしてから映画を観てください。 そうすればかなり楽しめます。 「このショウはレコーディングされてリリースされるので、あまりHellとかShitとか言わないでくれよ。」 と囚人に言うセリフなんかレコードのまんまで、観ていてニヤリ。横でジューンが見守っているところなんて写真とそっくりです。 しかしちょっと気になったんですが、f0045842_0542674.jpg映画ではこの「フォルサム刑務所」のステージが何か小さいのだ。実際当時の写真とか見るとかなりデカいステージなのだが映画だと結構小さい。せっかくの大事なシーンなのにここはしっかり再現して欲しかった。



映画の出来としてはあまりにも短絡的なストーリー展開とか人物像の掘り下げなどもう一歩ですが純粋にキャッシュが好きならめちゃくちゃ楽しい映画です。f0045842_123065.jpg観れば必ず「At Folsom Prison」(左写真)が聴きたくなるでしょう。そしてジョニー・キャッシュばかりに注目が行くがジューン・カーター・キャッシュ も素晴らしいカントリー・シンガーです(なんせあのカーター・ファミリーの娘ですからね)。
2005年にコロンビア・レコードが出した彼女の数ある代表曲を網羅した2枚組「Keep On The Sunny Side : June Carter Cash- Her Life In Music」 (下写真)f0045842_133589.jpgが内容・装丁ともに素晴らしいのでこっちも是非聴いて下さい。映画の中でも使われている二人のデュエット曲もちゃんと収録されています。ちなみに最近私がよく行くカントリー/ブルーグラスその道45年の老舗レコード店「B.O.M.」のオッサンも「あのCDはホントに良くできてるよ。」 と褒めてましたね。貴重な写真も多数見れますので是非チェックして下さい。
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by Blacksmoker | 2006-02-27 01:10 | 映画