カテゴリ:BLUES( 2 )

大城美佐子 [唄ウムイ] 

この音楽は日本人にとってのブルーズでありゴスペルでもある。

大城美佐子の実に10年振りとなるアルバム「唄ウムイ」f0045842_2044538.jpg発売されました。この音の中に息づく喜びや悲しみ、愛や郷愁といった全ての感情が聴く者の心を捉えて離さないでしょう。200年以上前から歌われる沖縄民謡に込められた感情が、今まさに目の前で蘇るようです。このアルバムを聴いて思うことは人それぞれではあるが、時間を忘れて何か日本人として心の中にある大事なものを感じさせられるのはおそらく聴いた人皆に共通するものではないだろうか。これはやはりブルーズやゴスペルの持つ性質と非常に似通っている。

大城美佐子という人は嘉手苅林昌知名定男登川誠仁らと並ぶ沖縄民謡界の大御所。1936年大阪市大正区北恩加島生まれ、名護市辺野古育ち。20歳頃から古典音楽や舞踊を習い、普久原恒勇上原直彦らに強く勧めf0045842_20484733.jpgられ、知名定繁知名定男の父)に弟子入りして民謡の道に進んでいる。1962年シングル片思いでデビューし、以後レコード・CD、海外・国内の公演、映画、テレビなどでの活動を続けています。芸歴は既に50年という大ベテランです。「風狂の歌人」と呼ばれた嘉手苅林昌(故人)とは名コンビとして知られています。私が彼女の名前を知ったのもその嘉手苅林昌と一緒に出演していた映画「ナビィの恋」でした。余談ですが彼女が弟子入りした知名定繁は大阪市生まれ、登川誠仁も尼崎生まれだそうです。大阪市大正区生まれの大城美佐子といい、育ったのは沖縄だが生まれが大阪近郊という人が多いのは偶然でしょうかね?興味深いです。その知名定繁は沖縄独自の琴「琉琴」の生みの親でもあります。

その大城美佐子の新作ですが、1つのコンセプトを元に制作されたようです。

それは「若い世代にも聴ける沖縄民謡のスタンダードを創ること」。

このコンセプトを元に、幅広くもっと多くの人に聴かれるようにとの思いで制作されています。ただ若い世代が聴けると言っても、現代的なアレンジで奇を衒ったわけでは一切なく本当にシンプルなアレンジになっています。特に一音一音が丁寧に録音されてるのが分かります。主役である歌声を邪魔しないようにかつ埋もれないような絶妙なバランス感覚でミックスされています。

14曲中10曲が沖縄民謡歌。この古来より伝わる伝承歌を丁寧に現代に伝えてくれています。残りの曲は嘉手苅林昌の曲や知名定繁の曲で綴られています。インナースリーヴの歌詞にもしっかりと標準語の訳が掲載されており、歌の内容がしっかりと分かるようになっています。ブルーズというのは歌詞が命なので、この歌詞もじっくり読ませてもらいましたが涙が出そうになりました。言葉少ない中でこれほどまでに心を揺さ振られる表現に感動しきり。楽しさもあれば、悲しさもある昔の人々の悲喜交々。決して時代性を感じない、「今」の音楽として充分過ぎるほどの力を持っています。そして70歳を過ぎているとは思えない若々しい歌声も感動的です。
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そして大城美佐子の幼馴染でもある知名定男や、名護良一も歌と三線で参加。知名との掛け合いが非常に小気味良いですね。体験したことはないはずの60年代~70年代の沖縄の風景が見えてくるようです。

これは心の奥底で眠っていた大事なモノを思い起こさせてくれる素晴らしい音楽です。同じ日本人としてこの音楽を共有出来る事はこの上ない幸せだ。
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by Blacksmoker | 2007-04-09 00:13 | BLUES

KEB' MO' [Suitcase]

このアルバムが人々に聴かれないで終わっていくことは全くもって罪なことだ!

それほどにこの天才ブルースマン、ケブ・モの新作「Suitcase」は素晴らしい出来です。

f0045842_20571092.jpg外見とは裏腹にケブ・モのブルースはミシシッピ・デルタ・ブルースのように濃くはない。とても聴きやすく耳に優しい。ドロドロのブルースとは一線を画している。近年流行のサーフ・ミュージック・シーンの延長でも十分通用するほどの聴きやすさです。「ブルース」というだけで聴かれないのは非常にもったいない話だ。クラプトンだってブルースじゃないか!

なんて文句の1つも言いたくなるが、それほどまでに日本じゃ有名ではないのだ。日本盤もおそらく出ないでしょう。大体名前で損しているんじゃないか?英語で「KEB' MO'」と書くとカッコイイが、カタカナで「ケブ・モ」と書くとあまりカッコいい字面じゃない。「ペル・ウブ」とか「イモージェン・ヒープ」とf0045842_2162030.jpgか「サダハル」(アメリカのパンクバンドです)とか最初っから聴かれない運命にあるような名前だ。実はケブ・モの本名はケヴィン・ムーア。この名前をブルース流に言い換えたのがケブ・モということらしい。しかも昔はケヴィン・ムーア名義でアルバムもリリースしていたそうですね。こっちの方が良いような気もするが、それじゃあまりにも地味過ぎるか…。

ちょっと話が逸れましたが、この新作は何度聴いても味のあるアルバムです。まんまロバート・ジョンソンなジャケットが聴く者を選別してしまっている気がするが、ブルース汁は濃くは無いです。ブルースにR&Bやゴスペルの味付けをして全体的にポップに昇華させているのでとても聴きやすいし、ケブ・モも声も太くて伸びやかで包み込むような包容力がある。ギターの音もまるで人格を持っているかのように歌っています。情感たっぷりのスライドギターや、出番は少ないのに存在感の光るサックス、控えめながら実に効果的なハモンドB3など実に素晴らしい演出です。
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そしてもちろん歌詞も良い。最小限の言葉で最大限の感情を伝えるケブ・モの歌詞はブルースの真骨頂です。普通に歌詞を見て泣けましたよ。やっぱりブルースは詩が命ですね。「I’m A Hero」って曲で「こんなにダメな俺でも、彼女にとっては俺はヒーローなんだ」と歌われる歌詞は俺も含めて結婚している人間にとってはほんと涙が出るほど感動しますよ(ちょっとAORっぽい曲調ですが…)。

とりあえず「素晴らしい!」を50回くらい叫んでも足りなf0045842_21243571.jpgいくらいの名盤ですので、是非とも聴いてみて下さい。冒頭でも書きましたが、このアルバムが聴かれないのは全くの罪ですよ。ちなみにオフィシャル・サイトで視聴が出来ますので早速行ってみよう!オープニングの「Your Love」のタメの利いたギターと渋い声にヤラれてください。「Your love means everythig to me~♪」と堂々歌うカッコ良さは正に現代のロバート・ジョンソン。多くの人々に聴かれること切に願いますよホント。
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by Blacksmoker | 2006-07-20 00:01 | BLUES