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JOHNNY CASH [American Ⅴ: A Hundred Highways]

2003年9月12日に71歳で亡くなったジョニー・キャッシュ

遺作となった02年「Amercan Ⅳ:The Man f0045842_22181663.jpgComes Around」から、04年には未発表音源が多数収録された5枚組BOXセット「Unearth」(買ったけどまだ消化しきれてないです…)や、映画「ウォーク・ザ・ライン」など彼に関する作品が多く発表されたが、この「American Ⅴ: A Hundred Highways」ジョニー・キャッシュが死の直前までレコーディングしていたという正真正銘の最後の作品です。

重い。非常に重たい作品だ。写真で見る衰えぶりは衝撃的過ぎて声にならない。しかし迫り来る死を目前にしたジョニー・キャッシュの様々な心情がヒシヒシとf0045842_22254650.jpg伝わる。かつては「Man In Black」と呼ばれた全盛期と比べれば声の衰えも隠せないが、この生々しさはハンパではない。まさしく最後の力を振り絞った作品だ。

トラディショナルやカヴァーが大半を占めるが、もはやディランの新作でも感じた事だが、この人達の音楽は新曲も伝統音楽も同系列に並んでいるので問題はなかろう。新曲が既に伝統音楽なのですね。あとブルース・スプリングスティーンなどの曲も取り上げています。

特筆すべきはジョニー・キャッシュが死の数日前に書き上げたと言うオリジナル曲「Like The 309」。そのリアルさには息を飲む。「もうじき死神ってやつに会うことになるだろう」という出だしの歌詞は強烈だ。そして「309(おそらく汽車の事)に乗ってここから出て行くのさ」というラインで締められている。自分の死への餞のような曲です。この曲を聴くだけでもこのアルバムを買う価値はあります
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当初ここまで重いアルバムだとあまり何回も聴かないんじゃないかと思っていましたが、実は何回聴いていても飽きないんです。それどころか聴く度に素晴らしさを発見出来るアルバムなのだ。アコースティックな味付けが非常に効果的で、ピアノやオーケストラも良い効果を出している。ハンク・ウィリアムスの名曲「On The Evening Train」でのギターの弦の絡みとピアノ、そしてヴァイオリンの名演は涙なしには聴けません。

アメリカ音楽界の偉人ジョニー・キャッシュの正真正銘の遺作は彼の今までの歴史を総括したようなまさしくカーテンコールのような作品です。これは消え去る前に強く輝いた一本の蝋燭の炎。
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ここまで生々しいリアルさを持った作品にはめったに出会う事はないでしょう。
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by Blacksmoker | 2006-09-29 00:09 | COUNTRY / BLUEGRASS

MICHAEL FRANTI & SPEARHEAD [Yell Fire !]

世界のラジオにマイケル・フランティを!

これは我が敬愛するピーター・バラカン師匠のご宣託です。
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そしてU2のボノはこう言った。

マイケル・フランティは21世紀の偉大なスポークスマンだ。

混迷する世界で音楽の力を信じて活動する男マイケル・フランティの3年振りの新作「Yell Fire!」f0045842_23571366.jpgリリースされました。チェ・ゲバラのようなジャケに象徴されるように非常に政治的な内容を含んだアルバムです。マイケル・フランティと言えば音楽活動と同じくらい政治的な活動にも力を入れていて、近年ではアメリカの平和活動には必ずといっていいほど彼の名前を見ることが出来る。前作「Everyone Deserves Music」(これも傑作です!)では、平和を祈るピースフルなアルバムだったが、このアルバムには戦争という問題が大きく影を落としている。

実はマイケル・フランティは2004年に戦時下のイラクやパレスチナやイスラエルに単身飛びアメリカ兵に会いにいき彼らの前で演奏も行っている。そしてアメリカ兵だけでなく、敵国のイラク兵の前でも演奏したり、イスラエルとパレスチナでも一般人の前で演奏を行っている。2004年f0045842_054053.jpgといえば日本人ジャーナリスト3人が人質になったのもちょうど同じ時期なので、そういう状況下でイラクに渡るというのがどれほど命がけの行為か分かるでしょう。この彼の旅を追ったドキュメンタリー映画「I Know I’m Not Alone」(左写真)が昨年アメリカでは公開されている。これは戦争の陰で必死に生きる現地の人間達に焦点を当てたドキュメンタリーだそうで、実は輸入盤ではDVDでリリースされている。

その旅と平行して制作されていたこのアルバムは今までのマイケル・フランティの活動が如実に反映された力強い作品だ。このアルバムは半分がジャマイカで録音されているそうで、それゆえに前作ではHIP HOP色が強かったが今回はレゲエ色が強いスライ&ロビーをベースとドラムに迎えボトムの安定した演奏を聴かせてくれる。このアルバムを聴いているとマイケル・フランティは既にボブ・マーリィザ・クラッシュのように政治色と音楽性の2つを同時に昇華させた存在になりつつあるように思える。
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シリアスなムードにはならない陽性なメロディーや、優しく美しいバラードなども聴けるがアルバム全編に渡って1本芯の通った説得力のあるサウンドで非常に聴き応えあるヘヴィな作品です。ベン・ハーパーの最新作「Both Sides Of The Gun」とも共通するストロングなサウンド。ただ、このアルバムはシリアスな作品だけじゃない。マイケル・フランティはイラクへ行った時に現地の人達が口を揃えて「私達は戦争の事や政治の事を歌った歌なんてもう聴きたくない」と言っていた事に衝撃を受けたそうで、それを反映してか意外と政治的なリリックは多くなく、踊れるロック・アルバムにもしっかりなっている。

アルバムのインナーにあるイラクでの写真やぎっしりと書かれた歌詞を見ながら、なかなか考えさせられる物がありましたよ。「Sweet Little Lies」の歌詞では思わず涙が出ましたね。
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世界にはもっとマイケル・フランティの音が必要だ。今ならそう思えます。10月の来日公演は絶対行きます。
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by Blacksmoker | 2006-09-27 00:34 | ROCK

THE DIRTY DOZEN BRASS BAND [What’s Going On]



「ニュー・オーリンズはまだ復興なんてしちゃいないんだよ!」というf0045842_22462214.jpgメッセージが込められたジャケットが非常に印象的なザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの新作「What’s Going On」が発売されました。ダーティ・ダズンにとってはハリケーン・カトリーナの被害の後に初めてリリースするアルバムです。このアルバムは何とあのマーヴィン・ゲイの歴史的傑作「What’s Going On」を丸ごとカヴァーしたアルバムなんです。

実はマーヴィン・ゲイの「What's Going On」(下写真)が発売されて今年で35周年だそうです。あのアルバムはベトナム戦争の退廃ムードを反映した反戦アルバムとしても有名ですが、ダーティ・ダズンの連中にとってはカトリーナによる被害に対するアメリカ政府へのアンチを唱える意味合いが大きいだろう。インナースリーブの写真も倒壊した家の前で怒りとやるせなさの両方を持った何とも言えない表情で佇む人の写真が使われている。何とも感慨深い。
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そして中身は単なるカヴァー・アルバムの域を超えてもはやオリジナル・アルバムと言っても差し支えないほどの力作に仕上がっている。何たってあのアルバムのサウンドをブラスで表現するんだから、オリジナルとは全然違った仕上がりですよ。そして数曲にボーカルとしてゲスト・ミュージシャンを迎えている。
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まずは1曲目「What’s Going On」に登場するのは、チャックD!こういう趣向のアルバムのオープニングを飾るのは、この人が最も相応しいでしょう。しかももはや原曲のイメージとは全く違ったアレンジです。ダーティ・ダズンf0045842_22573621.jpg面々のタメまくった余裕のブロウから放たれるやくざな大人のオーラにシビレまくります。「チョイ悪」どころか「極悪」です。そんなサグな爺さん達をバックにチャックD先生が「常識が常識であった時はもうどっかへ行っちまった」(聴き取りなんで合ってるか自信ないですが…)とラップする。最後は「That’s going on」を連呼。チャックD先生による久々の熱すぎる一撃です。

最近かなり再評価の兆しを見せている女性f0045842_2324023.jpgソウル・シンガーのベティ・ラヴェットを迎えての「What’s Going On」のパート2ともいえる「What’s Happening Brother」も一聴するだけでは原曲だと分からないですね。御歳60歳を超えるベティ・ラヴェットのソウルフルな歌声が響き渡ります。「Flyin’ High(In The Friendly Sky)」や「Save The Children」も新しいコーラスなどを入れて大幅にアレンジが変わっててバリトン・サックスス-ザフォントランペットの音が暴れまくってます。

続く「God Is Love」ではネヴィル・ブラザーズf0045842_235755.jpgアーロン・ネヴィルの息子アイヴァン・ネヴィル(今はアイヴァンもネヴィル・ブラザーズの正式メンバー)を迎え、普遍的な神への愛を歌う。アイヴァンのハスキーでソウルの滲み出た声にブラスが絡んで盛り上がります。ここでも出てくる「Father」という言葉はマーヴィンの父親(神父でもある)に向けた言葉ですよねぇ。その父親にその後射殺される事になるなんて何とも皮肉だなぁ。

そしてお待ちかねの「Mercy Mercy Me(The Ecology)」ではG.ラヴが登場。ニューオーリンズ・スタイルとフィラデルフォニック・スタイルの融合です。たしかG.ラヴのドラマーf0045842_23943100.jpgジェフがニューオーリンズ出身だったかな。この曲ではダーティ・ダズンのオヤジ達のパワーに押されてかG.ラヴ少しおとなし目ですね。「Mercy Mercy Me」には副題で「The Ecology」とあるように、35年前にいち早く環境問題について歌ったプロテスト・ソングです。原曲ではドラムやヴォーカルにリヴァーヴのかかった憂いのある曲が、カラッカラの乾いた音のアレンジになってる対比が面白いです。

Right On」はやっと原曲の臭いが感じられてるかな?「Wholy Holy」も全く違ったセカンドラインの曲に生まれ変わり、まるでニューオーリンズの葬行曲です。余裕が感じられる素晴らしいアレンジに脱帽です。

ラストを飾る「Inner City Blues」は原曲でのあの都会の退廃的ムードを表現したような雰囲気はそのままf0045842_23133462.jpgGang Starrグールーをラッパーに迎えて、そして不穏な雰囲気はスーザフォンでベースラインを表現することで、原曲のイメージを崩すことなくダーティ・ダズンの曲にしてしまった名曲です。ブラスなのにパーカッシヴさを出していますね。ラストを飾るに相応しい重厚な曲です。DJプレミア先生はクリスティーナ・アギレラと仕事をするようになっても、グールーのハードコア度は変わってないですね。早くGang Starrも新作を出して欲しいところです。

このように歴史的傑作のカヴァー・アルバムでありながら、全くの新作といっても過言ではない素晴らしいアルバムです。そして、このアルバムの根底にあるのはマーヴィン・ゲイの言う「war is not the answer, for only love can conquer hate(戦争は答えじゃない、愛だけが憎しみに打ち勝つ)」に他ならない。エンターテインメントとしても成立し、同時に人々を啓発するアルバムとしても機能する希有な傑作。
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ちなみにこのアルバムの売上金の一部は「The Tipitina’s Foundation」に寄付されるとの事。

 
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by Blacksmoker | 2006-09-24 00:02 | NEW ORLEANS

DMXの言い訳・・・。

先日、ワシントンDC在住の女性との間に子供がデキたことがバレちゃって、DMXはこう言っております。         

             「俺はレイプされたんだ。」
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            このオッサン、マジで最低やなぁ…。
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by Blacksmoker | 2006-09-23 03:28 | HIP HOP

KIRK FRANKLIN [Hero]

まず始めに言っておくと、私は「コンテンポラリー・ゴスペル」というジャンルには全く疎いです。知ってる名前と言えばヨランダ・アダムスくらい…。

そしてこのカーク・フランクリンについても詳しくは知りませんでした。昔MTVでカーク・フランクリンU2ボノと一緒にやってたPVを観たf0045842_17394585.jpgことがあって何となく印象に残っているくらい。しかし、このカーク・フランクリンの新作「Hero」(右写真)は何とビルボードの全米ゴスペル・チャートで26週連続No.1というモンスター・ヒットを記録したという凄いアルバムです。半年間もチャートの1位に君臨したというのは、このアルバムが凄いのか?それとも他が弱いのか?とにかく非常に気になっていたアルバムなので聴いてみました。

まずこのカーク・フランクリンとはどんな人なのか?

1970年生まれの36歳。テキサス出身です。母親に捨てられ、父親f0045842_17445634.jpgも知らないまま厳格な叔母に育てられ、早熟な才能ゆえすぐに頭角を現し11歳でゴスペル聖歌隊を率いていたそうです。そして1993年にカーク・フランクリン&ザ・ファミリー名義でデビューし大ヒット、その後も97年、98年、02年とアルバムをリリースしていずれも大ヒットさせているそうだ。98年の「The Nu Nation Project」はボノメアリ・J・ブライジR.ケリーなども参加していますね。

さて、この4年振りの新作(私にとっては初めてのアルバム)、イントロから子供達の聖歌隊によるアカペラ「America The Beautiful」でスタート。続く2曲目「Looking For You」は意表を突いて70年代ディスコ・ビート。なんじゃこりゃ?そして、このアッパーなディスコ・ビートにクワイヤのコーラスが神への忠誠を歌い上げる。カーク・フランクリン自身の歌がいつ入ってくるのかを待ってても、「Come On!」とか言ってるだけで全然入ってこない。聖歌隊のバックで煽ってるだけなんですね。しかもスクラッチもビシビシ入ってくるし、何か想像したイメージと全然違いましたね。結構アーバンで洗練された感じです。

2曲目「Hero」は美しいピアノに先導されコーラス隊が歌い上げまくる。ここでもカーク・フランクリンは再び煽り役。この曲はドリンダ・クラーク・コールというゴスペル・シンガーを迎えて荘厳でパワフルなゴスペルを聴かせてくれる。歌詞も「辛い時もあなたがいたから救われた。あなたは私のヒーローだ」という幸福&降服度100%なスピリチュアル。なかなか良いです。この曲も洗練されています。
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しかし、これがゴスペルなんですね。想像していたゴスペルとは全然違ってて驚きです。もはやR&BやHIP HOPともリンクする音楽性です。カーク・フランクリンを聴いた人たちは、次にメアリー・J・ブライジJAY-Zは聴くかもしれないが、Blind Boys Of Mississippiやら50年代ゴスペルには絶対に行かないでしょう。それほどにアーバンな感じなんです。

Let It Go」でやっとカーク自身の声が聴ける。でもこれは神への懺悔の曲でカークは自分の半生を語っているだけですね。ティアーズ・フォー・フィアーズの大ヒット曲「Shout」のサビをまんま使い。懐かし~。「母親は4歳で俺を見捨てた。体は傷つけはしなかったが俺の魂を殺した」「父親は今強姦罪で捕まって刑務所にいる」「妹もクラックに手を出して13年ムショ暮らしだった」「17歳の頃女を孕ましてしまった」とか、かなりシリアスなナンバーです。最後には「神よ、俺の息子はまっとうな人間にしてくれ」と懇願しています。

全曲紹介すると長くなるので割愛しますが、美しく印象的なピアノのアルペジオに導かれる「Imagine Me」はこのアルバムのハイライトと言っていい素晴らしいスピリチュアル・ソング。この他にもアース、ウィンド&ファイヤーばりのナンバーや、ジョージ・クリントン的なPファンク・ナンバーもあるし、アコースティック・ギターとバイオリンをバックに歌われるゴスペルもある。全曲いろいろ趣向が違ってて実にバラエティーに富んだアルバムですね。最終曲ではカニエ・ウェストばりのソウル・ネタの早回しサンプリング使いです。
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ゲスト陣も豪華でスティーヴィ・ワンダー御大を迎えた強力ナンバーや、ヨランダ・アダムスを迎えてアカペラ・ナンバーもある。最初はかなり意表を突いて戸惑ったけど、聴く度にどんどんハマるアルバムですね。結構好きになりましたよ。カーク・フランクリンの歌声もソウルフルで良かったです。

最後に日本盤はボーナス・ディスク付きで、カーク・フランクリンと日本のゴスペラーズがコラボレーションした曲が聴けます。これはカークの前々作に収録されている「Lean On Me」という曲をゴスペラーズが新たにレコーディングしたナンバーにカークの煽りで参加していて、これが意外に素晴らしいので驚き。ゴスペラーズって初めてまともに聴いたんですが良いですね。是非日本盤でチェックして下さい。

ソウルやR&B好きな人は是非とも聴いておくべきアルバムです。オフィシャル・サイトも凝ったつくりで良いカンジです。「Imagine Me」が視聴出来ますよ。
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by Blacksmoker | 2006-09-21 00:03 | GOSPEL

ASYLUM STREET SPANKERS @京都磔磔 9/14(木) 2006

Spankers Is Back!!!!!

テキサス州オースティンから来た最強のアコースティック・ジャグ・バンド楽団、アサイラム・ストリート・スパンカーズが3年振りに日本来襲中との事でさっそく京都公演に参戦してきました。

このスパンカーズは96年結成だからもう10年選手。メンバーの集合離散を繰り返して変化し続けるスパンカーズは、カントリーやジャズ、ブルーグラス、そしてフォークやパンク、ブルーズ、おまけにハードロックやメタル、ラップなども融合した抱腹絶倒のアンプラグド・サウンドは正に唯一無二の存在。しかもライブの面白さも抜群の超個性派集団です。彼らの音を聴くと元気が出ずにはいられません。今回は6人編成での来襲です。
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さて今回のスパンカーズの来日の一番の見所は、新加入したメンバー、シック(Sick)君のf0045842_23504329.jpg素晴らしい存在感でした!8月に出た新作「Mommy Says No」で初めて登場した弱冠25歳のこのパンクス上がりのような若きマルチ・プレイヤーが、個性の塊のようなスパンカーズに新風を吹き込んだのは一目瞭然。何たって昔のRANCIDのようなイカツいモヒカンでバイオリンを弾きながら暴れ回るんだから存在感は強烈だ。バイオリンだけじゃなくバンジョーやマンドリンも自在に操り、歌やラップまで披露するマルチぶり。しかも歌もなかなか上手い。道化のようなワザとおどけたパフォーマンスも爆笑です。スパンカーズも凄いヤツを見つけてきたものだと感心です。

シックに感化されてか他のメンバーのパフォーマンスも最高潮。風貌はテキサスのトラッカーにしか見えないワモの自作のスピーカー付きウォッシュボード(鉄板洗濯板)や、唯一の女性メンバーにしてもはや姉御の貫禄すら漂うクリスティーナのミュージカル・ソウなどの飛び道具も登場して芸が細かい。芸が細かいといえば、スパンカーズの面々はライブでは実にせわしない!1曲ごとにメンバー達が楽器をとっかえひっかえして演奏する芸達者ぶり。全員がとてつもない演奏力を持っているのが凄い。ポテンシャルがハンパないんですが、そんな凄い腕前をあえて隠すようなおバカなパフォーマンスが会場を爆笑の渦に巻き込む。
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そして強烈なメンバーの中でも、このバンドの良心とも言うべきネバダ・ニューマン(下写真)の素晴らしいカントリー・ギターの演奏にも聴き惚れる。このネバダ・ニューマンは自身名義のソロ・アルバムもリリースしている実力派カントリー・ギタリストですが、彼のジェントルな佇まいから繰り出されるハンク・ウィリアムスを彷彿させる演奏や、ボトルネック奏法がシビレる程渋い。
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全員がワイヤレス・マイクを使ってハモリまくるカントリー・マナーに沿ったヴォーカル・パフォーマンスも見事。歌の内容は「弁当の中身がどうのこうの~」とか「ビール、ビール、ビール、ビール」と連呼する曲やら実に身近でくだらない内容だが実に楽しいアメリカの大衆音楽の魅力を体験させてくれる。「カントリー特有のマーダー・バラッドとギャングスタ・ラップを合体させてみたぜ」という超爆笑ナンバーや、高速ブルーグラスによるNINE INCH NAILSの「Closer」のカヴァー(歌詞でやっとそれだと気付いたくらいのぶっ壊れぶり)などのあまりのおバカぶりには降伏寸前。ここまでゴキゲンなヤツラはそうそういないぞ!しかもこれでアコースティックだというのが凄いです。
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ライブ・パフォーマンスも申し分ないし、カントリーに根ざした音楽性も実に豊かだし、スパンカーズのライブのプロフェッショナルさにはホントに脱帽です。

ちなみに会場で大学の同級生と後輩に偶然会いましたが、彼らはスパンカーズの音は一切聴いた事が無かったそうですが、全く問題なく楽しんでいました。スパンカーズの音を知らない人でも彼らのライブを観れば一発で彼らのファンになるでしょう。そんな素晴らしいライブを一度は体験して欲しい!まだ未体験の人は次回の来日の際は是非チェックして下さい。あ~楽しかった。
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by Blacksmoker | 2006-09-19 00:20 | ライブレポート

OLLABELLE [Riverside Battle Songs]

NYにはまだまだ良いバンドがいます。

このオラベルは男3人女2人の5人組のバンド。NYのイースト・ヴレッジ出身です。彼らのf0045842_012592.jpg2ndアルバム「リヴァーサイド・バトル・ソングズ」は、ウディ・ガスリーからボブ・ディランジョーン・バエズ、そして現在のジェシー・ハリスノラ・ジョーンズに至るNYのフォーク音楽の系統に属しながらも、カントリーやブルーグラスのアメリカン・ルーツ音楽にどっしりと根差している。オラベルという名前は、40年代くらいに活躍したノースカロライナ出身の女性フォーク・シンガー兼バンジョー奏者のオラ・ベル・リードの名前から取っているそうです。

彼らの特徴は5人全員がリード・ボーカルを取れること。男性がリード・ボーカルを取る場合もあれば、女性がボーカルを取る曲もある。全曲ゆったりとした曲調で、その5人が素晴らしいハーモニーを聴かせてくれる。
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「5人全員がボーカルを取れるルーツ音楽系のバンド」と言えば、やはり最初に思い付くのがザ・バンド(下写真)。まさしくこのオラベルは、そのザ・バンドの音楽を受け継いでいると言える(ザ・バンドはカナダ出身なんですけどね…)。
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ちなみに、このオラベルの女性メンバーの1人でボーカルとマンドリンを担当するのはエイミー・ヘルム(下写真左)という人物。この「ヘルム」という名前でもう気付いた人もいるでしょう。そうです、エイミー・ヘルムはザ・バンドのドラマー、レヴォン・ヘルムの娘さんなのです。彼らの1stアルバムにはそのレヴォン・ヘルムもドラムで参加しています。
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ただそういう話題だけでこのオラベルを語るのは了見が狭すぎる。このバンドの音楽はそういう話題を抜きにしても評価されるべきであり、最近よく言われる「アメリカーナ」というものにも当てはまる。ノラ・ジョーンズの2nd「Feels Like Home」が好きな人にはばっちりなアルバムf0045842_0331185.jpgじゃないかと思います。そう言えばノラ・ジョーンズザ・バンドが大好きで「What Am I to You?」という曲にザ・バンドレヴォン・ヘルムガース・ハドソンが参加していたのを思い出しました。ノラ・ジョーンズが今やっているバンド、リトル・ウィリーズの音がオラベルに一番近い存在かもしれないですね。

そしてアメリカン・ルーツ・ミュージックの名プロデューサー、Tボーン・バーネットオラベルに惚れ込み彼らの1stアルバムのプロデュースを買って出たという話も全くもって頷けます。ちなみに今回のアルバムはボブ・ディランのバンドでギタリストも務めたこともある才人ラリー・キャンベルがプロデュース。彼もバンジョーやフィドルやアコースティック・ギターなどの様々な楽器でこのアルバムに素晴らしい華を添えてくれています(Tボーン・バーネットもミックスで参加している)。13曲中でトラディショナルや前述のオラ・ベル・リードの曲などカヴァーが5曲もありますが、全く違和感なくオラベルの音楽に溶け込んでいます。もはやオラベルのオリジナル曲の方が格段に良い。実に豊潤で情感溢れる風景画のような音楽に心が安らぎますね。
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ザ・バンドから派生した輪がノラ・ジョーンズやジェシー・ハリスに連なっていく。そしてTボーン・バーネットやラリー・キャンベル、そしてその先にはボブ・ディランもいるという大きな真円の中にこのオラベルも位置します。

このNY音楽シーンの繋がりって良いですね~。是非ともこのオラベルも聴いてみて下さい。
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by Blacksmoker | 2006-09-15 00:58 | ROCK

BOB DYLAN [Modern Times]

自伝「ボブ・ディラン自伝」(原題:Chronicles: Volume One)の出版に、マーティン・スコセッシ監督の映画「No Direction Home」と、そのサウンドトラック盤での凄い音源の発掘、そしてラジオ番組のDJに就任したりと、ここ最近のボブ・ディランの人気の再燃は目を見張るものがある。おまけに本人はあいかわらずネヴァー・エンディング・ツアーを続行中。

f0045842_20534537.jpgそんな中で遂に5年ぶりとなるディランの新作「モダン・タイムス」が発売されました。何とビルボードTop200で初登場1位!これは1976年の「欲望」(原題:Desire)以来の1位だそうです。ディラン・ブーム来てますね。

世界中のディラン信者の大騒ぎぶりを横目にこの新作は前作「Love & Theft」同様に非常に落ち着いた作りです。ジャケットは「Taxi,New York at Night」という1947年にテッド・クローナーという写真家によって撮影されたもので、非常に夜なジャケットです。そのジャケットに象徴されるように夜にピッタリの音。蛍光灯より白熱灯やネオンが似合います。さて内容ですが、これがとにかく素晴らしい。軽く時代を超越した名盤です。ディランの作品というのは全ての作品に違った趣がありますが、この新作はどうだろう?「50年代アメリカ音楽への回帰」がテーマかな。

跳ねるピアノに引っ張られて軽快なカントリー・ロックで疾走する1曲目から、9分にも及ぶブルーズのもの悲しいヴァイオリンの調べで幕を閉じる最終曲までの間にディランはアメリカのさまざまなルーツ音楽を巡る。ジャズf0045842_219258.jpgはもとよりハワイ音楽までも取り入れています。全てのアメリカ・ルーツ音楽の歴史を総括したような豊潤なレコードです。そして現代に生きる口承音楽家のような佇まいのディランの深いヴォーカルは一貫していて非常に聴き応えがあります。特にジャズ・ワルツとも言える「When The Deal Goes Down」とハワイアンな「Beyond The Horizon」の2曲での深遠なヴォーカルは未だに艶がありますね。ボブ・ディランの今のバンドも御大の声を最優先したような引き立て役の演奏ですが、特にギターのタメを利かせた演奏がいい。スライド・ギターのソロやアコースティック・ギターのさりげないフレーズに耳を奪われる。そういやチャーリー・セクストンはもうディラン・バンドにはいないんだな。

そして、やはりディランといえば歌詞の難解さ。今回もディラン信者がいろいろと憶測を立ててこの歌詞はこうだああだと言っている姿が目に浮かぶが、確かにディランの歌詞は非常に面白い。とりあえず一般のミュージシャンの歌の2倍くらいは言葉が詰まっている。しかも比喩や暗喩などが頻繁に出てくる為、「この曲って実はこういう事言ってるんじゃないか?」なんて思い出すとまた最初から歌詞を読み直して「もしかしてこうかも」なんて思ったりするわけですが、もちろんディラン自身は答えを教えてくれるわけもなく(The answer is blowin’ in the windですから)、リスナーは個々にその曲の意味を解釈するわけです。そしてディラン信者は過去の歴史書や哲学書や伝統音楽から目ざとく同じ言葉が使われているものを見つけてきては、「これはここからの引用だ」とか分析して「やっぱりディランは凄い!」と勝手に神格化するという実にありがたいシステムが出来上がっているのです。聖書などからも頻繁に引用があるそうですね。
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ただ今回はまあまあ理解しやすいラブ・ソングもあって、分かりやすいかも。「Thunder On The Mountain」では「アリシア・キーズの事を考えると泣かずにはいられない」という歌詞が出てきますが、絶対ディランはアリシア・キーズなんて聴いていないでしょう。あと「The Levee’s Gonna Break」(堤防が決壊してしまうだろう)という曲は、歌詞を読むとおそらく堤防というのは何かのメタファーでしょう。

サウンドも歌詞も深く豊潤で両方ともに十二分に味わえる素晴らしい作品ですので、是非とも聴いて頂きたい。

最後に「Rolling Stone誌」の最新号にディランの5年振りのインタヴューが掲載されています。ディランが久しぶりにさまざまな事に答えている公式なロング・インタヴューですが、その中でフリーダウンロードについてレコード業界がクレームをつけている事に対してどう思うかを質問されて、こう答えています。

もとから何の価値も無いんだから問題ないんじゃないの?

さすがです。65歳になってもやっぱカッコイイですねぇ。
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このインタビュー、久々にガッチリ読みましたよ。なかなか面白い発言満載ですので是非チェックして下さい。

あとiPodの新CM「ディラン編」!!
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もう観た人も多いでしょうが、あのヴィンテージ感とハイブリッド感が同居した映像が超クールです。まだ観てない人はここをチェック!
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by Blacksmoker | 2006-09-13 00:03 | ROCK

特別対談:「Favorites International」を訪ねて。

さて今回、特別企画としてディストリビューション会社「Favorites International」にお邪魔して来ました。この「Favorites International」では「未体験JAZZ」というジャズ専門のCD販売とダウンロードのサイトを運営しています。
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そこで「Favorites International」のCEOであり、マイメンでもある仲田敬之氏に「未体験JAZZ」の話を色々と聞いて参りました。「未体験JAZZ」のイチオシのアーティストや今後の展開などについて語ってくれておりますので対談形式でご紹介しましょう!<INTERVIEWERBlacksmoker
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Blacksmoker:さて今回は「未体験JAZZ」の仲田氏に来て頂いております。調子はどうですか?

仲田氏:ボチボチやね。まだまだこれからなところが多いな。色々苦労してるよ。

そういや、この前のニコラ・コンテはヤバかったな。

あれはかなり良かった。特にファブリツィオが素晴らしかった。

ところで一番聞きたかった事なんだけど、なぜ「ジャズ」のディストリビューションをやるようになったの?そもそも数年前までは俺と「レゲエ馬鹿道場」を開校してたのに。

ん~(笑)。まあレゲエを聴かなくなったって訳でもないんだけど、「レゲエ馬鹿道場」をやりだして結構みんながレゲエを聴いてき出してきたので、もういいかな?と思って。

なんじゃそりゃ(笑)。

でも、もともとベーシストなんでいろいろとジャズは好きだったんでね。

では本題に入るけど「未体験JAZZ」のコンセプトを教えて下さい。

ずばりジャズとはカッコイイ音楽なんだ、モテるんだという事を布教する事。

それは超重要だな。

あと、モテないジャズメンの救済です。聴かれずに埋もれているジャズメン達に手を貸したいと思って「未体験JAZZ」を立ち上げたので、埃に埋もれてしまったジャズメンの捜索活動が主です。リハビリすると元気に羽ばたけそうなジャズメンの更生活動にも力を入れてゆきます。

なかなか地道な活動だよな。あと「未体験JAZZ」ではポーランドのジャズをかなり推しているんだけど、これはなぜ?

以前にネットでいろいろ検索していたら、「東欧圏のジャズ・シーンがヤバい」という事を知ったんだよ。で、実際に自分でも調べて聴いてみたらほんとにヤバかった。

そういやイタリアやドイツや北欧のジャズは有名だけど、東欧圏は確かに未開拓ではあるな。ポーランドのジャズは他とはどう違うの?

まずポーランドという国は社会主義体制の共産国だったんだよね。で、適正音楽がジャズだったわけ。だからアンダーグラウンドでは非常にジャズメンが成長してるんだ。そしてもうひとつ。ポーランドはクラシック音楽の発祥の地なんだ。だからクラシックを小さい頃から勉強している非常に音楽的に発達したジャズが多いんだね。

なるほどねぇ。じゃあ同じような環境のロシアのジャズ・シーンとかも凄いかもな。

確かにそうだ。でもヨーロッパのジャズの方がメロディが綺麗なのも特徴だね。

さて今回は「未体験JAZZ」のオススメの1枚を持って来てもらいました。

f0045842_23211329.jpgこれはポーランドではかなり有名なサックス奏者、ヴォイチェフ・スタロニェヴィッチ「Hand-Made」(右写真)というアルバム。サックス、ギター、ベース、ドラム、アコーディオンによるカルテットでの2002年録音。これはマジでイチオシだね。素晴らしいアルバムです。



一言でジャズと言っても、いろいろあるよね。具体的にはどんなジャズなの?俺の中でジャズと言えばエリック・ドルフィーの「Out To Lunch」のあの音なんだけど。

Out To Lunch」は文系だよね!理屈っぽい学生が小難しい顔して聴いているような。

確かにそう言われると否定は出来ないが…。

でも、ああいうジャズとは少し違うな。「普通のジャズ」の感覚f0045842_23375562.jpgで聴くと少し違和感があるかもしれない。どちらかというと「ジャズ・ロック」に近いかも。このヴォイチェフ・スタロニェヴィッチは1995年にポーランドのポローニア・レーベルからピアニストのアンジェイ・ヤゴヂンスキと一緒にアルバム「Quiet City」をリリースしているんだ。このアンジェイ・ヤゴヂンスキって人はポーランドでは最高峰のピアニストと言われていて、2004年に「澤野工房」から出たアルバムも日本でかなり売れたんだ。そういう凄い人達なんだよね。



澤野工房」はマジでヤバいジャズを発掘してくるからな。何となくヴォイチェフ・スタロニェヴィッチの凄さも伝わってくる。あとカルテットにアコーディオン奏者がいるのが珍しいな。あまりジャズにアコーディオンってないよね?

そうそう。あまりジャズでアコーディオンのソロとか聴かないでしょ?でもこのアルバム聴いたらアコーディオンのイメージ変わるよ、確実に。このアコーディオン奏者のツェザルィ・パチョレクの演奏は神掛かってるね。独特な演奏に言葉を失うぞ。カントリーやブルーグラスにはアコーディオンのソロはあるかもしれないけどな。

それとは全然違うでしょ。

あとギターの人も凄い人で、ポーランドの最高の音楽賞「フレデリック賞」の2003年のノミネートされたこともあるしね。とにかく名盤だ。
f0045842_23392442.jpg

ちなみにこの盤は「未体験JAZZ」のエクスクルーシヴ?

そうエクスクルーシヴ!ここでしか買えない。

マチガイナイですな。

マチガイナイね。でもほんと素晴らしい名盤だから是非買って欲しいです。

じゃあ最後に「未体験JAZZ」の今後の展開を教えて下さい。

まずはダウンロード。欧米では主流だからね。今準備中で9月中旬からスタート開始します!楽しみにしといてください。1曲200円でダウンロード出来るんで。最近アメリカとカナダでiTunes Music Storeのダウンロードでかなり売れたアンディ・シェパードという人と独占契約結んだばかりなのでこの人もチェックして下さい。カナダ人のアコースティック・ギター奏者です。同姓同名のイギリス人ジャズマンもいるので間違わないでくれ。あと半年に一回くらいのペースでフリーペーパーを出したいと思ってる。ジャズのクラブやライブハウスに置きたいね。

なかなか頼もしいね。是非今後の展開に期待します。次回もオススメ盤を紹介して下さい。今日はありがとう。


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というわけで、「Favorites International」CEO仲田敬之氏に話を伺いました。今回はこのポーランド・ジャズの名盤、ヴォイチェフ・スタロニェヴィッチHand-Made」を紹介させてもらいました。もう一度言っておきますが「未体験JAZZ」エクスクルーシヴです!是非ゲットして下さい!次回もまた定期的に「未体験JAZZ」からオススメ盤を紹介してもらいますので是非お楽しみに!

追伸:
そして来週から「未体験JAZZ」ではポーランド特集をやるそうです!チェックして下さい!
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by Blacksmoker | 2006-09-10 00:01 | JAZZ

レゲエ馬鹿道場(VERSION) 第六回。

さてダンスホール・レゲエも良いですが、ルーツ・レゲエも忘れちゃいけない。そんなわけでレゲエ馬鹿道場再開です。今回はジャマイカを離れてイギリスのルーツ・レゲエを紹介しましょう。今回は2枚紹介します。

ASWADNew Chapter」(1981)
  アスワドニュー・チャプター

まず始めに言っておくと90年代以降f0045842_16564246.jpgアスワドは聴かなくても良いです。最近のザ・ウェイリング・ソウルズインナー・サークルと同様、音楽性はポップス並みの軽薄さなのでスルー可です。いやむしろ無視して下さい。だがこのアスワドは初期の頃は素晴らしいルーツ・レゲエをやっているのでレゲエ・ファンとしてはスルー厳禁です。そしてこの「New Chapter」はその初期のアスワドの代表作にして名盤です。

1975年にロンドンのノッティング・ヒルにて結成された4人組のアスワドスティール・パルスマトゥンビなどと共にイギリスを代表するレゲエ・バンドだ(ちなみにあのサイケデリック・ロックバンドHAWKWINDもノッティングヒル出身ですね)。彼らは第二次世界大戦にイギリスに渡ってきたアフリカ系カリブ移民の2世で、英国政府から劣悪な労働環境、人種差別など不当な扱いを受けた彼らが、怒りや悲しみを表現する為にジャマイカのレゲエに傾倒したと言われる。1958年のノッティングヒル暴動(イギリスの白人がカリブ系移民移住区であるノッティングヒルを襲撃した事件。この後もこの地区では度々暴動が起きており1976年の暴動を題材にしたのがTHE CLASHの「White Riot」です)も彼らには大きな影響を与えている。
f0045842_173638.jpg
彼らを発見して大きなブレイクに導いたのがかのボブ・マーリィ。ジャマイカの政治闘争に巻き込まれ銃撃を受けたボブ・マーリィが一時ジャマイカを離れイギリスで隠遁生活を送っていた時にアスワドに出会って衝撃を受けたそうだ。彼らは1976年の1st「Aswad」、1979年の2nd「Hulet」でジャズやフージョンの香りのするレゲエを披露し高評価を得て揺るぎない地位を確立していく。そして彼らがレーベルを移籍して心機一転、飛躍的に成長したハードなルーツ・レゲエを提示したのがこの名盤「New Chapter」なのです。

アスワドのレゲエはジャマイカン・レゲエの乾いたドラムのあの蒸し暑い空気感や陽気なメロディーと違って、英国の空気感を閉じ込めたように非常にウェットで、憂いのあるメロディーを持ったレゲエを聴かせてくれる。
f0045842_1812641.jpg
まず1曲目の、英国人でもある自分達の本当のルーツを高らかに宣言する「African Children」からかなり熱いです。2曲目の「Natural Progression」などもつんのめるドラムのミリタント・ビートに効果的なサックス隊が印象的でこれも後世に残る名曲だ。歌詞が全編に渡ってとてつもなくシリアスで、彼らがかなりの抑圧された環境にいるのが分かります。ヴォーカルのブリンズレイ・フォードの歌声がボブ・マーリィにかなり似ています。

イギリス特有のトビ系の効果音に、ダブ加工されたギター、ハード&タフな歌、安定したコーラスなどf0045842_17204590.jpg演奏も完璧だ(ベースはかなり控えめ)。彼らのこの先鋭的サウンドが後世のイギリスのミュージシャンに与えた影響は相当なものだと思う。今のイギリスのロック、ダブ、ドラムン・ベースなどのダンス・ミュージックの源流には必ずアスワドが位置していると言っても過言ではない。今聴いても十分に斬新なサウンドですね。ブリティッシュ・レゲエを超えてイギリス音楽界の歴史的傑作「New Chapter」を是非聴いて下さい!数年前にリリースされた再発盤には「New Chapter」に先駆けて発売された12inch盤の音源が4曲収録されていてお得です。バビロンを容赦なく攻撃する「Finger Gun Style(Extended Version)」はパンクにも通じるストロングなレゲエで必聴。その他にも「Ways Of The Lord(Extended Version) 」とその2曲のダブ・ヴァージョンが収録されているのでこの再発盤をゲットして下さい。

そしてもう1枚紹介したいのがこれ。

ASWADA New Chapter Of Dub」(1982)
アスワドア・ニュー・チャプター・オブ・ダブ

New Chapter」の翌年にリリースされたこの「New Chapter」のダブ盤です。ハイレ・サラシエ皇帝が4匹のライオンをf0045842_17583992.jpg率いて天から降りてきている宗教画のような荘厳さを持ったジャケットも凄いが、内容も凄い。のちに天才エンジニアとして名を馳せることになる若きマイケル・キャンベルが手掛けた強力なダブ・アルバムです。マッシヴ・アタックの「No Protection」なんかより数倍強力で深遠なダブ・サウンドで容赦なく異次元にトバされます。これが本物のダブです。「New Chapter」にヤラれたらこちらもチェックです。

JAH RASTAFARI!!!
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by Blacksmoker | 2006-09-08 00:49 | レゲエ馬鹿道場(VERSION)