カテゴリ:R&B / SOUL( 22 )

ANTHONY HAMILTON [The Point Of It All]


で、前回のターシャに続いて今度は旦那アンソニー・ハミルトンの3作目「The Point Of It All」

f0045842_13123692.jpg2005年の前作「Ain’t Nobody Worryin’」から4年も空いていますが、その間にもかなりの数の客演をこなしたり、未発表曲を集めたアルバム「Southern Comfort」が出たり、さらには映画「American Gangster」への出演に、そのサウンドトラックへの曲提供、最後は嫁ターシャのデビューなど話題には事欠かかないカンジですが、やはり正式なアルバムとなると俄然期待してしまうのがこの男です(そもそもこの男の声が聴けるだけでいいというファンも多いでしょう)。

そんな稀代のソウルマン、アンソニー・ハミルトンの新作は、名盤だった前作の路線とは若干意匠を変えてきました。
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今回のアルバムを一聴して気付くのは、そのサウンドの違い。前作「Ain’t Nobody Worryin’」はモロに南部路線でしたが、今回は若干サウンドがヒップホップ・ソウル路線。前2作と違って非常に「都会的な」ジャケットも象徴的ですね。前作を期待した人は少々面喰うかもしれません。
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何たって、このアルバムからの1stシングルCoolからして、今までと様相が違います。まるで80年代後半のヒップホップのようなドラムマシンによるビートに、ボトルネック奏法のギターの音の1フレーズをサンプリングしただけという超シンプルな「1ループ」トラック。そして後半にデイヴィッド・バナーの野太いナスティなラップが出てくるという今までのアンソニー・ハミルトンには無い新機軸な1曲です。前作の1stシングルだったCan’t Let Goとはかなり違いますね。しかしアンソニーの声が入るとそれだけで十分魅力的な曲になるのが不思議です。

これ以外にもトラックがヒップホップ・ソウル的なものが多いです。The Day We MetFallin’ In Loveなんて、メアリー・J・ブライジが歌ったらバッチリなトラックですよ。

そもそもアンソニー・ハミルトンという男はレーベルの倒産f0045842_1326837.jpgなどでデビュー作のリリースが見送られてお蔵入りになり、So So Defに移籍して新しく作った1stアルバム「Comin’ From Where I’m From」が大ヒットした経歴がある。そんなアンソニーの見送られたアルバムの内容は「ヒップホップ・ソウル的なもの」だったと言われている。ですので、アンソニーは前2作のディープ・ソウルな泥臭いサウンドを踏襲せずこの新作では、デビュー前のヒップホップ・ソウルな洗練されたサウンドへ向かったことになりますね。

おそらくこれはアンソニーの意向なのでしょう。最近の彼の参加した曲やアーティストを見ると、かなり多彩になってきているのが分かります。カントリー系シンガーとの共演(Josh TurnerJohn Rich)や、ファンク路線の曲などもあります(前作ではレゲエにも挑戦していたし)。
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これは1人のシンガーとしてのステップアップとして捉えるべきでしょう。アンソニーはド渋なディープ・ソウルな曲以外でも、どんな多彩な楽曲も乗りこなす力量も持ち合わせているのです。ただ、どんな曲でもあの声が被されば自然にアンソニー印になってしまうわけですけどね。

しかし、今までと全く違ってしまったかというとそんな事も無く、以前からのファンも納得させられる曲もしっかり収録されているのもニクイ。ホーン・セクションが絡むPlease Stayや、都会的な洗練さとサザン風味が見事に合わさったThe Point Of It Allなどは名曲ですね。ボビー・コールドウェルが歌いそうな若干AOR調なバラードHer Heartも新機軸だがハマっています。
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そしてラストに歌われるのは、このアルバムを聴く人へ捧げるようなゴスペルFine Again。以前のファンも、新しいファンも、さらにはこのアルバムの方向性に違和感を感じている人でさえも、この「きっとまた良くなるさ」と歌われるこの曲に全ての感情を持っていかれる事でしょう。

サウンドは変わってもこの男のスピリットは全く不滅。前2作にも劣らない作品だと思います。

    
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by Blacksmoker | 2009-06-24 13:09 | R&B / SOUL

TARSHA McMILLIAN HAMILTON [The McMillian Story]


この品行方正なジャケット写真。R&Bファンならこのジャケットだけでも買いでしょうが、中身も素晴らしいです!

f0045842_1551923.jpgターシャ・マクミリアン・ハミルトンの記念すべき1stアルバム。R&Bファンなら彼女の名前はアンソニー・ハミルトンの2006年の2ndアルバム「Ain’t Nobody Worryin’」に収録されているPreacher’s Daughterに参加していたシンガーとして記憶している人も多いでしょう。しかし、そのときの名前は「Tarsha McMillian」でした。そして今彼女は「Tarsha McMillian Hamilton」。

そうです、アンソニー・ハミルトンと結婚していたんですね。そして旦那の前面バックアップを受けてリリースされたのがこのアルバム。これがホントに素晴らしいアルバムなのです。

「The McMillian Story」というタイトルから分かるように、このアルバムはターシャだけでなくマクミリアン一家の今までの人生、そしてこれからの未来を歌った非常にパーソナルな内容。インナースリーヴの写真も彼女の子供時代の家族の写真がたくさん使われています(2ページに渡ってギッシリと書き綴られたサンクス・リストの内容も要チェック)。
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Preacher’s Daughterの時は、アンソニーのバッキング・ヴォーカル的な扱いだったので、彼女の歌声の真価はまだ未知数でしたが、今回のアルバムで披露された彼女の歌声はまさしく本物。1曲目を聴いた時はエリカ・バドゥの歌声を思い出しましたが、エリカ・バドゥのように突き放すようなクールさは無く、もっと母性を感じさせる包容力のある歌声で、しかもゴスペル的な要素を持っているのが特徴ですね。

旦那様のアンソニー・ハミルトン(左写真)がバックにf0045842_1620697.jpgついてるだけあって、制作陣も彼のアルバムに関わっている人脈を総動員。プロデュース陣にはアンソニーの前作にも参加しているケルヴィン・ウーテン。さらにアンソニーとは1stアルバムからの付き合いであるジェイムズ・ポイザーアル・グリーンのアルバム「Lay It Down」でも良い仕事をしていましたね)など、一介のインディーズ・レーベル(Mister’s Music)から出た新人シンガーのデビュー盤にも関わらず、その参加メンバーの豪華さはメジャー流通のアーティストのアルバムに匹敵します。

さらにアンソニーに関しては12曲中5曲でバッキング・ヴォーカルで参加。さらにもう1曲の、このアルバムのハイライトとも言えるSilence Killsでは堂々とデュエット相手として登場します。

そしてその豪華参加陣に全く引けを取らないターシャのヴォーカル。
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これがホントに心が洗われそうなほど素晴らしい。凛とした中にも包容力のある優しい歌声。セクシーさはあまり無いですが、その代わりに万人に愛される要素を持っています。徐々に頂点に向かって盛り上がっていく歌い方は、おそらくゴスペル畑の出身と思われます。

実はこのアルバム、個人的に当初前半の5曲くらい聴いた時にあまりピンと来なかったのが正直なところなんですが、ハイライトとなる6曲目のアンソニー・ハミルトンが登場するSilence Kills以降、後半はビックリするくらい曲が素晴らしくなるんです(アナログ盤なら、A面最後~B面に掛けてですね)。

前半は1曲目のニュー・クラシック・ソウルなSecond To Nothingや、初期のエリカ・バドゥを彷彿させるUnconfidential Love、さらにアップなダンスナンバーPraise Him、さらにはディストーション・ギターが炸裂するロック・テイストなReaching Outなどバラエティに富んだ内容なんですが、何か違和感がありました。
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しかし次のSilence Killsで一気にアルバムの空気が変わります。アンソニーとのデュエットでドラマティックに盛り上げるピアノ・バラード。やはりこの男の声は素晴らしすぎます!しかし凄い夫婦ですよね。そして、この次の曲Pressing My Way。これが個人的にはベスト。ハモンド・オルガンの穏やかな音色で始まるサザン・ソウル色全開のゴスペル。この曲を聴いて前半で感じていた違和感の正体が分かりましたね。彼女の声が最も映えるのはこういった南部色の強いゴスペル・ナンバーなんですね。

意図的にそうなのかどうか分かりませんが、後半はゴスペル・ナンバーばかり。9分近いThomas’ Hymnや、Ronald Hubbard(この人は初耳ですね)を迎えたBetter、アコースティック・ギターが優しく穏やかなFrom Me To Youなど、感動的で素晴らしい曲ばかり。どの曲も穏やかに始まりゴスペル・コーラス隊がドラマティックに盛り上げていくサザン・ソウル。ターシャの声が見事と言うしかないほど映えています。

これは是非R&Bファンに聴いて頂きたい作品です。

ちなみに7月に決まったアンソニー・ハミルトンの初来日公演の来日メンバーにターシャの名前がクレジットされてたので、かなりテンション上がったんですが、最近その名前が消えていますね・・・どうなんでしょうか?是非とも一緒に来日して欲しいです!
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by Blacksmoker | 2009-06-17 15:47 | R&B / SOUL

INDIA.ARIE [Testimony Vol.2 :Love & Politics]


f0045842_1852490.jpgもう出ないかと思ってましたよ!前作「Testimony Vol.1 :Life & Relationship」から2年半。本来ならば2007年にはリリースされているはずだったインディア・アリー「Testimony Vol.2 :Love & Politics」、遅れに遅れてようやくリリースです。

前作「Vol.1」はリリース時にかなり聴いたアルバムですが、今回の「Vol.2」のリリースを機に改めて「Vol.1」を聴き直してみるとやはりかなり素晴らしいアルバムだと再認識。
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そしてこの前作を聴くとやはり1stシングルだったエイコンをfeat.したI Am Not My Hairのサウンドの浮きっぷりも目立ってしまうわけです。この曲は別に悪い曲では全然ないんですが、「人気のヒットメイカーを迎えました」感が出まくりのレコード会社主導のようなサウンドで、過去のインディア・アリーの曲の中で違和感のようなものを感じていました。(さらにこのI Am Not My HairSwizz Beatzのリミックスまであって、レコード会社は現代のR&BやHIP HOP方面へ猛烈にアピールしようとしているように思えたわけです。)
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それが原因かどうか分かりませんが、インディアモータウンを離脱(インディアを発掘したモータウンの社長キダー・マッセンバーグが退任して、新しい女社長が就いたこともおそらく原因の一つでしょう)。今作より自身の立ち上げたレーベル「Songbird」からのリリースになっています(でもユニヴァーサル傘下のレーベルではあるみたいです)。前作がビルボード・チャートで1位を獲得し、さらに内容も素晴らしく、しかも2部作の2作目がすぐにリリースを控えているという順風満帆な状況下でレコード会社を移籍するなんて事態は異常とも言えることですからね。しかもスティーヴィー・ワンダー・チルドレンとしてモータウンを離れるという事はかなり厳しい選択だったとは思いますが、それを乗り越えてリリースされた事だけでもファンとしては感涙でしょう。
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そして今作の内容も前作に全く引けを取らない大傑作

「アコースティック・ソウル」路線をさらにワールドワイドに拡大し、なおかつ非常に明るいポップな曲が満載。もろにスティーヴィー・チルドレンだったインディアがミュージシャンとしてここまで大きな進化を遂げたことは感慨深いものがりますね。アルバムもビルボード・チャート初登場3位を記録!さすがです。
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アルバムのサブ・タイトルである「Love & Politics」の通り、今作にはラヴ・ソングと政治的な歌で占められており、とりわけラヴ・ソングの割合が3/4くらいあります。そしてそのラヴ・ソングだけを抜粋してみると、一連の恋愛過程がストーリーになっています。

Therapy(私にはあなたのセラピーが必要なの。)[初恋]
 ↓
Chocolate High(あなたを食べちゃいたいわ。)[浮かれ中]
 ↓
He Heals Me(彼が私を癒してくれるの。)[まだまだ浮かれ中]
 ↓
River Rise(神様、私どうしたらいいの?)[苦悩中]
 ↓
Yellow(出ていかないで!)[号泣]
 ↓
Long Goodbye(私はもう泣かないわ。お別れよ。)[惜別]

ってなカンジ。結局は別れてしまうわけですが。

さて今作はゲストの多様ぶりにも注目です。1stシングルTherapyに参加しているのがグランプス・モーガン。最初この名前を聞いたとき「誰だっけ?」と思いましたが、ジャマイカが誇るレゲエ・バンドのモーガン・ヘリテイジ(下写真。中央がグランプス)のメンバーじゃないですか!こんな人もいたんですね。でもこの曲、曲調はレゲエではなく開放的なアコースティf0045842_18195356.jpgックなソウル・ナンバー。ポップな疾走感が素敵です。ただグランプス・モーガンが全然目立っていなくて不思議だったのですが、これは実はアルバム・ヴァージョン。このアルバム・ヴァージョン以外にグランプス・モーガンが野太い低い声でガッチリ歌っているレゲエ・ヴァージョンがあります。個人的には絶対このレゲエ・ヴァージョンの方が今のインディ・アリーには合っていて好きですね。グランプス・モーガンHPでこのTherapyのレゲエ・ヴァージョンが聴けますので是非聴き比べてみて欲しいです。 「Therapy Remix」とは謳っていますが、おそらくこのレゲエ・ヴァージョンの方が最初のヴァージョンでしょう(アルバム・ヴァージョンのグランプスの登場頻度は不自然なくらい少ないし・・・)。もしかしたら、レーベルは変わったがまた前作のようなI Am Not My Hair問題みたいな事が起こったのかもしれません・・・。

そして最も注目度の高い曲と言えば、やはりミュージック・ソウルチャイルド(右写真)を迎えたChocolate High。この男、マチf0045842_18271471.jpgガイナイですね。特に最近のミュージック・ソウルチャイルドの勢いは凄い。現代ソウル・シンガーとして最高峰に立っていると言っても過言ではないですね。つくづくRadioのようなサウス路線に行かなかったのは正解でしょう。メアリー・J・ブライジとのデュエットifuleaveも素晴らしかったですが、この曲もかなり素晴らしい出来!2人の優しい掛け合いが美しいスティーヴィー・ワンダー直系の極上ソウル・ナンバー。流麗なピアノと薄っすら響くストリングスも最高です。

その他に注目なのはThe Cureという曲。この曲でのゲストはトルコ歌謡界の女王セゼン・アクス
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このコラボレーションは凄い。トルコだけでなく周辺諸国まで絶大な人気を誇るこのセゼン・アクスが登場するだけでも驚きですが、インディア流のアコースティック・ソウル・ナンバーに絶妙に絡み合うイスタンブール独特のメロディが不思議な異国の雰囲気を醸し出していて素敵です。前述のTherapyのレゲエにせよ、この曲にせよ恐ろしいまでのクロスオーヴァーぶり。まったく音楽の枠に囚われていない自由さがイイですね。アルバムの中にはインディアが世界各国を旅している写真が多数載っていますが、この旅の影響は今回のアルバムにかなりの影響を与えていると言っても良いでしょう。
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その他にもなぜかMCライトがハードコアなラップをキックするナンバーがあったり、前作でのI Chooseにも参加していたケブ・モが今回もドブロを炸裂させる濃厚ブルーズ・ナンバーがあったり、ゴスペル・シンガーのテレル・カーターをfeat.したりとホントに多彩です。そして前作ではイーグルスドン・ヘンリーのカヴァーThe Heart Of The Matterを完全に自分の曲にしていましたが、今回は何とシャーデーPearls。素晴らしい選曲!これも素晴らしい出来ですよ。個人的には終盤のバラードLong Goodbyeに号泣!
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今回も前作に全く引けを取らない大傑作です。これは何年後に聴いても色褪せないアルバムですね。是非ともチェックしてみて欲しい作品です。っていうかマストですよ。

しかし何でこの人はアルバムごとにジャケットがイマイチになっていくの?前作もジャケットに「??」なカンジで微妙だったけど今作は今までで一番良くない(泣)・・・。
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by Blacksmoker | 2009-04-30 17:04 | R&B / SOUL

DWELE [Sketches Of A Man]


ここ最近のDweleの活躍ぶりは凄い。
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昨年のEarth, Wind & Fireの素晴らしいトリビュート・アルバム「Interpretations」の中でも個人的にベスト・トラックだったのがDweleの歌ったThat’s The Way Of The World。浮遊感のあるロマンティックなDweleのボーカルが最高に気持ち良い1曲で、オリジナルを凌駕する素晴らしい出来でした(もちろんLedisiDevotionも良いですが!)
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そしてCommonのアルバム「Finding Forever」の中のThe Peopleや、さらにはKanye Westのアルバム「Graduation」の中のFlashing Lightsでもフィーチャリングされていましたし、Souliveの別プロジェクトでもあるファンク・バンドLettuceのアルバム「Rage!」にもフィーチャリングされ何とカーティス・メイフィールドMove On Upをカヴァーしていたりとあらゆる所で大活躍。そしてそのどれもが印象に残る素晴らしい客演を見せてくれました。

f0045842_3225582.jpgそんな中でリリースされたDweleの2年振りの3rdアルバム「Sketches Of A Man」は、その充実振りが発揮された1枚。でもその音楽性は驚くほど以前と変わらずのスタンス。(Jaheimが「The Makings Of A Man」とくれば、Dwele「Sketches Of A Man」ですか!)

さて個人的に思っていた事ですが、客演時のDweleは印象に残る素晴らしいパフォーマンスをするのですが、オリジナル・アルバムの印象がそれに比べて薄い。もちろん内容は極上のソウル・ミュージックなのですが、他のソウル・シンガーと比べると独特の「アク」が強くなく、またガツンと一発パンチの効いたメロディのシングル曲があるわけでもないのでアルバム全体がスーっと流れていってしまう印象がありました。2003年の1st、そして2006年の2ndともに同じような印象があったのですが今回の新作を聴いて、自分のDweleの聴き方が間違っている事に気が付きました。

Dweleのアルバムはシングル単位で楽しむものではなく、アルバム全体をゆっくりと楽しむようにあえて作られている」という事実。

その事に気付くと前2作の流れも至極納得がいく。そしてこの新作もアルバムの流れを考えた作りになっているのが分かります。
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まず1曲目のオープニングでは「Sketches Of A Man」のタイトル通りスケッチの音から始まり、最終曲のエンディングに再びスケッチの音で終わっていく構成になっています。

収録曲は全20曲。普通ならこの曲数を見るとかなり引いてしまう量ですが、実はそのうち6曲が1分半くらいのイントロになっていて曲間なく次の曲へと繋がっていくので、気が付くと次の曲になっている。これも意図的な構成だ。アナログ盤で聴かれる事を意識した構成でもありますね。
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そしてこのアルバム全体の流れはホントに気持ちが良い。次から次に心地の良いメロディが流れ出てくる気持ち良さは、アルバム全体を楽しまないと味わえません。

ただそんなアルバムの中にもしっかりとキーポイントなる曲も配置されているのもニクイです。まずはOpen Your Eyes。これはボビー・コールドウェルのカヴァーなのですが、ヒップホップ・ヘッズf0045842_3331097.jpgにはCommonThe Lightの元ネタとしての方が有名でしょう!この曲でしっかりと聴く者を惹きつけ、ファンクっぽい小曲Workin’ On Itを挟んで登場するのが、地元デトロイトの盟友Slum Village(左写真)を迎えたBrandiJ・ディラのビートを継承したようなデトロイト・テイストな1曲。この曲も流れるようなメロディが絶品です。

ストリングスを取り入れた曲、ピアノを弾き語り、アコースティック・ギターを使ったネオ・ソウルなど、様々なヴァリエーションの曲が大袈裟ではなく、実にナチュラルな流れで収まっている(15曲目のShadyは、デトロイトでシェイディとくればEminemの事かと思いましたが全然違ったようです・・・)。
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そして相変わらずアルバムのプロデュースからアレンジ、そして演奏まで手掛ける天才ぶりも存分に発揮。その中性的な声の響きも相まって、やはりDweleにはスティーヴィー・ワンダーの影響が色濃く見られますね。スティーヴィーの系譜を継いだアーティストの筆頭でしょう。
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これはホントに素晴らしいアルバムです。このアルバムを聴いている時は、思わず時間を忘れてしまう至福の作品。シングル単位でしか聴かれなくなった現状に真正面から向かい合うアーティスティックな姿勢も素敵です。是非ともこの素晴らしい作品をじっくりと堪能して頂きたいです。もちろんDweleの弾くフェンダー・ローズの美しくも儚い音色も健在です!
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by Blacksmoker | 2008-10-29 02:56 | R&B / SOUL

YUSA [Haiku]


f0045842_1153324.jpgキューバのミュージシャンと言えば個人的にすぐ思いつくのがブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブだが、もちろん伝統的なキューバ音楽ばかりでなく、現在のキューバにも新世代のミュージシャンは存在する。

その筆頭となるのが、テルマリーであり、インタラクティボであり、そしてこのジューサである。(以前に紹介したラファエル・セバーグの1stアルバム「El Fantasma De La Libertad」にはこの3者が一同に参加している凄いアルバムです。必聴!)

そのジューサの3年振りの新作「Haiku」。これがとても素晴らしい。タイトルの「Haiku」はもちろん「俳句」のこと。5・7・5という非常にミニマルな制約の中で万物を表現するこの日本文学にヒントを得て、シンプルで最小限の表現で、深い世界を表現するテーマで作られたそうだ。
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注目は、今作をプロデュースするのが、マリーザ・モンチ「Infinito Particular」トリバリスタス「Tribalistas」、その他にもアルナルド・アントゥニス「Qualquer」カルリーニョス・ブラウン「A Gente Ainda Não Sonhou」を手掛けたブラジル人のアレ・シケイラ。ブラジル音楽界でも重要なこれらのアルバムを手掛けているというだけでも、この人の凄さが分かるでしょう。「ミニマルな表現」という提案はジューサの潜在能力を存分に引き出す為にアレ・シケイラから出されたものだそうです。
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そのアレ・シケイラが関わってハバナ録音だけでなくリオデジャネイロ録音も行っているためだろう、今回のジューサのアルバムは今までのキューバ色が後退し、その代わりに非常に「ブラジルっぽさ」が全開。サンバっぽい曲などジューサの新境地と言ってもイイでしょう。キューバっぽさがないという人もいるだろうが、別にジューサは昔からキューバ音楽をやると宣言していたわけではないからその意見はお門違い。彼女はもっと大きな視点で見るべき存在のミュージシャンだ。
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マルチ・インストゥルメンタリストでもあるジューサは、このアルバムでもギターだけでなく、ベース、キーボード、シンセサイザー、パーカッション、カホン、ピアノ、コンガ、そしてコーラスも含め一人で大活躍。凄い才能です。ミッシェル・ンデゲオチェロにも通じる天才ぶり。そしてこの「Haiku」は、ンデゲオチェロで言うと「Comfort Woman」的なアルバムかもしれません。Walking HeadsMínimumの2曲は、ジューサ1人による多重録音で仕上げた曲で、特にWalking Headsはもの悲しいメロディと印象的なギターの旋律が素敵な名曲ですね。
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ただ個人的に魅力を感じるのが多重録音の曲より生演奏によるグルーヴを感じる曲。No Tengo Otro Lugarのホーン隊やの高揚感や、Y Te Aparecesのヴァイオリンの美しい旋律、Conga Pasageraでのトランペットやコンガ、インタラクティボのヴォーカルのフランシス・デル・リオを迎えたGente Simpleでのストリート色全開のサンバなどがやはりキューバ独特のリズム感があって素敵です。

そして、ここでも耳を惹くのがロベルト・カルカセス(下写真)の躍動感あるピアノ。
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ラファエル・セバーグのアルバムでも一番気になったこのロベルト・カルカセスのピアノはほんとの今のキューバの至宝と言ってもいいんじゃないだろうか。素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

ジューサのハスキーなヴォーカルも、ほんとに優雅であり、深く大きく包み込む包容力があって感動的。曲数もぐっと10曲に絞った分、それぞれの曲がより存在感を増していて1曲たりとも無駄がない。
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キューバ音楽シーンだけでなく、世界を代表するミュージシャンのこのジューサの素晴らしい新作。是非とも聴いてみて欲しい。オススメです。
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by Blacksmoker | 2008-06-13 00:11 | R&B / SOUL

JAHEIM [The Makings Of A Man]


まさに捨て曲なしの傑作。

f0045842_11123996.jpgニュージャージー出身のソウル・シンガー、ジャヒームの2年振りとなる新作「The Makings Of A Man」は心の底から痺れるソウルをじっくり堪能出来る傑作です。

1978年ニュージャージーのゲットーに生まれ、Naughty By NatureKaygeeに見出されたこの早熟の天才は2001年の1st「Ghetto Love」、そして2002年の2nd「Still Ghetto」、そして2006年の3rd「Ghetto Classics」(ビルボード初登場1位)という「Ghetto3部作」で本格派ソウルシンガーとしてのポジションを揺ぎ無いものにしたわけですが、この新作「The Makings Of A Man」では「Ghettoシリーズ」を離れ、偉大なるソウルシンガーへの道を踏み出したと言っても良いでしょう。

ちなみにこの新作からジャヒームはワーナーを離れアトランティックに移籍。ここ数年で「ソウル帝国の復権」を標榜しソウル・レーベルの一大帝国を築かんとするアトランティックにとっても、このジャヒームを迎えた事は大きな収穫になったろう(昨年のミュージック・ソウルチャイルドのアトランティック移籍も大きいですね)。
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男の香り漂うアルバム・ジャケット、そしてThe Makings Of A Man =「真の男の作り方」というソウル度の高いタイトル。これらの要素に全く引けを取らないほど、この新作は素晴らしい内容の極上のソウル・アルバムになっています。

このシルキーで太いジャヒームの声。上手いシンガーなんてこの世にはたくさんいるが、ジャヒームの声には、独特の深みそして温もりがある。最近のソウルシンガーの中でこの声に匹敵するのはもはやアンソニー・ハミルトンくらいのものでしょう。まさしくソウル/R&Bを歌うために生まれてきたような声ですね。
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なんたって1曲目のタイトルがVoice Of R&B!こんな大それた事を言っても決して大袈裟には思えない風格が今のジャヒームにはある。1stアルバムの時にはラップのような歌い方もしていたが、今のジャヒームの歌うのは完璧なるソウル。まったくブレはありません。この曲ではトランペットが響きが最高のオープニングを演出します。この曲を含めアルバム収録曲の3分の1にあたる4曲をジャヒーム自身がプロデュース(共同)しているのにも注目。ワウギターの利いたメンフィス・ソウルばりのホーンがナイスなLife Of A Thug、真正面から直球勝負のリアル・ソウルMake A Wish、ピアノとオーケストラも取り入れた壮大な美メロ・バラードBorn Together Againなど素晴らしい出来です。いやはや凄い才能です。
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そして恩師Kaygeeも3曲で参加。Force MD’sTender Love」使いのドラマティックすぎる泣きのバラードHave You Everで最初のハイライトを演出し、ボビー・ウォマックの「If You Think You’re Lonely Now」のリメイクLonelyなどドラマティックな傑曲を提供してます。そしてKaygeeお得意のギャル受け確実のI’ve ChangedではR&B界のニュー・ディーヴァ、キーシャ・コール(下写真)を召喚(このアルバム唯一のゲスト・ヴォーカル)。
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このキーシャ・コールの使い方、かなり贅沢です。

その他にもR.KellyのプロデュースしたHushなんて、もうまんまR.Kellyが歌いそうなとろけそうに優しいバラードも良過ぎです。

そしてケネス・エドモンズ aka ベイビーフェイス(左写真)も参加。Just Don’t Have A Cluef0045842_1137731.jpgプロデュースしているわけですが、エレクトロなオープニングに続くDr.Dreばりの荘厳なストリングス、そして意表を突くピアノの美しいフレーズと、ありえないくらいカッコ良いサウンドで一気に耳を惹き付けます。最近ではクリセット・ミッシェルのアルバムにもYour JoyBest Of Lifeという秀逸な2曲を提供していましたが、やはりベイビーフェイスという人は凄いですね。ここ数年ようやくこの人の偉大さを実感出来てきました。

この他にもThe DelfonicsLa La La Means I Love you」という大ネタ使いのShe Ain’t Youなども注目です。

全体的にこのアルバムのジャヒームは80年代の黄金期のルーサー・ヴァンドロスを彷彿させる。それは彼が幼少期に一日中ルーサーの曲を聴き続け、そこから歌唱法を独学で学んだ事にも関係しているだろうが、それにしてもその声質もルーサー・ヴァンドロスによく似ている。唯一違うのはジャヒームの声からは体に染み込んだGhetto的感覚/ストリートを感じる事。そしてそれこそが彼の魅力であり、個人的に彼を好きな理由でもありますね。
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これから偉大なるソウル・シンガーの道を辿るであろうジャヒームの今後が楽しみでなりません。しかし、このアルバムは傑作です!
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by Blacksmoker | 2008-03-31 00:13 | R&B / SOUL

LIZZ WRIGHT [The Orchard]


静かな大海にたゆたうような深い深い歌声。

現在28歳という若さながらここまでクールで凛とした声を持つシンガーも珍しい。ただ低い声というだけでなく彼女の声には精神的な深遠さを感じる。この声の圧倒的な存在感を超えるのは、もはやカサンドラ・ウィルソンくらいではないだろうか。

f0045842_459642.jpgリズ・ライトの2年振りの新作となる3rdアルバム「The Orchard」。綿花畑にひとり佇むジャケットから連想されるように、今作はアメリカ南部への傾倒を更に推し進めたサウンドになっている。R&Bやジャズというよりもアメリカン・ルーツ・ミュージックに近づいた形だ。

前作に続き、今作においてもプロデュースを務めるのはクレイグ・ストリートリズ・ライトの1stアルバムと2ndアルバムの音楽的変化は彼の手腕によるものだと言っても過言ではない。この3rdアルバムでもその手腕は遺憾なく発揮されているが、今回は別のベクトルで存分に発揮されている。
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この新作でリズ・ライトはジャズの持つ都会的なクールさを感じさせるシンガーから、自身のルーツである南部のゴスペルを生んだ広大なアメリカの大地に根差すどっしりとした佇まいも兼ね備えたシンガーへと成長した。ルーツ・ミュージックからジャズへと進むシンガーは多いが、ジャズからルーツ・ミュージックへ進むリズ・ライトのようなシンガーは少ないので、この進化はなかなか興味深い。今作において彼女自身による作曲が増えているのもその変化の要因の一つだ。このサウンドこそが本来の彼女のやりたかった音楽なのでしょう。しかしこの表現力の豊かさには比類なき迫力がある。
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その中でリズ・ライトを作曲面でサポートしているのが、アニー・ディフランコのレーベル「ライチャス・ベイブ」所属の巨漢女性シンガーソングライターのトーシ・リーゴン(左写真)。NYで活動する黒人シンガーソングライターであり、今までに何枚ものアルバムもリリースしている実力派で、アルバムの大半をリズの共作者としてクレジットされているだけでなくギターやコーラスでも参加していf0045842_573881.jpgるので、彼女の色がかなり出ているアルバムだと言える。1stシングルとなったMy Heartのブルーズ・フィーリングが前面に出た曲や、スローでスピリチュアルなゴスペルWhen I Fall、そして雄大な弾き語りSong For Miaなどなどその曲調の幅は広いが、その滲み出る南部のフィーリングは全ての曲において一貫している。

アルバムに参加しているゲスト陣も今回のアルバムのコンセプトであろう「南部への回帰」に合わせて集められたような人選。ボブ・ディランのバンドでギタリストを務めるラリー・キャンベルや、Calexicoジョーイ・バーンズジョン・コンヴァーティノ、そしてOllabelleのキーボーディストのグレン・パッチャなどルーツ系のミュージシャンが随所で味のあるプレイをみせてくれています。特にHey Mann(この曲はトーシ・リーゴンの母親のバーニス・ジョンソン・リーゴンが1972年に書いた曲だそうだ)でのラリー・キャンベルのペダル・スティールの音は絶品の一言です。
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今回のアルバムではカヴァー曲の素晴らしさにも触れないわけにはいかないでしょう。まずはアイク&ティナ・ターナーI Idolize You。ブルーズ・ギターが唸るヘヴィな曲に仕上がっています。そしてもう1曲はレッド・ツェッペリンThank You。曲目だけ見ると意外な感じがしましたが、聴いてみるとアコースティック・ギターとピアノの音によるルーツ的な仕上がりで納得の出来。これはロバート・プラント&アリソン・クラウスが昨年出した「Raising Sand」の世界と共通していますね。
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そしてカントリー・シンガーのパッツィ・クラインStrangeのカヴァーも。静かで雄大なこの曲の美しさと儚さと言ったらどうだろう。先日たまたま雪の降る夜中にiPodでこの曲を聴きながら歩いていたら、あまりにもそのシチュエーションとこの曲のイメージがぴったり過ぎて思わず感動してしまいましたよ。

そして最終曲として収められているのは、ザ・バンドの名曲It Makes No Differenceのカヴァー。これもペダル・スティールの音が素晴らしく郷愁を誘うゴスペル的な仕上がりで必聴です。
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深遠で表現豊かなヴォーカリストとしてアメリカを代表するアーティストとなったリズ・ライトのアルバム「The Orchard」。特に終盤にかけての素晴らしさは特筆ものです。是非とも今聴いておくべき1枚だと思います。
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by Blacksmoker | 2008-03-10 00:31 | R&B / SOUL

[Legend Of A Cowgirl] by IMANI COPPOLA

1997年リリース。先を行き過ぎたのかもしれません。

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by Blacksmoker | 2008-01-31 03:00 | R&B / SOUL

ALICE SMITH [For Lovers, Dreamers & Me]


このアナログ盤を意識したジャケット、そこに描かれる不思議な雰囲気の女性。

なかなか個性的なシンガーです。

f0045842_442928.jpgNYの女性ソウル・シンガー、アリス・スミス。デビュー・アルバム「For Lovers, Dreamers & Me」が何とイギリスの「BBE」レーベルからのリリース(J DillaPete RockKing BrittJazzy JeffWill.I.Amなどの良質なソロ作をリリースする信頼度の高いレーベルです)。実は2006年に既にリリースされていた本作なんですが、2007年にepicレコードが配給するメジャー仕様盤で再リリースされ、ようやく日本にも入ってきました。これがなかなか素晴らしい作品です。

このアリス・スミスは正統派R&Bシンガーではなく、もっとオルタナティヴ寄り。透明感のある声ではなく少しハスキーで気だるい声、そして時にドスの利いたシャウトを聴かせる姿は、エイミー・ワインハウスに共通するものを持っているし、クリセット・ミッシェルの持つジャジーな雰囲気も持っています。歌い方は非常にバリエーション豊か。その雑多性はいかにもニューヨークですね。
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シングルとなったWoodstockが特に素晴らしい出来だ。歌詞は「NYでは嫌な事ばかりだけど、ウッドストックで10日過ごしたらまた元気になったわ」といった内容で、アリス・スミスの歌に、超キャッチーなサビ。サウンドはNYのクラブの雰囲気を持ったかなり玄人好みな音。個人的にはエイミー・ワインハウスRehabに匹敵する曲だと思います。あとビックリしたのが、この曲を作曲したのがイマーニ・コッポラ

憶えているだろうか?1997年に衝撃的なシングルLegend Of A CowgirlDonovanSunshine Supermanをサンプリング!)をリリースしたラッパー兼シンガー(ヴァイオリンも弾きます)、イマーニ・コッポラ(下写真)。
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私はこの人の音楽が大好きで、その後リリースされた彼女の1stアルバム「Chupacabra」(下左写真)は1997年のベスト・アルバムになったくらいの傑作です。もちろん1998年に行われた唯一の来日ショ-ケースも観に行きましたよ(今は亡き「難波ウォーホール」でした)。2ndシングルI’m A TreeThe DoorsSoul Kitchenをサンプリング!)も素晴らしい曲でしたが、その後一切名前を聞かなくなってしまい、僅かアルバム1枚でシーンから消えてしまったイマーニ・コッポラ。その彼女がこのアリス・スミスWoodstockの作曲者(バッキング・コーラスやストリングスも担当)だったとは正直声を上げてビックリしましたね。しかも。ちゃんと音楽活動f0045842_463220.jpgしてくれていた事も嬉しかったです。このWoodstockを聴く限りでは、イマーニのその才能は全く衰えていない事が分かります。ちゃんとmyspaceも存在していて、見てみると何と2007年に2ndアルバムがリリースされていて、しかもそのリリース元がマイク・パットン大先生のレーベル「Ipecac」!Melvinsがカタログの半数を占めるような超個性派レーベルですよ。イマーニがこんなレーベルからリリースしているだけでも驚きですが、マイク・パットンの別プロジェクト、Peeping Tomのメンバーとしてライブにも参加しているそうで更に驚き。マイク・パットンイマーニ・コッポラなんて組み合わせ名前聞くだけでも鳥肌立ちますよ。イマーニはこのWoodstock以外にもう1曲Fake Is The New Real(タイトルがイイ!)でも曲を提供しています。こちらはかなり渋いブルース調R&B。アリス・スミスの低いボーカルが上手く引き出されています。

さてイマーニ・コッポラの話題は置いといて、主役のアリス・スミスです。強烈な個性を持ったイマーニにも全く引けを取らない存在感のあるボーカル。後半のメロウ・ナンバーではジャズ・シンガーのように歌っており、その声は低体温な感触でクールさが漂います。自作曲も3曲あり、これがレゲエ/ダブ調であったり、正統的なポップスであったり、ブルース調R&Bであったりとなかなか多彩です。洗練された美声ではなく、ハスキーでラフさのあるボーカルが何とも言えなくカッコイイ。今後要注目なシンガーです。
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これからこのアリス・スミスの名前はいたる所で聴けるようになるハズ(もし売れなきゃそりゃレコード会社がせいですよ)。クリセット・ミッシェルのようにラッパーの曲へのフィーチャリング仕事とか見てみたい。くれぐれもイマーニ・コッポラのように消えていかないでくれ!(でもレコード会社がイマーニの時と同じepicというのが気になるが・・・)
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ちなみにBBEからリリースされているプロモ12インチLove Endeavorは、Maurice Fultonが手掛けたディスコ・パンク・リミックスとかが収録されているようですが、そっち方面には行かない方が・・・。
 
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by Blacksmoker | 2008-01-28 00:31 | R&B / SOUL

ANGIE STONE [The Art Of Love & War]


全国のソウル・ブラザー&シスター!

もうこの素晴らしいアルバムは聴いたか?もしまだ聴いてないなら、今すぐレコード屋へ走ったほうがいい。

2007年秋はレディ・ソウルたちのリリース・ラッシュ。ジル・スコットレディシチャカ・カーンを手始めに、アリシア・キーズメアリー・J・ブライジの新作も続々と登場しますが(エリカ・バドゥの新作の噂も!)、これはその中でも大本命の1枚。

f0045842_3112697.jpgアンジー・ストーンの3年振りの新作「The Art Of Love & War」。これが素晴らしすぎて素晴らしすぎて言葉に出来ないくらいです。全曲捨て曲なし!オープニングからエンディングまで素晴らしい感動の嵐。このリリース・ラッシュの中で一番期待してましたが、その期待以上に素晴らしい作品をアンジー・ストーンは創り上げてきましたね。これは是非とも全てのソウル・ブラザー&シスターたちに聴いてもらいたい作品です。

さてこのアンジー・ストーン。デビューは1979年なので実に28年のキャリアを持つ大ベテラン。そのキャリアはThe Sequenceというガールズ・ラップ・グループからスタートしている(ちなみにこのグループはSugar Hillからリリースしています)。その後、Vertical Holdというコーラス・グループで活動し、1999年にソロ・アルバム「Black Diamond」をリリースし、ソロ・キャリアをスタートさせ現在までに3枚のソロ・アルバムをリリースしています。
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今回4枚目のソロ・アルバムとなるこの「The Art Of Love & War」。話題はやはり新生「スタックス」レーベルからのリリースという事でしょう。2007年に再始動したサザン・ソf0045842_3202748.gifウル・レーベルの名門「スタックス」(今年は1960年代からスタックスがリリースした全シングルを収録した9枚組ボックスが再発されたばかり)。その新生スタックスからは、まずリリース第一弾としてモーリス・ホワイト監修のアース・ウィンド&ファイアのトリビュート・アルバム「Interpretations:Cerebrating The Music Of Earth, Wind & Fire」が出ましたが(これもほんとに素晴らしいです!アンジーBe Ever Wonderfulで参加しています)、新生スタックスの契約第一号アーティストがこのアンジー・ストーンなのです。幼少よりゴスペルに慣れ親しんできたアンジーだけあって、サザン・ソウルの名門スタックスは最適なレーベルだろう。そしてそのスタックスの顔役となるには実力・人気ともに相応しい存在です。

ただこの新作のプロダクションにあたって、スタックス側も「栄光のサザン・ソウルの復権」といった無理なサウンドにすることなく、実に腰の据わったアンジー・ストーンらしいサウンドになっているのも好感が持てますね。
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今回のアルバムは非常に明るい曲調が多く、全曲が際立ったメロディと存在感を持った傑曲ばかり。この変化は非常に大きいですね。アンジーの以前のアルバムに見られたシリアスなトーンの曲がほとんどなくなっているのは、最近婚約したばかりというアンジーの心情がそのまま反映されているのでしょう(ちなみに再婚で、前夫はディアンジェロ)。レコーディングはマーヴィン・ゲイ「What’s Goin’ On」を録音したLAのスタジオが使われています。

さて注目の1stシングルBabyですが、これはアルバムf0045842_3273473.jpgの中でも最もキャッチーな1曲。カーティス・メイフィールドGive Me Your Love(Love Song)のイントロのドラムを再現したオープニングで既に完璧ですが、フィーチャリングに迎えられたのはアンジーの大先輩にあたるレディ・ソウル・シンガー、ベティ・ライト(右写真:ジョス・ストーンを発掘した人でもあるそうですね)。この存在感満点の2人による掛け合いも見事です。そしてアンジー節ともいえる歌い回しが存分に堪能出来る名曲です。

そして全体的にミディアム・スローな曲調が大半を占めるアルバムの中で、アップなダンス・チューンMy People。冒頭にデューク・エリントンのナレーションをサンプリングし、黒人の同胞達に立ち上がる事を声高に歌い上げるこのチューン。ゲストに登場するのは、こちらも大ベテラン・シンガーのジェイムズ・イングラム。中盤に登場する彼の濃すぎるソウル・ボイスがたまりません。終盤にかけて黒人の著名人の実名を次々にシャウト・アウトしていく展開もやたらとカッコイイです。
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重厚なピアノとゴスペル・コーラスをバックに余裕たっぷりに歌うこれぞ2007年のサザン・ソウルなTake Everything In。昔のラッパーとしての実力を垣間見せるようにたたみ掛けるボーカルと、プリンスのようなファルセット・コーラスが絡み合うファンキーなPlay Wit Itアンジー・ストーンらしいメロディ・ラインが流れ出る、悲しげな曲調だがどこか突き抜けた明るさがあるSometimes、まるでマーヴィン・ゲイを彷彿させるスピリチュアルなHalf A ChanceSit Downなど全てが存在感を持った名曲揃いです。
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最終曲のスローなアコースティック・ソウルHappy Being Meは、木漏れ日のような暖かさを持った泣きそうなくらい素晴らしい曲です。この曲ではデンゼル・ワシントンの奥様のポーレッタ・ワシントンが客演して美しいソウル・ボイスを聴かせてくれます。

アンジーの凄いところは、有名なプロデューサーの作るサウンドに頼ることなく、自分の感性にあった人を起用するところ。なので自分の求めているサウンドを作る人なら無名でもどんどん起用していきます。前作で起用したジョナサン・リッチモンドはもちろん今作にも参加。素晴らしい曲をアンジーと共に作曲しています。その他の曲は新人プロデューサーにまかせて自身はエグゼクティヴ・プロデューサーとしてアルバム全体の舵取りをしています。全体が一本芯の通ったサウンドで貫かれているのはそのせいでしょう。シンガーだけでなくプロデューサーとしてもその才能を発揮しています。
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時代に左右される事なく、自分のサウンドを追及する真のレディ・ソウル、アンジー・ストーン。スタックスという新しい環境、そして彼女自身の幸せな精神状態とも相まって、アンジー自身の最高傑作どころか2007年のR&B/ソウル界の名盤を作りあげてしまったと言っても良い。実に深く、そして包容力を持った優しい歌声が感動的です。

是非ともこの新作、まだ聴いていないソウル・ブラザーたちは必ずチェックして欲しい!後世に残る名盤です!
 
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by Blacksmoker | 2007-10-27 02:23 | R&B / SOUL