<   2007年 02月 ( 12 )   > この月の画像一覧

LINDA PERHACS [Parallelograms]

さて、今回の「フォーク・シンガー特集」の最後を飾るのはジュディ・シルヴァシュティ・バニヤンと並んで語られる「三大幻の女性フォーク・シンガー」最後の1人。

リンダ・パーハクス

f0045842_126155.jpgこの「Parallelograms」は1970年にリリースされた彼女の唯一のアルバムにして、この時代のフォークの伝説的名盤。このアルバムの持つ神秘性はリリースから36年以上経った今でも全く色褪せることなく燦然とした輝きを放っている。

サウンドは完全にアシッドなサイケデリック・フォーク。今にも消え入りそうなくらい儚く浮遊感のある声の多重録音に、深い森に迷い込んだようなバックのサウンドが完全に彼岸の音。でもよくよく聴いてみるとサイケデリックな装飾を抜きにしても、芯のしっかりしたメロディの優れた曲なのが分かります。伊達に36年も名盤として静かに語り継がれてきたアルバムだけの事はありますね。

このアルバムも長い間CD化がされていない状態が続いていたが、2003年にCD化がなされ多くの人の手に届くようになりました(しかも6曲も追加されて)。実はリンダ・パーハクスという人物についてはほとんど情報がなく謎の人物というイメージが先行していましたが、このCD化にあたり彼女がカリフォルニア出身(それまではハワイ出身とされていた)の歯科衛生師だったことが判明。

そんな音楽とは無縁にみえる経歴のリンダ・パーハクスがなぜこのような素晴らしいアルバムを制作できたのかというのことなのだが、実は彼女の患者として出会ったレナード・ローゼンマン(映画「エデンの東」「理由なき反抗」などを手掛けた映画音楽家)という人物が彼女の歌声に惚れ込みプロデューサーを買って出てアルバムが完成したそうです。手掛けたのが映画音楽家というところがなかなか興味深いですが、まあそんな話題はこのアルバムの素晴らしさの前には何の意味もなしません。
f0045842_1295688.jpg
ジャケットのイメージも非常に魅惑的で美しい。そして全曲が素晴らしいアシッド・フォークで綴られた奇跡の名盤です。聴いていると勝手にあちらの世界へ誘ってくれる美しいサイケデリック・トリップ・フォーク。もはやこのアルバムへの絶対的評価について異論のある人はいないでしょう。このアルバムについて説明するのに、もはや言葉は必要ないと思います。まだ聴いた事のない人は必ずチェックして欲しい。

最後に、この当時の彼女の写真はあまり存在しないんですが、この熱狂的なまでの再評価に対して彼女のホームページも出来きています。その中に彼女の写真が何枚も見れるようになってますが(再発CDのインナーにも写真あり)、正直見ないほうが良いです。80年代のエアロビクスに先生みたいな格好したリンダ・パーハクスの衝撃の写真が出てきてガッカリしますよ・・・。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-26 00:07 | FOLK

KAREN DALTON [In My Own Time]

60年代後半~70年代前半に活動した伝説的な女性フォーク・シンガー達に共通している性質は、「エキセントリック」か「ジャンキー」です。

やはり常人とは違った感性を持ち、ちょっと気難しかったり、逆に繊細で壊れやすかったりする人が多いですね。それか、アルコール中毒だったり、ドラッグ中毒だったりするジャンキーな人。こういう人達の方が後世に残る傑作を残している場合が多いです。(実に興味深い話です。)

f0045842_13344018.jpg今回紹介する2人目のフォーク・シンガーはカレン・ダルトン。この人は「エキセントリック」と「ジャンキー」の両方を兼ね備えてしまった女性。そして隠れた大名盤を2枚残してシーンから消えたフォーク・シンガーです。その彼女の1971年発表の2ndアルバム「In My Own Time」を紹介します。

彼女は1960年代前半からニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジで活動しており、この頃はボブ・ディランフレッド・ニールとも活動している。1969年にキャピトルから1stアルバムをリリースし僅かながら注目された存在ではあったようです。久しぶりにボブ・ディラン自伝「Chronicles」を読み返してみたら、第一章の中に「当時最も気に入ったのがカレン・ダルトンで、ビリー・ホリデーのような声を持ち、ジミー・リードのようにギターを弾き、そのスタイルを貫いていた」と記述されてましたね。ディランの言う通り、12弦ギターとバンジョーをもこなす才人です。
f0045842_1345224.jpg
特徴はその独特の声。甲高いハスキーなかすれた声。この時代に名盤を残した幻のフォーク・シンガー達は現世離れした天使のような声を持つ女性が多いですが、カレンは地に足の着いた人間的な声をしています。バンジョーを弾きながら歌う姿にはやはりそのルーツがアパラチアン山脈にあり事は分かり、どこかブルース的なフィーリングを感じます。フォーク・シンガーというよりブルース・シンガーに近いかもしれない。あまりカレンと似たような声のシンガーは存在しないんじゃないだろうか。サウンドは全然違うけどその存在感はニーナ・シモンとかに近いものがありますね。

f0045842_1346276.jpgそんな才能あるミュージシャンの周りには、やはり才能ある人達が集まってきます。しかもこの時代のニューヨークのフォーク・ミュージシャンというのはある種コミュニティー的な集団を形成していたわけですから、グリニッジ・ヴィレッジ周辺のフォーク・ミュージシャンがこぞって参加しています。プロデューサーには当時ディランのバンドでベーシストをやっていたハーヴェイ・ブルックスが迎えられています。

ウッドストックのベアーズヴィル・スタジオで録音されており、サウンドはザ・バンドの1stとかに非常に近い雰囲気があります。ノラ・ジョーンズの2ndアルバムに近いサウンドとも言えます。トラデショナル曲のカヴァーや、ザ・バンドの1stにも収録されているリチャード・マニュエル作のIn A Stationのカヴァーや、スタンダード曲When A Man Loves A Womanのカヴァーも入っていますが、いずれも完全にカレン・ダルトン色に染まっています。アルバム全体に渡ってブルース的なラフなフィーリングがありますね。このアルバムは、カレンの溢れんばかりの才能が滲み出た傑作です。

しかしカレン・ダルトンは、この2ndアルバム「In My Own Time」のリリース後に忽然とシーンから消えてしまいます。実は3rdアルバムの製作にも取り掛かっていたようですが、その矢先に失踪。そして2度とシーンに戻ってくることはありませんでした。原因は重度のアルコールやドラッグの中毒だったそうだが、おそらく急激な状況の変化に耐え切れずドロップアウトしてしまったのだろう。このあとカレンはまったく音楽活動を行わず、1993年にドラッグ中毒で亡くなっています。
f0045842_13521168.jpg
実はこのアルバムですが、長年アナログ盤でしかリリースされていなかった為、ファンの間では幻の名盤として語り継がれてきたものでしたが、何と2006年に奇跡の初CD化を果たした涙モノの1枚。再発に寄せてブックレットにはレニー・ケイニック・ケイヴ、そしてディヴェンドラ・バンハートの3人がそれぞれカレンへの思い入れについて熱い文章を寄稿しています。特にそのディヴェンドラの文章にはかなりの入れ込みようが感じられ面白いです(ディランの自伝映画「No Direction Home」でディランカレンが写っている写真が出たときにディランカレンの名前を出さなかった事に怒りをおぼえたというエピソードが笑えます)。(下写真は1961年の写真。左からディランカレン・ダルトンフレッド・ニール
f0045842_13482024.jpg
長年のフォーク・ファンだけでなく、是非とも新たなリスナーに触れて欲しいアルバムですね。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-23 00:13 | FOLK

告知●「チューバイカ Vol.10 @common cafe」●

ここでは初めての告知ですね。

今週末2/24(土)開催!

●●「チューバイカ Vol.10」●●  
@common cafe


2005年4月より「チューバイカ」というDJパーティ・イベントをやっております。

要するにお酒を飲んだり飯を食べたりしながら、音楽で踊ったりして楽しむというシンプルなパーティですが、早いもので今回で10回目となりました。お客さんも徐々に増えてきています。しかもノー・チャージ。是非お越し下さい。


●●● チューバイカ Vol. 10 ●●●

date: 07. 02/ 24(Sat.)
open: 20:00 - All Night !
door: no charge !
food: 出張カフェ「太陽ノ塔」
map: http://www.talkin-about.com/cafe/map.html

DJs:

Blacksmoker
Cameo
Fuckino 010
hino
KBKW
ku-ga
martin looser
mDA
TB Arkestra
waterloo

VJ: None,High view


どんな音楽性のイベントかと言われるとなかなか説明し辛いほど多様。それぞれのDJが様々なジャンルをカヴァーしています。ヒップホップ、レゲエ、ハウス、ロック、ドラムン・ベース、マスロック、J-POPなどそれぞれに色が違います。そんなカンジで楽しくやってますので是非お近くの方はお越し下さい。

Blacksmokerは、1番ピークの0時過ぎから登場です!いつもはダンスホール・レゲエやヒップホップ中心のジョグリングなアゲ系セットですが、今回は少し違いますよ!

 
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-22 00:02 | 告知

MARY HOPKIN [Earth Song/Ocean Song]

60年代後半から70年代前半にかけての女性フォーク・シンガーの活躍には目覚しいものがあります。ちょうど1年前にこのブログでもジュディ・シルヴァシュティ・バニヤンなどアメリカの女性フォーク・シンガーを紹介しましたが、個人的にこの寒い2月の時期というのはどうやらフォーク・シンガーを聴きたくなる時期にあるようです。それでは昨年に引き続きまして3回に渡り、それぞれ3人の女性フォーク・シンガーのアルバムを紹介しようと思います。

f0045842_22433880.jpg今回紹介するのはイギリスの女性フォーク・シンガー、メリー・ホプキンの1971年発表の2ndアルバム「Earth Song/Ocean Song」(日本盤タイトル:大地の歌)。

1950年ウェールズ南東部に生まれたメアリー・ホプキンは18歳の時にポール・マッカートニーの強力なバックアップによりアップル・レコードから1st「Post Card」でデビュー。ポールの作った曲Those Were The Daysを大ヒットさせ、「Post Card」は全世界で500万枚という驚異的なヒットを記録する。
f0045842_22472830.jpg
しかし、ここから彼女の波乱のストーリーが始まります。

ポール・マッカートニーによる楽曲提供によって一般的にポップ・シンガーとして認知されることをメリーは頑なに拒否して、発売を控えていたポールがプロデュースした次のシングル曲のリリースを中止してしまいます。もちろんここでポールとの関係は一気に悪化してしまうわけですが、そこまでしてメリーはフォーク・シンガーとして信念を頑として貫いたわけです。

そしてリリースされたこの2nd「Earth Song/Ocean Song」は前作と全く趣向の異なった作風になりました。ここにはメリーがこだわった重厚なる伝統的なブリティッシュ・トラッド・フォークがあります。プロデュースをトニー・ヴィスコンティが担当しストリングスも加えた格調高い作風になっています。

f0045842_22515884.jpgしかし、己の信念を貫いて作ったこのアルバムですが、チャート的には惨敗。結果的にアップル・レコードからの最後のアルバムとなってしまうわけですが、実は個人的にはメリーの作品ではこのアルバムが一番好きなアルバムです。なんたってジャケットの美しさもさることながら、その思い切って方向転換したトラッド・フォーク路線に対してメリーの一点の曇りもない力強さが感じられるのです。アコースティック・ギターだけでなくヴァイオリンやバンジョーなど弦楽器の旋律とメリーの母性的な声が静かに溶け合って自然を謳歌しているようです。

今までの喧騒の鬱憤を晴らすかのように力強く伸びやかに歌われるThere’s Got To Be More、どこか哀しげだが優しいヴァイオリンによって勇気付けられるStreet Of London、ゴスペル的な作風をもった高揚的なWater,Paper & Clayなど隠れた名曲が静かに並んでる傑作です。

自分というものが、他人のイメージにプロデュースされることを拒否したというエピソードも実に惹かれるエピソードじゃないですか?最近では、湯川潮音がプロデューサーの鈴木惣一郎から離れて自由な作風を楽しんでいるのもこれと全く同じ構図ですね。歴史は繰り返されるようです。(下写真はポール・マッカートニーメリー。)
f0045842_22543319.jpg
実はメリーは今でもこのアルバムの事を「自信を持って最高傑作だと言える」と発言しています。もちろん私も同意見です。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-20 00:13 | FOLK

藤島晃一 @ばんまい 2/10(土) 2007

心揺さ振られる素晴らしいアーティストに出会いました。

藤島晃一

高知県在住のブルーズマン。30歳くらいからアメリカやイギリスをギター1本で放浪する「路上のブルースマン」として現在でも活動しています。彼の音楽の根幹には1930年代頃からアメリカ南部の綿花畑から発祥した黒人によるデルタ・ブルース/ゴスペルがあります。フィンガー・ピッキングによる感情表現豊かなスライド・ギターに、歌われるのは日本語による歌詞。これが実に違和感なく融合していて、本場のブルースのレジェンド達にもまったく引けを取らないブルースを聴かせてくれます。(ちなみに藤島氏は画家でもあります。)

よって日本人だけでなく、海外にも藤島晃一のファンは多い。イギリス国営放送BBCの名物DJチャーリー・ギャレットから、アンディ・カーショウ藤島氏の大ファンだそうで、BBCのラジオ番組にも招かれて演奏しています。

そしてもう1人。藤島晃一の大ファンな人がいます。
f0045842_233827.jpg
                 ピーター・バラカン師匠です。

この人がいなかったら藤島晃一という素晴らしいブルースマンに出会うこともなかったでしょう。長年続いたラジオ番組「Barakan Beat」が終了してしまい、バラカン師匠のありがたいご託宣が聴けるのは「Weekend Sunshine」だけになってしまいましたが、それでも師匠は度々藤島氏を番組内で紹介しています。相当好きなミュージシャンの1人なんだと思います。バラカン・リコメンドなミュージシャンなのでもちろんチェックしないわけにはいきません。でも、そういうトピックを差し引いても藤島晃一が素晴らしいミュージシャンである事には変わりありません。(ちなみに下絵は藤島氏の作品です。)
f0045842_23471243.jpg
そんな藤島晃一氏のライブが我が大阪であると知ってこれは是非行かねばと場所をチェックしたらビックリ。我が家から歩いて3分のとこにある場所じゃないですか!この「ばんまい」という所はオーガニックな食材しか使わないカフェ兼レストランで、そういや少し前にリケンベ奏者のさかきマンゴー氏もライブをやっていました。そんな近い場所で観れるなんて感激です。

さて19時に開演ですが、最初の1時間は藤島氏がアメリカの南部のミシシッピなどの街で地元の住民と演奏している映像が流され、それを自然食やらコーヒーやらお酒を飲みながら観るというリラックスした雰囲気。それが終わって終始和やかな雰囲気の中での藤島氏の演奏がスタートしました。

適度にジョークを飛ばしながら、2本のギター(1本はドブロ)を曲ごとに持ち替えながらの弾き語り演奏。やはりスライド・ギターの音が堪らなく素晴らしい響きです。ライブを観ていてかなり思ったのが、スライド・ギターの弾き語りの演奏はまるであの伝説のブルースマン、Blind Willie Johnsonを彷彿させます。個人的にはBlind Willie Johnsonが大好きなので、Blind Willieのギターフレーズが入っていたりして非常に嬉しい。藤島氏の音楽がBlind Willie Johnsonに多大な影響を受けているのが分かります。Lightnin’ HopkinsJohn Lee Hookerらともちょっと違ったもう少しゴスペル寄りなブルースですね。
f0045842_23463141.jpg
藤島氏の歌は、決して上手くはない。けれど味のある日本語による歌声がとても郷愁的。ブルースは歌詞が命ですから歌詞の内容が分かるのは非常にありがたい。言葉少なだが実に印象的な言葉が心に響きます。

非常にマイペースで淡々とライブは進んでいきましたが、時間が経っているのも全く感じさせない素晴らしいものでした。約2時間があっと言う間でしたね。こんな素晴らしいミュージシャンに出会えて本当に感動。終わってから一緒に写真撮ってもらったりしたんですが、帽子を脱いだら藤島氏はモヒカンでした!パンク!
f0045842_072230.jpg
客層も年配の人がかなり多かったけれど、終演後その人達と少し話したら、島根からわざわざ来ている学校の教頭先生だったり、あと神奈川から観に来てる人もいたりして、みんな相当入れ込んでいる模様。熱いです。

そして藤島氏の新しく出た新作「Mojoyama Mississippi」と旧作をさっそく購入。これはThe Fujiiフジアイ)というバンド名義のものでヴァイオリンやバンジョーなどの入ったもう少しアパラチアン寄りなサウンドになっていてこれも非常に素晴らしかったです。心の琴線に響きます。ちなみに「Mojoyama Mississippi」とは、藤島氏の住む高知県長岡郡本山町と宗教呪文であるMOJOと掛けて、ブルースの聖地ミシシッピと合体させた造語だそうですね。

なかなか大手のレコード店では手に入らないレコードかもしれませんが、この人の音楽を埋もれたままにしておくのはとてももったいない話です。藤島氏のホームページでも購入できるそうなので気になる人はチェックしてみて下さい。

ピーター・バラカン、そしてBlacksmokerからのリコメンドです。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-18 00:07 | ライブレポート

TOOL @ Zepp Osaka 2/8(木) 2007

僅か半年で2回もTOOLを観れるとは良い時代になったものだ。
f0045842_2154395.jpg
前回の来日はフェスでの来日だったので、単独来日としては超久々です。フェスではやはり不特定多数を相手にしたベスト・ヒット的選曲になってしまうので(それはそれで大いに楽しめましたが)、やはり10分以上の曲がザラにあるTOOLの世界観を堪能するにはやはり単独公演でじっくり堪能するのがベストでしょう。

f0045842_2185089.jpg今回の来日公演では、フェスには不向きな長尺な曲がしっかり演奏されていて、ヒット曲を詰め込んだ前回のライブとはまた違った印象を受けました。そして今回一番感じたことはTOOLのライヴが意外と人間的だったとこです。完璧主義を貫くギタリストのアダム・ジョーンズをはじめとしてドラムのダニー・カーレイなど超絶とも言える完璧に近い演奏力を持ったメンバーによる寸分の隙もないライブがTOOLの特徴だと思っていたのですが、案外ラフな面もあるし、終始演奏に徹していて全く観客とのコミュニケーションを取らないように思っていたメンバーも意外にもフレンドリーで、ちょっと驚きでした。

ライブ中盤では一旦演奏を止めてメンバー全員がステージ前方に集まってきて観客にライターを点灯させてフロアがライターの灯でいっぱいになる光景があったりと、TOOLのライブでは想像しなかった光景で新鮮でしたね。
f0045842_2121302.jpg

しかし人間的とは言いましたがTOOLの演奏が生温かったという事があるわけもなく、現時点では間違いなく「ロック界最強のライブ」を余裕な顔でやってくれました。まf0045842_2118789.jpgさに「21世紀のキング・クリムゾン」です。アダム・ジョーンズの手掛ける人体実験のようなグロテスクでサイケデリックな映像と演奏のシンクロも見事で、まさしくアート。曲もライブ用にアレンジされており、アルバムとの違いが楽しめたりもしましたね。前回よりも(会場が小さいこともあり)ライティングが弱かったのが残念でしたが(オープニングのStinkfistのライティングの弱さは、前回のそれと比べるとインパクトが弱すぎでした)、それでも様々な趣向の凝らされた映像がそれを補って余りある効果を発揮していました。メイナード・ジェイムス・キーナンの軟体動物のような変な動きも相変わらず。

複雑なギター・リフを平然と繰り出し、ギター・ノイズでさえも自在に支配する寡黙なアダム・ジョーンズの異様な存在感もやはり圧倒的。あとベースのジャスティン・チャンセラーの働きはかなり目立っていましたね。ベーシストの枠を越えたギタリストに近い働きでTOOLの楽曲のヘヴィ度を一層彩る激しいプレイには目を奪われる瞬間が何度もありました。
f0045842_21221735.jpg
演奏に徹しきった鬼神のような前回のライブと、案外と人間的な一面も垣間見せた今回のライブとでTOOLの2つの顔が観れてなかなか面白かったです。やはりレコードだけでなく、ライブの凄さもTOOLを怪物バンドにしてきた要因であるので、彼らのライブは一度観ておいた方が良いですね。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-16 00:10 | ライブレポート

MINUTEMEN [We Jam Econo](DVD)

ミニットメン

この名前を初めて耳にしたのは確か94年くらいだったと思う。当時大阪では「Mega Rock」という革新的なオルタナティヴ・ラジオ番組が放送されており、この番組のDJであるブライアン・バートン・ルイス(ちなみにこの人は、私の人格形成にかなり多大な影響を与えた人であります)が度々口にしていた言葉がありました。

それは、「ミニットメンは最高にカッコいいバンドなんだ」です。
f0045842_2215640.jpg
そんな折にミニットメンのベーシストであるマイク・ワットがソロ・アルバムをリリースするという情報があり、そのアルバム「Ball-Hog Or TugBoat?」(右写真)にはPearl Jamf0045842_2282419.jpgディ・ヴェダーや、当時まだNirvanaクリス・ノヴォゼリックデイヴ・グロールSonic Youthサーストン&キムレッチリフリーDinosaur Jr.Jマスシスヘンリー・ロリンズBeastie BoysマイクDなどなど、この時代のロックを聴いてきた人間には即死級の豪華ゲストが参加しているアルバムでした。(ちなみにこのアルバムにはエディ・ヴェダーがヴォーカルでNirvanaの2人がバックを務めるAgainst The 70'sという凄い曲が入っています。)

要するに「それくらい凄い人なんだ、この人は」という事は感じていましたが(アルバム「Ball-Hog Or TugBoat?」もかなり聴きました)、この頃はまだあまりミニットメンには興味がなかったのがホントのトコロ。その後何年かして再びミニットメンの音楽と出会うことになるわけです。

それがあのMTVの人気番組「JACKASS」
f0045842_2311092.jpg
あの「Hi,I’m Johnny Knoxville! Welcome to JACKASS!!」というお馴染みのセリフの後に流れるオープニング・テーマがミニットメンの曲Coronaだったのです。そこから初めてミニットメンの音楽とちゃんと向き合うことになるわけだが、これが何とも形容しがたいファスト・パンクで、ド肝を抜かれました。その彼らの4枚目のアルバム「Double Nickels On The Dime」に受けた衝撃は相当なものでしたね。最近はマーズ・ヴォルタドン・キャバレロバトルズのような突然変異系ロック・バンドが大人気ですが、ミニットメンは80年代にこのスタイルの先駆けのような音楽性を確立していたと言っていいかもしれない。
f0045842_2325975.jpg
まあ長くなってしまったが、それがミニットメンとの出会いなわけですが、先日そのミニットメンのドキュメンタリー映画がDVDでリリースされました(しかも偶然な事に映画「JACKASS:Number Two」を観に行ったばかりというタイミング!)。

このドキュメンタリー「We Jam Econo:The Story Of The Minutemen」(右写真)は1980年~1985年の僅か5年という短い期間しかf0045842_2335590.jpg活動しなかったにもかかわらず、後続のバンドに多大な影響を与えたミニットメンをメンバーや関係者の証言をもとに映像を通して振り返ります。ヘンリー・ロリンズをはじめとするBlack Flagのメンバーや、The Descendentsのメンバー、Husker Duのメンバー、ジェロ・ビアフラレッチリフリーSonic Youthのメンバーや、Minor Threatのメンバー、Jマスシス、そしてWireのメンバーなど、錚々たる人物がミニットメンに対する熱い想いを語っています。そして当時のミニットメンの凄まじいライブ映像もふんだんに盛り込んだ内容で史料価値としても一級品。

かなりの巨体にもかかわらず軽快に跳ね回りながら歌うボーカル/ギターのDブーン(下写真)の圧倒的な存在感、そしてフロントマンのような佇まいで爆音でベースを弾くマイク・ワット、上半身を使った奇妙なドラミングをするジョージ・ハーレイ、彼ら3人は全く別々の個性を持っており、その3者の音楽性の見事な融合によってミニットメンの音が出来たと言ってもいい。この頃の80年代のLAハードコア・パンク・バンド達とは全く違ったユニーク極まりない音を出していたのです。
f0045842_240330.jpg
全ての曲がほとんど1分くらいの曲ばかり。変則的なリズムと奇妙なギター・フレーズ。映画の中でサーストン・ムーアの言う「ミニットメンはハードコア・キッズには受けなかった。難しすぎたんだ。」というセリフも実に頷けます。イアン・マッケイミニットメンのサウンドを「ぎこちなく調子を乱されるような奇妙なサウンドが逆に気持ち良かった」と分析していて「なるほど!」と思いましたね。
f0045842_2433960.jpg
さて、映画はミニットメンが結成してからDブーンが交通事故で他界し解散に至るまでの過程が淡々と語られていく比較的まっとうなドキュメンタリーですが、やはり飽きさせないのは、途中で何度も何度も挟まれるライブ映像の迫力。これはホントに必見です。

しかもDVD映像特典として1980年と1985年の2つのギグのパフォーマンス映像と、1985年のアコースティック・ライブの映像がフルで収録された凄いヴォリューム!全部で300分を超すトンでもない量です(正直こんなに要りません・・・)。もう言うことナシです。
f0045842_254267.jpg
是非このミニットメンの偉大な軌跡を辿ってみて欲しいです。

最後に余談ですが、2004年にマイク・ワット(下写真)はイギー・ポップ率いるThe Stoogesのベーシストとして来日します(マイク・ワットはこの他にペリー・ファレルPorno For Pyrosや、JマスシスのバンドThe Fogにも参加していました。何でもThe Stoogesの新作にも参加しているそうです!)。その時のライブで、終盤にイギー・ポップが演奏中にステージに上げてくれたんですが、ステージでは四方をThe Stoogesのメンバーに囲まれて、さらに真横ではマイク・ワットがベースを弾いていて超感動しましたね。
f0045842_2494526.jpg
懐かしい思い出の1ページです。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-14 02:56 | ROCK

Tom Ze [Danc-Eh-Sa]

Rock is dead」、ましてや「Hip Hop is dead」とさえ言われる昨今。そして最近の音楽は面白くないと言う人達。そんな人達には、このアルバムを聴いてみる事をオススメします。

ブラジル音楽界の現人神。

f0045842_0565588.jpg奇人トン・ゼーのこの最新作「ダンセーサー」のアヴァンギャルドぶりには驚きを隠せません。なんたって1960年代後半にブラジル音楽界に革命をもたらせた芸術運動「トロピカリズモ」をカエターノ・ヴェローゾジルベルト・ジルらと共に推進したレジェンドの1人。1936年生まれなので、今年で71歳!そんな高齢になれば感性というものは普通鈍ってくるもんだ。だが、なんだこの現役感は!研ぎ澄まされた鋭い感性がクリエイティヴィティに満ち溢れている。まるで才能に溢れた20代のようなソリッド感があります。音だけ聴くと70歳を超える人の音だとは全く想像出来ません。
f0045842_0583850.jpg
そもそもトン・ゼーがこのようなアヴァンギャルド全開な音楽をやるようになったのは90年代にデイヴィッド・バーンが主催するレーベルLuaka Bopに移籍してからだ。

70年代以降、トン・ゼーのレコードは全く売れることなくトン・ゼー自身も一度音楽を辞めて故郷のバイーアのガソリン・スタンドで働いていたそうです。しかし、1989年にデヴィッド・バーン(下写真)がLuaka Bopからトン・ゼーの音源を集めたベスト・アルバムをリリースした事によってトン・ゼーを取り巻く環境は一変する。アメリカやフランス、そしてブラジルでもそのアルバムは大絶賛され一躍知名度を上げることになる。トータスがアメリカ・ツアーに引っ張り出した事でもかなり有名になりましたね。
f0045842_151771.jpg
そしてLuaka Bopからトラーマにレーベルを移籍して以降、更にその独自の音楽性に磨きがかかって先鋭性を増し、カルトの教祖のような存在になり、もうブラジル音楽ファンはついていけない領域まで達してしまった感があります。そしてこの新作「ダンセーサー」はそのトラーマを離れて、イララーというレーベルからのリリース。何でもトラーマでさえこの新作を出すのを躊躇していたという作品だそうです。

f0045842_195499.jpgその内容ですが、そんな噂も頷ける凄い内容。サンプリングによるブレイクビーツに、土着民族的パーカッション、変なノイズや効果音、変態的なギター・ソロがごちゃまぜになったカテゴライズ不可な謎のサイケデリック・ダンス・ミュージックトン・ゼーによるヴォーカルは歌ではなく擬音語を出しているだけ。その音楽は言葉では例えようがないですが、存在的に言うとやはりフランク・ザッパです。キャプテン・ビーフハートのようなフリーキーさもありますね。もはや独自の深化を突き進んでいます。妙にポップさも備えているのもポイントです。

しかしこの作品がさまざまなメディアで語られる時には必ず「一見さんお断り」的な言葉がやたら出てくるんですが、個人的に言わせてもらうと別にそんな難解な作品じゃありませんよ。

80年代じゃあるまいし、今のリスナーの音楽性の幅を舐めちゃいけないです。確かにボサノヴァ・ファンからすれば理解出来ない音楽かもしれないが、ロック・リスナーにとってはそうでもないだろう。BoredomsAphex TwinMars VoltaBattlesf0045842_1185538.jpgKonono No.1などが大人気な今の時代にこのトン・ゼーの音がずば抜けて先鋭的かと言われればそうでもない。それに比べれば最も聴きやすいとも言えるだろう。ブラジリアン・パーカッションが乱れ飛び、突如挿入されるボサノヴァの優しいメロディ、哀愁のあるアコーディオンの響き、呪術的なコーラスなど何が飛び出すか分からない予測不能なアヴァン・ポップ。聴いていてこんなに楽しめるアルバムもそうはないでしょう。

冒頭でも書いたが、これは70歳を超える人間の作る音楽には思えない。全く「無理してる」感もなく、自然な欲求からくる音楽です。おそらくブラジルの感性豊かな若いミュージシャン達が参加しているのだろう。
f0045842_120272.jpg
トン・ゼーは以前に「ブラジルには地震がないと人は言うけれど、そんなことは嘘っぱちだ。地中に潜むフォルクローレの力で、いつだって揺れている。マグニチュード14ってほどのものだ」と言っていた。その言葉を証明するかのような弾けた作品です。
f0045842_1203331.jpg
もしかしたらカエターノ・ヴェローゾの新作「Ce」があんな荒々しいサイケデリック・ロックになったのは、このトン・ゼーの影響があったかもしれないですね。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-12 01:25 | ブラジル

15年振りなのです。

ブラジル音楽界の女王、マリーザ・モンチ

15年振りの来日公演決定です!


f0045842_133202.jpg


〈MARISA MONTE Japan Tour 2007〉

5月29日(火)渋谷 Bunkamura オーチャードホール
5月30日(水)渋谷 Bunkamura オーチャードホール

開場 18:30 / 開演 19:00
チケット一般発売日:3月4日(日)

※追加公演
5月26日(土)名古屋 Zepp Naoya

残念ながら東京公演・名古屋公演のみ・・・。

f0045842_1385474.jpg


実は、チケットもう手に入れちゃいました。しかも超ド真ん前の席!!

f0045842_1412189.jpg

               コレは凄いことになりそうです。
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-10 01:50 | ブラジル

映画「Little Miss Sunshine」

アメリカでは公開当初は7館のみの上映だったインディペンデント映画が口コミで話題を呼び、上映館が全米各地に拡がり、おまけに2007年のアカデミー賞において作品賞を含む主要部門4部門ノミネートまでされてしまった映画「リトル・ミス・サンシャイン」
f0045842_11372238.jpg
それぞれに問題を抱えた家族が娘のミスコンに出場するため壊れかけた黄色いバンに乗ってアメリカを横断するいわゆるロード・ムーヴィー。途中で様々な苦難に遭遇する家族の面々が、次第に絆を強めていくという単純なストーリーながら、個性豊かなキャラ達が非常に良い演技をみせています。テンポ良いコミカルな流れの中に少しホロリとさせる感動を盛り込んだ温かみのあるアットホームな雰囲気がとても清々しい。最f0045842_11411549.jpg後のシーンもかなりあっさりしていて、状況的には何も解決していないんですが、「そんな日常はこれからも続いていくんだよ」と言いたげな印象的な終わり方が逆に余韻を残しています。昔のロン・ハワード監督が得意とする作風で個人的に大好きな映画でもある「バックマン家の人々」のように素敵な映画でしたね(でもオスカーには選ばれないような気もするけど)。

さて、この映画の感動的な演出に一役買っているのが音楽です。この素晴らしい音楽を抜きに「リトル・ミス・サンシャイン」は語れません。このアメリカ大陸を横断するロード・ムーヴィーのサウンドトラックを担当しているのがDeVotchka(デヴォーチカ)というバンド。
f0045842_1243959.jpg
このバンドはデンヴァー出身の4人組。現在までに3枚のアルバムをリリースしています。「デヴォーチカ」という言葉はキューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」で使われてた言葉ですね。その音楽性は、メキシコ音楽を基盤にジプシー音楽やマリアッチやタンゴをブレンドし、そこに西部劇のウェスタン風味も加えた中々素晴らしいものです。音楽性から言えば、先日のf0045842_1281260.jpg来日公演も素晴らしかったキャレキシコのような音ですね。もちろんアコーディオンやトランペットも大活躍しています。でもこのDeVotchkaキャレキシコと違う点は、まず1つはヴァイオリンの音。このヴァイオリンの哀愁のある音色がふんだんにフィーチャーされているのが特徴です。そしてもう1つの違いはヴォーカルです。DeVotchkaのヴォーカルは伸びやかではあるが粘着力のある個性的な歌声。例えて言うならデイヴィッド・バーンのような独特な声質をしています。

そのDeVotchkaがこの映画の全編にわたる音楽を担当しています。これはロード・ムーヴィーとしては最適な人選。彼らを起用した人物は相当センスが良いですね。
f0045842_1293115.jpg
映画の中で使われる音楽は、彼らの以前のアルバムからの既発曲が多いですが、インスト・ヴァージョンにアレンジされた曲と新曲「'Til The End Of Time」も収録されていてこの映画の世界を見事に創り上げています。エレクトロ調の曲から、まんまマカロニ・ウェスタンな曲、マリアッチな曲といった個性豊かな幅の広い楽曲が並んでいます。エンドロールで流れるこの映画のメインテーマ曲「How It Ends」が実に効果的に使われています。

そしてもう1つの注目は、2曲を提供したスフィアン・スティーヴンス
f0045842_12133051.jpg
スフィアンは前回紹介しましたが、この人の存在も非常に大きい。スフィアンの提供した曲「Chicago」はアメリカ50州シリーズ第2弾アルバム「イリノイ」からの曲で、これが映画の中でも実にイイ使い方をされています。もう1つの曲「No Man’s Land」も美しく優しい名曲です(これはアルバム「ジ・アヴァランチ」に収録されています)。

f0045842_12161014.jpgそして映画のハイライトともいうべきシーンで使われるのがリック・ジェイムス(右写真)の「Superfreak」 !この曲を知らない人でも、MCハマーの大ヒット曲「U Can’t Touch This」のトラックがこの「Superfreak」だと言えば分かるでしょう。この曲もサントラにはしっかり収録されています。聴くと映画の中のあのシーンが思い出されて笑えますね。そういやリック・ジェイムスって50 Cent主演の映画「Get Rich Or Die Tryin’」でもばっちりリスペクトされてましたね。さすがマリファナ魔人!

それにしてもDeVotchkaスフィアンの両者によってこの映画は実にカラフルに彩られています。これはインディペンデント映画だからこそ出来た人選で、これがメジャー配給で製作されていたなら全く違う音楽になっていたでしょう。サントラの隠れた名盤(いやもう隠れてないか)。聴いてから観ても良いし、観てから聴くのも十分楽しめるサントラです。
f0045842_1242321.jpg
是非映画と共にチェックして下さい。

ちなみにこの映画の監督ジョナサン・デイトンはミュージック・ビデオ出身の監督。

彼の今までの作品は、、、

The Smashing Pumpkins「Tonight, Tonight」
The Smashing Pumpkins「1979」
R.E.M.「Star 69」
Weezer「Say It Ain't So」
Red Hot Chili Peppers「Califolnication」
Red Hot Chili Peppers「By The Way」
Janet Jackson「Go Deep」

などなど。

なるほど、こういう人だったんですね!
[PR]
by Blacksmoker | 2007-02-08 00:01 | 映画