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MARISA MONTE [Infinito Particular]

6年振りのアルバムを2枚リリースしたブラジル音楽界の女王マリーザ・モンチ。そういやワールドカップのブラジル代表のロナウドもマリーザの大ファンだそうでよくコンサートに現れるそうですね。

f0045842_113785.jpg前回はサンバに焦点を当てたアルバム「Universo Ao Meu Redor」(邦題:私のまわりの宇宙)をご紹介しましたが、今回はもう1枚のアルバム「Infinito Particular」(邦題:私の中の無限)を紹介します。このアルバムはポップ編と呼べる作品になりました。マリーザはこの2作品については「まるで双子のようなもの」と言っています。

ただマリーザが単なる普通のポップ・アルバムを作るわけが無く、とてつもなく凄い作品が出来上がってしまいました。「私のまわりの宇宙」はプロデューサーにマリオ・カルダートJr.を迎えたことにより、雑多な音が絶妙なバランスでミックスされとても楽しいサウンドになっていて、ストリート感覚がよく出ているアルバムですが、今回の「私の中の無限」は長い時間をかけて精密に作り込まれた重厚なサウンドで室内音楽を聴いているような感覚になります。例えるならXTCとかピーター・ゲイブリエルのような緻密でハイブリッドな音造りです。今回は聴きながら踊ったりするより、ゆったりと聴き入るアルバムですね。

f0045842_1351152.jpg今回のアルバムのプロデューサーはマリオ・カルダートJr.ではなくアレー・シケイラとマリーザ本人。共同プロデュースという形になっている。今回抜擢されたアレー・シケイラはクラシックなども専門とする現在32歳の新鋭プロデューサー。こういう若い才能をいち早く見抜いて起用するのもマリーザの得意とするものですね。クラブで最先端な音楽を、その音楽が下火になってきた頃に世間に提示してみせるマドンナとは格が違います(個人的にマドンナは結構好きなんですけどね・・・)。

しかしプロデューサーが変わるとここまで質感が変わるのか!と驚きです。もちろんマリーザの声はとても優雅でスケールの大きい素晴らしいものだが、バックの音に緊張感が漲っている。一音一音の響きがとても大事にされている。長い時間を掛けて作り込まれたのが分かります。高級なサウンド・システムで聴けば物凄い効果があると思いますね。

今回の作品は今までにマリーザが長年書き溜めてきた曲や未発表だった曲を新たなミュージシャン達と作り上げたもので、「私のまわりの宇宙」の時と同様にカルリーニョス・ブラウンアルナンド・アントゥネスの参加はもちろんですが、今回は何とセウ・ジョルジ(下写真)が2曲に作曲で参加しています。ブラジル音楽界の新たなスターとなったセウ・ジョルジ。ミュージシャンのみならず映画俳優f0045842_119070.jpgとしても有名なこの男(「シティ・オブ・ゴッド」のマネ役というと分かる人もいるでしょう)、昨年出たアルバムも好評で来日公演も大盛況でしたね。セウ・ジョルジの参加した曲「Levante」はトランペットの音色がマリーザの音楽に新しい風を送り込んでいる。もう1曲「O rio」は静かなバラードでした。これはあまりセウ・ジョルジの色は無かったです。

もう1人女性シンガー、アドリアーナ・カルカニョット(下写真)もf0045842_1283127.jpg登場(「私のまわりの宇宙」にも1曲参加している)。彼女はブラジル音楽界においてはマリーザのライバルと目される存在ですが意外な共作で最終曲に曲作りで参加しています。こういう所もマリーザのスケールのデカさが分かりますね。2人の作る美しい切ない叙情的バラードにうっとりです。凄いコラボレーションです。


そんな感じで2枚のアルバムとも傑作に仕上がっていますが、どっちが好きかと言われたら個人的にはサンバ編「私のまわりの宇宙」かもしれません。結構明るい雰囲気が良く出てるアルバムですからね。でもマリーザ曰く「このアルバムは双子のようなもの」と発言してるわけなのでファンとしては両方ともチェックしないといけませんね。
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この2つのサイドがマリーザを表していると言うことならマリーザは1つの範疇に収まりきれない存在になっているという事なのです。是非とも2枚ともゲットして手元に置いておく事をオススメします。
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by Blacksmoker | 2006-06-29 08:00 | ブラジル

MARISA MONTE [Universo ao meu redor]

ブラジル音楽界の若き女王マリーザ・モンチの待望の新作がリリースされました。しかも2枚同時リリース!この2枚のアルバムはそれぞれ「サンバ」と「ポップ」に焦点を絞ったアルバムとなっている。

f0045842_0425086.jpgブラジルでは国民的なシンガーとなったこのマリーザ・モンチですが、前作の「Memorias, Cronicas e Declaracoes de Amor」(邦題:アモール、アイ・ラブ・ユー )からは実に6年振りとなります。まあ2002年にカルリーニョス・ブラウンアルナルド・アントゥネスマリーザの3人が組んだトリバリスタスのアルバムを挟んでいるとはいえ、彼女の新作としてはほんとに久しぶりのアルバムですね。今回は彼女の新作でもサンバに焦点を絞ったアルバム「Universo ao meu redor」(邦題:私のまわりの宇宙 )を紹介します。

そもそも「サンバ」というものは誤解されてる事が多いので念のために言及しておくと、サンバとはリオのカーニヴァルで羽根を付けた女性が踊っている音楽ではありません。サンバというのはソウル・ミュージックと同義語で、ブラジルの大衆音楽の基礎となる国民音楽のことです。あのジョアン・ジルベルトでさえ「私はサンバをやっているだけなんだ」と言ってますからね。

マリーザ・モンチは1967年リオ・デ・ジャ・ネイロ生まれ。彼女のデビュー盤は89年、いきなりのライヴf0045842_0472728.jpg盤『Marisa Monte』でした。マーヴィン・ゲイからカルメン・ミランダまで幅広いレパートリーを披露し、21歳とはとても信じ難い貫禄をもってシーンに登場するわけですが、これが大ヒットし一躍トップ・アーティストの仲間入りを果たします。91年にアート・リンゼイをプロデューサーに迎えてスタジオ・アルバムをリリース、その後2000年までの間にアート・リンゼイと共に実験的でありながらもブラジル音楽の伝統を尊重した素晴らしいアルバムを3枚リリースしてその存在はブラジル音楽界のみならず世界の音楽シーンの重要人物になるわけです。

アルバムを出すごとに巨大f0045842_143877.jpgな存在になっていくマリーザですが、彼女の魅力は何かと言われれば、それはやはり彼女の存在の独特さにあるといえる。単独公演は行っても様々なアーティストが集うフェスティバルなどには参加しないし、TV出演もほとんどしない。メディアには顔をほとんど出さないのです。そして15年でまだアルバムを5枚しかリリースしていない寡作さ(今作は6年振り、前作は4年振り)や、その魔性のような美しすぎる容姿、そして多様で先鋭的な音楽性もあって、かなり希有でミステリアスな存在なのです。

個人的には1996年にリリースされた4作目「Barulhinho Bom」(邦題:ア・グレート・ノイズ )[下写真]で彼女の事を初めて知りました。このアルバムはライブ録音とf0045842_1134726.jpgスタジオ録音の両方が収録されたアルバムで、洗練されたポップな音楽でありながらとても実験的な音作りがしてあって、当時自分の聴いていた音楽には無い何か凄いモノを感じましたね。このアルバムは個人的にもマリーザのアルバムの中でも一番好きなアルバムです。このアルバムに参加しているカルリーニョス・ブラウンのアヴァンギャルドさも大きな要素でしたね(カルリーニョスと言えば、メタル・ファンにはセパルトゥラの歴史的傑作「Roots」に収録されている「Ratamahatta」に参加している人と言えば分かるでしょう)。

さて話を新作に戻します。マリーザはこの新作のプロデューサーに、長年のパートナーであったアート・リンゼイではなくマリオ・カルダートJr.を迎えています。BECKビースティ・ボーイズジャック・ジョンソン、そしてベベウ・ジルベルトを手掛けるこのブラジル人プロデューサーがとても良いサウンド創りをしています。とにかくとても多彩な音がいろんなところから聴こえてくる斬新なサウンドになっていて素晴らしいのです。サイケデリックな感覚にも陥ります。これは是非とも5.1chサラウンド・システムでリリースして欲しい!実験的な音作りだけに終始せず、1940~50年代のブラジルの知られざる伝統音楽の名曲を蘇らせたりしています。このブラジルの伝統を大切にしているところもマリーザの素晴らしさですね。
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そしてマリーザの歌声が更に包容力を増してスケールの大きいものになっているのも凄いです。前作から今作の間に出産を経験したのも大きな要因でしょう。この声は他に比較する対象がないほど孤高の存在です。ポルトガル語なので何を言っているのか聴き取れませんが、日本盤は日本語対訳付きなのでその美しい歌詞の内容が分かります。サウダージ感が実によく表現されていてますよ。

これはマリーザ・モンチの作品の中でも最高傑作だと思います。ブラジル音楽界の至宝でもある彼女の音に是非一度触れてみて下さい。

同時発売の「Infinito Particular」(邦題:私の中の無限 )は次回レヴュー!
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by Blacksmoker | 2006-06-27 01:35 | ブラジル

GYPTIAN [Serious Time] &[Mama]

今年も暑い夏がやって来そうです。今年も日本各地でかなりビッグなレゲエのダンスが開催されることでしょう。そこで昨年よりジャマイカにて記録的なヒットをしているこのビッグ・チューン「Serious Time」「Mama」をご紹介しましょう!今年もレゲエのダンスにはこの2曲は絶対ハズせないですね。

この2曲を歌うアーティストとはジプシャン。昨年2005年に「Serious Time」を大ヒットさせ一躍注目を浴びたこのアーティストはまだ23歳のラスタf0045842_071630.jpgマン・シンガーだ。「Mama」も本国ジャマイカのみならず世界各国でも超話題になっているジプシャンだが、実はまだアルバムさえもリリースしていないのです。今でも各国のレゲエ・チャートの上位に君臨するこの2曲はまだ7inchのレコードでしかリリースされていないのだ!どんなミックス・テープやミックスCDにも必ず入っていて、各地のダンスで感動を起こすこの2曲はいまだCD化がされていない。私もこの曲が欲しくて7inchでゲットしました。(ちなみにGreensleevesのコンピ盤にはCDで収録されている模様。)

まだ聴いた事のない人は「一体どんな凄い曲なんだ?」と思うでしょうが、これが思いっきり2曲ともナイアビンギ(レゲエ以前のジャマイカの民族音楽)調のゆったりなリディムにスイートで伸びやかな歌声が乗るメロウな曲なんです。踊るというよりも聴き入る曲なんですね。

まず「Serious Time」ですがナイヤビンギ調のパーカッションと控えめなサックスによるレイドバックしたミディアム・チューン。力強いジプシャンの伸びやかでメロウなf0045842_0142235.jpg声で「このシリアスな時代 周りを見渡せば暴力や犯罪だらけ 今こそラスタがひとつになる時なんだ」と歌われる感動的チューンだ。昨年大ヒットしたJAH CUREの「Reflection」にも通じる素晴らしい曲ですね。昨年あたりからジャマイカではアゲまくるダンスホール・チューンよりもミディアム・チューンが好まれるようになっている。これはジャマイカを取り巻く状況の悪化が原因といえる。


ここ最近、貧困問題や治安悪化がかつてないほど進行しているジャマイカ人にとって、あまり中身に無い内容のパーティ・チューンよりも、内容のあるメッセージ色の濃いコンシャスな曲が好まれるようになっているのです(ちなみにこのジャマイカの抱える問題は昨年公開された映画「ジャマイカ ~楽園の真実~」を観ればよく分かります)。そして、このジプシャンの曲はこのコンシャスな曲のもっとも代表的なモノといえる。今ジャマイカの人々はラスタファリの真摯なメーセージを必要としているのである。

そしてもう1曲、現在も大ヒット中の「Mama」ですが、これも超名曲。「ママ、泣かないでくれ、必ず良い明日は来る筈だから だからその目の涙を拭ってくれよ。」と歌われる母親賛歌。正直f0045842_0215691.jpg自分なら恥ずかしくてここまで言う事は出来ないだろうが、ジプシャンは「俺にとって母親は神同然だ」と堂々と言ってのける。以前に「厳しい状況でも母親だけが俺を見捨てなかった。子供を大事に育てて悪い事なんか絶対ない。これは全ての母親へのメッセージだ」と発言していたこのジプシャン。カッコ良すぎます。これが真のラスタマンだ。見た目はちょっとギャングスタっぽいけど・・・。(ちなみに「父親は何にもしてくれなかった」とも言っていた。)この曲は「Triumphant」というリディムが使用されており、この「Mama」のメガヒットに伴って「Triumphant」リディムを使ったワン・ウェイ・アルバム(レゲエでは恒例の、1つの曲に多数のアーティストが別々に歌を乗っけたアルバム)もリリースされるほどの大人気リディムとなりました。

レゲエの現場においてはギャル野郎も全てを虜にするこのビッグ・チューンは今年も間違いなく主役でしょう!レゲエ・ファンはマストだが、レゲエをあまり知らなくても必ずチェックして欲しい!それほど素晴らしい曲ですからね。時代を超えて輝き続ける名曲です。
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最後に、このジプシャンですがこの6月に初来日公演を行う予定になっていたが直前になってキャンセルになってしまっています。この絶好のタイミングでの公演キャンセルは痛すぎますが、もっとデカくなって戻ってきてくれるのを待ちましょう。それまでにアルバム出てたらイイなぁ。
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by Blacksmoker | 2006-06-25 00:40 | REGGAE

映画「Get Rich Or Die Tryin’」

ギャングスタ・ラップの時間だぜ!

f0045842_10301199.jpg50セントが初めて主演したギャングスタ・ムーヴィー「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」。50セントが映画初主演というだけでBなヘッズはマストですが、普通の人でももう余計な事は何も考えずに観に行けるギャングスタ・ムーヴィーです!エミネムの「8マイル」のように、50セントが自分の半生を映画化したものだ。もちろん映画なのでフィクションも多々あるだろうが、大筋ではこのギャングスタの人生をしっかり描いている。実際に9発の銃弾を喰らっても生きていた50セント。そのシーンもちゃんと登場します。監督が何とジム・シェリダン。「マイ・レフト・フット」とか「父の祈りを」とかあの重厚で素晴らしい作品を監督した人で、50セントとどう繋がりがあるのか全く分かりませんが、こんな人が監督とは意外だ。

さて、内容はもちろん典型的なギャングスタもの!スラムで育ったマーカス少年(50セント)が、母親が殺され、ドラッグf0045842_10313533.jpgディーラーに身を落とし、刑務所に入れられ、ラッパーに目覚め、銃で撃たれ瀕死の重症を負い、そこから復活するという何のひねりもないギャングスタ・ムーヴィーです。そこに幼い頃からの憧れの女性とのロマンスを入れ実に分かりやすい内容になっています。

ストーリーはともかくとして、面白いシーンがふんだんにあります。なぜ50セントがあんな独特なラップなのかも分かるし、9発の銃弾を喰らったシーンもなかなか壮絶。顔面を撃たれるとこなんて強烈だし、当時の社会問題となったクラックが生成されるシーンもあって興味深い。細かい音楽ネタも豊富で50セントの家にマリファナ魔人リック・ジェイムスの切り抜きが何年も張ってあるのが笑えるし(大きくなったマーカス少年の部屋にはGANG STARRのポスターが張ってある)、幼い頃のマーカス少年がラップをするのがブギ・ダウン・プロダクションの「South Bronx」だったり、KRSワンをネタにした会話もあるし、たしかエミネムも一瞬出てたような気も・・・。

f0045842_10345478.jpgとくに50セントのラップがどれだけ過激で危ないのかがしっかり分かります。昨年の2ndアルバム「The Massacre」に入ってる「Piggy Bank」もファット・ジョーやジェイダキッスやDMXを実名入りでディスしまくってて話題になりましたが、映画でも命の危険に晒されても危ないラップを披露するシーンもありました。おまけに自分だけでなく家族や仲間も命の危険に晒されるので周りも迷惑極まりないでしょうね。それでも信念を貫いて突き進む根性が凄いです。

最後に、この映画の中でエロネタのラップをしているマーカス少年に母親が「女性はちゃんと扱いなさい!」ときつく叱るシーンがあって、そういう考えも盛り込まれているのかと思いきや、マーカスの恋人となる女性が当初ギャングスタやラッパーを気嫌いしていたくせにクラブでは思いっきりビッチな格好してたり(下写真)、銃撃を受けて自宅静養中のマーカスに「こんな生活耐えられない!」と言い出してギャングスタ・ラッパーに戻るようにけしかけたりと良く分からない描かれ方でした。まあギャングスタだし関係ないか・・・。
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f0045842_10473265.jpg最近はモブ・ディープM.O.P.も加入し巨大化するG-UNITですが、トニー・イェイヨーのアルバムもセールス的にはイマイチで、ザ・ゲームとの内紛もあったり、オリヴィアのアルバム・リリースも一向に目処が立っていない状況。焦った50が自身の新作をリリースしようとしてボスのエミネムに怒られたりとあまり良い話を聞かないのが気になります。新作をリリースしたばかりのモブ・ディープも大ヒットするカンジもなさそうだし・・・。早くも正念場に立たされているとの見方もあるが、もう一度体勢を立て直してチャートを賑わして欲しいですね。

ちなみに50セントは1975年生まれの30歳。俺と同い年じゃん!すげぇーな。
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by Blacksmoker | 2006-06-23 00:15 | 映画

BUSTA RHYMES [The Big Bang]

バスタ・ライムスが遂にゲームに戻ってきたぜ!

f0045842_1483938.jpgと言っていい約4年振りの超久々の新作「ザ・ビッグ・バン」がドロップされました。96年のソロ・デビュー以降ほぼ毎年アルバムをリリースしてきてたバスタ・ライムスなだけにほんと待望の新作になります。個人的にも大好きなラッパーです。

この4年の間にJAY-Zも引退し(絶対ウソだろうけど)、DMXも一線から退いた。その代わりに50セントのG-UNIT勢の登場やらスウィズ・ビーツの大復活やらと変わり続けるシーンにおいてバスタ・ライムスは何をしていたかと言うとドクター・ドレAftermath Recordsに移籍してドレとじっくりアルバムを制作していたのです。

完璧主義者として有名なドクター・ドレ(下写真)がさっさとアルバムをリリースするわけもなく、自分の納得いくまでじっくり細部に渡り作り込みんだサウンドを完成させるのに3年を要したわけです。何たって自身の次作が「Detox」というf0045842_120173.jpgタイトルになると発表されてから、もう既に数年経っているのだ。1999年にリリースされた前作「2001」が8年振りだったので、この「Detox」も8年振りにリリースするような事も言っている。「8年に1回」ってAORバンドのボストンじゃあるまいし…。しかしこの寡作ぶりにも関わらず、ドレ先生の作り出すサウンドはやっぱハンパなくプロデュースした曲はことごとくヒットという状態には平伏すしかないですね。その寡作なドレとエネルギーの塊のようなバスタがタッグを組んだわけだから、ハンパなものが出来るわけが無い!という予想通りとても濃い仕上がりになってます。

話題は昨年に既にリリースされたこのアルバムからの1stカット「Touch It」でしょう!昨年後半の特大ヒットとなったこのフロア・バンギング・チューンは大復活を遂げたスウィズ・ビーツがプロデュース。これはアガりますよ!NYではこの曲が流れるだけでフロアが爆発するというビッグなハイプ。この大ヒットを受けて、ストリート仕様のリミックスも作られましたが、これが超強力!メアリー・J・ブライジラー・ディガミッシー・エリオットロイド・バンクスDMXパブースをfeat.したこのヤバすぎるリミックスは奇跡にキラーな1曲クレイグ・マックの「Flava In Ya Ear(Remix)」にも匹敵するクラシック。ここでこのPVf0045842_2471096.jpgが観れるのでチェック。久々に登場のDMXのハンパない破壊力に鳥肌が立ちますよ。バスタと共に俺の大好きなDMXの復活はほんと嬉しい限りです。メアリー・J・ブライジのライミングもカッコよすぎ(メアリーはラップするときだけ新しいハードコア・ラッパーとしてのペルソナ、ブルックが生まれるそうです)!そしてバスタがリーダーを務めるラップ・クルー「フリップモード・スクワット」の新メンバー、パプースのRZAばりのラップも目を引きます(以前にこのグループに在籍したLord Have Mercyというラッパーがむちゃくちゃカッコ良くて大ファンでした。今どこにいるのやら・・・)。

Touch It」が話題ですが、この曲以外にもクソヤバいビートの曲ばかり。ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムケリス嬢をfeat.した現在ヒット中の2ndシングル「I Love My Bitch」と、故J ディラのトラックにQ-TIPと絡む「You Can’t Hold The Torch」、そして2004年に他界したR&Bシンガーのリック・ジェイムスとの共演曲「In The Ghetto」などが特筆モノ。NYに生きてNYをレペゼンするバスタがNYのヒップホッパー達の名前をシャウトアウトしていく「New York Shit」とか間違いなくフロア・アンセムとなる曲でしょう!その他NASやレイクォン、元デスチャのラトーヤ、そしてスティーヴィー・ワンダー御大などゲスト陣もかなり豪華。必ず大ヒット間違いなしの傑作です。HIP HOPヘッズはマスト!


ちなみにバスタは15年間伸ばし続けてきたドレッドをバッサリ切って心機一転攻めの姿勢に転じたようです。この4年を取り戻すようにガンガンHIP HOP界を揺らして欲しい。毎年でもリリースしたいバスタと完璧主義で寡作なドレが今後どう噛み合っていくが鍵となってくるでしょう。そしてバスタにはガンガンに変態的なビートを乗りこなす曲もやって欲しいですね。
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毎回、制作費に5000万円以上も掛かってるといわれるPVの斬新さも芸術的なので是非チェック!!
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by Blacksmoker | 2006-06-20 02:56 | HIP HOP

MATISYAHU [Youth]

凄いアーティストが登場してきました!!
こいつはマジでヤバイです!

f0045842_11559.jpgマティスヤフという一風変わった名前のレゲエ・ミュージシャンですが、初耳の人も多いでしょう。2005年の「Bonnaroo Music Festival」で、元PHISHのトレイ・アナスタシオのステージにゲストで参加して完全に主役のトレイを喰ったとの噂は聞いていましたが、私もこのアルバムで初めて彼のサウンドを聴きました。すでに2枚のアルバムをリリースしていて、2005年の2作目でいきなりのライブ・アルバム「Live at Stubb’s」を発表し50万枚売り上げたというからちょっと驚きです。全然知りませんでした・・・。そして先日この最新作「ユース」がリリースされたわけですが、何とアメリカのビルボードTop 200で初登場4位!大ブレイクを果たしています。しかしこの盛り上がりとは裏腹にこのアルバムはパーティ・アルバムなどではなく、かなりのストロングなレゲエ・アルバムなのです。

さてこのマティスヤフですが、現在26歳。見た目からも分かるようにジャマイカ人ではありません。何とユダヤ人のラスタマンなのです。彼はf0045842_135757.jpgユダヤ教の中でも「ハシディム派」という最も厳しい戒律を重んじる宗派に属しているそうだ。その為ユダヤ教の安息日である金曜日の日没から土曜日の日没までは一切ライブ活動も行わないという。このユダヤ教とラスタファリズムは一見あまり共通点がないように思われるが、実はこの2つとものルーツは「旧約聖書」であり、元は神とイスラエル民族(ユダヤ人)との契約に端を発している。イスラエル12部族を信仰するラスタファリもユダヤ教にはかなりのシンパシーがあると言える。彼がラスタファリズムに傾倒していったのは自然の成り行きでしょう。

もともとマティスヤフの両親はグレイトフル・デッドの熱狂的なファン「デッドヘッズ」であり、PHISHの追っかけもやっていたという筋金入りのヒッピーだったそうだ。その両親から音楽的影響を受け育ち、そしてボブ・マーリィにのめり込みレゲエに傾倒しラスタの教義に惹かれていったという。

彼の音楽の最大の特徴といえば2つあります。

まず1つ目は、その敬虔なリリック。ショーン・ポールエレフェント・マンT.O.K.などのダンスホール・レゲエのパーティものではなく(あれはあれで良いんですけどね・・)、ラスタファリズムに傾倒したかなり真摯なメッセージを持ったリリックで浮ついたところが一切無い。ストレートに道を説くまるで牧師のようなメッセージだ。マティスヤフの声もめちゃくちゃ太くて伸びやかで気持ちが良い。「ディージェイ・スタイル」というより「シングジェイ・スタイル」に近い。メッセージがストレートに響いてきます。

そして2つ目は、彼のバックを務めるROOTS TONICというバンドの存在だ。NYで活動するレゲエ/ダブ・バンドでf0045842_16529.jpg先日バンド名義でアルバムもリリースしている。こいつらのストロングでタイトな演奏がマティスヤフのメッセージをより強靭なものにしている。様々な側面を見せる多彩な演奏がガッチリ脇を固めているわけです。さらにこのROOTS TONICは即興演奏を得意としていて、何時間でもガンガンにジャムれる技術を持っているのでジャムバンド・シーンでもそのステージの圧巻ぶりが話題だそうだ。このマティスヤフもジャムバンド・シーンからブレイクしたといえる。ライブ活動も非常に精力的です。

それにしても、ここまでストロング&タフなゴリゴリのラスタのレゲエ・アルバムが全米4位を記録したという事実には驚くしかない。しかし決して小難しい音楽でもなく、このアルバムはダンス・ミュージックとしても有効だし、家でじっくりラスタの主張に耳を傾けるのにも有効だ。どんな状況・環境においても万人が楽しめるアルバムなのです。プロデュースがビル・ラズウェルというのも決して万人に受け入れられないような気もしますが、受けてしまったんだからしょうがない。昨年大ヒットをかましたボブ・マーリィの息子ダミアン・マーレィ(下写真)と似ている所がありますね。ダミアンのようなHIP HOPの要素は一切ありませんが、「Welcome To Jamrock」のようなあのストロングでハードコアな姿勢は共通するものが多いです。
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ロックからレゲエに行ったのではなく、レゲエがロックを飲み込んだといえるそのサウンドはやはり70年代のボブ・マーレィ&ザ・ウェイラーズを彷彿させます。でも「一番好きなミュージシャンはザ・フレーミング・リップス」という発言とかレゲエ・ミュージシャンとは思えない異色さ。ほんとユニークな存在だ。ジャムバンド・ファンはもちろん、ロックに飽きた人にもオススメ。こいつは今年絶対キマすね。

f0045842_1333213.jpgちなみにこのマティスヤフは本日より行われる「Bonnaroo Music Festival 2006」にも登場します!今年の「Bonnaroo」は8万枚のチケットが完売という盛り上がりぶり。凄いなぁ・・・。

そして何とマティスヤフは今年の「サマーソニック」に登場します!その雄姿を観れるチャンスですので是非チェックして欲しい。しかし今年のサマーソニックのメンツも凄いよねぇ・・・。私もマティスヤフは絶対観たいです。
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by Blacksmoker | 2006-06-16 01:46 | REGGAE

BRUCE SPRINGSTEEN [We Shall Overcome : The Seeger Sessions]

ブルース・スプリングスティーンによる音楽の歴史講義の始まりです。

f0045842_0384858.jpg2002年、誰もが待っていたE ストリート・バンドとのリユニオンによる感動的傑作「The Rising」以降、個人的にはどんどん好きになっていくブルース・スプリングスティーン(以下ボス)ですが、2005年の前作「Devils & Dust」からわずか1年というインターバルで届けられた新作は全曲ボスのオリジナル曲ではないカヴァー・アルバムになりました。「ザ・シーガー・セッションズ」という副題の通り、これはアメリカ人フォーク歌手のピート・シーガーの曲を取り上げている。厳密に言うとピート・シーガー自身の曲ではなく、シーガーが取り上げた労働歌や反戦歌、ゴスペル、プロテスト・ソングをカヴァーした作品です。

f0045842_0411711.jpgピート・シーガー(左写真)は1919年にNYで生まれているので今年で87歳!今も現役のフォーク・シンガーだ。公民権運動や労働運動などでプロテスト・ソングを歌い続けた活動家で、自身の作った「Where Have All the Flowers Gone?」(日本語タイトル:花はどこへ行った)や「If I Had a Hammer」(天使のハンマー)などはフォークソングの古典となっているし、ザ・バーズの大ヒット曲「Turn, Turn, Turn」もシーガーの作った曲です。

さて、このシーガーの取り上げた曲をボスがNYのミュージシャン達とボスの自宅の農場で楽しく演奏したものをレコーディングしたわけですが、キャラ立ちしまくったE ストリート・バンドのメンバーは、奥さんのパティ・スキャルファとフィドル奏者のスージー・ティレル以外は参加していません。なぜかというとバンジョーやフィドル、トランペット、トロンボーン、バイオリン、チューバなどの楽器がメインの音楽だから。ほぼ一発録りなので生々しい演奏と楽しい雰囲気がダイレクトで伝わってきます。このレコードを録音している時にボスの娘がやってきて「楽しそうなサウンドね。それって何なの?」と言って来たそうですが、それほど賑やかで楽しい演奏だったに違いない。
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しかしこの楽しい演奏や陽気なメロディとは裏腹に、アメリカの労働歌やゴスペルというものは歌詞が強烈なものがほとんどだ。これはレゲエにも共通していることだが、歌の中に一般庶民の抑圧された怒り、恨み、怨念などの怖ろしい情念が込められているのです。今回ボスの取り上げた曲のほとんども、昔々から人々の怨念と共に歌い続けられきた怖ろしい歌達でそれが歌われる時代時代によって、その時代の怨念をさらに付加しアップデイトされていくわけです。

1916年のアイルランド共和同盟闘争で息子の両足を失った母親の反戦バラッドは、現代のイラク戦争にも置き換えられるし、砂嵐で奥さんを失ったアメリカ移民の悲しみの歌は、現代のカトリーナの被災者にも置き換えられる。1930年代の労働運動で歌われたプロテスト・ソングは、今のブッシュ政権に対するプロテストにも置き換えられる。その他の曲も人種差別、公民権運動、文明批判、祖国を捨てた人たちの悲しみなどの歌ばかりだ。楽しいサウンドの裏ではこんな悲しい歌が歌われているのです。これをボスが時代の語り部として現代の意味合いを盛り込んで歌っています。例えばジョージア州とサウスキャロライナ州の黒人沖仲士が船長の無法な賃金不当搾取に対して歌うプロテスト・ソングでは「もし俺が金持ちだったらよかった」という歌詞は「俺がゲイツ氏ならよかった」に変えられてたりして面白いです。付属のDVDの中にはこのレコーディング風景が収録されていますが、その中でボスは次のように発言しています。

素晴らしい曲でもいつかは忘れ去られていく。新たな文脈を与えられずに忘れられていく曲もある。現代に当てはめると生き返る曲もあるのに歌われないままなんだ。歌に込められた魂や生き様を忘れたままにしたくない。
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ウディ・ガスリーからピート・シーガーへ、そしてピート・シーガーからボブ・ディランへ、そしてボブ・ディランからブルース・スプリングスティーンへ、そしてブルースから・・・という風にこの素晴らしい歌たちは時代の語り部によって歌い継がれていくわけですね。ボスがいつもより荒々しい歌い方なのも感情がこもっている証拠。バラッドにも感情が込められています。19世紀初頭に書かれたと言われるアメリカ開拓者が故郷を想う悲歌「Shenandoah」の美しさは何回聴いても涙が出ます。

最後に、この「We Shall Overcome」アーキタイプがボスに歌わせたレコードだと言っている人もいましたが、なるほどと思いましたね。一般庶民の苦しみである人類のアーキタイプは、社会が精神的に不安定になると現出しやすくなってくると言われます。フォーク・リバイバルの起こった1960年代もキューバ危機大統領暗殺ベトナム戦争やらで相当不安定になっていましたからね。今回のこのレコードはボスが自分から歌ったというより、現代に現出したアーキタイプがボスに歌わせたのだとの考察は非常に面白く、まんざら有り得ない話でもないなぁと思った次第です。
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そう思うと怖いレコードですね・・・。
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by Blacksmoker | 2006-06-14 01:13 | COUNTRY / BLUEGRASS

「BRIAN ENO アンビエント・シリーズ」 Vol.1 

ブライアン・イーノという人が現代の音楽に与えた影響は計り知れない。その影響力は健在で、今でもいろんな場所でイーノの名前を目にします。ソロ作品だけではなく、プロデュース作品やコラボレート作品など関わった作品は数知れずあり、現代音楽からクラシック音楽やロックなどその活動は多岐に渡る。(下写真は1977年当時のイーノ氏。)
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彼の作品というは主に2つに分けられる。
ロック/ポップなレコードとアンビエントなレコードです。

さてアンビエントとは一体何なんだ?と思われる人もいるでしょう。「じっくり聴き込むことも出来るが、環境の中で無視の出来る音楽」。これがブライアン・イーノが提唱したアンビエント・ミュージックの定義だ。環境音楽という言い方も出来る。特定のジャンルにとらわれるのを嫌うのは全てのアーティストに共通することだが、何とイーノは自らの手で新しいジャンルを命名し作ってしまったわけです。今では「チルアウト」や「ヒーリング」など様々な言葉があるが、その源流は全てアンビエントです。そして彼は「オブスキュア」というレーベルも設立し、そこから様々なアンビエント・ミュージックおよびそのミュージシャンのレコードをリリースしていくのです。

一時在籍したロキシー・ミュージックから受け継いでいるポップな一面も魅力で数々の名作もリリースしていますが、今回よりイーノの本業ともいえる「アンビエント」なサイドを連載形式で紹介します。実はこのブログを始めてから、ずっとやりたいと思っていた企画です。

さて今回紹介するのは・・・

BRIAN ENO [Ambient 1: Music or Airports](1979)

f0045842_0313733.jpg数あるイーノの作品の中でも「アンビント・シリーズ」と呼ばれる作品達で、イーノ自ら「Ambient」という言葉をタイトルに付けたアルバムです。このシリーズは全4作品存在し、それぞれにコンセプトがあり、それぞれ現代音楽家を迎えて作られました。第一弾は1979年にリリースされた「アンビエント1:ミュージック・フォー・エアポーツ」。これはイーノのアンビエント作品の中でも人気の高い作品の一つです。

タイトルの通り、空港のための音楽。「空港の空気を浄化するために音楽を流してはどうか」というユニークな発想を元に作られたこのレコード。イーノはそれ以前にも環境音楽作品「ディスクリート・ミュージック」などリリースしているが、実質的にこの「アンビエント1:ミュージック・フォー・エアポーツ」をアンビエント音楽の始まりだという人も多い。確かに空港にはこのような環境音楽がピッタリだと思う。急いでいる人もいれば、暇を持て余している人など様々な職種・人種のいる空港ではこの音楽は有効かもしれない。

4つの長尺の曲からなるこのレコードですが、全てのタイトルに番号が振られているだけ。「1/1」、「2/1」、「1/2」、「2/2」となっている。まず1曲目がピアノとシンセサイザーだけのとても美しい曲。この印象的なピアノのフレーズを弾くのは何とロバート・ワイアット(下写真)。彼のピアノとイーノ特有のサウンドスケープのみですが、この曲だけを延々とループし続けてもf0045842_0453229.gif全く飽きが来ない曲です。2曲目は3人の女性の声だけで構成された曲で、重厚なコーラスが荘厳な雰囲気を醸し出している。3曲目は女性コーラスとピアノのみ。4曲目はシンセサイザーのみ、というほんとにシンプルな構成ですが、何年経っても全く色褪せていないのが凄い。確かに刺激的な音は一切排除されている。おそらくそれが何回も繰り返し聴いても飽きない理由だろう。

実際に1980年にはニューヨークのラガーディア空港(下写真は1981年当時)でBGMとして使用されたというから驚きです。個人的には、昨年海外へ行った時このアルバムを空港でずっと聴いていたらほんとにその空港の雰囲気にハマってて感動的でした。空港だけでなく飛行機の中や滞在中もずっとこのアルバムを聴いていたくらいですからね。
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こんな美しいレコードは是非とも世界中の空港で使われて欲しいです。
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by Blacksmoker | 2006-06-11 01:11 | BRIAN ENO

MARK KNOPFLER & EMMYLOU HARRIS [All The Roadrunning]

f0045842_20362237.jpg全世界でアルバムのトータルセールスが1億枚以上というとんでもないスケールのイギリスの国民的バンド、ダイアー・ストレイツ(日本では全然人気ないですが…)の元リーダーのマーク・ノップラーの新作が出ました。今回のアルバムは何とエミルー・ハリスとのデュエット・アルバムです。

エミルー・ハリスと言えば、1970年初頭から活動するカントリー・シンガーでありながらカントリーの枠を超えた活動で幅広い層に受け入れられているアメリカを代表する超大御所シンガー。数えきれないほどの名作を残しながらいまだにバリバリの現役アーティストで、その美貌もあってほんと様々なアーティストの作品に参加しているので、いつもいろんな所で名前を見かけます。最近でf0045842_20404434.jpgニール・ヤングカール・ジャクソンのアルバム、そして「ブロークバック・マウンテン」のサウンドトラックなど書き出せば限りないくらいの客演で、自身もNonesuchから素晴しいソロ・アルバムを出しています。

まあこの2人がタッグを組んだ作品ですから、もちろん悪いはずもなく良質のカントリー・ロック・アルバムになっています。ビルボード200では初登場17位を記録。根強い人気です。私はこの作品を聴いて1973年にグラム・パーソンズがエミルーハリスを迎えて作り上げた初のソロ・アルバムにしてカントリー・ロック史上に輝く名盤「GP」を思い出しましたね。

ただ今回の相手は英国人マーク・ノップラー。グラム・パーソンズのような乾いた高い声ではなく、ブルース臭の漂う渋すぎる低い歌声なので、エミルー・ハリスの美しい声とのハーモニーがとても良い味を出しています。しかもどっちが引き立て役という訳f0045842_20472693.jpgでもなく堂々と両者とも渡り合っているので、2人のボーカルともに存分に楽しめます。エミルーの声がとても伸びやかで気持ちが良いし、ダイアー・ストレイツ時代からさらに深みを増したマーク・ノップラーのソウルフルで渋い歌声もカッコ良いですね。マーク・ノップラーの弾くギターがとてもカントリー・フレイヴァーを出した渋い音で、ウェスタン調のスライド・ギターの音にシビレます。


グラム・パーソンズの「G.P.」ほどはカントリー色一辺倒ではなくてアメリカン・ルーツロックも通過した非常に耳馴染みの良い好盤です。ジャケットのロード・ムーヴィーのような写真と音がピッタリで、アメリカでカーステからこのアルバムを流しながらドライブしたら最高に気持ち良いだろうなぁ。フィドルやマンドリンの疾走する爽快感が最高です。
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最後にここだけは触れておかなければいけません。
エミルー・ハリスですが、1947年生まれなので今年で何と59歳!!
美しすぎます・・・。
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by Blacksmoker | 2006-06-08 00:13 | COUNTRY / BLUEGRASS

GOMEZ [How We Operate]

f0045842_094016.jpgYonder Mountain String Bandがジャムバンド・シーンに活路を見出したように、このイギリス出身のゴメスもイギリスを離れサンフランシスコへ渡りジャムバンド・シーンに活路を見出した。そのゴメスの2年振りの新作「ハウ・ウィ・オペレイト」を紹介します。「ゴメスの作品は全て傑作」という法則通りまたも傑作の登場です。

ゴメスはイギリス出身の5人組で非常にユニークな音楽性を持っている。トラッド・フォークを基盤にしながらアメリカのルーツ音楽にも傾倒したギターロック・サウンドでありながら、ドラムマシンやサンプリングも多用したアイデア満載の多彩な楽曲が全く予想外に展開され、さらにボーカルは3人もいて細い声やら太い声やらが曲ごとにリード・ボーカルを取るオリジナリティ溢れる一風変わったバンドです。サンフランシスコのフラワーチルドレンのサイケデリック・サウンドから、米国南部のデルタ・ブルース、そしてビートルズやビーチ・ボーイズばりのハーモニーまで内包したかなり多様な音楽性です。その音楽性の豊潤さや演奏技術の高さなど、まるでザ・バンドにドラムマシンやサンプラーを使わせたような音楽です。イギリスのバンドとは思えませんね。

そういえばイギリスの音楽賞Mercury Music Prize(昨年はAntony & The Johnsons、一昨年はFranz Ferdinand、その前年はDizzee Rascalが受賞)を1998年に受賞したのがゴメスでしたね。評論家筋にも評価は高いのです(掴み所のなさはSuper Furry Animalsに近いかも)。
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さて本国イギリスでも安定した人気を誇る彼らですが、2003年頃からアメリカに渡りジャムバンド・シーンに接近します。ジャムバンド・フェスの総本山「Bonnaroo Music Festival」に出演するようになります。最初このフェスにゴメスが出ると聞いた時は「なるほどね~。そう来たか!」ってカンジでした。ゴメスの多様な音楽性はイギリスだけに留まっているだけのものじゃないし、しかもこういうライブ活動が中心のジャムバンド・シーンは彼らにはピッタリだなと思ったわけです。案の定アメリカでも彼らは受け入れられ、「Bonnaroo Music Festival」の常連となり安定した基盤を築きます(6月に行われる今年の「Bonnaroo」にも登場します!)。前作「Split The Difference」からのシングル「Silence」がアメリカでもヒットしてブレイクを果たしました。

そしてこの新作は何とあのデイヴ・マシューズのレーベルATO Recordsからのリリース。デイヴ・マシューズ・バンドのあの超人気ぶりにあやかってもっと多くの人に聴いてもらえるんじゃないでしょうか?

「ゴメスの作品にハズレなし」という言葉があるように(あるのか?)今作もとても素晴らしい出来です。いつも思うんですが個人的には細身で男前のイアン・ボール君(下写真左から2人目)の声より、野太いかすれた声のベン・オッターウェル(下写真一番左)の声が渋くて好きなので、彼がリード・ボーカルを取る曲が特に良いですね。メロディも素晴らしいし、サウンドもかなり面白いし(ヘッドフォンで聴いてみるといろんな音があるのが分かり楽しい)、3人のハーモニーも良いし、全曲捨て曲無しの傑作です。かなりのエクスペリメンタル・バンドでありながら、そf0045842_19425467.jpgんな感じが全くしないのも良いですね。順調に活動していってもらいたい大好きなバンドです。ちなみに前作のライブ盤「Out West」から日本盤は発売されてないので、今作もおそらく出ないでしょう。輸入盤でゲットして下さい。


最後に私がゴメスのライブを観たのが2000年のフジ・ロック・フェスティバルでした。あの時はラムシュタインの炎上ステージ(下写真参照)の直後で、私も燃え尽きてしまっていて正直あんまり記憶に残ってませんので、また単独で来日してもらいたいですね。
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こんなんの後じゃやりづらかったろうな・・・。
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by Blacksmoker | 2006-06-06 00:29 | ROCK