カテゴリ:ブラジル( 16 )

ARLINDO CRUZ [Sambista Perfeito]


f0045842_83593.jpg最近のブラジルの音楽シーンを席巻している「新しいサンバ」。オルケストラ・インペリアルや、ホベルタ・サーホドリーゴ・マラニャオンなど若きサンビスタ達が随分と活躍しているが、このベテラン・サンビスタの本気のアルバムを聴けばまだまだサンバは奥深く底知れない魅力に満ちた音楽だという事を実感させられる。これは文句なしに2008年のブラジル・サンバの最高傑作だ。

アルリンド・クルース、実に5年振りの新作のタイトルはズバリ「Sambista Perfeito」完璧なサンビスタ)。そう名付けた本人は以外にも謙遜しているようだが、アルリンド・クルースこそ名実共にこの言葉がふさわしい。
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カシーキ・ジ・ハモス」、そして「フンド・ヂ・キンタル」という名門サンバ・チームから独立し、ソンブリーニャとのデュオでの活動を経てソロ・アーティストとしての道を進むアルリンド・クルース。現在49歳。彼こそは昨今のサンバの新しい潮流と過去の偉大なるサンバの源流を繋ぐ存在だ。そしてこのアルバム、はっきり言って凄い。圧倒されるほかない。もう地力の違いを見せ付けられた気がするほどだ。今が彼の最も乗っている時期なのは間違いない。
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さらにこの新作は新旧サンバのアーティスト達が随所に登場し、世代を超えたミュージシャンが最高のサンバを奏でるという点において非常に意義のある作品でもある。

おそらくアルバム中で最も注目されるのはエリス・レジーナf0045842_815538.jpgマリア・ヒタ(左写真)を迎えデュエットするO que e o amorだろう。この曲はアルバムの中でも一服の清涼感を感じさせる曲で2人の歌の掛け合いがどんどん白熱し大合唱になっていきます。さらにはサンバとヒップホップを融合し独自の路線を進むマルセロ D2を迎え、彼のラップが鋭く切り込むO Brasil e isso aiなど新しい世代との共演も非常に面白いが、それ以上にマウロ・ヂニスとの絶品のサンバで故郷を歌うMeu Lugar、ほかにもゼカ・パゴヂーニョや「フンド・ヂ・キンタル」の重鎮セハーノ、そしてシャンヂ・ヂ・ピラレスグルーポ・ヘヴェラサォンなど偉大なるサンビスタとの共演が見逃せません。どの曲もソロ・パートから始まり、中盤から徐々に熱を帯びてきて最終的には全員で大合唱となる曲展開はもう最高の一言。

自身の作品だけでなく、他にも様々なアーティスト達に曲を提供するアルリンドだけあって(昨年マリア・ヒタがリリースしたサンバ・アルバム「Samba Meu」も収録曲中6曲がアルリンドの作曲でした)、その曲作りに関しても比類なき才能を見せ付けます。絶品のメロディ、そして美しいハーモニーなど完璧ですね。
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本物のサンビスタによる極上のサンバを堪能できる素晴らしき一枚。今年のブラジル音楽界はこのアルリンド・クルース「Sambista Perfeito」なしには語れないですよ。
  
 
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by Blacksmoker | 2008-08-18 07:53 | ブラジル

ADRIANA CALCANHOTTO [Maré]


f0045842_2415731.jpg2007年にモレーノドメニコカシンというブラジル新世代の3人を引き連れて待望の初来日を果たし独特の存在感を見せ付けた大物個性派シンガー、アドリアーナ・カルカニョット。遂に新作「Maré」の登場です。

2004年の子供向けに作ったアドリアーナ・パルチンピン名義のアルバム「Adriana Partimpin」、そしてそのライヴDVD「Adriana Partimpim O Show」のリリースはありましたが、純粋なオリジナル作品としては2002年の「Cantada」以来6年振りの作品。これは今年のブラジル音楽界最大の話題作でしょう。

知的でアートさの漂うジャケットからも伺い取れる雰囲気はそのままに、アドリアーナ特有の物憂げなメロディが冴えます。
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Maré」とは「潮流」という意味だそうで、同じ海をモチーフにしたアルバムとして1998年の「Maritmo」を思い出しますが、どちらかと言うと前作「Cantada」よりも「Maritmo」に近い感じがします(ちなみにアドリアーナとしては海をテーマとしたアルバムをもう1つ作る予定だそうです)。

個人的にアドリアーナのアルバムは一聴してもなかなかその全貌を掴めないものが多く、最初はピンと来ない事が多い(まあ「Adriana Partimpin」は別でしたが)。しかしアルバムを何度か聴いていくと常に新しい発見があり、いつの間にか好きになっているという不思議な魅力を持っている。
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好敵手とされるマリーザ・モンチが音楽的にはどちらかというと王道的な路線で国民的人気を博するのに対し、アドリアーナ・カルカニョットは完全なオルタナティブ路線で国民的人気を博する。マリーザキャロル・キングとするならば、アドリアーナはさしずめジョニ・ミッチェル。日本で言うとUA的な存在ですね。今回のこの「Maré」も一聴すると、(メロディの際立った曲もありますが)どちらかと言うと地味目な印象を受けるのですが、聴く度にどんどんハマっていく魅力を持っています。
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そして、今回のアルバムはかなり話題になる要素が多い。

まずは何と言っても昨年の初来日公演にも帯同したモレーノドメニコカシンという曲者3人がアルバムに全面参加していること。来日時のアナウンスでは「今回のツアーの為だけの特別編成」という触れ込みでしたが、ライブを観た人ならお分かりのように3人との相性の良さは予想以上で、それを活かして今回のアルバムも作ってしまったのでしょう。
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この3人はバックの演奏だけでなく、曲作りにも関わっており、モレーノ(下写真)とアドリアーナの共作曲Maréや、カシンの作曲したUm Dia Dessesも収録されています。特にアコースティックの優しい響きが美しい牧歌的なUm Dia Dessesはとても素敵です。この曲は確か来日公演でも披露されてましたね(モレーノのコーラスがとても良いです)。
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そして最大の話題となるのはマリーザ・モンチの参加でしょう!マリf0045842_2521641.jpgーザの2006年のアルバム「Infinito Particular」アドリアーナ作のVai Saber?が収録されていましたが、今回は逆にマリーザが参加。ペリクレス・カヴァルカンチ作のPorto Alegreマリーザとデュエットしています。このブラジルの2大女王の揃い踏みはなかなか凄い。アルバム中、最もポップで軽快なメロディを聴かせます。必聴。

最終曲2曲はカエターノ・ヴェローゾOnde Andarásと、ドリヴァル・カイミSargaço Marという偉大なるブラジル音楽の先達のカヴァー。女カエターノと称されるアドリアーナだけあって、カエターノのカヴァーもお手の物ですね。そしてSargaço Marの方は1分30秒という小曲ながら何とヴィオラォンでジルベルト・ジルが参加。現ブラジル文化大臣であるジルベルト・ジル(9月に来日決定!)をこんな所で使うとは・・・贅沢すぎます。
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そして今作をプロデュースするのはアート・リンゼイ。アコースティックで生々しい感覚を残しつつも随所にアヴァンギャルドっぽい音を入れるサウンドはやっぱりカッコイイ。

全体的に昨年の来日公演のステージを観ているような作風。ドメニコがMPCを叩き、モレーノがファルセットで歌いながらギターを弾き、カシンが飄々とギターやベースを演奏する姿が目に浮かびますね。もちろんスタジオ録音だけあってホーン・セクションを採り入れた曲もあったりと遊び心も満載。
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一筋ならではいかないながらも、とても聴き応えのある実にアドリアーナ・カルカニョットらしいアルバム。何度も聴いてその素晴らしさを発見しよう。
 
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by Blacksmoker | 2008-05-01 02:14 | ブラジル

Roberta Sá [Que belo estranho dia pra se ter alegria]


今ブラジルで最も活発な音楽はサンバだ。しかも若い世代のミュージシャンの再解釈によるサンバが大きな勢いをみせている。時代は「新しいサンバ」なのだそうだ。

いわゆる「Back To Roots」。でもただの回帰だけじゃ聴いてるほうも演奏してるほうもつまらないわけで、新世代のサンビスタ達は、自分の現代的感性を独自にそのサンバに導入する事により新しいサンバを生み出したわけです。今ブラジルでは、そういった若い世代によって「ルーツ」とも言えるサンバが新しく生まれ変わっているのです。

そんな新世代サンビスタの中で、個人的に最も注目しているのが、このホベルタ・サー
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2005年に1stアルバム「Braseiro」でデビューし、新しいサンバのスタイルを提示してみせた女性シンガーだ。ブラジルの北東部(ノルデスチ)出身。その後リオに移り住みその才能を開花させました。この時まだ24歳という若さ。しかも容姿も美しく、歌も上手いという色彩兼備さ。そして単なる回顧主義的サウンドではなく、打ち込みやサンプリングなども取り入れたサウンドで一躍ブラジル音楽界の若きヒロイン的存在になりました。実はペドロ・ルイスの奥さんでもあります。

f0045842_13461348.jpgそんなホベルタ・サーの2ndアルバム「Que belo estranho dia pra se ter alegria」(日本語タイトルは「なんて奇妙で素敵な一日」)。前作と比較して格段に見違えるのがそのヴォーカル。前作から2年経ち26歳となったホベルタですが、よりスケール感が増し表現力が豊かになっているのが驚きです。サウンド自体は前作を踏襲した現代解釈のサンバ。ブラジル音楽の伝統の良さを持ちつつ、ポピュラー・ミュージックとしても十分に対応できるポップなメロディが爽快です。

新世代サンビスタを代表する注目の男性シンガー・ソングライター、ホドリーゴ・マラニャオンによる曲「Samba De Um Minuto」や、モレーノ・ヴェローゾ(彼の参加するオルケストラ・インペリアルでも新しいサンバの形を提示)による雄大なInteressa?など、なかなか若い才能による曲が素敵だ。
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その他にもシドゥニー・ミレール作のショーロっぽい雰囲気を持ったAlo Fevereiroや、フンド・ヂ・キンタル&イヴォニー・ララの名曲Cansei De Esperar Voceなど昔のサンバの代表曲を取り上げていたりします。

そしてサンバだけに囚われることなく、ホベルタの出身地であるブラジル北東部(ノルデスチ)特有のアフロ・ブラジル的なリズム感のある楽曲も取り上げているのが良いですね。1曲目のO Pedidoなんてもろにノルデスチっぽいリズム主体の曲です。その他にもBelo Estranho Dia De Amanhaルーラ・ケイローガの曲ですが(どこかで聴いたことがあるんですが思い出せない・・・)、このルーラ・ケイローガもノルデスチのアーティストだ。
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そして夫のペドロ・ルイスとの共作の自作曲ではアコースティクなサンバも披露。こういうアコースティックな曲での彼女のヴォーカルはとても冴えていて素敵です。

録音メンバーにはマルコス・スザーノなども参加していたりと、取り上げる楽曲、そして演奏ともになかなか注目すべきトピックが満載。その上をホベルタ・サーの豊かなヴォーカルが自由に飛び回る傑作。昨年のブラジル音楽界の話題の1枚です。
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新しいサンバの風を感じてください。
 
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by Blacksmoker | 2008-01-31 12:59 | ブラジル

CARLINHOS BROWN [A Gente Ainda Não Sonhou]


f0045842_22552292.jpgマリーザ・モンチの来日、そしてアドリアーナ・カルカニョットの来日など、日本のブラジル音楽ファンにとって、ブラジル・フィーヴァーが続いてます。そしてその熱の冷めやらぬうちにこの男の新作も登場!今回紹介するのは「バイーアの風雲児」カルリーニョス・ブラウン。彼の2年振りの新作「A Gente Ainda Não Sonhou」です。これが素晴らしい傑作に仕上がっているので紹介しましょう!

以前マリーザ・モンチの記事でも紹介したこのカルリーニョス・ブラウン。「パーカッション集団チンバラータの総帥」とか、超ド派手な外見とかもあいまって、一般的なカルリーニョス・ブラウンのイメージというと、ブラジリアン・パーカッションが乱れ飛び、カルリーニョスが吼えまるトライバルで血沸き肉踊るサウンドという感じでしょうか。
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もちろんそれはカルリーニョスの魅力の一部ではありますが、このカルリーニョスは非常に繊細でポップな音楽を作るシンガー・ソングライターという一面も持っている。そのカルリーニョスのポップ・マエストロとしての功績は自身のソロ・アルバムや、マリーザ・モンチアルナルド・アントゥニスとの運命共同体トリバリスタスでの活動でも実際に聴く事が出来るので確認して頂きたいのだが、とてもやさしいタッチの曲が多い。しかも今にも壊れそうなくらいの繊細な作風がとても心地よく、ホントにあの風貌からは想像しがたく、そのギャップが面白い。
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最近は異ジャンルとのコラボレーションなどの活動が活発で「バイーアの風雲児」としての異名通り、暴れまくっているイメージがありましたが、今回のアルバム「A Gente Ainda Não Sonhou」は久しぶりにカルリーニョスのシンガーソングライター的なポップさ全開の曲が詰まったアルバムだ。

しかし「シンガー・ソングライター的」といっても、そこはやはりカルリーニョスのアルバムなので、そのリズムはおそろしく多彩だ。エレクトロニックなサウンドから、オーケストラを導入したもの、コンガ、ボンゴ、パンデイロ、タブラなど膨大な数のパーカッションが鳴りまくっています。
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しかし、面白いのはこの怖ろしいほど緻密に構成されたパーカッションによるリズムが、全く主張することなく、カルリーニョスの歌声の後ろにまわっている事。あくまで主役は「」という姿勢が貫かれています。カルリーニョスの歌声も曲調と同じようにやさしく繊細です。

さてやはりアルバムの中で注目なのは、マリーザ・モンチアルナルド・アントュニスカルニーニョス・ブラウンによるトリバリスタス(下写真)の3人によって共作された3曲。
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Mande Um Email Pra Mimでは時計の針のチクタク音をリズムに、優しげなヴィオラォンの音色やトライアングルの残響音、水の音などが重なるまるで子守唄のように穏やかな曲。カルリーニョスの歌声がアルナルド・アントュニスの声にそっくりでびっくりします。そしてもう1曲のEverybody Gente。これはトリバリスタスの3人にセウ・ジョルジまでもが共作者として名を連ねた超ポップでドリーミーな素晴らしい1曲。まさしくトリバリスタスの真骨頂ともいうべき3者(いや4者か)のそれぞれの個性が見事に融合した名曲です。後半の女性コーラスなんて、「もしマリーザが歌っていたら?」なんて考えるだけで身震いがしますね。残りの1曲Página Futuroは、一聴すると全然そんな風には聴こえないんですが、実はエレクトロニックで複雑なリズム構成になっている、とてもストレンジなポップ・ソングです。
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このトリバリスタスの3曲以外もほんとにポップな曲揃い。キャッチーな女性コーラスが特徴的なGuaraná Caféも、アコースティックな弦楽器をフィーチャーしたかなり面白いエレクトロニック・ビートな曲だし、ロマンチックな弾き語りのタイトル曲A Gente Ainda Não Sonhouも、結局はピアノ、アコーディオン、サンプリング音など様々な効果音を入れて、一筋縄ではいかない曲になっていますやはり根っからの天才肌のアーティストですね。
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ジャケットの写真に引くことなかれ。2007年のブラジル音楽界において軽く名盤に認定されるであろうアルバムです!
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by Blacksmoker | 2007-08-06 00:35 | ブラジル

ADRIANA CALCANHOTTO [Adriana Partimpim O Show]


うお~、あと1日!!

個人的にはかなり盛り上がってきてます!アドリアーナ・カルカニョット初来日公演が遂に間近に迫ってきました。
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今年はブラジル音楽界からはマリーザ・モンチという超大物が15年振りに来日を果たしましたが、そのマリーザから僅か2ヶ月後にアドリアーナ・カルカニョットまで来日するなんて2007年は夢のようです!

さて、まだまだ知らない人が多いと思うので、このアドリアーナ・カルカニョットを紹介したいと思います。アドリアーナは1965年ブラジル南部のポルト・アレグレ出身のシンガー。1990年にデビューして今までに7枚のアルバムをリリースしています。
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マリーザ・モンチがブラジル音楽の伝統を大きく受け継いでいるディーヴァ的な立ち位置に対して、アドリアーナ・カルカニョットを一言で表すなら「異端児」。この人は少し変わっています。「不思議ちゃん」と言ったらいいのだろうか、少し掴み所のない変な人なのです。しかしこの独特な不思議な雰囲気の中にも、一本芯の通ったアドリアーナ節とも言えるメロディが非常に印象的。日本人ミュージシャンで言うならUA、海外のミュージシャンで言うならビョークといったところでしょうかね。
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その彼女のリリースする曲はいわゆるポップではあるが、実験的でひねくれた一筋ならではいかない曲ばかり。しかしアドリアーナの凄いのは、リリースする曲がことごとくヒットしてブラジルの国民的な人気を得ているところだ。実験性とポピュラリティを両立させている数少ない存在なのです。その彼女の音楽は彼女が師事するカエターノ・ヴェローゾの音楽に拠るところが多い。彼女の実験精神はトロピカリズモの影響を多分に受けているのです。

f0045842_2110112.jpgさて、そのアドリアーナ・カルカニョットのアルバムは全て紹介したいくらいの名作揃いですが、今回紹介するのはアドリアーナ・カルカニョットの魅力を存分に堪能出来る映像作品です。アドリアーナを知るにはアルバムを全て聴くよりも映像作品を観て頂くのが早いと思います。彼女の映像作品は今までに2作品リリースされていて、2つとも全く異なる性質なので両方ともチェックして欲しいのですが、視覚的にかなり面白いこのDVD「Adriana Partimpim O Show」アドリアーナ・パルチンピン オ・ショー)を紹介します。

これは今のところアドリアーナの最新作にあたる2004年のアルバム「Adriana Partimpim」に伴うツアーでのライヴ映像になります。このアルバム「Adriana Partimpim」自体がf0045842_21103545.jpg非常に面白く、「子供に向けたアルバム」というコンセプトを元に作られている。しかも彼女の幼少期のニックネーム「アドリアーナ・パルチンピン」名義で発表されているのも面白い。でもこれは「子供向け」という言葉に油断すると痛い目を見るアルバムだ。ポップさとアヴァンギャルドさにかけてはアドリアーナ史上最高値。中毒性もハンパない。コンセプトは子供向けだが、大人が聴いても全く問題ない完成度を誇ります。舐めてかかると返り討ちに遭う凄いアルバムと言っていいでしょう。

参加メンバーもアドリアーナの脳内音楽を具現化するには相応しい曲者ミュージシャン揃い。ブラジル音楽の新世代ミュージシャンの筆頭とも言えるドメニコカシンモレーノカエターノ・ヴェローゾの息子)という「どんな楽器でもこなしますよ」的未来派職人集団(右写真)から、最近のカエターノ・ヴェローゾのライヴでも異様な存在感で衆目をf0045842_21111999.jpg集める天才ギタリストのペドロ・サー、そしてマリーザの来日公演でもドラムを担当していたマルセロ・コスタアントニオ・カルロス・ジョビンの孫でもあるピアニストのダニエル・ジョビンなど超豪華なメンバーがホントに様々な音を出しています。ギター、ベース、ドラムといった従来の楽器以外にも、ヴィオラォンやパンデイロといったブラジル音楽特有の楽器などももちろんありますが、更にスクラッチ音やMPC2000などの効果音的なサンプリング音も随所に飛び出し、クラリネットなどの管楽器なども加えてもうその音世界はオリジナリティに溢れています。

そして驚異的なのは、その音楽の全てが「ポップ」という枠に収まっている事。誰でも一発で覚えられ、すぐ歌えるメロディラインはほんとに見事と言うしかない。そして、隠そうとしても自然と体から発せられるアドリアーナのアート的な臭いもやはり強く残っており、その存在感は比類なきものになっています。
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さて、前置きが長くなりましたがこのDVDの中身です。

前述したそのアルバムのツアーなので、ライヴも凄いことになっています。客席前方はほんとに子供(というか幼児)ばかり!その前でアドリアーナが「歌のお姉さん」ばりに歌って踊って見せるのです。
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小さい子供が相手ということもあって、視覚的に最高に面白い演出ばかりで、全く飽きさせない。何たって最初の天井から風船に乗って降りてくる登場シーンからもう面白すぎです。
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服装もいろんな被り物を使ったり、アドリアーナも含めバンド・メンバー全員が楽器を入れ替わり立ち代りで交換しながら演奏します。ステージ上に置かれている様々なオモチャを完全に楽器の一部として使って演奏します。例えばカエルのオモチャの鳴き声とか、お皿を叩く音とか、水槽に入った水の音とかが全部演奏に使われるのです。遊び心満載で観ている方も、演奏している方も非常に楽しめます。ビョーク(金の亡者)が泣いて悔しがりそうなアイディア満載のステージが展開されます。
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そしてアドリアーナの抜群の存在感は健在。非常に美人だし聡明そうな容姿ですが、コケティッシュで、ミステリアスな雰囲気も携えていてその存在感は唯一無二。この映像を観ていると、どんどんアドリアーナ・カルカニョットの魅力に引き込まれていくでしょう。「女カエターノ」とか「現代のトロピカリスタ」といった彼女を形容する言葉がまったく嘘偽りない事が良く分かります。曲もポップ度全開の曲ばかりなので、全く曲を知らない人でも充分に楽しめて、更にはアドリアーナの魅力にヤラれてしまうこと間違いないです映像作品です。
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個人的にはアルバムよりもライブが凄い人だと思いますので、もし初めて聴く人はこの映像作品から入っていって欲しいですね(ブラジル盤のDVDは値段が高いですが…)。

さて、このライヴDVDではドメニコカシンモレーノの「未来派職人集団」は参加してないですが、今回の来日公演では遂にアドリアーナとこの3人が邂逅します(この数日後に、この3人はakikoのバックバンドでフジロックに参戦します!)。事前の告知では全員の担当楽器が告知されていますが、「あくまで担当楽器は予定です」という素晴らしく心踊る文字が載っていました。ドメニコ曰く「アドリアーナがどんな楽器を担当するかは楽しみにしておいて欲しい」との事で、どんな面白いステージが展開されるのかかなり楽しみですね!
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東京のみの2日間公演(日程はコチラ)ですが、私も大阪から参戦してきます!

レポートは次回!
 
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by Blacksmoker | 2007-07-25 00:02 | ブラジル

来日直前! マリーザ特別企画:最終回!

さて明日より始まるマリーザ・モンチ来日公演
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私は東京公演を観に行ってきます。

というわけで今回でマリーザ・モンチ特集は終了。最後にマリーザの映像作品を紹介します。

今回紹介するのは2001年のライブDVD「Memórias, Crônf0045842_1155952.jpgicas & Declarações De Amor」(右写真)。2000年にマリーザがリリースした5thアルバム「アモール・アイ・ラヴ・ユー(原題:Memórias, Crônicas & Declarações De Amor)」のリリース後のツアーを記録したライヴ映像作品です。マリーザの地元であるリオ・デ・ジャ・ネイロでの公演を収めたものになっています。私もいろんなアーティストのライブDVDを観てきましたが、このマリーザのDVDは、はっきり言ってその中でも圧倒的に群を抜いたクオリティを誇る永久保存版。映像美、カメラワーク、ステージング、照明演出など非の打ち所がない素晴らしい作品です。

完璧主義といわれるマリーザは実はレコードだけでなく、ライブでの舞台美術や演出まで全てにおいてプロデュースを行います。凝りに凝った映像や照明などもはや芸術の粋です。とにかく今まで観た事もないようなステージングに度肝を抜かれるでしょう。このライブ映像を観てもらえれば一目瞭然。その舞台演出に誰もが目を奪われるはずです。
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ステージ全体に張り巡らされた薄い半透明な布で出来たオブジェのようなものが目を引きますが、これが凄い!その薄い布で覆われたオブジェの中でマリーザ達が演奏するのですが、曲ごとに様々な幻想的な映像が周りに張り巡らされた布に映し出されます。CGで合成されているんじゃないかと錯覚するほどの美しさです。シガー・ロスとかが良くライブで使ってる大きな薄い布のスクリーンに映像を映し出し、その後ろで演奏したりしますが、マリーザの演出に比べれば子供同然です。リオの芸術家エルネスト・ネトが舞台演出を担当しているそうですが、この人は布を使った人間の体内を表現したような作品が有名で、日本でも個展やインスタレーションを行っている人だそうですね。ちなみに彼の作品がコチラ↓です。
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まあその舞台演出だけでも充分鑑賞に値する作品ではありますが、マリーザのステージングもこれまた美し過ぎます。セクシーな花柄のドレスで登場し、ステージに跪いてキスする姿も美し過ぎます。これだけで一気に目が釘付けになりますね。その後一瞬で観客をコントロールしてしまうカリスマ性には圧倒。その妖艶な動きもまさしく天性のもの。
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この時期のバンドはカルリーニョス・ブラウンの弟子のパーカショニストを3人引き連れており、女性コーラスも含めると総勢11人編成。リズム感の強い肉体的なサウンドを前面に出しています。彼らの様々なパーカッションの繰り出す音が面白過ぎます。

f0045842_1251945.jpgそしてマリーザの左に寄り添う寡黙なベーシスト、ダヂ。2001年当時なら、まもなく50歳になろうともいうダヂですが、まるで少年のような若々しさに驚きます。このダヂの事をカエターノ・ヴェローゾが「美しいライオン」と称したのも頷ける美貌です。引き摺るようなヘヴィな低音ではなく、軽やかなベース・ラインが非常に心地良くマリーザ・バンドの根底を支えているのが分かります。(ちなみにダヂマリーザ東京公演の2日前の5/27に東京でソロ・ライブをやるそうです。チケットは一瞬で完売したようです・・・。)

そしてマリーザの右で弾けるのはギタリストのダヴィ・モライス(下写真右)。ノーヴォス・バイアーノスのリーダーのモライス・モレイラの息子であるこのダヴィ・モライスのロックの先鋭性を含んだエッジの利いたプレイが光ります。この人はペドロ・サーと並ぶブラジル新世代ギタリストの筆頭。確かこの時期はマリーザの恋人でもあったそうですね。
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そして腕の立つ確かなミュージシャン達をバックに、存分に歌うマリーザの貫禄はもう圧巻の一言です。「ブラジル音楽界の女王」という言葉には何の虚飾もありません。

選曲はアルバム「アモール・アイ・ラヴ・ユー」が中心。とにかく照明が素晴らしい。「Água Também É Mar/水だって海になる」ではマリーザが手を伸ばすとスクリーンから水滴の映像が雨のように落ちてきてそれが水面に波紋のように広がる演出照明が幻想的です。今までこんな凄い映像は観たことないです。この他にも観た事ないような映像美が満載です。個人的なはなしですが、美大出身の友人がこのDVDを観て「こんな凄い舞台演出が出来る人は今の日本にはいない」と舌を巻いていましたね。
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この他にもアルナルド・アントゥニスが登場したりと見所は満載。とにかくマリーザの映像作品といえばこのDVDをオススメ!これを観れば必ずマリーザのライブに行きたくなるでしょう。

さあいよいよ舞台は揃いました。この15年振りの来日公演、絶対に見逃すな!

 
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by Blacksmoker | 2007-05-26 00:57 | ブラジル

マリーザ・モンチ来日記念! 特別企画:第3弾

いよいよマリーザの来日公演は今週末26日(土)名古屋からスタートです!
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さて、今回はマリーザの今までリリースしたアルバムを振り返ってみましょう。マリーザは1989年にライブ・アルバム「Marisa Monte」でデビューして以来、今までに7枚のアルバムとトリバリスタスでのアルバム1枚の合計8枚のアルバムをリリースしています。

ディスコグラフィは以下の通り。

Marisa Monte/マリーザ・モンチ(1989
Mais/マイス(1991
Verde Anil Amarelo Cor de Rosa & Carvão
               /ローズ & チャコール(1994
A Great Noise/グレート・ノイズ(1997
Memorias, Cronicas e Declaracoes de Amor
               /アモール・アイ・ラヴ・ユー(2000
Tribalistas/トリバリスタス(2003
Universo ao meu redor/私のまわりの宇宙(2006
Infinito Particular/私の中の無限(2006

ほぼ3年に1枚のアルバムという非常に寡作な人ですね。

そんなマリーザのアルバムの中でBlacksmoker がオススメしたいアルバムを紹介しましょう。

f0045842_1430618.jpg2006年に出た2枚の最新作「私のまわりの宇宙」と「私の中の無限」は必ずチェックして欲しいですが、それ以外ということなら、やはり1994年の3rdアルバム「ローズ & チャコール」をオススメします。アルバムのジャケットが非常に80年代感を漂わせていて少し気に入らないのですが、内容はグレイト。個人的には一番好きなアルバムです。未聴の人はまずはこのアルバムから入ってみて欲しいですね。

1stアルバムがライブ盤だったので、スタジオ盤として実質のデビュー・アルバムとなった2ndアルバム「マイス」は、プロデューサーにアート・リンゼイ(左写真)を迎え、ジョン・ゾf0045842_14395737.jpgーンバーニー・ウォーレルマーク・リボーメルヴィン・ギブスというNYアヴァンギャルド・シーン最強の曲者達を集めたアルバムでした(坂本龍一も5曲参加しています)。ジョン・ゾーンによるフリー・ジャズなアルト・サックスが耳に飛び込んできたり「伝統」と「先鋭」の両方は両立するある意味凄いアルバムでした。そしてこの3rdアルバムにも同様にアート・リンゼイがプロデューサーとして迎えられています(この後5thアルバムまでアートはプロデュースを担当)。伝統的なブラジル音楽を大切にしながらも、随所にアヴァンギャルドな音が挿入されるのはやはりアート・リンゼイならでは。

前作に引き続きバーニー・ウォーレルグレッグ・コーエンといったNYの曲者ミュージシャンが参加していますが、今回はブラジルのアーティストに参加が多く見られます。当時はブラジル新世代の代表的パーカッショニストであったマルコス・スザーノ、そしてトロピカリアの重鎮ジルベルト・ジルの名が目を引きます。そして最も注目なのがこの後マリーザの音楽に欠かせない存在となるバイーア出身の風雲児カルリーニョス・ブラウンの参加でしょう。

総勢200人はいると言われるバイーアのパーカッション集団「チンバラータ」の総帥カルリーニョス・ブラウン(下写真)。
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様々なジャンルを行き来する異種交配が大好きな野生児で、その行動範囲はTHE BOOM宮沢和史マルコス・スザーノも最近はずっと宮沢和史のバンドに参加してますね)からカエターノ・ヴェローゾ、そしてメタル・バンドのセパルトゥラまで多岐に渡る。自身もギタリストであり、作曲家でもあるマルチな才能を持った鬼才。彼の存在がブラジル音楽の発展に大きく寄与したのは明白な事実ですね。

そのカルリーニョス・ブラウンマリーザのアルバムに初めて登場するのがこのアルバムです。もちろん盟友アルナルド・アントュネスも参加しているので、ここで初めてトリバリスタスの3人が邂逅するわけですね。

カルリーニョスの参加で前作よりも伝統的ブラジf0045842_14434437.jpgル音楽のカラーが前面に出だし始めました。はやり耳を捉えるのがブラジリアン・パーカッションのリズム!カルリーニョスのみならず、マルコス・スザーノも一緒になって繰り出すブラジリアン・パーカッションのトライバル・ビートと様々な打楽器の音がポップ・センス溢れるメロディを歌う優雅なマリーザのヴォーカル美しい歌声の後ろで鳴っていて、この融合がマリーザの音楽を一つ上の高みへ持っていったとも言えます。

そして「伝統」を忘れないマリーザジョルジ・ベンの60年代の曲Balança Pemaなども盛り込んだり、さらには後半の3曲ではヴィオラォンでジルベルト・ジルが参加していたりとブラジル音楽の遺産を大事にしていこうという気概も感じられますね。ヴィオラォンの弦の響きがやはりどうしようもなくサウダージ感を感じさせます。あとアート・リンゼイの選曲なのかヴェルヴェット・アンダーグラウンドPale Blue Eyesのカヴァーも。完璧にマリーザの音楽として昇華されている名演です。その他、マリーザの自作曲も全て伝統に根付いており素晴らしいです。
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このアルバムの中で私が一番好きな曲が、異色を放つ曲ではありますが、最近のツアーでも頻繁に披露されている重要曲の一つSegue O Seco」乾いた大地)。この曲はカルリーニョス作曲のブラジルの農民の雨乞いの歌ですが、トライバルなパーカッション、シャーマニックなマリーザの歌、そして土着的な民族コーラス、哀愁のアコーディオンの音色が感動的な1曲。まるでジャマイカのナイアビンギような空気感を持ってます。ウェイラーズのBunny Wailerが76年に出した1stアルバム「Blackheart Man」の一番最終に収録されているナイアビンギのThis Trainを彷彿させますね。
(⇒コチラでその94年の懐かしいPVが観れます! そしてこの曲が最新ツアーでは弦楽器を中心としたこんなアレンジで披露されてます。客席が大合唱なのが凄い!)

ついつい好きなアルバムを語ると長くなってしまいますが、今でも大好きなアルバムですし、マリーザ・ファンの間でも特に人気の高いアルバムです。是非ともチェックしてみて下さい!
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by Blacksmoker | 2007-05-24 00:35 | ブラジル

何とこの人まで来日決定!!


マリーザ・モンチが来日間近というこのタイミングで、何とこの人の初来日公演が発表されました!

アドリアーナ・カルカニョット、初来日決定!
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いやぁ、今年はブラジル音楽ファンにとっては凄い年になりそうです。

マリーザのライヴァルでもあり親友でもあり、そのマリーザと並んで賞されるブラジリアン・ポップの歌姫アドリアーナ・カルカニョットが遂に日本にやってきます。しかもモレーノ・ヴェローゾドメニコカシンというブラジル新世代の最強トリオがバックを務めます!
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もう凄すぎです!一体どんなライブを見せてくれるんでしょうか?


<Adriana Calcanhotto with Moreno+Domenico+Kassin : Japan Tour 2007>

7月25日(水)恵比寿LIQUID ROOM
7月26日(木)恵比寿LIQUID ROOM

開場 18:30 / 開演 19:30
チケット一般発売日:5月26日(土)

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何で東京だけなんだよ!でもこれは行くしかないですね。
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by Blacksmoker | 2007-05-19 01:24 | ブラジル

マリーザ・モンチ来日記念! 特別企画:第2弾


さてあと約2週間後に迫ってきましたマリーザ・モンチの来日公演
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今回の来日は2006年にリリースされた2枚の新作アルバム「Infinito Particular(私の中の無限)」と「Universo ao meu redor(私のまわりの宇宙)」のツアーなので、この2枚のアルバムからの楽曲が中心となって披露されますが、各国での今ツアーのセットリストを見てみるとこの2枚のアルバム以外にもたくさんの曲が披露されています。その中で目を引くのが「トリバリスタス」のアルバムからの曲が多い事です。

今回紹介するこのトリバリスタスというのは、マリーザ・モンチのキャリアの中でもかなり重要なポジションを占めるプロジェクト(バンド)です。

2003年に結成されたこのバンドのメンバーは以下の通り。

マリーザ・モンチ
カルリーニョス・ブラウン
アルナルド・アントュネス

このブラジルを代表する個性派の3人によって結成されたこのトリバリスタスですが、一見意外な組み合わせのようでいて、実は至極当然な成り行きで結成されている。
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何たってアルナルド・アントュネスマリーザの91年の2ndアルバム「マイス」の時点で既に参加しているし、カルリーニョス・ブラウンの99年の2ndアルバム「オムレツ・マン」はマリーザがプロデュースしている。そしてアルナルドの2001年のアルバム「パラデイロ」は今度はカルリーニョスがプロデュース。その他にも彼らの共演・共作など数えたらキリがないくらい多い。ブラジル音楽界というのはどこかで誰かが繋がっている。どんなところにも必ず顔を出すカエターノ・ヴェローゾしかりである。

f0045842_22561024.jpgそんな人気・実力共に申し分のない3人が結成した超話題のこのバンドなので、やはりブラジル本国、それだけでなく世界各国でも大ヒットを記録。ブラジルではチャート・バスターな大ヒット・アルバムにもなりました。

このアルバム「トリバリスタス」(右写真)、世界中で大ヒットしチャートを賑わせたアルバムという事なので、未聴の人は果たしてどんなに派手で凄いアルバムなんだろうかと想像するでしょうが、実はこれが肩透かしを喰らうほど落ち着いた大人のアルバムなんです。私もこのアルバムが出た当時はカルリーニョスが暴れ回り、マリーザが弾けまくっているようなアルバムをイメージしていたので、その落ち着いたアルバム全体の印象に正直驚きでしたが、じっくり聴いてみるとこのアルバムの尋常ならざる完成度に舌を巻きました。アコースティックな音色を中心に、落ち着いていて、ある種地味でいて実はもの凄い凝った作りになっています。

やはりこのトリバリスタスの真の要はアルナルド・アントュネスだろう。2006年のソロ・アルバム「クアルケール」も完f0045842_230137.jpg成度の高い絶品のアルバムでしたが、トリバリスタスの根底、つまりリラックスしていながらもめちゃくちゃ緻密なつくりになっているこのアルバムのサウンドを支えているのがこの男であることに間違いはないだろう。歌詞も手掛け、他の楽器も操る鬼才ですが、何たってボトムの低いバリトン系の声が素晴らしい。そして文学的で非常に表現力豊かな歌詞も素晴らしいですよ。(カルリーニョス・ブラウンがやや控えめな感じがしますが)

さらにこの3人以外にもこのトリバリスタスを支える2人のミュージシャンがいます。1人は前回紹介したノヴォス・バイアーノスからダヂ(右写真)。もf0045842_23357100.jpgはや今のマリーザにはなくてはならない存在ですね。そしてもう1人はバイーア出身のセーザル・メンデス。この2人の働きが随所に光っている。ダヂの演奏する不思議なヴィオラォン、そしてセーザル・メンデスの弾くガット・ギターのアコースティックな響きがとても心地よいです。ちなみにダヂは様々な楽器を演奏しているが本業であるベースは一切演奏していないのが面白い。このセッションがいかにリラックスした雰囲気だったが想像出来ますね。マリーザいわくこの2人もトリバリスタスの一員との事。

さて、このアルバムの中で私の一番のお気に入りはPassf0045842_238958.jpge Em Casa(家においでよ)。この曲は今回のツアーでも披露されていますが、バイーアの女性シンガー、マルガレッチ・メネーデスを迎えたアルバム中一番ポップでダンサブルな名曲。アルナルドのクールな語りのようなヴォーカルにキャッチーな女性コーラスが絡み、カルリーニョス・ブラウン(左写真)の出す様々な効果音も耳を引き、とても良いアクセントになっている。そしてマリーザの吹くハーモニカが素晴らしい!

全体的にとても落ち着いたアルバムですが、非常に聴き応えのある素敵なアルバムでもあります。流行り廃りの波に一切左右されない音楽ですね。マリーザ・モンチのキャリアにとっても非常に意義のあるバンドでありますが、ブラジル音楽ファンにとっても同時に重要なアルバムです。
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是非マリーザのアルバムと同様に、このトリバリスタスもチェックしてみましょう。
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by Blacksmoker | 2007-05-17 00:28 | ブラジル

マリーザ・モンチ来日記念! 特別企画:第1弾

さあ、いよいよ5月末に迫ってきたブラジル音楽界の女王マリーザ・モンチ15年振りの来日公演(公演日はコチラ)!
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そのマリーザ・モンチの待望の来日を記念して、マリーザをより知ってもらう為にマリーザに関係するアイテムをいくつか紹介していきたいと思います。

さて、今回の来日公演では10人編成で行われることが公式にアナウンスされていますが、そのバンドの中に注目のメンバーがいます。
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まずはベーシストを務めるダヂ。この人は現在50歳を越える年齢ですがここ数年はずっとマリーザのバンドに参加しています。そしてギタリストを務めるのはペドロ・ベイビー。前回のツアー・メンバーだったダビィ・モライスからギタリストの座を引き継いでいます。実はこのダヂ、そしてペドロ・ベイビー、さらには前任ギタリストのダビィ・モライスと、この3人にはある共通のバンドが関係しています。

それが今回紹介するバンドOS NOVOS BAIANOS(オス・ノーヴォス・バイアーノス)です。
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その名(ノーボス・バイアーノス新しいバイーア人)が示す通り、1968年にブラジルのバイーアで結成されたバンドです。男女2人のヴォーカリストを擁し、3人のパーカショニストもいる総勢9人組の編成。当時はメンバー全員が10代~20代という若さであったので、ショーロやバイアォンなど伝統的なブラジル音楽にボサノヴァ、そして60年代後半の欧米のロックも融合させた音楽をやっていました。ちょうどこの60年代後半というとカエターノ・ヴェローゾジルベルト・ジルらが興した「トロピカリズモ運動」が軍事政権に弾圧されていた時期でもありカエターノジルベルトはロンドンに亡命中。その彼らの意志を受け継ぐ形でこのノーヴォス・バイアーノスは結成されたと言われています。
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さて前置きが長くなりましたが、このノーヴォス・バイアーノスマリーザのバンド・メンバーにどう関わっているかなんですが、実はマリーザのバンドでベーシストを務めるダヂはこのノーヴォス・バイアーノスのベーシストなのです。そして現在マリーザのバンドのギタリストであるペドロ・ベイビーはこのノーヴォス・バイアーノスの女性ヴォーカリスト、ベイビー・コンスエロ(現在はベイビー・ド・ブラジルに改名)の息子。そしてそして前任ギタリストだったダビィ・モライスも、ノーヴォス・バイアーノスのリーダーでありヴォーカリストのモライス・モレイラの息子なのです。

要するに家族ぐるみで繋がっているわけですよ。余談ですが、先日友人の結婚式に行きまして、その新婦のお兄さんの奥さんがブラジル人なんですが、ブラジル人の親子の関係は日本人のそれとはかなり違っていて、まるで友人か兄弟のような関係だということを痛感しましたね。だからブラジル音楽界では、親子や親族同士が繋がっているバンドなんて珍しいものでも何でもないのですね(アフリカとかもそうですよね)。

さて是非聴いて欲しいのがこのノーヴォス・バイアーノスが1972年にリリースした2作目「Acabou Chorare」(アカボウ・ショラーレ)です。これf0045842_2325011.jpgは当時の才能に溢れたブラジルの若者のエネルギーが爆発した素晴らしい傑作であり、さらには70年代ブラジル音楽シーンにおいても記念碑的な作品であります。ここにはカエターノらがリリースしたあの名作「トロピカリア」と同様のエネルギーが感じられます。まさしくトロピカリズモ直系のフラワーチルドレンです。そしてブラジルの伝統音楽を大切にしながらも、自分達の音楽を創ろうという外へ向けた力が非常に感じられます。しかも更に凄いのは今聴いてもまるで30年前の音とは思えないことです。普通に聴いたら今の若いバンドがリリースした新作のようなフレッシュさです。このバンドの先進性が分かりますね。このアルバムは1997年に初めてCDとして復刻され世界中の多くの人が感動した傑作です。

f0045842_23182064.jpgやはり特に目(耳)を引くのは女性ヴォーカリストのベイビー・コンスエロ(左写真)の歌声と、モライス・モレイラのギター。ベイビー・コンスエロの少し舌足らずで、少女のようにあどけない声がとてもチャーミング。そしてモライス・モレイラの緩急豊かで変幻自在のギターが凄過ぎます。アコースティックからエレクトリック・ギターも自在に使い分け、トリッキーで印象的な演奏を見せていて驚異的です。終盤のUm Bilhete Prá Didiのギターは圧巻過ぎて言葉が出ませんよ。

そしてマリーザ・モンチも実はこのアルバムからの曲をカヴァーしております。彼女の1997年のアルバム「ア・グレート・ノイf0045842_2319152.jpgズ」(スタジオ録音とライブ録音を合わせたアルバム)でこのノーヴォス・バイアーノスA Menina Dançaをカヴァーしております。ベイビー・コンスエロの繊細であどけない歌声を、マリーザが歌うと実に堂々たる曲になりますがこの曲を現代に見事に蘇らせた実に素敵な名演です。この当時マリーザは、モライス・モレイラの息子であるダビィ・モレイラと付き合っていたそうですね。思わぬ形でノーヴォス・バイアーノスに注目が当たったと言って良いでしょう。

現代に蘇ったこの素晴らしい名盤。是非一度マリーザの音楽と共に聴いてみて欲しいです。
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by Blacksmoker | 2007-05-12 00:36 | ブラジル