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映画 「Walk The Line」

2003年に他界したジョニー・キャッシュ とその妻ジューン・カーターの自伝映画「Walk The Line」

f0045842_044442.jpg何でも今年度アカデミー賞主演男優賞&女優賞など5部門にノミネートされているそうで、昨年の「Ray」を思い出します。主演はジョニー役にホアキン・フェニックス、ジューン役にリーズ・ウィザースプーンという配役。二人ともあまりよく知りませんでしたが(リヴァー・フェニックスの弟くらいの認識)、かなりの好演です。まあ似てる似てないかという二元論でいうとジェイミー・フォックス「Ray」で自伝映画のハードルを上げてしまったせいか「あまり似てない」という結論になりますが、何でも彼らは歌に関しては全くの素人だったようで、必死に特訓を積んで劇中の演奏シーンや歌は全部自分で演じれるようになったらしく、その役者ぶりには頭が下がります。特にジューン・カーターを演じるリーズ・ウィザースプーンの歌のうまさには驚きです。とても初めて歌ったとは思えません。ホアキン・フェニックスも熱演ですが、やはりジョニー・キャッシュのあの低音ボイスを再現するには今一歩低くなりきれていませんでしたね。
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さてストーリーですが非常に単純明快。 出会い別れヤク中リハビリ復帰復縁というハリウッド王道スタイル。正直「Ray」 とどう違うのか分からないくらいのストーリー展開です。まあそれは置いといてジョニー・キャッシュやカントリー・ミュージックが好きならニヤリとするシーンが満載です。サン・レコードにオーディションを受けに行くシーンや、ジェリー・リー・ルイスエルヴィス・プレスリーとツアーを回るシーンも面白い(ちなみにジョニーにドラッグを渡すのはプレスリーという設定が笑える)。ディランも話題にでてくるし、ジューンの母親でカーター・ファミリーの一員メイベル・カーターも登場するというカントリー・ファンにはたまらないシーンが楽しいです。

そしてこの映画のハイライトはなんといっても1968年の「フォルサム刑務所」でのコンサート模様。ジョニー・キャッシュのあのライブの名盤「At Folsom Prison」の再現です。映画をまだ観ていない人はこの名盤を先にチェックしてから映画を観てください。 そうすればかなり楽しめます。 「このショウはレコーディングされてリリースされるので、あまりHellとかShitとか言わないでくれよ。」 と囚人に言うセリフなんかレコードのまんまで、観ていてニヤリ。横でジューンが見守っているところなんて写真とそっくりです。 しかしちょっと気になったんですが、f0045842_0542674.jpg映画ではこの「フォルサム刑務所」のステージが何か小さいのだ。実際当時の写真とか見るとかなりデカいステージなのだが映画だと結構小さい。せっかくの大事なシーンなのにここはしっかり再現して欲しかった。



映画の出来としてはあまりにも短絡的なストーリー展開とか人物像の掘り下げなどもう一歩ですが純粋にキャッシュが好きならめちゃくちゃ楽しい映画です。f0045842_123065.jpg観れば必ず「At Folsom Prison」(左写真)が聴きたくなるでしょう。そしてジョニー・キャッシュばかりに注目が行くがジューン・カーター・キャッシュ も素晴らしいカントリー・シンガーです(なんせあのカーター・ファミリーの娘ですからね)。
2005年にコロンビア・レコードが出した彼女の数ある代表曲を網羅した2枚組「Keep On The Sunny Side : June Carter Cash- Her Life In Music」 (下写真)f0045842_133589.jpgが内容・装丁ともに素晴らしいのでこっちも是非聴いて下さい。映画の中でも使われている二人のデュエット曲もちゃんと収録されています。ちなみに最近私がよく行くカントリー/ブルーグラスその道45年の老舗レコード店「B.O.M.」のオッサンも「あのCDはホントに良くできてるよ。」 と褒めてましたね。貴重な写真も多数見れますので是非チェックして下さい。
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by Blacksmoker | 2006-02-27 01:10 | 映画

THE FIVE CORNERS QUINTET @ Osaka Blue Note 2/22(水) 2006

さて行って来ました話題のフィンランドの新鋭ジャズ・バンド「ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテット」の初来日公演。

f0045842_22532228.jpg「黄金時代のジャズを現代に再現する」というコンセプトでレコードをリリースし世界でヒットしたこのバンドが、今度は世界中でライブ活動を行っているとの事。その世界観を堪能すべくブルーノートへ。そもそもそんな時代のジャズなんてリアルタイムで体験している人はほとんどいないだろうし、それがどんなモノなのか疑似体験出来るんだからそれはもう楽しみでしょう!

さてライブのメンバーは、

ユッカ・エスコラ Jukka Eskola (Trumpet)
ティモ・ラッシー Timo Lassy (Saxophone)
ミカエル・ヤコブソン Mikael Jakobasson (Piano)
アンチ・ロッジョネン Antti Lotjonen (Bass)
テッポ・マキネン Teppo Makynen (Drums)

もちろん全員ビシっとスーツでキメたジェントルな出でたち。しかし全員若い!トランペットのユッカ・エスコラ(下写真)なんて自身のリーダー作もリリースしている若き実力派のトランペッターだが弱冠28歳という若さ。顔なんてまだ童顔で20代前半に見えます。リーダーでもあるドラマーのテッポ・マキネンでもまだ31歳。その他のメンバーもみんな俺と同い年くらいです。
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しかしよく考えてみると50年代~60年代の数々の名盤を生んだジャズメン達の年齢って結構若い。ちょっと調べてみたらマイルスの名盤「Birth Of The Cool」 録音時で23歳。コルトレーンだってマイルスのクインテットに参加した時でさえ29歳。チャーリー・パーカーだって絶頂期は20代。チック・コリアジョン・マクラフリンだって名盤を生み出した時にはみんな20代だ。そう考えるとこのザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットだって決して若すぎるわけじゃない。

f0045842_22541929.jpgそれに、この5人はヨーロッパ・ジャズ・シーンでも有名な実力派の演奏家だ。特にドラムの華奢な細身の青年テッポ・マキネン。彼のドラミングの素晴らしさがこのバンドの肝だといっても過言じゃない。相当な実力をもっています。黄金時代のジャズの特徴でもあるシンバル中心のリズムは聴いていてワクワクする。

ブルーノートのステージは青いカーテンで囲まれた格式高い装飾で赤い照明がさらにあの時代を彷彿させる。そこでスーツに身を包んだジャズメンがビ・バップなどを演奏するわけですから、まるで50年代のニューヨークのクラブにタイムスリップしたような気持ちになります。

出来上がったコンセプトの上でのライブなのでインタープレイなどもお決まりのプレイなのかと思いきや完全に自分のプレイも取り入れた技を披露してくれて幅の広い音楽性の片燐を垣間見せていました。何度も言うようで悪いがドラムが素晴らしかった!客層も若くオッサンだけの音楽じゃない事を証明していましたね。そもそもジャズのライブがこんなに楽しいなんて今更ながら再発見。「ジャズは難しい顔して聴くもんじゃないだぜ!」と言われている気がしましたよ。
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ライブ活動でも黄金時代のジャズを再現することに成功したザ・ファイブ・コーナーズ・クインテット。これからも彼らに目が離せません。

 
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by Blacksmoker | 2006-02-26 00:13 | ライブレポート

THE FIVE CORNERS QUINTET [Chasin’ The Jazz Gone By]

まだまだ熱い北欧ジャズ・シーン。今回はその中核を担うフィンランドの新鋭ジャズ・バンド、ザ・ファイブ・コーナーズ・クインテットを紹介します。

f0045842_239047.jpgこのバンドは結成動機がとても面白いバンドです。2002年にヘルシンキで結成されましたがそのコンセプトはずばり「50年代後半~60年代前半のジャズを現代に再現する」 です。上記の時代というと、マイルスでいうところの「Kind Of Blue」ビル・エヴァンスでいうと「Waltz For Debby」コルトレーンでいうと「Blue Train」エリック・ドルフィーでいうと「Out To Lunch」 などのジャズのクラシックな名盤が次々に生まれていた時代です。タイトルだってズバリ「過ぎ去りし日のジャズを追いかけて」ですからそのこだわりようは相当なものです。ちなみにバンド名の「Five Corners」というのはヘルシンキに実在する五差路の事でそこは良質のアナログ・レコード店が点在するスポットだそうだ。

そして、この時代の空気を再現するというコンセプトでリリースした2枚の10インチと1枚の12インチのシングルが大当たり。全世界のクラブ・ジャズ・シーンでも大ヒットし、ジャイルズ・ピーターソン(ジャズといえばこのオヤジというくらいのレコード番長)が絶賛したり、クラブ・ジャズ系のDJの間でも話題だったようですね(ハウス系のクラブにあんま行かないのでよく知らないけど…)。もちろん須永辰緒松浦俊夫ら日本のレコード番長達も絶賛。
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「黄金時代のジャズを現代に再現する」というと一見後ろ向きな音か思われるが、全くそんなことはなく、最高にクールなジャズを聴かせてくれます。メンバーが全員28~30歳という若さもこの演奏が古くなっていない要因でしょう。全員がガチガチのジャズメンではなくクラブDJもこなすフレキシビリティさが良いケミストリーを生んでいる気がします。そしてニューヨーク在住の70歳を超えるジャズ・シンガーのマーク・マーフィや、パリの黒人女性シンガーのオコウなど参加したボーカル入りナンバーもあって非常に聴きやすい。お洒落でクールで躍動的なジャズが堪能出来ます。須永辰緒の「夜ジャズ」シリーズにも取り上げられそうなサウンドです。今からジャズを聴く人はこのアルバムから入ってもらってもいいんじゃないかな。

さて「黄金時代のジャズを現代に再現する」というコンセプトを成功させたこのバンド、次回作ではどんなアプローチで来るんでしょうか?とても楽しみです。

f0045842_23162649.jpgちなみに日本盤のジャケット(右写真)なんですが青色です。北欧のイメージとしては個人的には青の方が好みですね。



そして水曜日に彼らの初来日公演に行って来ましたので次回レポートします!
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by Blacksmoker | 2006-02-24 00:13 | JAZZ

レゲエ馬鹿道場(VERSION) 第二回。

さてさて第二回目です。

THE WAILING SOULS「The Wailing Souls」 (1976)
 ザ・ウェイリング・ソウルズ/ザ・ウェイリング・ソウルズ

f0045842_23391417.jpgさてこのザ・ウェイリング・ソウルズは今も現役で活動するコーラスグループだが、最近の彼らはINNER CIRCLEASWAD同様「おわっている」ので無視してくれて構わない。しかし1970年代後半~80年前半の彼らは素晴らしい作品をいくつも残している。その中でもお薦めしたいのがこの1976年の彼らの1stアルバムです。


録音はジャマイカのあの伝説の「STUDIO ONE」。もちろん製作は「STUDIO ONE」の創設者であり「レゲエの父」コクソン・ドッド(↓写真)。 2005年5月にレゲエ界のみならず全世界に衝撃を与えたコクソン・ドッド死去のニュースは記憶に新しいところ(日本でも新聞に載ってたくらい)。まあこんな事を言うと怒られるかもしれないが、この「STUDIO ONE」から出てる作品ってのは全部素晴らしいのです!例えばレゲエのレコードを手に取ってみて、そこに「STUDIO ONE」と記載されていればそのレコードのほとんどがマチガイナイということです。そのくらいコクソン・ドッドと「STUDIO ONE」はレゲエ馬鹿にとっては偉大なのです。
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そこから出ているこのTHE WAILING SOULSの1stも、もちろん素晴らしい出来で、若々しいコーラスグループとしての魅力が詰まっています。演奏も(クレジットが全くないので詳しくは分からないが)「STUDIO ONE」専属のミュージシャンによるしっかり安定した演奏だ(おそらくTHE SKATALITESでしょう)。

ここで注目したいのは1曲目「Back Out With It」 なのだが、よ~く聴くとなんと1人コーラスを間違えているヤツがいる!! 普通は録り直すモンだが、そのまま収録されちゃってるんですよ。おそらく1stアルバムということで、まだ無名に等しいTHE WAILING SOULSなんかの為に録り直す時間なんて無かったんでしょう。そういやジミー・クリフが主演した映画「The Harder They Come」 の中でもまだ無名のジミー・クリフがスタジオ・レコーディングするシーンがあったが、そんなカンジだったな。まあそれはご愛嬌として、このアルバムはコーラスグループのカッコ良いトコが凝縮されているので是非聴いてみて欲しい。

でもこの盤はなかなか手に入りにくいかもしれないので、1979年のアルバム「Wild Suspense」も良いのでお薦めしておきます。間違っても2005年に出たNEWアルバム(しかもCCCD仕様)は買わないように!

さて最近ビール「ドラフト・ワン」のCMを見たことありませんか?「I'm Gonna Be Your Number One~♪」 ってバックで流れてるやつです。多分聴いた事はあるはず(最近ではビギンのVo.と木梨憲武が出てるヤツ)。そのCMの曲ですがタイトルは「The Tide Is High」 といって、レゲエ界ではこれまでにいろんな人々に死ぬほどカヴァーされ続けている大名曲。ブロンディもカヴァーしてました。そのCM用に曲を歌ってたのが今のTHE WAILING SOULSでした。

f0045842_23462614.jpgただこの曲もTHE WAILING SOULSのオリジナルではなくカヴァーで、原曲はTHE PARAGONSというジャマイカのコーラスグループの曲です。オリジナルは「On THe Beach」 (写真)に収録。今回のCMの曲は「ドラフト・ワン」を強調するため、原曲の歌詞を変えてまで「ワン」を連呼するというお粗末なモノですのでしっかりオリジナル盤を押さえてください。

JAH RASTAFARI !!!
 
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by Blacksmoker | 2006-02-22 00:18 | レゲエ馬鹿道場(VERSION)

SCORCH TRIO [Luggumt]

冬季オリンピックでも選手の多いフィンランド。そしてサッカーの日本vs フィンランド戦も終わったばかり。何かと最近話題の多いフィンランドですが、フィンランドのジャズ・シーンも熱い。只今絶賛来日中のフィンランドの新鋭THE FIVE CORNERS QUINTET。来週は大阪公演も控え非常に楽しみです。

f0045842_1435952.jpg今回紹介するスコーチ・トリオの2ndアルバム「ルッグムト」 は北欧ジャズ・シーンの熱さをまざまざと見せ付けてくれる。NYのニッティング・ファクトリー周辺ではある程度幅を利かせれるようになってきたミュージシャン達も、このアルバムを聴けば自分がまだ井の中の蛙だと思い知るだろう。


スコーチ・トリオ
ラオル・ビューケンハイム(写真) <ギター>
インゲブリグド・ホーカー・フラーテン <ベース>
ポール・ニルセン・ラブ <ドラム>

f0045842_1464065.jpgフランク・ザッパを通過しマイルス、コルトレーン、ミンガスに心酔したフィンランド屈指のギタリスト、ラオル・ビューケンハイムがノルウェーの若手実力リズム・セクションの2人と組んだこのパワー・トリオ。全曲スタジオ・レコーディングでオーヴァーダブ、編集一切なしの一発録り!この生々しさは凄い。熱量がとても尋常じゃない!!このエネルギーの爆発は何なんだ!ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスエレクトリック・マイルスが正面衝突したようなエネルギーの放出量です。


相手の出方を見て自分の出す音を決めていくインタープレイというよりも、相手の事なんか知るか!と言わんばかりにやりたい放題。ジミヘンのフリーキーさとジョン・マクラフリンの冷静さの両面を兼ね備えたラオル・ビューケンハイムのギターと、「2台あるんじゃないの?」と思わせるポール・ニルセン・ラブの嵐のようなドラミングは圧巻。そしてベースもこの2人の間でさぞやり辛いと思いきや後からウッドベースでグイグイ追い上げてきます。

北欧的な透明感は皆無。音楽性でいうとSonic YouthNeil Youngの爆裂轟音系のジャズ・ロック。息つく暇のないアルバムだ。日本盤は2曲のボーナストラック付き。断然日本盤をオススメします。

ライナーノーツによるとアルバムには朝鮮宮廷音楽も取り入れられているとの事だが、変わった音階のメロディがそれか?よく分からん。
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by Blacksmoker | 2006-02-19 01:57 | JAZZ

V.A.[Our New Orleans]

これは1月にNonesuchからリリースされたハリケーン・f0045842_118511.jpgカトリーナ災害のベネフィット・アルバム 「アワ・ニュー・オーリンズ」。2005年8月アメリカ南西部を襲ったこのハリケーン被害はブッシュ政府の災害対策の遅れなど甘さが露呈した、「天災」というよりもむしろ「人災」として記憶される出来事でした。カニエ・ウェスト「ジョージ・ブッシュは黒人の事なんか気にしちゃいない」 とTVで発言し話題となったがあれはまさしく黒人の代弁だったに違いない。

そして、あれはもう既に過去の話かといえば全くそんな事はない。時々TVで復興しているような様子が取沙汰されるがあれは被害の少なかったごく一部の箇所が元に戻ったというだけの話で、今まだ避難所暮らしを余儀なくされている人達がほとんどという現状は3年間ニュー・オーリンズ在住の生活を送っていたアン・サリーのHPを見れば一目瞭然です。まだまだニュー・オーリンズ復興の道のりは長い。

さて、このアルバムは年末からいろいろリリースされた「カトリーナ災害」のベネフィット・アルバムの中でも一際輝きを放つアルバムです。Nonesuchが出しているというだけでも触手の動く人もいるくらいハズレなしの超良質のレーベルですし、しかもこのアルバムがレコーディングされたのはカトリーナ被害直後の9月後半から10月にかけて。かの地の生き証人ドクター・ジョン 、そしてニュー・オーリンズの重鎮アラン・トゥーサン による「Yes We Can Can」 (2月9日に行われたグラミー賞授賞式のラストでドクター・ジョン、ボニー・レイット、エルヴィス・コステロを従えこの曲を演奏していたのが印象的)、その他にも大御所ワイルド・マグノリアス、この地のセカンドラインを演奏するのはこの人達抜きには考えられないダーティ・ダズン・ブラス・バンド「聖者の行進」 を見事に歌い上げたエディ・ボーなどニュー・オーリンズ在住のアーティストの現在を伝えるアルバムなのです。

そして是非聴いてもらいたいのが、楽しいながらも悲しみを携えたこの意義あるアルバムのラストを飾るランディ・ニューマンによる「ルイジアナ 1927」 。ニュー・オーリンズ生まれの彼の1974年のアルバム「Good Old Days」 に収録されている曲ですが、これを再レコーディングしたのには訳があります。まずはこの曲の歌詞を見ていただきたい。

ここで起こったことといえば
風向きが変わったことと
北方から雲がまきあがり、雨が降ってきたことだ
激しい雨は、長く長く降り続いた
エヴァンジェリンの通りは
6フィートの水に覆われてしまった

川の水かさは一日中増すばかり
川の水かさは一晩中増すばかり

あるものは洪水のために行方不明となり
あるものは洪水から逃げおおせた
川はプラグマインの堤防を打ち壊し
エヴァンジェリンの通りは
6フィートの水に覆われてしまった

ルイジアナ ルイジアナ
あらゆるものが我々を押し流そうとしている
あらゆるものが我々を押し流そうとしている

クーリッジ大統領が列車に乗って視察に来た
書類を手にした太った小男をともなって
大統領は太った小男に言った
「おい、おデブさん。河はこの貧乏白人の土地に
何てひどいことをしたんだろうねぇ」

ルイジアナ ルイジアナ
あらゆるものが我々を押し流そうとしている
あらゆるものが我々を押し流そうとしている

ルイジアナ ルイジアナ
あらゆるものが我々を押し流そうとしている
あらゆるものが我々を押し流そうとしている

Randy Newman「Louisiana 1927」


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ニュー・オーリンズは1927年と1965年に洪水による災害に見舞われている。この歌の歌詞は1927年にルイジアナを襲った洪水被害を歌ったものです。この中に出てくるクーリッジは当時の合衆国大統領。「書類を手にした太った小男」は次期大統領のフーヴァー。クーリッジは「小さな政府」をスローガンに、救済には一切の資金援助や物質援助を行わなかった。そして9割を黒人が占めるこの地域で「貧乏白人」との発言はこの時代に黒人には人権などなく全く無視されていたのが分かります。黒人が白人より先に避難することは許されず、先に避難しようとした黒人は射殺されました。これを契機に世論の反発からフーヴァーの後任大統領ルーズベルトから弱者を助ける「大きな政府」が作られていくわけです。「あらゆるものが我々を押し流そうとしている」という歌詞は原文では”They're tryin' to wash us away”。Theyという言葉が何故複数形なのか?これは「洪水」と「当時の政府」を一まとめに総称した言葉なんじゃないかと思います。この曲は優しいメロディと痛烈に当時の政府を批判した歌詞が何ともミスマッチな名曲です。この曲を新たにルイジアナ・フィルハーモニック・オーケストラニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラを従えて再び歌わなければならなかったランディ・ニューマンの心情は推して知るべしでしょう。この曲からは彼の悲しみの声が聞こえるようです。今回のカトリーナ被害は「人災」なのだと。

このアルバムはベネフィット・アルバムと同時にブッシュ政府に対してのアンチテーゼです。
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by Blacksmoker | 2006-02-16 01:50 | NEW ORLEANS

「The Blues」DVDシリーズ 第1回。

「Soul Of A Man」(監督:ヴィム・ヴェンダース)

最初に登場するのは「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」 のドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース
f0045842_11403063.jpgBlind Willie JohnsonSkip James、そしてJ.B.Lenoir(J.B.ルノアー)という3人の偉大なブルースマンの生涯を辿りながら、彼らが後の音楽に与えた影響を伝える。そして彼らの曲を、現役のミュージシャンが演奏しているライブ映像を随所に挿入しながら、3人のブルースマンの血が確実に現代に受け継がれていることを伝える構成だ。映画というよりはTVドキュメンタリーのようなタッチ。曲の歌詞が常に出てくるので非常に内容が分かりやすい。「ブルースは歌詞が命だ」というのが私の持論ですので、じっくり浸れます。3人とも素晴らしいブルースマンだが、特にSkip James(写真下)の存在感は圧倒的。1900年に一度彼は行方不明になり、その後30年間彼の姿は完全に消えてしまいます。しかし30年後、彼は発見されまさしく30年振りに人前で演奏をするのだが、その時の映像が鳥肌モノです。
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前述した彼らの曲を演奏する現役のミュージシャンも非常に豪華。BECKジョンスペボニー・レイットロス・ロボスニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズカサンドラ・ウィルソンルー・リードマーク・リボーなどなど。特にニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズがブッチギリのかっこ良さです。20年代に使われた手回しカメラを使用したモノクロームな映像も雰囲気が出ていてGood。ヴェンダースのこだわりを感じました。J.B.ルノアーのかなり貴重な映像などもポイント高し。

[評価] ★★★★★ ★★★☆☆

  
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by Blacksmoker | 2006-02-15 11:51 | 「THE BLUES」 DVDシリーズ

The Blues

マーティン・スコセッシ 監修の「ブルース・ムーヴィー・プロジェクト」

f0045842_1312452.jpg2005年にその日本語版DVDの8枚組BOXセットが発売されました。ブルース生誕100周年と制定された2003年に公開され話題となったあのプロジェクトが日本語字幕付きで登場です。長い間待たされましたが、7本の映画のDVD+もう1枚、映画の中で使用された各ミュージシャンの演奏シーンを収録したDVDを合わせた8枚組の豪華なこのBOXは待たされた甲斐はあるボリュームです。27,000円は少し高いですが・・・。

「ブルースとは何なのか?」「ブルースの魅力とは?」 というテーマを、ブルースに魅入られた7人の監督がそれぞれの視点で撮った音楽探求の映画です。

ちなみにブルース生誕100年って、何を基準に100年なのかというと、マーティン・スコセッシ監督によれば、「ブルースの父」と呼ばれ、あらゆる黒人音楽を譜面・楽譜にして後世に残したWilliam Christopher Handy(ウイリアム・クリストファー・ハンディ) が田舎の駅でボトルネックの不思議な音に出くわしたと記録されたのが「1903年」、という事らしいです。まあ白人の考えた都合のいい「ブルース発見の年」なんで、その存在意義自体よく分かりませんが、ブルース初心者の私にはブルースを理解するには格好のガイドラインにもなるので非常にありがたい。全部観れば少しでも理解が深まるだろうか?

次回より「ブルース・ムーヴィー・プロジェクト」全作品レヴュー!連載形式でお送りします。
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by Blacksmoker | 2006-02-14 13:18 | 「THE BLUES」 DVDシリーズ

TOOL [Salival]

2006年遂に動き出すトゥール

なぜか先頃、前作「Lateralus」 からのシングル「Parabola」「Schism」 がDVDシングルとして突如2枚リリースされましたが、4月にはコーチェラ・フェスティヴァルのヘッドライナーに決定。その後には5年振りとなる新作も遂にリリースされる予定です。そして来日の噂もあり。2006年はかなりやってくれそうです。

さて今回は2000年にCD+DVDで限定リリースされた「Salival」「Undertow」「Aenima」までのPVにf0045842_0334080.jpgライブCDの付いたファン感涙の作品。 もちろんTOOLのファンならマストなアイテムです。凝りに凝った独特の世界を持ったグロテスクなPV映像も凄いですが、ライブ音源も強力です。TOOLのライブは今まで1stアルバム「Undertow」 収録の「Sober」 のシングル盤でしか聴けませんでしたが、得体の知れない怪物に変貌を遂げつつあった2ndリリースのライブ音源だけあってその凄さは得体の知れない巨大なマグマのような威圧感。


初期のTOOLは割りとパンク的な荒々しさも備えていましたが、最近は完璧に統制された完成度の高いプログレと化しています。 何といってもドラムのプログレ度が異常に高い。要塞のように積まれた2つのドラムセットを操るダニー・カーレイの正確無比でトライバルなリズムが人間が細胞レベルで持ってる太古の昔から眠るリズム感を呼び起こしてくれます。 そしてコントロールされたギターのフィードバック・ノイズを完全に統制下に置き自在に繰り出すアダム・ジョーンズ、ギターのような美しいベースラインを弾くイギリス人ジャスティン・チャンセラー、そしてf0045842_0593545.jpgライブでは異常に伸びやかな美しい声と、地の底からの咆哮のような叫び声の2つを使い分ける稀代のヴォーカリスト、メイナード・ジェイムス・キーナン。この4人の鉄壁の演奏は、MAGMAKING CRIMSONを彷彿させるくらい完璧です。

さて今作にはLED ZEPPELIN「No Quater」PEACH「You Lied」 などTOOL以外の曲も収録されています。とくに「No Quater」 のハマリ具合は白眉。その昔CROWBARってバンドもこの曲をやってましたがこっち系の人には人気のある曲なんでしょうかね?

全8曲で70分というヴォリュームはプログレ化の証。存分にこの強力なライブを堪能出来ます。そして最後にはシークレット・トラックで結構キャッチーな曲が入っていますがタイトルは「Maynard’s Dick」 …。

まったく侮れません。
 
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by Blacksmoker | 2006-02-10 01:24 | METAL

レゲエ馬鹿道場(VERSION) 第一回。

<以前Music BBSで不定期連載していた「レゲエ馬鹿道場」。レゲエの火を消してはいけませんので、ここにUPしておきます。>

紆余曲折しながら第九回までやってきた「レゲエ馬鹿道場」ですが、どうやらもう1人の兄弟がいっこうに更新しなくなってしまいました。本人曰く「モチベーションが上がらない」そうです。なんともPSS出身者らしいトホホな理由ではあります。ただ俺としてはこのままレゲエの炎を消すわけにはいきませんので、兄弟が復帰する日までは「レゲエ馬鹿道場」の看板は下ろさず「レゲエ馬鹿道場VERSION」 として続けていきます。


さて最近になって、やたらとアイランド・レーベルの70年代ルーツレゲエのヤバい名盤が日本盤で再発されているんですよ。 BURNING SPEAR「Dry & Heavy」 ('76)やDILLINGER「CB 2000」 ('76)や、RICO「Man From Wareika」 ('76)、IJAHMAN「Are We A Warrior」 ('78)などなど思わず輸入盤持ってるのに歌詞が付いてる日本盤を買い直したくらいです。その中でも一際輝きを放つ歴史的名盤を紹介しましょう!行ってみよう「レゲエ馬鹿道場VERSION」第一回目はコレだ!

JUSTINE HINES & THE DOMINOES「Jezebel」 (1976)
ジャスティン・ハインズ&ザ・ドミノズ/ジェザベル

f0045842_11541018.jpg2004年にはJAMAICA ALL STARSの一員としてフジロックにも出演したジャスティン・ハインズ が1976年にジャック・ルビー製作の元、アイランド・レーベルに残した名盤。

このアルバムはボーカル・演奏・コーラスどれを取っても完璧。さらに黒人女性の絵が描かれたジャケットも秀逸な出来映えなのでアナログ盤でも是非押さえておきたい一枚だ。特筆すべきは演奏面。当時「黒い使徒集団」 と呼ばれたミュージシャンがバックを支えている。そのメンバーとは、映画「ROCKERS」で主人公を演じたリロイ・ホースマウス(写真左) 。 彼が全編でドラムを叩いている。さらにベースにはSLY & ROBBIEの名セッションマン、ロビー・シェイクスピア 。非常に小気味の良いリズムを刻みながらも随所に細かい技をみせるホースマウスf0045842_12552439.jpgのドラムがこのアルバムの要だと言っていいだろう。ロビーのベースも軽快でメロディアス。さらにホーンセクションがとても非常に効果的なフレーズを鳴らす。そのホーンセクションに名前を連ねるのはダーティハリー(写真右) や ボビー・エリスなどの凄腕たち。そのほとんどがBUNNY WAILER「Blackheart Man」 に参加しているメンバーと言えばその凄さが分かるかな?まあなるべくしてなった名盤ってヤツですね。HIP HOP界でいうところのNASの「Illmatic」 のような完璧さです。ジャスティン・ハインズの声もレゲエシンガー特有の濃いものではなく、妙にすっきりしていて聴きやすいのもポイント。そしてコーラスグループTHE DOMINOES も出しゃばり過ぎず、下がり過ぎずの素晴らしいハーモニーを聴かせてくれる。(ちなみにエリック・クラプトンが在籍したのは「DEREK & THE DOMINOS」で、THE DOMINOESとは関係ナイです。)

1曲目の「Natty Take Over」 は映画「ROCKERS」 のサントラの最後にも収録されている超有名曲だ。2曲目「Dip And Fall Back」 なんてイントロ聴くたびに鳥肌が立つカッコよさ。全曲ラスタなメッセージ満載です。 「Precious Morning」 という曲の中で「お前には肉体があるが 俺にはSOULがある お前には金やダイヤがあるが 俺には導いてくれるWISDOMがある」 というラインには涙ナシには聴けません。今回の再発盤は「Jezebel」 の翌年1977年に出た「Just In Time」 も丸々一枚カップリングされているので日本盤の方をお薦めします。とりあえず聴いてみなけりゃ始まらんよ。そんなわけで必ずチェックしてくれ!

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そして全然知らなかったんですが、ジャスティン・ハインズは昨年2005年3月17日に癌の為亡くなっていたようです。享年63歳。若すぎです。まだまだ活動して欲しかった…。レゲエの偉大なる功績者に対してリスペクト。そして合掌です。

JAH RASTAFARI!!!
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by Blacksmoker | 2006-02-08 13:03 | レゲエ馬鹿道場(VERSION)