カテゴリ:ELECTRONICA( 13 )

V.A. [7x7 Beat]


前々回紹介したThe Gaslamp Killer、そして前回紹介したHudson Mohawkeと、「Flying Lotus以降」のビートメイカーを紹介してきましたが、まだまだアンダーグランウドではとてつもない才能が眠っている。

じゃあ、どれを聴けばいいの?」、「一体どんなヤツらがいるんだ?」と思う人も多いでしょう。そんな人達に是非聴いてもらいたいのが、この「7x7 Beat」

f0045842_038016.jpgアイルランドのダブリンに拠点を置くレーベル「All City」がリリースするこのアルバム。ここで聴けるのは次世代を担う気鋭のビートメイカー達による最新のトラックばかり。これを聴くと確実に地殻変動が起きているのが分かります。

実はこの企画は、次世代を担う選ばれた7組のビートメイカー達が、自分の音源を7inchレコードというメディアを通して順々にリリースしていく企画。その名も「Beatstrumental」。そして、このシリーズの全音源をコンパイルしたものが、この本作「7x7 Beat」だ。今や入手が困難なシリーズもあるので、こうやってCDとしてまとめて聴けるのは非常にありがたい。

f0045842_0451350.jpgまずオープニングを飾る#1はLA在住のSnowman(右写真)。Fat CityレーベルのJack Sample Professionalsの一員として活躍する男ですが、今作ではファンキーでファットな生音系のドープなインストゥルメンタル・ヒップホップStreet Corner Music(ナイスなタイトル!)。さらには、もの悲しいディストピア的な近未来エレクトロ・ヒップホップRiseの2曲を提供しています。どちらもネタ感バリバリのヒップホップ・ビートですね。

そして次の#2Blacksmokerが最も注目している男、Mike Slott(下写真)の登場。
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グラスゴー出身。同郷のHudson Mohawkeと共にHeralds Of Changeを組んでいた相棒です。Hudson Mohawke「Polyfolk Dance」よりも、さらに重心を低くしたビートに、温かみのある煌びやかなシンセの人懐っこいサウンドが最高です。近未来的だがアナログ的でもあるパラレルな世界観が完全にオリジナル!今後もこの男からは目が離せないですね。

f0045842_1122819.jpgそして#3は個人的に今シリーズにおけるハイライト。フランスはパリ在住のFulgeance(フルジェンス)による、ねじれまくったエレクトロニック・サウンドRevenge Of The Nerd。分裂症気味なシンセのフレーズにクラップ・ビートが妙なドライヴ感を持って疾走するマッドな1曲。この曲はヤバイ!超クセになりますね。個人的には、このアルバムの中のベストトラック。次のトラックThe Mamieは完全にBPMを落としたダウンビート。こちらもクラップ・ビートでかなりドープ。Fulgeanceヤバイです。



#4はスペインのMweslee(ウェズリー)。
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インダストリアルなマシンビートにブリブリにヘヴィなシンセベースが唸りまくるシンフォニックなChandal 500。そしてソウルフルなコズミック・マシーン・ファンクJamas Jame Jamonと激ヤバな出来。Mwesleeはこのシリーズ最大の発見かも。

#5はフランスのLeneko。スペーシーで浮遊感のあるシンセにストイックなヒップホップ・ビートが融合した曲がなかなかイイですね。

そして#6は全ビートメイカーが注目するHudson Mohawke(右写真)の新曲が登場。他のビートメイカー達が2曲ずつ提供しているf0045842_1212532.jpgのに対し、彼だけが3曲も提供しているのはやはり注目度の高さでしょうか。しかし、この3曲でHudson Mohawkeが見せるのは「Polyfolk Dance」でのサウンドを期待する人を遥か彼方に置き去りにするサウンド。もはやHudson Mohawke「Polyfolk Dance」の地点にはもういないのか?完全に進化したビートを提示しています。ノンビート(!!)で、女性の声とグリッチ・ノイズとシンセだけで構成されたStar Crackout、さらにはグリッチ・ノイズの海に幽かに心臓の鼓動のようなビートが聴こえるRoot Hands、そしてクリック・ハウスのごときストイックなEverything Else Is Wrongと、全く新しいHudson Mohawke像を見せ付けられます。これはかなりの衝撃です。問題作と言ってもいいでしょう。

最後を飾る#7には、こちらも注目度の高いヴェトナム系フランス人のOnra(下写真)。
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かつてはヴェトナムで買い込んだレコードのみでビートを作った事もある奇才ビートメイカー。このビートの完成度の高さはハンパない。Maxwellにでも歌ってもらいたいほどのディープでソウルフルな極上のインスト・ヒップホップ・ビートです。このOnraも要注目です。

#7で終わりかと思いきや、最後に#0として収録されているのがスイスのDimlite!(左写真)Sonar Kollktivレーベルが誇るダウンビートの天才ビートメイカー。最f0045842_1283898.jpg近はRitornell(1stアルバム、ムチャクチャ良いです!)やPrefuse 73、そしてFlying Lotusのリミックスを手掛けて活動的になってきているDimliteのかなりヤバイ新曲Quiz Tears。ねじれまくったビートに、エフェクトかけまくったヴォーカルが被さるとんでもないイルな曲。これ、最後を締めくくるにはあまりにも変わった曲ですね。

どのアーティストも「ヒップホップ」でありながら、その枠に留まろうとせず果敢にその枠を飛び越えていこうとする明確な意志と主張がしっかり感じられます。その成果は自身で聴いてみて判断して欲しいが、そこに内包されるアーティストのパワーは充分過ぎるほどにアツイです。

ちなみに7inchシリーズのジャケットが、アフロなカンジでめちゃくちゃカッコイイので(Balck Jazzレーベルのジャケットみたい)、マニアは是非7inchで集めて下さい。ちなみに下写真がそのジャケットです!

#1 Snowman
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#2 Mike Slott
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#3 Fulgeance
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#4 Mweslee
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#5 Leneko
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#6 Hudson Mohawke
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#7 Onra
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#0 Dimlite
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今後のシーンを担うであろう若き才能を是非チェックしてみて欲しいです!

  
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by Blacksmoker | 2009-09-14 00:10 | ELECTRONICA

HUDSON MOHAWKE [Polyfolk Dance]


前回紹介したThe Gaslamp Killer「Flying Lotus以降」のビートメイカーの中でも異端なのに対して、こちらはその系譜を受け継ぐ正統的後継者と言ってもいいでしょう。

スコットランドのグラスゴー出身のHudson Mohawke
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この男は間違いなく「Flying Lotus以降」のビートメイカーの中でも最重要人物だろう。LAでもロンドンでもなく、スコットランドのグラスゴーというのがなかなか面白いが、最近ではRusiteや、Mike SlottHeralds Of ChangeHudson Mohawkeと一緒に組んでいる)など要注目のビートメイカーがこのグラスゴーから出て来ているのはとても興味深い。
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まずはこのHudson Mohawkeとはどんな男なのか?わずか7歳でレイヴの洗礼を受け、10歳で初のミックステープを学校で売り捌き、12歳でプレイステーションのみ作曲を始め、14歳でターンテーブル世界大会のDMCとITFで史上最年少チャンピオンに輝くという(ホントかウソか分からんけど・・・)トンでもない超早熟な男みたいです。しかも2007年には既にMike Slottと共にHeralds Of Change「Puzzle」「Secrets」という傑作EPを連発していましたので、そのクリエイティヴィティはとてつもないです。

f0045842_2031755.jpgそのHudson MohawkeのデビューEPとなる「Polyfolk Dance」。何と「Warp」レーベルからリリース。これは「Flying Lotus以降」を語る上でハズす事の出来ない重要作です。

この音を一言で表すなら「ブッ壊れたエレクトリカル・パレード」。ヒップホップ的ビートの上に、切り刻まれたシンセサイザーのファニーで狂った上モノが煌びやかに散りばめられた不可思議なポップ・サウンド。一度聴くと相当クセになりますね。

そしてこのEPを聴いて、真っ先に思い浮かべるのがAphex Twinだろう。この独特のサウンドは明らかにAphex Twin(下写真)の影響下にあるサウンドだ。
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ここ数年に渡ってシーンに長らく不在にも関わらず、90年代にAphex Twinの影響を受けたアーティスト達がシーンに登場する事によりAphex Twinの存在や影響力はますます巨大になっているように思えます。(先日のSummer Sonic 09でもトリで凄いパフォーマンスを見せていました。)「I Care Because You Do」「Selected Ambient Works」「Classics」など、90年代中期の作品にも関わらず全く色褪せていないのが凄いです。

そしてこのHudson Mohawkeも、Aphex Twin、さらにはμ-ziqReflexの頃の)、そしてSquarepusherといったアーティストの偏狂的サウンドに思いっきり影響されているのが如実に分かります。だからと言ってフォロワーではないのはHeralds Of Change時代から証明されていますが、Hudson Mohawkeのこだわるのはあくまで「ヒップホップ」。その枠にあえて自分を落とし込み、そこからどこまで自由に逸脱できるかに挑戦している。そしてその挑戦は見事なまでの成果を見せていると言っても良いでしょう。
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特にA面の3曲の素晴らしさが全てを象徴している。1曲目Polkadot Blues(ちなみにこの曲は2007年リリースのHeralds Of Changeの曲Rock With YouのインストVer.ですね)、さらにはメルヘンなMonde、そして性急なビートにホーンを絡め、細切れに分断された女性シンガーの声をサンプリングしたOvernightなどは圧巻です。B面に収録されているモロにAphex TwinVelvet PeelYonardなども最高です。

全6曲のEPながら実にクリエイティヴィティ溢れる圧倒的な内容。感性を刺激してくれるポップで楽しいサウンドです。そしてFlying Lotusに続き、またも「Warp」レーベルの心眼の鋭さを証明する1枚になりそうです。
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11月に「Warp」20周年を記念して幕張で開催される「エレクトラグライド」に、BattlesFlying LotusClarkらと共に来日するHudson Mohawke。これは絶対に要チェックです!

ちなみにHudson Mohawkeって名前は、ブルース・ウィリスが主演した映画「ハドソン・ホーク」とは関係ないんですよね?
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by Blacksmoker | 2009-09-10 00:13 | ELECTRONICA

THE GASLAMP KILLER [My Troubled Mind]


本当に「Flying Lotus以降」というカテゴリーまで作ってしまったFlying Lotusの1stアルバム「Los Angeles」

これは全てのビートメイカー達の新たな指標として捉えられることになった革新的なアルバムですが、時代はまだまだ変化します。これ以降も新たな才能が続々と生まれているのです。その中で今最も注目を受け、さらには一際異彩を放つのがこのThe Gaslamp Killer
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Flying LotusDaedelusらを輩出したことでも有名な、毎週水曜日にダウンタウンLAで開催されている人気パーティ「Low End Theory」のレジデントでもあるこのThe Gaslamp Killer。その正体はウィリアム・ベンズーセンのソロ・ユニット。
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彼がなぜこんなに注目を浴びているかは、2008年に出たThe Gaslamp KillerのMix CD「I Spit On Your Grave」を聴いてみればその理由が分かる。一言で表すなら「カオス」。サイケデリック音楽から、ジャズ、民族音楽、ダブ、B級ホラー映画音楽などをブチ込んでミックスしたとんでもなくアンダーグラウンドでヤバいMix CDなんです(OBEYによるアートワークもヤバい!)。さらに実際のDJプレイも凄いらしく、一度映像を観た事があるんですが、DJしながら暴れまわる野獣みたいな姿がかなり凄かったです。ちなみに彼はMF DoomのバックDJも務めたことがあるらしいです。

f0045842_2241367.jpgそんなThe Gaslamp Killerの初オリジナル音源となるEP「My Troubled Mind」が遂に登場。2000枚限定の10インチ・アナログ盤とデジタル配信の形態のみでのリリースみたいですね。

A面に3曲、そしてB面に4曲収録されていますが、それぞれの面にイントロが入っているので純粋な曲としては5曲しかありません。ですが、これがもう何とも形容しがたい実にヤバイ1枚。

Flying Lotus以降で語られるビートメイカーではありますが、その音は完全にその系譜から外れています。全くの異端。完璧なレフトフィールド。Mix CD「I Spit On Your Grave」で見せたあの「カオス」ぶりが如実に音に表われている。
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イントロに続くAnything Worseからしてその「カオス」ぶりは凄い事になっています。シンプルなドラムのビートにホラー映画のような不気味な効果音。基本のビートはずっと同じなんですが、ドラムが急に速くなったり、ドラムの音がエフェクトやイコライザーで次々に変化していったり、猥雑なホーンのサンプリング音が入ってきたり、最後は50年代のSF映画のようなチープな効果音になったりと、ぐるぐる音が変化していく様はサイケデリックそのものです。

その他にもシタールが怪しく鳴り響き、ダブっぽいSEが四方八方に飛びまくる曲や、タブラが鳴る曲や、ラウンジっぽいジャズのような曲(なぜか最後にマニアックな60年代フォークソングのサンプリングが挿入される)と、もう見事なまでのカオスぶり。無国籍で、アシッドで、サイケデリック。それを野獣のようなワイルドさでもって強引に1つのレコードに収めたようなEP。おそらく日本でならKiller Bongが最も近い存在ではないでしょうか。
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しかし、ただカオスなだけではなく、その音からは絶妙なセンスの良さが漂っている。狂人のようでいて、実は非常に頭の良い男なんだと思いますね。とてつもない野獣です。

決して時代を象徴する音ではないし、ましてや新しい潮流を生み出すようなアーティストではないですが、この完璧なまでの自由で奔放なアンダーグラウンドな音は、確実にビートジャンキーどもの心を捉えて放さないでしょう。レフトフィールドな異端の音楽。是非そのサイケデリアを体験して下さい。

     
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by Blacksmoker | 2009-09-07 00:13 | ELECTRONICA

FENNESZ [Black Sea]


f0045842_1392956.jpg「Endless Summer」(2001年)、そして「Venice」(2004年)。フェネスはどこか儚くも美しいものをそのグリッチ・ノイズで表現してきましたが、久々となる今回の新作のタイトルは「Black Sea」。今までの美しいイメージとは一転して「広大で不気味なもの」をモチーフにしている。

そして今作は非常に政治的である。タイトルの「Black Sea」とは、ジャケットに写る「黒海」の事。昨年からこの海の沿岸ではロシアがグルジアに侵攻し全面戦争となっている(1曲目Black Seaの冒頭にはカモメの鳴き声と共に砲撃の音が聴こえる)。さらに最終曲のタイトルSaffron Revolution。これは2007年のミャンマー軍事政権に対する僧侶による反政府デモ「サフラン革命」の事だ。今回のフェネスは、今までの抽象的な音像表現と違い、そのサウンドに具体的な意思を表明している。
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この変化はおそらく坂本龍一からの影響だろう。

2006年の青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設建設に反対する「Stop-Rokkasho」プロジェクトに坂本龍一(下写真)やShing02と共に参加したフェネス。それ以降も教授との関わりは深く2007年には「Fennesz + Sakamoto」名義でEP「Sala Santa Cecilia」、そしてアルバム「Cendre」をリf0045842_1472868.jpgリース。さらには2008年のYMOの海外ツアーに同行したりもしている。そして、何とこの新作「Black Sea」はその坂本龍一の立ち上げたレーベル「Commons」からのリリースなのです(3月にリリースされる教授の新作にも参加しているみたいですね)。今回の新作の内容が、地球規模の環境問題や戦争へのプロテスト運動(アメリカのアフガニスタン空爆への反対運動や、地雷撤廃運動などなど)の先導に立つ教授から多分に影響されているのは間違いないでしょう。抽象的なものを表現するフェネスのサウンドに明確な意思が盛り込まれたのは非常に大きな変化といえる。
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そして今作は以前の作品に比べて、よりクリスチャン・フェネスという1人のギタリスト的な側面も垣間見せているのも特徴だろう。たしかにフェネスはラップトップ・ミュージックに移行するまではウィーンでロック・バンドのギタリストだった経歴があるし、2004年に京都メトロで私が初めて観たフェネスのライヴ(共演はRadian)はMac G4にギターをそのまま差して演奏していてとても印象的でした。前作「Venice」ではLagunaという曲でギターのソロ演奏が聴けたのみでしたが、今作では全8f0045842_151476.jpg曲中、Black SeaPerfume For WinterGrey Scale、そしてGlass Ceilingの4曲でギターの演奏(もしくはサンプル)が聴ける。ただその音は「Endless Summer」であったようなメランコリックなアコースティック・ギターの音色ではなく、どこまでもモノクロームなドローン色の強いギターの音色。アルバム全体を通してもモノクロームな印象が強いです。

基本路線はあまり変わりませんが、今回はテーマに沿ってかその空間を埋め尽くすグリッチ・ノイズにもまるで近代の巨大建築物のような荘厳さが加わって圧倒的な存在感で迫ってきます。そして隙間を活かした曲ではよりアンビエント色が増しています。Glass Ceilingの透明感のあるノイズの洪水、そして終曲Saffron Revolutionでのゴスペル的ともいえる荘厳なノイズは時間を忘れてしまうほどの美しさです。
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「Endless Summer」の登場以降、グリッチ・ノイズがメロディを構成する主要な要素となるのがもはやスタンダードとなった音楽界。その先駆者とも言えるフェネスは、この新作で明確な意思を内蔵したグリッチ・ノイズを構成することで更なる高みに昇ったと言えるでしょう。サウンドだけでなくCDジャケットの写真からインナーの写真、そしてアナログ盤のジャケットに至るまで非常に力強く、そして美しい作品だ。素晴らしい。

ちなみにこの作品はカーボン・オフセットCDだそうです。
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by Blacksmoker | 2009-02-19 01:03 | ELECTRONICA

2562 [Aerial]


Techno Dread

これは2562の、もはやクラシックと化している曲のタイトルだが(先日行った関西随一のダブステップ・パーティ「Dubstep Rude」でもバッチリかかっていました)、このタイトルほど的確に2562のサウンドを言い表わしている言葉はない。

f0045842_810889.jpgテクノとレゲエ/ダブ。この2つの要素がかなりミニマルな次元で融合したハイクオリティでディープなダブステップ・サウンド。2562の待望のフル・アルバム「Aerial」はまさしくダブステップの新たな時代の幕開けを宣言する革新的なサウンドだ。これは確実に2008年を代表する1枚です。

この2562とはオランダのハーグ出身のサウンド・クリエイター、デイヴ・ハウスマンズによるソロ・プロジェクト。彼は他にも様々な名義で活動しておりDogdaze名義ではブレイクビーツ、そしてA Made Up Sound名義ではダウンビートなど、名義によってサウンド・スタイルを変えて活動している。そして、そのデイヴ・ハウスマンズが最も力を入れているのが、この2562
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ちなみにこの2562というのはオランダのハーグの地区コードを表しているらしいです。本作はブリストルのダブステップのパイオニアの一人Pinchが主宰するレーベル「Tectonic」からのリリースというのも要注目ですね(ちなみにPinchの1stアルバム「Underwater Dancehall」も傑作!)。

さて本作は2007年に既にTectonicからアナログ盤でリリースされていたChannel TwoTechno Dread(左写真)、そf0045842_812242.jpgしてKameleonという3枚のクラシック・シングルを含んだ10曲入り。共にダブの深遠なベースラインにダブステップ特有のビートが絡むディープなナンバー。従来のダブステップよりももっとミニマル・テクノに近い感触があり、ジェフ・ミルズのようなハードでストイックなビートと、ダブの超低周波でスピーカーをビリビリ揺らす低音が融合し緊迫感を保ちながらも浮遊感を演出する何とも不思議なこのサウンドが気持ち良過ぎます。(隣人への嫌がらせにはこのアルバムの低周波攻撃は殺人的な効果を発揮するでしょう。)

随所にレゲエ/ダブへの愛情を感じるのもこの2562の特徴。Moog DubBasin Dubといったタイトルには当然のことながら、そのサウンドの根幹は思いっきりレゲエだ。テクノ側からのレゲエへのアプローチと言っていいだろう。

そしてChannel Two。これはタイトルからしてもうレゲエの名門レーベル「Channel One」へのオマージュでしょうが、サウンドの方も「Channel One」が得意としていたドラムのミリタント・ビートを導入しているのが良い。ちゃんと“分かっている”人ですね。
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そして前述のTechno Dread。これはまさにクラシック。不穏で性急なビートに、恐ろしいくらいディープなベースラインの唸るミニマル・テクノ寄りの曲。乱れ飛ぶダブ処理されたサウンド・エフェクトがかなり効きます。タイトルも最高にクール。GreyscaleThe Timesといった曲ではさらに新境地を見せ、隙間を空けまくった超ミニマルなダブが空間を侵食する中毒性の高いナンバーには確実にヤラれますね。

革新的なサウンドが静かに爆発しているこの2562の1stフル・アルバム「Aerial」。是非とも体感して欲しいです。

ちなみにコチラで、2562による45分のDJミックスExclusive Dubplate Mixが聴けます。前述した2562Moog DubTechno Dreadなどもバッチリ収録された貴重なミックスなので是非ダウンロードして聴いてみて下さい。
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[Track List]

1.Pinch - Emo / Dub
2.2562 - Moog Dub / Tectonic
3.2562 - resistance dub / dub
4.Martin Buttrich - Well Done (Headhunter Mix) / Four Twenty
5.Headhunter - Grounded / Dub
6.SMD - I Believe (Pinch Remix) / White
7.Peverelist - On & On / Dub
8.2562 - Enforcers / Tectonic
9.s.u.a.d. - Epileptic (Martyn Remix) / Dub
10.2562 - Techno Dread / Tectonic
11.TRG - 2084 / Dub
12.Shed - Masque (A Made Up Sound refix) / Soloaction

 
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by Blacksmoker | 2008-07-27 00:35 | ELECTRONICA

FLYING LOTUS [Los Angeles]


新たなる才能。

f0045842_22261044.jpgこれは次世代エレクトロニカか?ヒップホップのNextレベルか?その両方をも内包する孤高のサウンド・クリエイター、Flying Lotus。LA出身の25歳、スティーヴン・エリソンによるソロ・ユニットであるFlying Lotusの新作「Los Angeles」がイギリスのテクノ・レーベルの名門「Warp」からのリリース。個人的には2007年に、同じ「Warp」からリリースされたBattlesの1stアルバム「Mirrored」以来の衝撃です。

ビート・ジャンキー達は挙ってFlying Lotusを「ポスト・Jディラ」的存在として捉えているようだが、Flying Lotusのビートはサンプリング主体ではなくあくまでデジタル主体。
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たしかにドラムのビートの強度はヒップホップ的だが、Flying Lotusの場合はどちらかと言うとエレクトロニカからヒップホップへ接近したサウンドで、個人的にはJ・ディラというよりスコット・ヘレンPrefuse 73に近い存在だ。(Prefuse 73の2005年のアルバム「Surrounded By Silence」も多数のラッパーを迎えたヒップホップ・アルバムでしたね。)

しかしPrefuse 73と違って、Flying Lotusのサウンドはもっとダークでありサイケデリックであり、もっと近未来的。

近未来的」というと誰もが「ブレードランナー」の世界観を思い浮かべると思いますが、確かにそういう世界観も十分にありますが、それ以外にも個人的には「バットマン」のゴッサム・シティのようなダークな雰囲気や、「マトリックス」のザイオンのようなフューチャリスティックでありながらも退廃的な雰囲気も感じます。いずれも映像を喚起させるサウンドです。
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CamelMelt!といったトライバル・ビートを採り入れたダークでサイケデリックなインストゥルメンタル曲などはかなりクセになります。その他に注目なのはアリス・コルトレーンのハープをサンプリングしたAuntie's Harp。実はアリス・コルトレーンは彼の叔母にあたるようで、この曲は2007年1月に亡くなったその叔母であるアリス・コルトレーンに捧げられている。
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そしてビートの面白さも革新的ですが、Flying Lotusが今後ヒップホップやR&B界でJ・ディラSa-Ra Creative Partnersのような存在がなりうるかは彼の作るビートとボーカルの相性の良さが問われるでしょう。その意味において3曲のボーカル曲はより注目。

Dollyという女性ボーカルを迎えたRobertaflackや、Laura Dalingtonという女性シンガーを迎えたAuntie’s Lock / Infinitumでは浮遊感のある幽玄なサイケデリックなエレクトロ・フォークがとても美しく、ボーカルとの相性も良いように思えます(ヒップホップやソウルっぽい曲ではないですが・・・)。ただJ・ディf0045842_22322834.jpgSa-Ra Creative Partnersのようなネタ感のあるサンプリングの黒いソウル度はほとんどないので、その点が今後R&Bシンガーとの仕事が増えるかどうかの課題でしょう(余計なお世話か・・・)。The Gaslamp Killerとのコラボレーションでも知られるシンガーGonja Sufi(左写真)のスモーキーな歌声をフィーチャリングした唯一黒いフィーリングを聴かせるナンバーTestamentのダーク・ソウル感はかなり痺れますよ。

全17曲。ジャンルを拒否する新たな刺激的サウンドの詰まったFlying Lotus「Los ngeles」。日本人の想像するLAのイメージではなく、LAに住むスティーヴン・エリソンなりのLA感を具現化したサウンド・オマージュ。LAという街の裏側を見事に捉えた作品です。
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実に映像的であり、フューチャリスティックなビートが素晴らしい2008年度要注目作。ダークでサイケデリックなサウンドに是非耽溺して頂きたい。
 
 
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by Blacksmoker | 2008-06-23 00:13 | ELECTRONICA

DAVID SYLVIAN [When Loud Weather Buffeted NAOSHIMA]


瀬戸内海に浮かぶ離島「直島」に滞在してました。
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過疎化の進む小さな島に現代美術作品やインスタレーションなど様々な芸術活動を展開し、世界的に有名な「アート・アイランド」として再生した直島。島に残る自然と現代アートの見事な融合が素晴らしく、島民の人達の独特な時間の流れも相まって、この島だけ時間が止まっているような錯覚に陥ります。
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安藤忠雄の建築した「地中美術館」や「ハウスミュージアム」、「OVAL」、そしてSANAAによって設計された「海の駅」など素晴らしい建物も圧巻ですが、それ以上に印象的なのが「本村地区」という古い村の中に、既存の建物を使って展開される「家プロジェクト」。

由緒ある古い街並みという「日常」の空間の中に突如として現出する「非日常」の空間。これがほんとに面白い。そしてそのアートの数々を丁寧に親身になって説明してくれるのが全て島民の人たちというのが素敵です。いかにこれらの作品が彼らに愛されているのかが分かります。

その中で直島では2006年10月と2007年2月に「Naoshima Standard2」という展覧会が行われたのですが、そこに参加したアーティストの中の1人がデヴィッド・シルヴィアン
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この人はソロ以降の作品が本当に魅力的だ。特に自身のレーベル「Samadhisound」を立ち上げてからが特に面白く、即興ギタリストのデレク・ベイリーや、ラップトップ・アーティストのフェネス、さらには日本の高木正勝らとのコラボレーションなど、そして新バンドのNine Horsesのアルバムなど刺激的な作品を展開してくれている。
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Samadhisoundからは他にもデレク・ベイリーの作品や、自身のアルバム「Blemish」Nine HorsesのアルバムのRemix盤も出ていて必聴です。

今回、デヴィッド・シルヴィアンが「Naoshima Standard2」に提供したのは「When Loud Wf0045842_050755.jpgeather Buffeted NAOSHIMA」と名付けられた作品(右写真)。これは冬の時期に直島を訪れたデヴィッド・シルヴィアンが暴風雨に晒される直島をイメージして作られたサウンド・インスタレーション作品で、当時は「Naoshima Standard2」を訪れた人にiPodが貸し出され、この作品を聴きながら直島の街を歩く事が出来たそうです(その時に行ってみたかったですね)。

直島に滞在し、シルヴィアン自身が自らフィールド・レコーディングした風の音や鳥の声、雨の音など様々なサウンドがコラージュされた作品で今回SamadhisoundからリリースされたCD盤の方では実際の展示作品に手が加えられたものになっているそうです。シルヴィアン以外に数人のミュージシャンが参加しています。そこにはフェネス、ノルウェーのSupersilentのトランペット奏者アルヴェ・ヘンリクセン(下写真)といったもの凄い面子が名を連ねています。
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その他にも尺八奏者のクリーヴ・ベル(下写真)、そして作曲家のアキラ・ラブレーといういずれもクセ者ばかりです。
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内容ですが、全1曲70分21秒のサウンド・コラージュ。曲として一定のリズムがあるわけでもなく、細切れにされた音が連続する。時折現れるフェネス(下写真)による美しいグリッチ・ノイズ。クリーヴ・ベルによる尺八。そして消え入りそうなファルセットの歌声の断片などが更に不思議な雰囲気で、一種のアンビエント作品と言ってもいいでしょう。
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インナー写真には暴風雨にさらされる海辺の家のモノクローム写真が1枚あるだけだが、鶴見幸代によるアートワークなども含めて不気味で幻想的な雰囲気を持っている。直島に残る昔ながらの自然信仰(天変地異も含めて)の尊さ、そしてそれと同時に畏敬の念が表現されているようにも思えます。
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一度でも直島に行ったことのある人ならば、あの島の風景を思い出しながら聴くとより楽しめる作品。個人的には直島に滞在していた時は非常に天候に恵まれていたので、雨の吹き荒ぶ状況が想像し辛いですが・・・。

いつかはそういう天候の時に、この作品を聴きながら直島を歩いてみたいものですね。
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by Blacksmoker | 2008-06-08 00:28 | ELECTRONICA

CHEB I SABBAH [Devotion]


ヒッピー発祥の地、サンフランシスコを拠点とするワールド・ミュージックの超個性派レーベル「Six Degrees Records」。
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エレクトロニクスと民族音楽を融合させたサウンドを中心に様々な個性的なアーティストが顔を揃えるこのレーベル。これまでにDJ SpookyRob Swiftを初めとして、インドからはKarsh Kale、ブラジルからはCéUBebel Gilberto、スペインからはOjos De BrujoSpanish Halem Orchstraなど世界各国から一癖も二癖もあるアーティスト達が名を連ねています(個人的には出身のIssa Bagayogoの2004年のアルバム「Tassoumakan」は傑作なのでオススメです)。

f0045842_23581490.jpgそんなSix Degrees Recordsより今まで3枚のソロ・アルバムをリリースしている個性派ベテラン・ヒッピーDJ、Cheb I Sabbahシェビー・サバー)。前作から2年振りとなるこの新作「Devotion」の濃密な世界観はやはり格別だ。

1947年アルジェリアのコンスタンティン生まれのシェビー・サバー。現在60歳という年齢ながら現役バリバリのDJ。様々な経歴の持ち主で70~80年代には何とドン・チェリーのマネージャーもやっていたそうですね。
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シェビー・サバー自身はヒンドゥー教徒ではないそうだが、インド音楽に深く傾倒したエレクトロニクス・サウンドが特徴です。ただ「深く傾倒している」と言ってもディープな宗教音楽というわけではなく、サンフランシスコ在住である事や、ヒンドゥー教徒ではない事からも分かるように、ヒッピー的感覚のあるエキゾチックなダンス・ミュージック(享楽的な部分はあまり見られませんけど)。よってどちらかと言うと本物の宗教音楽よりもずっと敷居は低く、ハイクオリティで神秘的なサウンドが聴けます。
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1999年に1stソロ・アルバムを発表し、「インド三部作」と言われる3枚のアルバムを発表した後、2005年にリリースした4作目「La Kahena」では何と北アフリカのマグレブに残る音楽を取り上げたりとその音楽性の深さは底知れず。このアルバムにはKarsh KaleBill Laswell、トルコの気鋭Mercan Dede(新作が素晴らしかった)などが参加し、グワナやライ、スーフィと言った伝統音楽と女性唱歌を融合させた傑作なので、是非これは聴いて欲しいです(その後、このアルバムのRemixアルバムもリリースされています)。

そしてこのアルバム「Devotion」。前作のマグレブ音楽とはうって変わって、今作は再びインド音楽に回帰。タイトルである「Devotion」は「献身」という意味もあるが、ここではおそらく「祈り」や「信仰」という意味が近いでしょう。その言葉通り、インドの三大宗教である、ヒンドゥー教、イスラム教、シーク教の「祈りの歌」を取り上げています。
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タブラやシタール、バングラ特有の楽器トゥンビ、そしてサーランギやフルート(バーンスリというそうです)などの民族楽器を中心に、そこに絡むエレクトロニクス・ビートの絶妙な融合が素晴らしく、アンビエントからダブ、プログレッシヴ・トランス的な要素も含んだ壮大で神聖なサウンドスケープをみせてくれてます。

エンジニアを担当するのはインド人エレクトロDJデュオ、Midival Punditzミディヴァル・パンディッツ)のゴーラヴ・ライナ。この素晴らしいクオリティのサウンドは彼の功績が大きいでしょう。ギターには前作に続きKarsh Kale(下写真)も参加し、存在感を放っています。
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そしてこのエキゾチックなエレクトロニクス・ビートの上を、1曲ごとにその宗教音楽を代表する歌手を全面的にフィーチャー。シーク教の聖歌グルバニ、イスラム教のカッワーリ、そしてキールタン、ヒンドゥー教のパジャンなどの伝統宗教歌を歌っています。Qalanderiではパキスタンを代表する古典声楽家、故ウスタッド・サラーマット・アリ・ハーンの娘リファット・スルターナも登場します。しかしこの手の宗教音楽の歌い手の声というのは欧米の音楽にはない鬼気迫るものがあります。異常なまでの声の伸びやかさなど人知を超えた迫力です。故ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンも歌ったKinna Sohnaも取り上げられていて必聴です。
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神々しさすら漂う歌声、土着的な民族音楽、そしてサイケデリックなエレクトロニクス。この3つが非常に高い次元で融合し、さらにダンス・ミュージックとして機能している傑作

是非チェックして欲しい作品です。DJでは必ずベリーダンサーも登場するシェビー・サバーのプレイを一度堪能してみたいですね。
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by Blacksmoker | 2008-02-21 00:20 | ELECTRONICA

CALM [Blue Planet]


バレアリック」という言葉は今でも使い慣れませんが、CALMの音楽を言い表わす言葉としては非常に使いやすい。
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テクノほどハードではないし、ハウスよりもテンポは遅いし、アンビエントよりはビートは強い。そして何よりも美しい。そんなCALMのサウンドには「バレアリック」という言葉がしっくりくる。

f0045842_2239816.jpg前作より4年振りとなるCALMの新作「Blue Planet」。2003年の前作「Ancient Future」では「深夜」をイメージさせ、そしてTHA BLUE HERBイル・ボスティーノとのユニット、JAPANESE SYNCHRO SYSTEMでは「夜明け前」をイメージさせていましたが(2003年にはK.F.名義でのハウスのアルバムもありました)、今回のアルバムは「朝」というイメージが非常にピッタリだ。「朝」と言っても夜の明けたばかりの明け方ではなく、陽が昇った朝。このアルバムには明るい、前向きなポジティヴさが感じられるチルアウトなサウンドが詰まっています。個人的にはCALMのベスト・ワークともいえるJAZZANOVAInstropection(Calm’s Outrospect Remix)の雰囲気にとても近い。
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今まで以上に歌心が全面に出た作りで、とても美しく穏やかなメロディが心に響きます(全11曲中5曲がボーカル入りというのもCALM史上最多)。CALMFarr a.k.a.深川清隆という音楽家が、今までにORGAN LANGUAGEJAPANESE SYNCRHO SYSTEM、そしてMOONAGE ELECTRIC ENSEMBLEK.F.、そしてCALMという様々な名義で奏でてきたサウンドの集大成といえる出来映えです。

その中でも特筆すべきはEGO-WRAPPIN’中納良恵(左写真)がf0045842_22421569.jpgボーカルを取るSunday SunFarrによるポジティヴな歌詞に、中納良恵の母性的な歌声が、輝く朝日のように穏やかで美しいトラックによる名曲です。「出会った全ての人にありがとうと言えますか?」という歌詞が良いですね。クラブで朝にこの曲がかかったら涙が出そうです。

その他にもUmi-Uta(Sea Song)や、ヴァイオリンの響きが美しいLove Is…などボーカルが入った曲が特に良い。そしてインスト・ナンバーもよりメロディアスに。CHARI CHARIのようなポリリズミックなリズムが心地良いBeautiful One、1stを彷彿させるアフリカ的なAfrican Textiles、浮遊感のあるシンセのリズムに雨の音が挿入されるBefore The Rainから連なる、弦楽器の音とフィールド・レコーディングによる虫の声が印象的な田園Country田園(Denen Is Eden)など名曲揃い。

今まで人の手の届かない天上界で美しい音楽を奏でていたCALMですが、今回のアルバムでは地上に降りてきて人々と同じ目線でとことんポジティヴで、輝くようなメロディを奏でています。
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こういうCALMは非常に新鮮だ。嫌な事など忘れさせてくれるほど前向きなサウンドは社会の喧騒に揉まれる全ての人のサウンドトラック。オススメです。

実はこの「Blue Planet」と対を成すアルバム「Silver Moon」も2月にスタンバイ中だそうです。こちらも楽しみ。
 
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by Blacksmoker | 2008-01-21 00:33 | ELECTRONICA

FAITHLESS [To All New Arrivals]

最高傑作

イギリス音楽界最強のエレクトロ・ユニット、フェイスレスf0045842_22435056.jpg3年振りの新作「To All New Arrivals」は、今までのフェイスレスを更に進化させた美しく幻想的なサウンドで、まさしく彼らの最高傑作でしょう。2005年にリリースされたベスト・アルバム「Forever Faithless:The Greatest Hits」で10年のキャリアを総括し、2006年は名門ハウス・レーベル「Renaissance」から素晴らしいMix CD「3D」をリリースしたばかりの彼らの新しい出発に相応しいアルバムです。

タイトルは「新たに到着した全ての人達へ」という示唆に満ちた言葉で、どこか外国の港町の夕暮れ時を描いた風景画のジャケットがとても美しい。

このアルバムは今まで以上にゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした曲がほとんどで、その多彩なヴォーカリスト達のバックで鳴る、シンセやピアノの音が霧のような靄のかかった美しい深遠なプログレッシヴなハウス・サウンドが幻想的な空間を作り出しています。仄かに80年代フレイヴァーが感じられるのも良いですね(これが過剰だと個人的にはダメです)。
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エコーのかかったコーラスが印象的な曲が多く一聴すると非常に美しいサウンドですが、それとは逆にマキシ・ジャズ(下写真)のポエトリー・リーディングのようなラップは実にソリッドでリリックを見ると実は意外とシリアスで現実問題を捉えたアイロニックなものばかり。幻想的なフェイスレスのサウンドに意外とサイケデリックな感覚が少ないのは、おそらくマキシ・ジャズのラップが強烈に聴く者を現実に引き戻す磁場を持っているからだろう。サイケデリックには聴くものを異次元に飛ばす力があるが、フェイスレスのサウンドは殺伐とした現実の中に幻想的な空間を作り出すような感覚がある。前作でも「Weapons Of Mass Destruction」などかなり強烈な詩が印象的だったマキシ・ジャズだが、今回もそのリリックは鋭く現実をえぐる。まさしく現代のリントン・クエジィ・ジョンソンです。
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今回のアルバム製作中にフェイスレスのメンバーのロロシスター・ブリスの2人には子供が誕生したそうで、それに呼応してサウンドや歌詞などにも親の視点で描かれた現実感のある歌が多い。

話題のリード・シングル「Bombs」は、ヴォーカリストに「KUBB」というイギリスのロック・バンドのHarry Collierを迎えての美しいハウス。「NEXTクリス・マーティン(Coldplay)」かと思うくらいの美声のコーラスに続くマキシ・ジャズのレバノンの空爆を題材にしたリリックが痛烈です。この曲は彼らのMyspaceでも視聴出来ますので是非聴いてみてください。
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その他The Cureロバート・スミス(またもや再評価か?)を迎えた曲(「Lullaby」をサンプリング!)や、そしてCat Powerを迎えた曲など様々なゲスト・ヴォーカルが楽曲を彩ります。もちろんロロの実妹Didoもヴォーカルで参加しております。

もちろんそのプログレッシヴで深遠なハウス・サウンドだけ聴いても十分機能しますので、車で流すのも部屋で聴くのにも最適ですし、その鋭い歌詞に耳を傾けるのも面白い。
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個人的には今年のベストアルバム候補の1枚。是非聴いてみて下さい。
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by Blacksmoker | 2006-12-09 00:03 | ELECTRONICA