カテゴリ:ROCK( 50 )

EELS [End Times]


f0045842_1493159.jpg2009年6月にリリースされたアルバム「Hombre Lobo」から数ヶ月後、Eelsのホームページに「End Times Are Coming」という謎の言葉と共に数字のカウントダウンが始まったので、「End Times」って何だ?解散でもするのか?なんて思っていたら、何と新作「End Times」のリリース日のカウントダウンでした!

前作から僅か半年しか経っていない中での新作リリースとはいやはや恐れ入ります。リリース日の発表のタイミングから考えて、前作と同時期には録音されていたのでしょう。
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アルバム・ジャケットには寂しげなホームレスの老人が夜に外を歩いている絵が描かれているのですが、今回の新作「End Times」のアルバム・ジャケットの絵を描いているのは、Eelsの作品ではお馴染みのエイドリアン・トミーネ。シングル盤「Cancer For The Cure」のジャケットや、3rdアルバム「Daisies Of The Galaxy」の中ジャケのギターを弾くEのイラストなどを手掛けているアメリカ人コミック作家。

余談ですが、僕はこのエイドリアン・トミーネの絵が大好きで、彼のポスターや本などたくさん持っています。家に飾ってあるポスターもエイドリアンのものばかりで、7~8年くらい前にエイドリアンの個展に行って本人に似顔絵を描いてもらったことがあるんです。

エイドリアンの描く絵は、カラフルだが寂しさが漂う人物が多く(エイドリアン本人が日系の血が入っているので登場人物も日系っぽい顔の人が多い)、「孤独感」があり、そこが僕がエイドリアンの絵を好きな理由でもあります。
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彼の短編集「Optic Nerve」をまとめた「Sleepwalker」という本が、日本語版も出ているのでチェックして欲しいですね(ちなみにEelsのアルバムには、こういったオルタナティヴ・コミック作家の絵が良く使われていて、これも僕が好きなSethというアーティストの絵も良く使われています)。

そのエイドリアン・トミーネの孤独感漂うジャケットの「End Times」ですが、アルバムの内容も内省的でメランコリックで孤独感や喪失感が溢れています。前作「Hombre Lobo」とはまさしく正反対な出来といえます。
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アルバム全編に渡って歌われるのは、一人の女性との「別れ」。最初から最後までこの女性との思い出や後悔が延々と続くのです。噂ではこのアルバムはEの離婚をテーマにしていると言われるのですが、それにしても全編このトーンで占められているのは凄いです。

1曲目The Beginningからして、「最初は全てが美しく自由だった・・・」と思い出に耽りまくっています。その後もGone ManIn My Younger DaysEnd TimesI Need A MotherOn My Feetなど徹底して別れからくる孤独感の歌ばかりです。
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Eelsというと「」という影が常に付きまとうバンドとして有名だ。Eは姉や母親を相次いで亡くし(ツアー・マネージャーの突然の死で初来日が中止になったこともありました)、その喪失感を歌にしたのが初期の作品であり、さらにはそこから立ち直ってロックなアルバムをリリースしてきたわけですが、今回は離婚という「喪失」をしてしまったわけですから、つくづくEという男は孤独な人なんだなぁと思います。
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しかし皮肉な事にEが孤独感を感じれば感じるほど、メランコリックで素晴らしい音楽を生み出してくれることを我々は知っている。この「End Times」も例に漏れず、とても美しくて優しくて、そして哀しい素敵な曲が満載だ。まさしく全世界の孤独な人の為のベッドルーム・ミュージック。あのトム・ウェイツEelsの音楽にゾッコンなのも理解出来ますね(もちろん僕の人生にもEelsの音楽は不可欠です)。
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今まで以上にシンプルなサウンドながら(ほとんどが4トラック・レコーダーで録音されているようです)、今まで以上に心に沁みる素朴だが美しいメロディを持った作品です。前作では名前の消えていたドラマーのButchの名前が復活しているのも嬉しいですね。

ちなみに日本盤にはないのですが、輸入盤には4曲入りのCDが入った2枚組仕様があります。これも素敵な曲が入っていますので、買おうと思っている人は是非こちらをオススメします。
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by Blacksmoker | 2010-02-09 01:13 | ROCK

OK GO [Of The Blue Colour Of The Sky]


完全に化けました!

f0045842_1152736.jpgYoutubeで爆発的ヒットとなったHere It Goes Againを収録したアルバム「Oh No」以来、実に4年振り。シカゴ出身のロック・バンドOK Goの3rdアルバム「Of The Blue Colour Of The Sky」は前作から全く別のバンドかと思えるほどの変貌ぶりに度肝を抜かれます。

変貌と言っても「後ろ向きな方向」や「ガッカリな方向」へ行ったのではなく、完全にバンドとして前進したと言っても良いでしょう。これは嬉しい誤算です。OK Goといえば、いわゆるギターを中心としたロック・バンドというのが一般の共通認識だと思いますが、今回のアルバムではその認識は覆されるでしょう。
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この3rdアルバム「Of The Blue Colour Of The Sky」OK Goが向かったのは、サイケデリック・ロック・サウンド。今まで、このバンドを好きな人にはこの変化はもしかしたら賛否両論かもしれませんが、個人的にはめちゃくちゃハマリましたね。

さて今回のアルバムのプロデューサーに迎えられたのは何とデイヴ・フリッドマン

マーキューリー・レヴの元メンバーにして、フレーミング・リップスMGMTClap Your Hands Say Yeah、さらには日本のZazen Boysなど手掛ける「サウンドの魔術師」。この人の作り出すサウンドは、ベースやドラム中心ノリズム・オリエンティッドなサウンドで、いびつなくらい歪んだミックスが特徴でもある。前作「Oh No」をプロデュースしたのがThe CardigansFranz Ferdinandの1stを手掛けたスウェーデンのトーレ・ヨハンソンだった事を考えると、この変化は相当なものだという事が分かります。

そしてその成果は1曲目の1stシングルであるWTF?(下写真)からして、もう一目(一聴)瞭然。またもや面白過ぎる映像のPVが話題のこの曲ですが、一発でデイヴ・フリッドマンと分かる残響音のあるドラムと、恐ろしく歪みまくった重低音ベースからしてもう全く違うバンドです。
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さらに全編ファルセットのヴォーカル、そしてギターはカッティング中心の音に抑えられ、ハンドクラップ音やコーラスなど様々な音は左右のスピーカーに分離して散りばめられています。ミックスもヴォーカルを前に出さずに楽器の音の中にわざと埋もれさせるデイヴ・フリッドマン独特のミックスになっています。最初聴いた時はかなり面食らいましたが、強力なリズムと微妙なキャッチーさはハマるとつい口ずさんでしまうほどクセになります。

続く2曲目の2ndシングルThis Too Shall Pass。これも一発録りのPV(下写真)が最高な曲ですが、この曲の歪みっぷりも凄いです。
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超ポップなのに音はエゲつないくらい凶暴です。普通のスピーカーなら音割れするヘヴィ過ぎるベースとドラムを中心に、キャッチーなコーラスにピアノ、そして子供の合唱隊も入ってきてかなり賑やかな曲で、彼らの代表曲になるだろう出来ですが、今までのOK Goとは全く違うサウンドです。よく聴くと色々なサイケデリックなエフェクト音が挿入されてたりしてて面白く、車のスピーカーで聴いてると気付かない仕掛けが、高出力のスピーカーで聴くとちゃんと聴こえてくるので驚きますね。

次の曲All Is Not Lostでは、ようやく従来のOK Goらしいメロディが出てくるが、やっぱりベースとドラムの音はもの凄い歪んでいます。さらにその上にアコースティック・ギター2本が左右のスピーカーに振り分けられていて、その上を浮遊するファルセット・ヴォーカルが被さります。これがとてもサイケ感覚を増長させてくれますね。
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とにかく冒頭3曲で、このひねくれぶりだが、この後も全く新しいOK Goのサウンドに驚かされるでしょう。前作「Oh No」の中では異色だった曲Oh Lately It’s So Quietが、今回のアルバムのサウンドに最も近いような感じがします。

レコーディング時にメンバーが一番聴いていたのがプリンス「Purple Rain」だったみたいだが、なるほどこの作り込んだ密室感やファルセットの歌声、ベース中心の適度なファンキーさ、後半の80’s感はその影響がありますね(I Want You So Bad I Can’t BreatheEnd Loveなんて特に!)。プリンスだけでなくTalking Headsの影響も見え隠れするのもポイントですよ。
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ギター1本の弾き語りLast Leafでさえも、シド・バレットジョン・フルシャンテのソロのようなあやうい幽玄な雰囲気が漂っているし、Back From Kathmanduも普通なら爽やかなアコースティック・ソングであろう曲が、中期のビートルズ(はたまた「Their Satanic Majesties Request」期のストーンズ)を彷彿させる緻密に作りこまれたなアシッドなソフト・サイケデリック・サウンドに変身しています。終盤のドリーミーなWhile You Were Asleepなんてもはや以前のOK Goの面影さえ残していませんね。
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このように以前のギターポップ・バンド的なサウンドを期待していた人には、この変化がどう映るか分かりませんが、個人的にはこの方向は大正解だと思います。こんなポテンシャルを持ったバンドだとは思いもしませんでしたね。そこをデイヴ・フリッドマンが上手く引き出し見事なまでのサイケデリック・ポップ・アルバムとして結実させた大傑作

フレーミング・リップス好きなら絶対チェックして下さい!

  
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by Blacksmoker | 2010-02-05 10:49 | ROCK

ANIMAL COLLECTIVE [Summertime Clothes EP]


注目の若手インディーズ・バンド」から、僅か数年で「アメリカ・ロック・シーンを代表するバンド」へと成長したアニマル・コレクティヴ
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最新作「Merriweather Post Pavillion」は、クリエイティヴ性、そしてポップ性ともに頭一つ飛びぬけた存在となった彼らにしか出せないオリジナリティ全開の素晴らしい作品でした。今最も宇宙に近いロック・バンドでしょう。

f0045842_226919.jpgさてその新作からの2ndシングル・カットとなるSummertime Clothes。そのEP盤(右写真)が12インチで登場。

このSummertime Clothesは新作の中でも、ヘヴィなシンセサイザーの強力な反復音に水中で歌っているかのように歪められたヴォーカル、そしてビーチ・ボーイズばりのメロディアスで分厚いコーラス、さらにサイケデリックなSEをまぶして、煌びやかでドリーミーで印象的な曲ですね。

そして、このEPはオリジナル・ヴァージョンの他にリミックス・ヴァージョンが3曲。このリミックスが超ヤバイ。

起用されたのはStones Throwレーベルの最終兵器Dam-Funk(下写真)!
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シンセサイザーを使った現代版ディスコ・ファンクを標榜するこの男。またの名を「Ambassador Of Boogie Funk」(ブギー・ファンク親善大使)。今、全てのビート・マニアが熱い視線を送るプロデューサーの1人です。

そんなDam-Funkによるリミックスは、2009年のサマーアンセムとも言える改心の出来!原曲の重層的なシンセ部分を取り除き、透明感のある清涼感抜群バレアリックなディスコ・サウンドに解体。さらにアンセミックなシンセのフレーズを加えて(いつものようにDam-Funkが自分で弾いているのでしょう)、究極のサマーアンセムに仕上げています。
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もうさすがとしか言いようのない必殺の1曲。何度聴いても飽きないですね。この1曲だけでも絶対にチェックして欲しいです。秋に出るというDam-Funkの1stアルバムは要チェックです(そして9月の来日も!)。

そして次はKode 9の主宰するレーベル「Hyperdub」のLDがリミックス(Dam-Funkのに金を掛けすぎてしまった為か、Kode 9ではないところが悲しいですが・・・)。

つんのめるビートにコズミックなシンセサイザーを絡めたHyperdubらしい硬質なダブステップ。疾走感はあるがベースラインは意外に控えめ。ヴォーカル・パートの一部しか使用せず、ほぼオリジナル曲のような換骨奪胎リミックス。ヘヴィになりすぎずコズミックなダブステップを展開するあたりは自身のオリジナル曲とほぼ似ていますね。Kode 9 vs LD名義のシングル「Bad / 2 Bad」がヤバイので気になる人は是非チェックしてみて下さい。

そして最後に登場するのは、こちらもHyperdubから鬼才Zomby(下写真)。
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こちらは完全にヘヴィなベースラインがウネるダブステップ(BPMはかなりダウン)。Zombyらしい奇抜なビートが炸裂しています。ヘヴィなダブステップにズルズル引き込まれそうな所で、挿入されるピアノのループに一瞬現実に引き戻されそうになりますが、またズルズルと引き込まれてしまいます。深夜3時くらいのクラブで聴くと完全にキマりそうなカンジです。

オリジナル・ヴォージョンとリミックス3曲合わせて全4曲ながら超強力なEP。とにかく今Dam-Funkを起用するというこの感性の鋭さ!
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アニマル・コレクティヴがロック界で今最も先鋭的な感性を持ったバンドだということが証明されていますね。スルー厳禁のマスト盤!Dam-Funkのリミックスだけでも絶対にチェックです!
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by Blacksmoker | 2009-08-17 02:49 | ROCK

CHURCH OF MISERY [Houses Of The Unholy]


Let There Be Doomed!!

結成13年。日本の最高峰ドゥーム・バンドChurch Of Miseryは、いつの間にか世界最強のキング・オブ・ドゥームになっていました。
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彼らのライヴを初めて観たのは確か2007年のElectric Wizardの前座の時でした。メインのElectric Wizardも凄かったですが、Church Of Miseryにもマジでブッ飛ばされましたね。70年代から時代が止まっているような出で立ちのメンバーが繰り出すBlack Sabbathを10倍くらい増強させたような超強力なドゥーム。そこに邪悪なシャーマンのように観客をドゥーム曼荼羅へと誘導するVo.のHideki Fukasawaのパフォーマンスに瞬時にフロアは暴動状態に陥ったのは今での鮮明に覚えています。

それ以降何度か彼らのライヴを観ましたが、どんどんヤバくなる彼らのパフォーマンスに完璧にブチのめされましたね。特にVo.の存在感は、15年くらい前に観たCathedralのフロントマン、リー・ドリアン並みのカリスマ性がありますね。

f0045842_15404680.jpgそんなChurch Of Miseryの5年振りとなる新作「Houses Of The Unholy」。前作「The Second Coming」以降もEPやスプリットなどアナログ盤でのリリースが続出で久しぶりな感覚はありませんが、意外にも5年振りのフル・アルバム。これが全てのドゥーム・ファンを完膚なきまでに叩きのめす超強力盤。現存のロック・バンドの中では現時点で最高峰のドゥーム・アルバムです。遂にChurch Of Miseryは、TroubleCandlemassSaint VitusThe Obsessedなどの偉大なる伝説の先達と並ぶドゥーム・バンドになったと言えるでしょう。失禁しそうなくらいカッコイイです!

今回は何とRise Aboveレーベルからのリリース。Rise Aboveと言えばCathedralリー・ドリアンが主宰するドゥーム・レーベル(実は20年も前から運営されている!)。最近でf0045842_15485648.jpgOrange GoblinWitchcraftFirebirdなどの若手ドゥーム・バンドから、Electric Wizardといったレジェンドや、さらにはあのMossまでもリリースしており、ドゥーム・ファンにとっては現在最も信頼の置けるレーベル。そんなRise Aboveからのリリースというだけでも期待が高まるが、今回のこの「Houses Of The Unholy」Rise Aboveのカタログの中でも最高峰の一枚になるでしょう。

まずはもうお馴染みの殺人鬼ジャケットですが、今回のジャケットも強烈。何と1920年代~30年代にかけてアメリカを震撼させた連続殺人鬼アルバート・フィッシュの写真なのです。しかもその写真がジャズのBlue Noteレーベルの名盤ジャケットを模倣したアートワークになっています(ご丁寧にもRise AboveのロゴまでBlue Note風!)。アルバムの中にはアルバート・フィッシュの別名を冠したThe Gray Manという曲まであります。筋金入りです。
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さて、アルバムの方はもう1曲目El Padrinoのヘヴィなギターと歪みきった重低音ベースから繰り出されるリフからもう既に神の領域に達しています。そこに憎悪を放出しまくる凶悪なヴォーカルが乗り禍々しいグルーヴを生み出します。最近観たライヴでもこの曲を必ずオープニングに持ってきているだけあって、自信漲る強烈な一撃です。9分近い長さがあっという間ですね。

全曲を通してこの禍々しいグルーヴの連続。特にギターのリフのカッコ良さに関しては最近では随一。さらには全ての曲と歌詞を作っているのがベーシストなのでベースの目立ちっぷりもハンパないです。そして叫ぶだけでなくブルージーさも兼ね備えたヴォーカルの圧倒的存在感も凄いです(Corrosion Of Conformityペッパー・キーナンの声をもう少し凶悪にしたカンジですね)。
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そして今回も曲ごとに人類史上最も残忍な凶悪殺人鬼達の歌が歌われていきます。

ショットガン乱射殺人鬼ジェイムズ・オリヴァー・ヒュバーティを歌ったShotgun Boogie、更には猟奇殺人鬼リチャード・トレントン・チェイスを歌ったBlood Sucking Freak、そして連続強姦殺人鬼リチャード・スペックの腕のタトゥーの文字を冠したBorn To Raise Hell、そしてネブラスカの連続強盗殺人カップル、チャールズ・スタークウェザーキャリル・フューゲイトを歌ったBadlandsブルース・スプリングスティーンも自身の曲Neblaskaで彼らの事を歌っている)など、凶悪なオーラを放つ禍々しくも危険なサウンドです。聴いていると精神のタガが外れてくるんじゃないかと思ってしまいますよ。
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現時点では間違いなく最凶のドゥーム・アルバム。覚悟して聴いてみて下さい!

しかし、こんな凄いアルバムを創っていながら何とアルバム完成直後にヴォーカルが脱退!現在ヴォーカルを探しているみたいです。果たしてあんなカリスマ性のある人物が見つかるんでしょうかね?

 
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by Blacksmoker | 2009-07-16 00:13 | ROCK

DAVID BYRNEの声。


なぜこのデイヴィッド・バーンの声というのは、こうも人を惹きつけるのだろうか?
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やはり従来のロック的ではないところだろうか?過剰に演劇的なところか?粘着性のある声は何か不敵な感じだし。しかも最近多い「女性的なフェミニン」声でもない。どちらかというとおもいっきり男性的。そしてその声からはかなりの知性が滲み出ているのも、クセモノっぽさを感じさせる。なかなかこの声は代替できるものがないです。個人的にもミュージシャン、そして一流のボーカリストとして最も好きな人ですね。

しかし私はトーキング・ヘッズをリアルタイムで聴いていた世代ではなく、初めてこのデイヴィッド・バーンの声と「遭遇」したのは1997年でした。彼の5枚目のソロ・アルバム「Feelings」(右写真)からの1sf0045842_2355131.jpgtシングルMiss AmericaのPVをたまたまMTVで観て、その声の異様さと妙にクセになるメロディ、そして欧米的ではないリズムを持った曲に一発でヤラれてしまったのが初めての出会い。そこからどんどんこのデイヴィッド・バーン、そしてトーキング・ヘッズ、さらには彼の主宰する「Luaka Bop」レーベルの音楽の魅力にハマっていきました(このレーベルのCornershopがブレイクしていたのも同時期ですね)。そしてちょうどこの頃にトーキング・ヘッズの映画「Stop Making Sense」もリバイバル上映されて映画館に観に行って、その凄さに完璧にヤラれてしまいました。
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その後に出た2001年の6枚目のアルバム「Look Into The Eyeball」も素晴らしかったし、2003年にはスリル・ジョッキーからリリースされたデイヴィッド・マッケンジー監督の映画「Young Adam」のサウンドトラックとなる「Lead Us Not Into Temptation」の不思議な美しさに聴き惚れ、そして2004年にはNonsuchからのリリースとなった7枚目のアルバム「Grown Backward」の完成度の高さに驚き、どんどんこの人の音楽の魅力の虜になってきたわけです。

しかし、この人の声の魅力に憑りつかれている人は、やはり世界各地にいるようで、いろんな所でデイヴィッド・バーンの声を耳にする機会が増えました。ソロとしての作品は寡作にもかかわらず、最近でもこの人の声の存在は増すばかりです。
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例えば2002年に全英チャートを席巻したX-Press 2のダンス・ナンバーLazyにボーカリストとしてfeat.されてたり、そして2005年にはアメリカのDJユニット、Thievery CorporationThe Heart's a Lonely Hunterという曲にも参加していたし、さらには2007年のPaul Van DykFall With Meでもfeat.されていました。ここ最近のバーンのクラブ・シーンでのモテぶりはハンパじゃないですね。ダンス・ミュージックという時代の先端の音楽とデイヴィッド・バーンの声の相性の良さがバッチリなのが面白いです。

そしてダンス・ミュージックだけでなく、他のバンドへの参加曲もなかなか素晴らしく見逃せません。特にオススメしたいのは、2006年にリリースされたNY在住のブラジル民族音楽集f0045842_032074.jpgForro In The Darkのアルバム「Bonfires of São João」(右写真)にボーカリストとして参加した2曲。Asa Brancaルイス・ゴンザーガのカヴァー)とI Wishという曲ですが、これはかなり良いですよ。フルートやバリトン・サックスなどを散りばめた祝祭ムード溢れた楽しいノルデスチの音楽に、瑞々しい素晴らしいボーカルを披露してくれてます。実に高揚感溢れる曲です。

そして個人的に最もイチオシなのが2004年にリリースされたThey Might Be Giantsジョン・フランスバーグが主催した反ブッシュ政権f0045842_011228.jpgのベネフィット・コンピレーション「Future Soundtrack For America」(左写真)の中に収録されているソロ曲Ain’t Got So Far To Go。この曲は個人的にデイヴィッド・バーンの曲の中でもフェイヴァリットな1曲。Morcheebaがプロデュースしているのでおそらく「Feelings」の時の曲でしょう。オーケストレーションを使用し、バーンの声の魅力を最大限に活かしたとんでもなく素敵な1曲。この曲だけの為に私はこのアルバムを買ったくらいです(このアルバムにはそれ以外にも超豪華なメンツの未発表曲が揃っているので必聴)。それほどまでに素晴らしい曲なんです。是非とも聴いてみて欲しいですね。

あと2006年にはブラジル音楽界の女王マリーザ・モンチのアルバムUniverso ao meu redor」(私のまわりの宇宙)の中の曲Statue Of Libertyでもボーカルで参加。1分少々という短さでありながらやはり抜群の存在感を見せ付けていました。初めてこの曲を聴いた時、ヒューマン・ビートボックスと共に突然バーンの声が出てきてビックリしましたね。
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そしてそして、さらに驚かされたのが2008年に入ってから、Fatboy Slimノーマン・クックによる噂の新ユニットThe BPA(The Brif0045842_055779.jpgghton Port Authority)からの1stシングルToe Jamにもディジー・ラスカルと共にfeat.されていたこと!イギリスでは、これまたスマッシュ・ヒットを記録したこの曲は、ノーマン・クックの能天気で陽気なビートに乗せて、バーンの粘着性のある声が全編に渡って楽しめる曲で、やはりダンスビートとバーンの声が完璧にマッチした傑曲(PVも最高です!)。途中で入ってくるディジー・ラスカルの高速ラップも最高にクール。バーンの声を入れる事でちょっと異国的なカンジがしてくるのが不思議ですね。バーンの声がノーマン・クックのビートにちっとも負けていないです。またもやダンス・ナンバーにもバッチリ映える事を証明してしまったようです。

思うにデイヴィッド・バーンの魅力はやはりその「歌の力強さ」だ。「生命力の高さ」というべきだろうか、聴いていて生きている事を実感出来て、さらに高揚感をもたらすこの粘着性のある声は本当に魅力的だ。さらにアメリカ人でありながらその声は純に欧米的ではなく、どこかアフロ的要素も含んだ演劇的でドラマティックな声。だが逆に聴く者に非常に安堵感を与える声でもある。どこにいても異様な存在感を放つ独特の声ですね。
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さらに声だけでなくサウンド的にも実験的で冒険的。作品を出すごとに毎回こんなワクワクさせられる人も珍しいです。

さて前置きが非常に長くなってしまいましたが、そんなデイヴィッド・バーン。2008年の暮れになってとんでもなく素晴らしい作品を届けてくれました。
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次回はそのアルバムを紹介します!

 
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by Blacksmoker | 2008-12-25 23:19 | ROCK

RYAN ADAMS & THE CARDINALS [Cardinology]


2001年にソロ・デビューしてからまだ7年。遂に10作目

2007年の傑作「Easy Tiger」と、その後に出たEP「Follow The Lights」に続いて200f0045842_14252.jpg8年もやっぱり出ましたライアン・アダムスの新作。「Easy Tiger」発売時に「次からはもうライアン・アダムス名義でリリースすることは無い。次からはザ・カーディナルズ名義になるだろう」と発言していた通りで、もちろんザ・カーディナルズとの共同名義。そしてその名も「Cardinology」!「カーディナルズ学」とでも訳すんだろうか、もの凄い自信の表れのタイトルにニンマリです。(なのに今回からは日本盤は発売されない模様・・・)

当初はメンバー・チェンジも多かったザ・カーディナルズも2006年以降からは不動のメンバーで、今回の新作もギターにニール・カサールデヴィッド・グラボフ、ベースにクリス・フェインスタイン、そしてドラムにブラッド・ペンブルトンという「East Tiger」以降の鉄壁の布陣。
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なので音楽性は全く変わりないですが、このメンバーで作るサウンドには素晴らしいマジックが生まれる。ライアン・アダムスの天才的ソングライティングと、ザ・カーディナルズの豊潤な演奏のもたらすサウンドはもはやブランディングされていますね。

デヴィッド・グラボフのスティール・ギター、そしてニール・カサールのコーラスが毎度の事ながら素晴らしく、彼らに支えられたライアンの叙情たっぷりのメロディが引き立ちまくりです。
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前作「Easy Tiger」の幽玄なカントリー・ロックから、今回は若干ハードなアメリカン・ロックなども取り入れていますが、今回も揺ぎ無いライアン印のサウンド。プロデュースは2005年の「Cold Roses」を手掛けたトム・シック「Easy Tiger」とサウンドの質感が違っているのはそのせいか。

すでにツアーでは披露されているFix ItMagickCobwebsSink ShipsNatural Ghostなどが大量に収録されていて、Grateful DeadやPhishのようにライブでどんどん曲を完成させていくスタイルを取っているのが分かります。
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どれもライブ感のある曲ばかりで、特にCobwebsなどは既に最近のライブでのオープニングを飾っており、ライアンの新たな代表曲になる事は間違いないでしょう。

最終曲のStopライアン自身によるピアノの弾き語り。ここでのライアンのヴォーカルは素晴らし過ぎます。「君がやめたいなら、もうやめよう」という歌詞が染み入りますね。
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何度も言いますが、この天才は是非リアルタイムで体験しておくべきです。この新作「Cardinology」も、もちろん彼のこれからの長いキャリアの中での通過点に過ぎないが、現時点では最高傑作。是非とも今のうちにチェックしてみて下さい。
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by Blacksmoker | 2008-11-21 01:02 | ROCK

TORCHE [Meanderthal]


アンダーグラウンド・メタル/ハードコア界の新たな勢力ともいえる「Hydra Head」レーベル。Isisアーロン・ターナーの主宰するこのレーベルにはPelicanJesu、さらにはXasthurHarvey Milkなどグレイトなバンドが多数在籍しています。

f0045842_2403261.jpgその中で、このTorcheは新作「Meanderthal」で完全に化けたと言ってよいでしょう。この手のバンドの中では頭一つ抜けた感がありますね。既に欧米では圧倒的な人気を誇るTorcheの2ndにして早くも最高傑作です(イギリスではMogwaiのレーベル「Rock Action」からのリリース)。

フロリダ出身のこのTorcheは元Floorのメンバーであるスティーヴ・ブルックスを中心に2005年に結成された4人組。ギターにはスラッジ・コア・バンドCavityの元メンバー、ホワン・モントーヤもいる。(ちなみに「Hydra Head」からCavity「Laid Insignficant」が再発されています。)
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もともと轟音スラッジ・ギターリフにハードコアの疾走感を合体させたスタイルですが、今回の新作ではまず異常なほどメロディがポップになっているのが大きな変化だ。ギター・リフや、歌のメロディはもう異常にポップ。クセになるほどの中毒性のあるメロディが最高です。ボーカルも血管ブチキレの絶叫系ではなくノーマル・ボイス。そしてそれに寄り添うコーラスのハーモニーが異常に気色悪くて逆に気持ち良い。
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そしてやはりこのアルバムで最もグレイトなのはギター・リフの素晴らしさ。マジでこのTorcheのリフはヤバイです。全く飽きさせない変幻自在の多様なリフの応酬に加え、その音圧がハンパではない。空間を埋め尽くすほどのノイズまみれの脳神経直撃の轟音ヘヴィ・リフが疾走する様は快感の一言。1曲目のインストTriumph Of Venusから一気に耳を惹きつけられます。
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個人的には、この手のリフを作らせたらMelvinsの右に出るものはいないと思っていますが、このTorcheのリフもそれに匹敵する強力さです。Convergeの轟音さと、Pelicanの整合感を合体させたような強力さがありますね。ちなみにこのアルバムをプロデュースしているのがConvergeのギタリストのカート・バルー。なるほど納得。この整合感ある轟音ギターは見事です。途中に切り込んできて脳神経を刺激する高音域なギター・ソロもイイ。
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強力な轟音リフに、異常なほどポップなメロディという相反するものの融合したサウンドはジャケットの分裂症気味のアートワークがピッタリです。このジャケットの悪意のユーモア・センスはモロにMelvins譲り。ちなみにこのアートワークは凄いです。開いていくとでっかい一つの絵が完成するというもの(下写真)。
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この異常に凝ったアートワークの為に日本盤の発売が遅れてしまったというシロモノなので、一見の価値ありです。

全13曲。でも2分前後の曲が間髪入れずに疾走して一気に駆け抜けてしまうのであっという間の39分。爽快です。っていうか、どんどん高揚感が増していく至福の39分です。
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終盤AmnesianMeanderthalのラスト2曲は問答無用のミドル・テンポのスラッジ地獄。グレイトな轟音スラッジ・サウンドがこれまた最高です。この2面性もTorcheの魅力ですね。

是非とも聴いてみる価値のある1枚です!
 
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by Blacksmoker | 2008-10-16 02:10 | ROCK

DANIEL LANOIS [Here Is What Is] 


ブライアン・イーノダニエル・ラノワ。この2人の手掛ける作品はこだわり抜いた録音ゆえに、最高の音響システムで聴くとその効果は絶大だ。特に低音へのこだわりは驚異的で、パソコンなどのショボいスピーカーで聴くと必ず音が割れてしまう。

f0045842_2214288.jpg今回紹介するのは、そのダニエル・ラノワの新作「Here Is What Is」。彼はブライアン・イーノによって発掘された人だが、そもそもプロデューサーとしての仕事が有名(もちろんU2ピーター・ゲイブリエルボブ・ディランなどなど)で、自身のソロ・アルバムは非常に寡作な人。1989年の「Acadie」から現在までに僅か4枚しかソロ・アルバムをリリースしていないが3作目となる「Shine」(前作より10年振りのリリース)、そして次のインストゥルメンタル・アルバム「Belladonna」など、どれも素晴らしいアルバムだと断言出来る。

そんなダニエル・ラノワの5作目となる新作「Here Is What Is」は、彼のソロ・アルバムの中でも個人的には「Shine」と並ぶ傑作だと言えるでしょう。
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ただ今回の新作は純粋なアルバムというよりは、サウンドトラック盤としての作品。これは「Here Is What Is」という映画のサウンドトラックで、その内容は、ダニエル・ラノワのレコーディング風景を記録したドキュメンタリーだそうだ(現在モロッコで新作を製作中のU2とのレコーディング風景もあるみたいです)。

その為か、映画の中で使用されてると思われるセリフ(ブライアン・イーノとの会話)や、アンビエントな小曲、その他にもインストゥルメンタル曲などが挟まれる構成になっている。映画を観ればこのアルバムがより理解出来るのかもしれないが、未見だとしても充分に感動できる。
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イーノのソロ作品が非常にイギリス的なのに対して、ダニエル・ラノワのソロ作品はアメリカン・ルーツ音楽への傾倒がより顕著だ。それはやはり彼の出自がカナダという事がその理由だろう(ラノワはケベック州出身)。ザ・バンドにせよニール・ヤングにせよカナダ人のアメリカ音楽への傾倒はアメリカ人のそれよりも深いというのはとても興味深いですね。

f0045842_2254087.jpg自身の弾くペダル・スティール・ギター(ジャケットにも写っている)を全面的にフィーチャーした古き良きアメリカ音楽の面影を感じさせる美しい楽曲にダニエル・ラノワの味わいのある枯れた歌声が乗る素敵なアルバムです(この人の声は高音の出も素晴らしいです)。ラノワも前々作の「Shine」では、多重録音のダブル・ヴォーカルというスタイルを多用していたが、今回のアルバムではよりストレートにヴォーカルを聴かせる作りになっている。

アメリカン・ルーツ音楽といっても、カントリーだけでなくLovechildのようにジャズ・ピアノを前面に出した美しい曲もあるし、ブライアン・ブレイドの父親のブラディ・ブレイド牧師をヴォーカルに迎えたThis May Be The Last Timeや、ハモンド・オルガンを使って聖歌隊が歌うJoyなどのゴスペル・ナンバー、そしてラテン・ジャズを思わせるLuna Sambaなどかなりその楽曲の揺れ幅は多彩。
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そしてラノワがプロデュースしグラミー賞も獲得したエミルー・ハリスの1995年のアルバム「Wrecking Ball」に収録されているWhere Will I Be?ラノワ自身のヴォーカルで再録されていて注目です。

この作品はダニエル・ラノワという人間の音楽的深さを感じさせると同時に、音から人情深さというものが滲み出ているような気がします。彼の作品にはもはやお馴染みのドラマー、ブライアン・ブレイド、そしてザ・バンドガース・ハドソン、そしてブライアン・イーノ(下写真右)といった凄腕ミュージシャンが挙って参加しているが、あまりそんな事を意識させないとってもやさしく人間的なアルバムですね。
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でも、その音作りはじっくり聴くと、様々な音が使われ、同じ楽器の音でも微妙に左右のスピーカーに分離されていたりと、とんでもなく作り込まれていて凄いんですけどね・・・。

ではYoutubeの貼り付けが出来るようになったのでこの映画「Here Is What Is」のトレイラーをご覧下さい。


 
 
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by Blacksmoker | 2008-08-22 00:25 | ROCK

MY MORNING JACKET [Evil Urges]


2005年フジロック・フェスティヴァル。大雨のField Of Heavenのステージに登場したムサ苦しい風貌の5人組がパフォーマンスを始めた瞬間、このバンドはやはりタダ者ではないことを確信しました。

見た目とは裏腹に繊細な部分と、見た目以上にパワフルなアメリカン・ロック直系のダイナミックな部分を併せ持ち、さらにインプロヴィゼーションを中心としたサイケデリックな演奏も素晴らしく一気にこのバンドのファンになってしまいましたね。

f0045842_9511856.jpgそんなケンタッキー州ルイヴィル出身のマイ・モーニング・ジャケットの3年振りとなる待望の新作「Evil Urges」の登場。このバンドほど見た目と出す音のギャップの激しいバンドはいないでしょう。フジロック後にリリースされた前作「Z」では、アメリカーナ的世界から更にイギリスのバンドのような繊細さやポップ度の高い楽曲など、もの凄い地点まで到達してしまった感のあるこのバンド(もちろんThe Flaming Lips直系のあのバシャンバシャン鳴るサイケデリックなドラムサウンドも健在!)。ライブの観客動員やアルバム・セールスにおいても絶好調で、個人的にはもうGomezWilco、そしてModest MouseThe Flaming Lipsと共に2000年代を代表する偉大なロック・バンドに名を連ねています。
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今回の「Evil Urges」では前作「Z」のサイケデリアな世界を踏襲しつつも、更に音楽性の間口を広げ、ブルー・アイド・ソウルな楽曲もあったり、本気なのか本気じゃないのか分からないダーク・ディスコHighly Suspiciousなどもあったりと、これまた壮大なロック絵巻。
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とにかくフロントマンであるジム・ジェイムズのトレードマークである異常なほど繊細なファルセット・ヴォイスの異物感が凄すぎる。前作でも顕著だったこのファルセット。こんなムサ苦しい風貌なのになんでこんな高い声が出るのか不思議だが、ファルセット以外にも包み込むように出す柔らかい声も素晴らしくどこかライアン・アダムスの声を彷彿させますね。

そしてジム・ジェイムズのファルセットに併せて、ほとんどの楽曲に入っている他メンバーのファルセット・コーラスが更にサイケデリック感に拍車を掛けます。思いっきりどっしりとした演奏と乖離して歌だけがどんどん浮遊していく様はまさしく規格外です。
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さらにはそのジム・ジェイムズの弾くギターと、もう1人のギタリストのカール・ブルーメルの弾くギターの絡みが最高にスリリング(ちなみにこの2人は雑誌「Rolling Stone」誌による「新世代ギター・ゴッド」という特集でデレク・トラックスらと並びベスト20に選出されていたほど注目度が高い)。彼らの多彩でスペーシーなギターフレーズのコンビネーションがかなり気持ちイイ。ちゃんと2人のギターの音が右チャンネルと左チャンネルで綺麗に分離されているミックスが素晴らしいです。
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特に1stシングルとなっているI’m Amazedマイ・モーニング・ジャケット史上最強の浮遊感とポップさとサイケデリアが爆発した曲(でも基本はサザン・ロック)で必聴です。前作「Z」ではOff The Recordという超ポップな曲がありましたが、この曲も彼らの代表曲になるのは間違いないでしょう。
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ペダル・スティールの幽玄な音とファルセットが気持ち良すぎるサイケデリック・カントリーSec WalkinLook At You、2人のギターゴッドが炸裂するAluminum ParkRemnants、そして何とも形容しがたい不思議なサウンドのTouch Me I’m Going To Scream Part 1Highly SuspiciousSmokin’ From Shootin’など今回もやりたい放題。しかし全ての曲が異常なほどポップで完成度が高いのには恐れ入ります。何であんな風貌でこんなにメロディが繊細なんでしょうか?ホントThe Flaming Lips以上のメロディ・センスです。
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ビルボード・チャート初登場9位。もはや現代のアメリカを代表する存在となったマイ・モーニング・ジャケット。是非ともこの素晴らしい新作「Evil Urges」を聴いてみて下さい。そしてライヴがホントに素晴らしいバンドなので是非とも体験して欲しいですね。

ちなみに今年の大晦日はマジソン・スクエア・ガーデンで過去最大級の公演が開催されるようです!
 
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by Blacksmoker | 2008-07-08 09:30 | ROCK

GRINDERMAN [Grinderman]


f0045842_12164270.jpgパンク」というのはサウンドではなく、アティチュードだ。その意味では、最近よく思うことだが、この「パンク」という言葉に相応しいのは若いミュージシャンより圧倒的にオヤジのミュージシャンが多い。例えばスティーヴ・アールであったり、イギー・ポップであったり、トム・ウェイツであったり。しかもその「パンク」気質なオヤジ達というのは、得てして若い人間よりタチが悪い

そして、「パンク」を体現するオヤジの系譜にもう1人加えるなら、その筆頭は間違いなくニック・ケイヴだろう。
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オーストラリアで活動していた時のパンク・バンドのバースデイ・パーティを経て、その後1984年にアインシュテルツェンデ・ノイバウテンのリーダーであるブリクサ・バーゲルトを含むバンド、ザ・バッド・シーズを従え1stアルバム「From Her To Eternity」でデビューして以来、現在までに13枚ものアルバムをリリースし、アティチュード面でのパンクを体現するこのニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ
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2003年に「Nocturama」リリース後にザ・バッド・シーズの顔とも言えるブリクサ・バーゲルトが脱退し、バンドの行く末が心配されましたが、続く2004年の2枚組の大作「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」をリリース。ここでは何か吹っ切れたように生々しい爆音ロックンロール・サウンド(もちろんブルースやゴスペルや、ニックの得意とするバラードも入っています)を聴かせてくれ、その全く衰えを知らないアティチュードを見せ付けてくれました。同時期にリリースされたスピリチュアライズドのアルバム「Amazing Grace」を聴いた時、「全然ニック・ケイヴの方が凄いじゃないか!」と思ったほど。(個人的にはこのアルバムはニック・ケイヴのアルバムの中で最も好きなアルバムです。)
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そしてその後もB面曲集やライヴDVD、そして映画音楽を手掛けたりと多忙な中、先日14枚目となるアルバム「Dig!!! Lazarus Dig!!!」をリリースしたばかりですが、その前にもう1つ忘れてはならないこのGrindermanを紹介しましょう。

このGrindermanは何と2006年に結成されたニック・ケイヴ新バンドなのです!
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メンバーは4人。ニック・ケイヴがギター&ヴォーカル、ベースにマーティン・ケイシー、ドラムにジム・スクラヴノス、そしてその他のエレクトロニクスやヴァイオリンを担当するウォーレン・エリス・・・ってか全員ザ・バッド・シーズのメンバーじゃないか!!

そうなのです。現在8人編成となっているニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ(ドラマーも2人いる)を人数面でもサウンド面でも更にシンプルにしたのが、このGrindermanの正体。ジャム・セッションによりたった1週間で曲作りやらレコーディングまで完成させてしまった初期衝動漲る1stアルバムが本作。
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大所帯化しているザ・バッド・シーズ(しかもクセ者ばかりいる)からの息抜き的意味合いも存分にあるだろうこのGrindermanだが、やはりザ・バッド・シーズという制約の無くなったニック・ケイヴのはじけ振りが凄まじい

いつも楽器はピアノを弾いていることの多いニック・ケイヴが、今回はギターを手に取り吼えます。
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1曲目Get It Onから強烈にやさぐれたガレージ・ロック!しかもギターの音が尋常ではなく、完全な轟音ノイズ!とりあえずフルヴォリュームで爆裂させています。彼の原点であるバースデイ・パーティを否が応でも彷彿させるノイジィなガレージ・サウンドはまさしく「パンク」。メンバーが揃って連呼するコーラスもかなりガラが悪いです。私がこの曲に日本語タイトルを付けるとしたら、ぶっ殺すぞというタイトルにします。
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2曲目はトーキング・ブルース調ガレージ・ロックNo Pussy Blues。生々しすぎるドラムのハイハットに、ブーストしまくったベース、その上を延々と「いろいろ手は尽くすが彼女は振り向いてくれない」と恨み節のようなニック・ケイヴの語りが入ります。そして突如、雄叫びと共に雷のようなディストーション・ギターが鳴り響く凶悪なナンバー。日本語タイトルは女にうつつ抜かしてんじゃねぇぞブルースで決まりでしょう。
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3曲目以降はミディアム・テンポのブルーズっぽい曲を聴かせるが、音の不良ぶりがハンパじゃないです。「Nocturama」ではヴォーカリストとしての素晴らしさを存分に発揮していましたが、「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」以降はかなり荒々しいヴォーカル・スタイルになってきているのが凄い。以前と比べると頭頂部の髪が無くなってかなり衝撃的な風貌になってしまっている現在のニック・ケイヴですが、寂しいのは外見だけ。サウンドの方は更にイカツくなっています。

そしてブルーズ調の曲の中に時折挟まれるDepth Charge EthelHoney Bee(Let’s Fly To Mars)といったThe Stoogesばりの爆走ガレージ・ロック・ナンバーが最高です。ニックの唾が飛んできそうなくらいヴォーカルの音が生々しく録られています(プロデューサーは最近のニック・ケイヴの作品のほとんどを手掛けているニック・ローネイ)。
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完全な息抜き的プロジェクトといった趣だったこのGrindermanですが、その成果は予想以上に熱く濃く、しかもパンクなサウンドとして結実。いつも歌詞が示唆的で素晴らしいニック・ケイヴですが、今回はサウンドに合わせてかより直接的でストレートな表現になっています。ニック・ケイヴという男のパンク・アティチュード満載の初期衝動を詰め込んだ豪快なガレージ・ロック。
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ニック・ケイヴの歴史の中でも、おそらく後に重要な転機となった作品として評価されることになる作品でしょう。是非新作「Dig!!! Lazarus Dig!!!」と共にチェックして下さい。

「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」(下写真)も素晴らしいので是非!
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by Blacksmoker | 2008-05-29 00:13 | ROCK