カテゴリ:アフリカ( 3 )

ZAP MAMA [Supermoon]


さて2007年はアフリカを代表する女性アーティf0045842_2353064.jpgスト、アンジェリーク・キジョーの新作がリリースされましたが、ここにもう一人アフリカを代表する女性アーティスト、ザップ・ママの新作がリリースされました。個人的にはこの3年振りとなるこのザップ・ママの新作「Supermoon」は、最も期待していた1枚。アフリカをルーツにし、そこから世界に向けて常に斬新な音楽を発信する、このあくなき音楽の探求者ザップ・ママ。今回のアルバムも実にポップであり、同時に実に刺激的なサウンドが満載です。

さてこのザップ・ママですが、実はザイール生まれのマリー・ドルヌという女性のソロ・プロジェクト。
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99年にワールドワイドでデビューした時はザップ・ママは5人組の女性グループだったのですが、その後リーダーのマリー・ドルヌの音楽的志向が他の4人と完全に変わってしまったため、グループは2ndアルバムをリリース後解体され、3rdアルバム「」以降はマリー・ドルヌのソロ・プロジェクトとして機能している。

実はマリー・ドルヌがソロへ転向するきっかけとなったのは、マイケル・フランティ(下写真)との出会い。
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彼との出会いによって彼女の音楽は更なる高みに到達したと言っても過言ではない。その後は様々なアーティストとの交流を経て、前作である2004年のアルバム「Ancestry In Progress」ではよりヒップホップ的アプローチを見せた(エリカ・バドゥコモンタリブ・クウェリクエストラヴなど豪華なゲストが参加)ザップ・ママですが、3年振りとなるこの新作「Supermoon」では更にアフリカ的リズムを強めながらも、サウンドは更に洗練され、マリー・ドルヌのその妖艶なヴォーカルにもますます魅力的になっています。そしてその開かれたポップ・センスは、先に出たアンジェリーク・キジョーの作品にも共通する事ですが、多くの人々の心を捉えるでしょう。
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リズムはアフリカ的ですが、メロディは欧米的なところも多く、そのブレンド加減が絶妙で彼女の孤高性を更に高めている。アンジェリーク・キジョーが、自身の音楽のスケールを大きくしてグローバル化を目指すのに対し、このザップ・ママも同じベクトルを向いてはいるが、サウンドはより実験的な方へ向かっています。

前作では様々なゲスト・ヴォーカルを迎えていましたが、今作では打って変わってほとんどゲスト・ヴォーカルf0045842_23595945.jpgは参加しておらずマリーのヴォーカルに照準を当てた作りになっています。しかしサウンドに関しては別。タダモノではないゲスト陣が参加しています。特に注目なのは1曲目1000 Waysウィル・リーの弾くベースラインに合わせ、ドラムを担当するのはトニー・アレンフェラ・クティのリズムを支えたグルーヴ・マスターによるリズムが冴えるこの曲からしてそのサウンドはプリミティヴ。その他にもミシェル・ンデゲオチェロ(新作「The World Has Made Me The Man Of My Dreams」ではかなり凄い領域まで行ってしまってます)やバシリ・ジョンソン、その他にもアフリカ人のミュージシャンが多数参加。かなりのクセモノが揃っています。

そしてもちろん盟友マイケル・フランティも参加。彼の参加したHey Brothaでは2人の早口言葉のような巻き舌のヴォーカルの掛け合いが聴けて面白いです。続くタイトル曲Supermoonでは一変してリラックスしたアコースティックなポップ・チューン。そして後半に進むにつれ徐々にスピリチュアルな方向へ。その途中に挟み込まれた明朗なアフリカン・ポップスGatiも良いアクセントになっています。アフリカン・ポップスと実験的精神が混然一体となっていく様はなかなか痛快。もはや大物の風格さえ漂う堂々たる作風です。
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もちろん全曲マリーによる作曲。この新作を聴けば必ずこのマリー・ドルヌの底知れぬ才能に惚れることは間違いないでしょう。素晴らしいファッション・センスも注目です。是非この新作チェックしてみて下さい。

 
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by Blacksmoker | 2007-09-17 00:28 | アフリカ

TINARIWEN [Aman Iman]

ここ最近、俄然注目を浴びている「砂漠のブルーズ」。

f0045842_2243740.jpg昨年亡くなったアリ・ファルカ・トゥーレヌールー・カイネ、最近ではトゥーマストなど「砂漠のブルーズ」を代表するアーティストの作品が続々と登場していますが、サリフ・ケイタら素晴らしいミュージシャンの出身でもある西アフリカのマリ共和国から「砂漠のブルーズ」の真打ちティナリウェンの登場です。彼らの3年振りの新作「Aman Iman」は後世に残る素晴らしい傑作と言って良いでしょう。

このティナリウェンはマリの北東部出身。アフリカ大陸に横たわる広大なサハラ砂漠の遊牧民トゥアレグ人によって結成されている。トゥアレグ人は1960年後半にフランスの植民地政策と戦うのですが、その革命軍の中にこのティナリウェンのリーダー、イブラハム(下写真中央)をはじめとする3人のオリジナル・メンバーがいたそうです。
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手作りのギターを持って活動していたティナリウェンはその後、80年代に入りボブ・ディランボブ・マーリィのプロテストな音楽に影響を受けアコースティック・ギターをエレクトリック・ギターに持ち替え活動するようになる。90年代、内乱の続くマリにおいてはティナリウェンのサウンドは革命軍の歌となり、もはやマリでは彼らは伝説のグループとして巨大な影響をあたえるグループになっていたそうですね。

2004年にリリースされた前作「アマサクル」で一気に注目を浴びたティナリウェンの新作「Aman Iman」は前作を大きくスケールアップした傑作です。このAman Imanと言うのは英語でWater Is Life、つまり「水こそ命」。砂漠の街に住む彼らならではのタイトルです。
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ティナリウェンはフロントマンが4人いてその4人が全員ヴォーカルとエレクトリック・ギターを弾き、そこにベースとドラムとパーカッションが入るのが基本構成。トライバルなリズムに歪んだブルース・ギター4本が絡み合い、その上をイブラヒムの歌と土着的な女性コーラスが重なるカッコ良すぎるサウンド。ちなみにティナリウェンはエレクトリック・ギターが何層にも重なるが、これが全てアコースティック・ギターだとまるでサリフ・ケイタの近年の洗練されたサウンドになります。

f0045842_2341643.jpg今回は前作よりもメリハリの利いた曲が増えたのも良い変化だ。アコースティック・ギターを導入したのも良いアクセントになっている。実に躍動感のある音楽です。生命のエネルギーが漲っているのがひしひしと伝わってきます。リズム感もアフリカならでは。

イブラヒムのヴォーカルもカッコイイです。彼の歌詞はやはりボブ・マーリィの影響か現実を直視したものが多い。それでいて予言者的でもあります。このイブラヒムは写真でも分かるように非常にカリスマティックな人であるようですね。

プロデュースを手掛けたのが元レッド・ツェッペリンのヴォーカリストでもあるロバート・プラントのバンドのギタリストでもあるジャスティン・アダムス。そう聞くと近年の(ペイジ&プラント以降の)ロバート・プラントが、アラブやアフリカ的な音楽へ向かって行っていたのも納得です。2001年からマリで開催されている「The Festival Of The Desert砂漠のフェスティヴァル)」にもロバート・プラントティナリウェンと共に出演しています。そのジャスティン・アダムスによって、欧米のマーケットにも充分対応できる音作りになっています。Konono No.1のようにむちゃくちゃな録音状態であっても、その勢いや熱気は自体は伝わるでしょうが、やはり歌詞の聴きやすさやギターのアンサンブルなどカチっと纏められたサウンドになっている。これは大正解だったと思います。

ほんとに何度聴いてもその音楽の躍動感に心踊らされながらも、同時にその歴史的背景から来るその重さや奥深さに感服してしまいます。とりあえず彼らの歴史の中でも最高傑作です。
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さあ世界へ飛び立つ準備は揃った。是非とも世界中でこの砂漠のブルーズを奏でて欲しい!
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by Blacksmoker | 2007-04-19 00:35 | アフリカ

SALIF KEITA [M’Bemba]

f0045842_23564283.jpg今回はアフリカに飛んでみます。このサリフ・ケイタの新作「ムベンバ」は2005年に私が最も聴いたアルバム。もちろん私的2005年ベスト・アルバム です。

サリフ・ケイタは1949年生まれ、西アフリカのマリ出身の偉大なヴォーカリストです。アフリカを代表するアーティストといえばセネガルのユッスー・ンドゥールや、ナイジェリアのキング・サニー・アデらがいます。彼らはアフリカ音楽の伝統を受け継ぎながら世界で活躍するアーティストだが、彼らはグレオというアフリカ特有の吟遊詩人達の血筋の出だ。一方このサリフは、13世紀に西アフリカ一帯を征服した古代マリ帝国の始祖スンジャータ・ケイタの直系の子孫という王家の血筋。ものすごいセレブでロイヤルな人なのです。ただ彼は「アルビノ」という色素欠乏症で、生まれつき皮膚のメラニン色素が欠乏しているため肌の色が薄く、視力も弱かったので一族の間で差別的扱いを受け追放同然の身だった事も有名な話です。

さて、素晴らしい作品を数々リリースしているサリフの3年振りとなるアルバムのタイトルは「ムベンバ」。『先祖』を表す言葉らしい。今回のアルバムはアコースティック・ギター4本とパーカションという、前作「モフー」 から更にアコースティック路線を追求したサウンドが特徴だ。複雑に絡み合う4本のアコースティック・ギターの響きにうっとりです。以前にビル・フリーゼルが4人のギタリスト達と組んだTHE INTERCONTINENTALSというバンドも何本も絡み合う弦の響きが素晴らしかったが、それと共通した世界を感じます(そういやTHE INTERCONTINENTALSにもマリのミュージシャンが参加していたっけ)。そしてf0045842_23594126.jpg美しい女性コーラス、コラやンゴニといった民族楽器のパーカッションも加わり、洗練された(決して土着的ではない)民族音楽を聴かせてくれます。そしてなんと言っても最大の魅力はサリフのヴォーカルだ。伸びやかで力強い歌声はユッスー・ンドゥールやサニー・アデのそれを上回る素晴らしさです。王家の血筋から来るものなのか、彼の声からは気高さが感じられます。歌詞が付いてない(日本盤にもない)ので詩の内容が全く分からないのが残念です。

サリフはアルバムを製作する時は、50%アフリカ、50%ヨーロッパを常に意識しているそうです。このアルバムが土着的なベクトルに振り切らず、洗練されたいわゆる「ポップ」とも言える音楽であるのはサリフの「もっと世界中の様々な人に届いて欲しい」という思いの表れでしょう。その思いを汲んで皆さんも聴いてあげてください。
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by Blacksmoker | 2006-04-03 00:19 | アフリカ