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JOE HENRY [Civilians]


最近至るところでその名前を見かけていて気になっていた男、ジョー・ヘンリー
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ソロモン・バーク「Don't Give Up On Me」や、アニー・ディフランコ「Knuckle Down」などの光る作品をプロデュースしていて、その名前だけはとても印象に残っていました。そしてプロデュースだけでなく、自身もシンガー・ソングライターとして実は1989年にデビューしていて、今までに9枚ものソロ・アルバムをリリースしているようで、2003年にリリースした前作はAntiからのリリースという事で気になっていましたが、なかなかチェック出来てませんでした。今年に入ってジャム・バンド勢、カントリー勢が大挙して参加したザ・バンドのトリビュート・アルバム「Endless Highway」にも参加していましたが、惜しい事にジョー・ヘンリーの曲は日本盤のみのボーナス・ディスクにだけしか収録されてなかったので、輸入盤を先に買っていたため、ここでもジョー・ヘンリーの音に出会う事が出来なかったのです。

f0045842_164699.jpgそして遂に聴く事が出来たジョー・ヘンリーの最新作「Civilians」。彼にとって10枚目となるソロ・アルバムです。もうジャケットからして名盤の匂いが漂っていましたが、内容の方も間違いなく名盤でした。オールドタイムなアメリカン・ルーツ・ミュージックの最も素晴らしく、そして郷愁的な部分を上手く取り出した芳醇なそのサウンドは絶品という他ありません。バーボンやウィスキーを傾けながらゆっくりと味わって聴きたい音ですね。アコースティック・ギターとピアノの優しい音色がどんな状態の心も穏やかにしてくれます。ゆったりと静かにたゆたうこのヴィンテージ感のあるサウンドはやはり10枚ものソロ・アルバムをリリースしているジョー・ヘンリーのキャリアのなせる技でしょう。そしてジョー・ヘンリーの声は、予想以上に若々しくエルヴィス・コステロのような声でもありますね。
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アルバムの全編に渡ってアコースティック・ギター、そしてスライド・ギターの絡み合うサウンドにほんとにウットリさせられるのですが、今回その素晴らしいギターを聴かせるのはビル・フリーゼルグレッグ・リース。この2人の名前を見てピンと来る人は間違いなくこのアルバムは買ったほうが良いですね。しかしこの2人が感動的なギターの音色を聴かせてくれます。

まずはビル・フリーゼル
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最近のビル・フリーゼルはジャズの枠に囚われることなくアメリカン・ルーツ・ミュージックに傾倒していますが、ここでも静かなタッチだが実に情感のある表情豊かなギターを披露しています。もの凄い控えめなんですが、確実に印象に残る音です。ビル・フリーゼルが2002年に組んでいた弦楽器奏者5人からなる無国籍バンド、THE INTERCONTINENTALSのあの幽玄なサウンドを思い起こさせましたね。

そしてグレッグ・リース
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ジョニ・ミッチェルなど数々の有名ミュージシャンと共演し、前述のビル・フリーゼルTHE INTERCONTINENTALSのメンバーでもあるスティール・ギター奏者グレッグ・リースの弾くギターも情感たっぷりで実に素晴らしいです。このビル・フリーゼルグレッグ・リースの2人のギターの絡みがこの作品を特別なものにしていると言って良いでしょう。

その他のゲストも良い仕事をしています。中でもヴァン・ダイク・パークスが参加した2曲Civil WarI Will Write My Bookは白眉。クラシック側からアメリカン・ルーツ・ミュージックへとアプローチを図ったヴァン・ダイク・パークスの美しく格調のあるピアノの調べはもうそれだけで十分な素晴らしさなんですが、ビル・フリーゼルグレッグ・リースの2人の最小限の音で、最高の表現力を持つギターの音色が加わり更に素晴らしいものになっています。ついつい聴き入ってしまいます。

その他の曲もジャズやカントリーなf0045842_130282.jpgどのオールドタイムなアメリカン・ルーツ・ミュージックを現代に新たに蘇らせたような素晴らしい名曲ばかりです。ラウドン・ウェインライト3世(あのルーファス・ウェインライトの父親)なんてレジェンドもバッキング・コーラスでさらっと参加しているのにも注目です。ちなみにラウドンYou Can’t Fail Me Nowジョー・ヘンリーと共作も行っています。

アルバムは全曲ジョー・ヘンリーによる曲。この男、とてつもない才能の持ち主ですね。このアルバムや彼のプロデュースした諸作品を聴くと弦楽器の響きを非常に大切にしてるサウンドだと分かります。実に素朴で穏やかだが、じんわりと心の奥底まで届く深く雄大なアルバム。是非ともアメリカン・ルーツ・ミュージックを愛する人は手にとってみて頂きたい素晴らしき名盤です。
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いやぁ、こんな素晴らしい人だとは思いませんでした。他の作品も聴いてみよう。
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by Blacksmoker | 2007-10-30 00:24 | COUNTRY / BLUEGRASS

ANGIE STONE [The Art Of Love & War]


全国のソウル・ブラザー&シスター!

もうこの素晴らしいアルバムは聴いたか?もしまだ聴いてないなら、今すぐレコード屋へ走ったほうがいい。

2007年秋はレディ・ソウルたちのリリース・ラッシュ。ジル・スコットレディシチャカ・カーンを手始めに、アリシア・キーズメアリー・J・ブライジの新作も続々と登場しますが(エリカ・バドゥの新作の噂も!)、これはその中でも大本命の1枚。

f0045842_3112697.jpgアンジー・ストーンの3年振りの新作「The Art Of Love & War」。これが素晴らしすぎて素晴らしすぎて言葉に出来ないくらいです。全曲捨て曲なし!オープニングからエンディングまで素晴らしい感動の嵐。このリリース・ラッシュの中で一番期待してましたが、その期待以上に素晴らしい作品をアンジー・ストーンは創り上げてきましたね。これは是非とも全てのソウル・ブラザー&シスターたちに聴いてもらいたい作品です。

さてこのアンジー・ストーン。デビューは1979年なので実に28年のキャリアを持つ大ベテラン。そのキャリアはThe Sequenceというガールズ・ラップ・グループからスタートしている(ちなみにこのグループはSugar Hillからリリースしています)。その後、Vertical Holdというコーラス・グループで活動し、1999年にソロ・アルバム「Black Diamond」をリリースし、ソロ・キャリアをスタートさせ現在までに3枚のソロ・アルバムをリリースしています。
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今回4枚目のソロ・アルバムとなるこの「The Art Of Love & War」。話題はやはり新生「スタックス」レーベルからのリリースという事でしょう。2007年に再始動したサザン・ソf0045842_3202748.gifウル・レーベルの名門「スタックス」(今年は1960年代からスタックスがリリースした全シングルを収録した9枚組ボックスが再発されたばかり)。その新生スタックスからは、まずリリース第一弾としてモーリス・ホワイト監修のアース・ウィンド&ファイアのトリビュート・アルバム「Interpretations:Cerebrating The Music Of Earth, Wind & Fire」が出ましたが(これもほんとに素晴らしいです!アンジーBe Ever Wonderfulで参加しています)、新生スタックスの契約第一号アーティストがこのアンジー・ストーンなのです。幼少よりゴスペルに慣れ親しんできたアンジーだけあって、サザン・ソウルの名門スタックスは最適なレーベルだろう。そしてそのスタックスの顔役となるには実力・人気ともに相応しい存在です。

ただこの新作のプロダクションにあたって、スタックス側も「栄光のサザン・ソウルの復権」といった無理なサウンドにすることなく、実に腰の据わったアンジー・ストーンらしいサウンドになっているのも好感が持てますね。
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今回のアルバムは非常に明るい曲調が多く、全曲が際立ったメロディと存在感を持った傑曲ばかり。この変化は非常に大きいですね。アンジーの以前のアルバムに見られたシリアスなトーンの曲がほとんどなくなっているのは、最近婚約したばかりというアンジーの心情がそのまま反映されているのでしょう(ちなみに再婚で、前夫はディアンジェロ)。レコーディングはマーヴィン・ゲイ「What’s Goin’ On」を録音したLAのスタジオが使われています。

さて注目の1stシングルBabyですが、これはアルバムf0045842_3273473.jpgの中でも最もキャッチーな1曲。カーティス・メイフィールドGive Me Your Love(Love Song)のイントロのドラムを再現したオープニングで既に完璧ですが、フィーチャリングに迎えられたのはアンジーの大先輩にあたるレディ・ソウル・シンガー、ベティ・ライト(右写真:ジョス・ストーンを発掘した人でもあるそうですね)。この存在感満点の2人による掛け合いも見事です。そしてアンジー節ともいえる歌い回しが存分に堪能出来る名曲です。

そして全体的にミディアム・スローな曲調が大半を占めるアルバムの中で、アップなダンス・チューンMy People。冒頭にデューク・エリントンのナレーションをサンプリングし、黒人の同胞達に立ち上がる事を声高に歌い上げるこのチューン。ゲストに登場するのは、こちらも大ベテラン・シンガーのジェイムズ・イングラム。中盤に登場する彼の濃すぎるソウル・ボイスがたまりません。終盤にかけて黒人の著名人の実名を次々にシャウト・アウトしていく展開もやたらとカッコイイです。
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重厚なピアノとゴスペル・コーラスをバックに余裕たっぷりに歌うこれぞ2007年のサザン・ソウルなTake Everything In。昔のラッパーとしての実力を垣間見せるようにたたみ掛けるボーカルと、プリンスのようなファルセット・コーラスが絡み合うファンキーなPlay Wit Itアンジー・ストーンらしいメロディ・ラインが流れ出る、悲しげな曲調だがどこか突き抜けた明るさがあるSometimes、まるでマーヴィン・ゲイを彷彿させるスピリチュアルなHalf A ChanceSit Downなど全てが存在感を持った名曲揃いです。
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最終曲のスローなアコースティック・ソウルHappy Being Meは、木漏れ日のような暖かさを持った泣きそうなくらい素晴らしい曲です。この曲ではデンゼル・ワシントンの奥様のポーレッタ・ワシントンが客演して美しいソウル・ボイスを聴かせてくれます。

アンジーの凄いところは、有名なプロデューサーの作るサウンドに頼ることなく、自分の感性にあった人を起用するところ。なので自分の求めているサウンドを作る人なら無名でもどんどん起用していきます。前作で起用したジョナサン・リッチモンドはもちろん今作にも参加。素晴らしい曲をアンジーと共に作曲しています。その他の曲は新人プロデューサーにまかせて自身はエグゼクティヴ・プロデューサーとしてアルバム全体の舵取りをしています。全体が一本芯の通ったサウンドで貫かれているのはそのせいでしょう。シンガーだけでなくプロデューサーとしてもその才能を発揮しています。
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時代に左右される事なく、自分のサウンドを追及する真のレディ・ソウル、アンジー・ストーン。スタックスという新しい環境、そして彼女自身の幸せな精神状態とも相まって、アンジー自身の最高傑作どころか2007年のR&B/ソウル界の名盤を作りあげてしまったと言っても良い。実に深く、そして包容力を持った優しい歌声が感動的です。

是非ともこの新作、まだ聴いていないソウル・ブラザーたちは必ずチェックして欲しい!後世に残る名盤です!
 
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by Blacksmoker | 2007-10-27 02:23 | R&B / SOUL

KELLER WILLIAMS @ Shangri-La 10/18(木) 2007


10月18日、大阪ではアラン・トゥーサンBillboard Live Osakaで来日公演を行っていましたが、私はケラー・ウィリアムスの方を観に行きました(もちろんアラン・トゥーサンも観たかったけど…)。

ケラー・ウィリアムスの実に5年振りとなる来日公演。
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今回初めてこのケラー・ウィリアムスのライヴを観ましたが、「どえらいライヴを観てしまった」というのが感想です。いや、ホント凄かった!

このケラー・ウィリアムスという男。1970年ヴァージニア州生まれ。1993年にデビューして以降、ライヴ活動において着実にその知名度を上げてきた。ストリング・チーズ・インシデントのツアーに抜擢されたりと、結構ジャム・バンドとの繋がりが強く、今年出たアルバム「Dream」では、ボブ・ウィアースティーヴ・キモックといったデッド人脈から、チャーリー・ハンタージョン・スコフィールドベラ・フレックなど曲者プレイヤー、そしてマイケル・フランティストリング・チーズ・インシデントら超豪華ゲストに迎えた内容になっています。

さて、まずケラー・ウィリアムスを紹介するのは言葉で説明するより、とにかく映像を観て頂くのが早い。

まずは
①コチラの映像と、


②コチラの映像で。


観て頂けましたでしょうか?そうなんです。このケラー・ウィリアムスという人は全ての楽器を同時にたった一人で演奏する、いわゆる「一人ブルーグラス一人ジャム・バンド」。そのライヴはもう超絶の一言。
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ステージ上ではギター2本、ベース、ドラムマシン、そして自らのヒューマン・ビートボックス、その他にもカウベルやトライアングル、はてはテルミンまでも飛び出します。さてこれをどうやって演奏してるかというと、映像で観てもらったように、ギターでまず一つのフレーズをディレイ・エフェクターによってループさせる。そのループさせたフレーズに更にギターやベースのフレーズのループを次々に重ねていき、まるでバンドが演奏しているかのようなサウンドを聴かせるのです。

この「ループ演奏」、最近ではライヴで採り入れているミュージシャンも多く、アメリカのメーン州出身のシンガー・ソングライター、ハウイー・デイや、アルゼンチンのファナ・モリーナなどもライヴでこのループ演奏を採り入れたりしていますが、このケラー・ウィリアムスの演奏と比べると格の違いがハッキリと分かるでしょう。
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何たってケラー・ウィリアムスの凄いところは使用する楽器の多さと、自らのヒューマン・ビートボックスの上手さでしょう。たいがいはギター1本だけの音を重ねていくのに対しケラー・ウィリアムスの場合は1曲で5つも6つもの楽器が次々と登場します。そして彼のヒューマン・ビートボックスの音の多様さには感嘆するしかありません。彼のレコードの中で聴けたトランペットの音が、実は彼の口から出される音だったのを今回のライヴで目の当たりにした時はもう正直戦慄が走ったといっても良いでしょう。そしてその衝撃の後にはもう笑いしか出なかったです…。

さて、ケラー・ウィリアムスを語るとき「ループ演奏」の面白さばかりが語られますが、彼がミュージシャンとして相当な実力を持っているのも忘れてはいけません。彼のギターの腕前がこれまた壮絶。ブルーグラスの超絶ピッカーとしての実力を存分に発揮している高速ピッキングがあまりにも凄すぎる。ギター1本だけでも十分何時間も聴かせることが出来るでしょう。アコースティック・ギターの弦をハジくように弾き、まるで打楽器のごとく扱います。
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そして歌の上手さも相当なもので、壮絶な演奏をバックにしながらも、爽やかに、そして大らかに歌いあげるという対比が面白い。歌詞の内容も相当笑えるものもあって、会場が大爆笑してました(「この壮絶な演奏なのに歌の内容はおバカなものが多い」という構図はプライマスにも似ています)。

やはりジャム・バンドとの繋がりからか、ケラー・ウィリアムスの演奏も長尺になればなるほどヒートアップしてきて、一人バンドにもかかわらずどんどんグルーヴィーになってくるのが面白すぎる!ステージにあらかじめ固定されたエレキ・ギターにピアノ音やら人の声やらがサンプリングされてて、ケラーがそのギターを使う度にいろんな音が出てきて最高でした。ヴォーカルもどんどん重ねるし、曲としてぐんぐんビルドアップされていくのが圧巻でしたね。サブライムWhat I Gotのカヴァーも会場中が爆笑に包まれてました。ライヴでは御馴染みのニルヴァーナLithiumのカヴァーでは大合唱でした。
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最新作のナンバーも含め以前のアルバムからの曲も万遍なく披露。個人的にケラー・ウィリアムスの曲の中で最も好きなMoving Sidewalkの長尺バージョンもかなり凄かったです。

30分の休憩を挟んで2時間30分という長丁場のステージを、前半と後半に分けた2部構成というステージで飽きさせずに楽しませてくれましたし、ステージ・パフォーマンスも実にアグレッシヴでロボット・ダンスをやったりと常に笑いが耐えないものでしたが、逆にステージ・パフォーマンスについて非常に真摯な人だという印象を受けました。なによりたった一人で乗り切ったケラー・ウィリアムスのプロフェッショナルぶりにも感動でしたね。

常日頃より「何よりも客に楽しんでもらいたい」と語るケラー・ウィリアムス。本当にイイ奴で、最高に楽しく、しかも超絶な演奏をさらっとやってのけるその天才ぶりにはあらためて脱帽。
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人生で一度は彼のライヴを体験する事を是非ともオススメします。
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by Blacksmoker | 2007-10-25 00:09 | ライブレポート

サウンドトラック [Into The Wild]


今、個人的に最も観てみたい映画「Into The Wild」
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これは実話に基づいた映画。

1992年ある一人の青年がヒッチハイクでアラスカまでやってきて、単身マッキンレー山麓の荒野に徒歩で分け入っていった。それから4ヵ月後、彼の腐乱死体がハンターの一団によって発見される。

その青年の名はクリストファー・マッカンドレス。24歳。ワシントンDC郊外の高級住宅街の裕福な家庭に育った彼は学業もスポーツも優秀だったが、1990年に大学を卒業後、突然姿を消し、その後預金の2万4000ドルを全額慈善団体に寄付し、自分の車も捨てて、このアラスカの荒野にやってくる。途中、財布の中の紙幣も全て焼き捨て、およそ今までの文明生活を捨て、全く新しい人生をスタートさせる目的でこの荒野に入ったとされる。そして彼はこの荒野で乗り捨てられた1台のバスの中で生活を始め、ここで命を落とす事になる。死因は餓死とされる。

f0045842_212594.jpgその後ジョン・クラカワーという新聞記者が、クリストファー・マッカンドレスの記事を「アウトサイド」誌に掲載。その記事がアメリカで大きな話題を呼ぶ事になる。そしてその後、ジョン・クラカワーマッカンドレスの軌跡を追い、彼の生き方とは何だったのかを投げかけたノンフィクション「Into The Wild」(日本語訳は「荒野へ」)はアメリカで大ベストセラーとなりましたが、その「Into The Wild」を何とあのショーン・ペンが映画化。しかもそのショーン・ペン自身が監督え務めいよいよ全米公開されます(日本公開は未定ですね…)。

実はこの原作「Into The Wild」は私も以前に読んでいてマッカンドレスの生き方について非常に考えさせられたが(ただのバカかと思ってましたが、これがまあ自分と共通する所が多いんです)、それが映画化され、しかもショーン・ペンが監督と聞いて非常に驚きましたね。果たしてどんな映画になるのかとても楽しみです。

f0045842_2172689.jpgさて前置きが長くなりましたが今回紹介したいのは、この映画「Into The Wild」のサウンドトラック盤です。そしてこの映画の音楽を手掛けたのが、あのエディ・ヴェダーなのです。そうです、Pearl Jamのフロントマンであるエディ・ヴェダーが、この映画の音楽を担当しているのです。そしてこのアルバムは映画のサウンドトラックではありますが、エディ・ヴェダー初のソロ・アルバムという形式でのリリースなのです。

実はBlacksmokerは(知ってる人も多いと思いますが)、熱烈なPearl Jamフリークでした。
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もちろん初来日公演は全国追っかけしましたし、小出しにされる7インチ・シングルやアナログ盤、そして各メンバーの膨大なソロ活動なども全てチェックしていました。ちなみに3rdアルバム「Vitalogy」発売当時、大阪の某FM局主催の「Pearl Jamカルト・クイズ大会」で優勝した事もあります。いわゆるPearl Jam原理主義のような人間でしたので、彼らの1991年のデビュー・アルバム「Ten」から16年。このエディ・ヴェダーの初ソロ・アルバムには感慨深いものがありますね。

さて自らもサーファーで自然を愛するこのエディ・ヴェダー(オーストラリアでサーフィン中に沖に流されライフガードに助けられた事もありました…)なので、この「Into The Wild」のサウンドトラックを手掛けるのはなかなかハマっています。
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実はエディ・ヴェダーはソロ名義で今までにも、映画Dead Man WalkingLong Roadヌスラット・ファテ・アリ・ハーンとの共演)を提供したり、映画「I Am Sam」にYou Got To Hide Your Love Awayビートルズのカヴァー)を提供したりと映画との繋がりは多い(上記の2作品はいずれもショーン・ペン絡み。ショーン・ペンエディは友人でもあるそうです)。Pearl Jamとしてもティム・バートン監督の映画「Big Fish」に提供したMan Of The Hourも非常に印象的でした。

今回のこのソロ「Into The Wild」ですが、ほぼエディ1人による録音。ギターはもちろんのこと、バンジョーの演奏、そしてドラムも自身で担当しています。そういえばキャメロン・クロウ監督の映画「Singles」でもエディがドラムを叩くシーンがありました。あとエディが奥さんと一緒にやっていたユニット、Hovercraftでもドラムを担当していましたね。懐かしい…。
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全11曲。音楽的にはアコースティックな楽曲が多く、メジャー・コードを使った大らかで明るい楽曲が並びます。サウンドトラックという事もあり、比較的短い曲(1番で終わりみたいな曲)が多いです。

さて注目なのは2曲のカヴァー。

1つ目は1stシングルとなるHard Sun。これはカナダのINDIO(シンガーソングライター、ゴードン・ピーターソン[左写真]のソロ・ユニット)が1989年に発表したアルバム「Big Harvest」の中に収録されています。力強い大陸的なサウンf0045842_341671.jpgドで太陽の脅威を歌うこの曲、かなり原曲に近い出来になっています(ほぼ完コピに近いです)。原曲では非常にキャッチーで印象的なコーラスが続きますが、エディ・ヴェダー版では、そのコーラスを担当するのが元スリーター・キニーコリン・タッカーです(スリーター・キニーは惜しくも昨年解散してしまいましたが…)。この曲で個人的に面白かったのは、この曲の中に出てくる歌詞で「I am the betterman」という言葉があるんですが、実はエディは1995年のPaerl Jamの3rdアルバム「Vitalogy」に収録されているBetterman(ライヴでも御馴染みです)という曲の中では「Can’t find the betterman」って歌っています。あれから10年以上も経ち、彼らもいろいろ変化したのでしょうね。

そしてもう1曲のカヴァーがSociety。この曲はサンフランシスコのシンガーソングライター、ジェリー・ハナンの曲。この弾き語りにはジェリー・ハナン本人もバッキング・ヴォーカルとギターで参加しています。
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そしてラストのGuaranteedのバンジョーを使ったアコースティックでシンプルな弾き語りは心に染み入ります。合計30分という短い時間ですが、繰り返し繰り返し聴いてしまいます。エディ・ヴェダーという人物がアメリカの偉大なヴォーカリストでありソングライターである事を証明するアルバムです。是非チェックしてみて欲しいです。アルバムの中にはアラスカの広大な自然風景の写真がブックレットになっており、そこに歌詞が印刷されたパッケージも凄くイイですね。

映画の方はまだ日本公開が決定してないようですが、いち早く公開して欲しいものです。ちなみに映画にはウィリアム・ハートも出演しているそうで、それも楽しみの一つです。

最後に原作「荒野へ」も非常に面白いので是非読んでみる事をオススメします。
 
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by Blacksmoker | 2007-10-22 01:29 | サウンドトラック

TALIB KWELI @ 鰻谷sunsui 10/16(火) 2007

昨年11月の感動的なライブから1年振りに日本に戻ってきたタリブ・クウェリ

f0045842_0254149.jpg前回の来日から今回の来日の間に3rdアルバム「Eardrum」(右写真)をリリースし、ビルボード・チャート初登場2位を記録。アメリカのラジオでもガンガンにプレイされたListen!のヒットや、Sa-Ra Creative Partnersへの客演などもこなし、まさに自身のキャリアにおいて、今最も勢いに乗っているであろうタリブ・クウェリのライブでしたが、何なんだこの人の少なさは!!

20時スタートなので、30分前に会場入りしたら、フロアには30人いるかいないかという超さびしい人数。前回は土曜の深夜で、今回が平日だったという事もあるだろうが、前回のTriangleは大盛況だっただけに、このギャップに驚きました。まあ最終的には50人くらいにはなっていたと思うけど…しかし、この少なさは異常!

個人的にはヒップホップ界で最も好きなMCタリブ・クウェリ。アンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドの両方から最大のリスペクトを受けている数少ないMCだ。しかもこの両者からのリスペクトを受け、なおかつセールスも伴っているMCなんて、今やコモンとこのタリブくらいのものだろう。
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そして、もちろん客入りによって手を抜くなんて事は一切せず、全力で約1時間半に渡りサイドMCもなしでガッチリとライブを披露してくれました。

今回は立ち上げたばかりの自身のレーベル「Black Smith」のロゴ・マーク(下画像:ちなみにこのロゴを逆さまにしてもまったく同じ文字になる!)をステージ上にいくつも掲げ、更にはステージ上に40インチくらいのTVモニターを4台並べ、曲ごとに映像を変えていくという視覚的にも飽きさせないものになっていました。披露している曲が収録されているアルバム・ジャケットがモニターに大きく映し出されていくので、どの曲をやっているのか非常に分かりやすい。
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今回は新作「Eardrum」を含む3枚のアルバム以f0045842_0361282.jpg外にも、前回のライブでも披露していたDangerdoomとの共演曲Old School Rules、そしてもちろん、「Eardrum」の前にゲリラ的にフリー・ダウンロードで公開されたMadlibとのコラボレーション・アルバム「Liberation」(左写真)からもバッチリ披露してくれました。ちなみにこのアルバム「Liberation」めちゃくちゃカッコイイので是非ダウンロードして聴いてみてください。Madlibタリブの相性は抜群です。

さしてオールドスクール回帰の姿勢を前面に打ち出した(Run D.M.C.のライブ映像などが大きくモニターに映し出されていました)We Got The Beatなどではコアなヘッズも見事にロックさせていましたね。最新ヒットListen!では盛り上がりも最高潮。もちろん自身の最大のヒット曲Get Byでは大合唱でした。
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さてライブの最中にDJが音を止めてタリブがアカペラでライムをフロウするシーンが何度かあったのですが、タリブのアカペラのフロウ自体がリズムを持っていて、アカペラでも十分にグルーヴを生み出しているのを観てホントに鳥肌が立ちました。あのラキムも「喋っている言葉自体がライムになっている」と言われるが、やはり本物のリリシストとはここまで凄いのかと感服してしましました。ヒップホップMCとしての真髄を体験しましたね。終盤少し中ダルミな所もありましたが、キッチリ1時間半。ガッチリとステージを盛り上げた後、タリブはステージを去っていきました。
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ただ惜しむべくはsunsuiのPA。低音を響かせすぎで肝心のタリブの声がめちゃくちゃ聴こえづらい!しかもその低音がデカすぎるので、音が渾然一体となってエライ事になってましたよ…。正直前回のTriangleの時の方が音も良く、ライブの内容もタイトだった気がしますね。まあ今回は弱冠余裕のステージングだったというべきでしょうかね?
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ただ、だからと言ってタリブ・クウェリが最高のリリシストであり、最高のMCである事実は全く疑いようがありませんし、こんな少ない人数の中で観れた事は、昔50人くらいの客でブラック・スター & コモンを観た時のように、必ず将来自慢出来るにちがいない貴重なライブだったと思います。

そしてビルボード初登場2位を記録した3rdアルバム「Eardrum」もかなり力作ですので、まだチェックしてないヘッズはすぐレコード屋へ走るべし!
 
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by Blacksmoker | 2007-10-19 00:13 | ライブレポート

MARIO BIONDI [Handful Of Soul]


現代のジャズ・シーンを引っ張っているのは間違いなくイタリアだ。

ニコラ・コンテをはじめとして、ジャンニ・バッソディノ・ビアナ擁するidea 6など現代のジャズ・シーンにおいてイタリア人ジャズ・ミュージシャンの数々の素晴らしい演奏が収められた作品が、ジャズ・シーンを席巻している状況に異論がある人はいないでしょう。

その現代のジャズ・シーンにおいて「クラブ・ジャズ」という括りで語られるレーベル「Schema」(スケーマ)。2006年はこのレーベルの創始者であるルチアーノ・カントーネパウロ・フェドレギーニマルコ・ビアンシと組んだユニットThe Invisible Sessionsで素晴らしい1stアルバムをリリースしました。たしかそのアルバムがリリースされた時にルチアーノ・カントーネが雑誌のインタビューでこんな事を言っていた。

次にSchemaからリリースするのはマリオ・ビオンディという男性シンガーのアルバムなんだ。

Schemaが男性シンガーのアルバムを出すなんて珍f0045842_145294.jpgしいなと思いましたが、それから約一年。その男マリオ・ビオンディの1stソロ・アルバムとなる「Handful Of Soul」がリリースされたわけですが、これがSchema史上最大のヒットを記録。イタリア国内だけでも2万枚の売上げを記録しているそうです。このジャケットに写るスキンヘッドのオッサンがそのマリオ・ビオンディ。あまりSchemaらしくないジャケットが異色ですが、これが文句なしにカッコ良いジャズ・アルバム!これは是非とも全ての人にオススメしたいジャズ・アルバムです。

このマリオ・ビオンディは、1970年生まれの37歳。イタリアのシチリア島出身。身長は何と190cmもあるそうですね。Was A Beeというユニットのボーカリストでもあったそうです。
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この人の特徴は何と言ってもその魅惑的な声です。まるで60歳くらいの大物ソウル・シンガーのようなディープさ、そして野太いワイルドな歌声がもう最高にカッコイイのです!少しハスキーでド渋なロウ・ヴォイスが堪りません。

これだけでも十分に鑑賞に余りある素晴らしさなのですが、このアルバムにはもう一つのジャズ・ファンには堪らない重要なトピックがあるのです。それはマリオ・ビオンディのバックの演奏を務めるのが、イタリアの若手実力派5人組ジャズ・クインテット、「ハイ・ファイヴ・クインテット」(下写真)なのです!
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もうこのハイ・ファイヴ・クインテットという名前だけでも触手の動くジャズ・ファンもいるでしょう。天才トランペッターのファブリツィオ・ボッソとテナー・サックス奏者ダニエル・スカナピエコの2枚看板をフロントに擁するイタリア屈指のハードバップ・ジャズ・バンド。特にファブリツィオ・ボッソに関しては、その活躍はもはやイタリア・ジャズ・シーンを越えて、世界的トランペッターの地位を確立しています。「イタリアのジャズがアツい!」と言われる理由の半分くらいがこのファブリツィオ(下写真)の活躍によるものと言っても過言ではないですね。ファブリツィオ自身もブルーノートからアルバムをリリースしている超実力派です。
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ハイ・ファイヴ・クインテット自体も今までに3枚のアルバムをリリースしていて、特にオススメしたいのが2004年の3rf0045842_234749.jpgd「Jazz Desire」(右写真:このジャケットはオリジナル盤)。これは個人的に今でもしょっちゅう聴いている素晴らしいハードバップ・ジャズ・アルバムで、ここでのファブリツィオのトランペットとスカナピエコのテナー・サックスの掛け合いは鳥肌が立つくらいカッコイイですね。ちなみにQUEENAnother One Bites The Dustの本気なのか遊びなのか分からない凄いカヴァーも収録されているので(おそらく遊びでしょう!)、是非ともチェックして欲しいアルバムです。

さて、このマリオ・ビオンディのアルバム「Handful Of Soul」は、そのハイ・ファイヴ・クインテットとのコラボレーション・アルバムになります。ハイ・ファイヴ・クインテットは、バック・バンドという一歩下がった位置付けではなく、バリバリ全面にフィーチャーされており、もはやハイ・ファイヴ・クインテットのアルバムと言っても良いくらいです。

曲構成もしっかりしており、マリオ・ビオンディの歌が終わると同時に各パートのソロがキッチリと演奏され、そのソロが終わるとまた切り込むようにマリオ・ビオンディの歌声が入ってくる曲の構成はめちゃくちゃ考えられていますね。
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そしてこのアルバムの中で是非オススメしたいのは、3曲目のThis Is What You Areです。これはマリオ・ビオンディの元所属ユニット「Was A Bee」での持ち歌だそうですが、この曲をハイ・ファイヴ・クインテット流に調理しなおした、おそらくクラブ・ジャズ史上に於いて最もポップでスピリチュアルな曲でしょう。ダブル・ベースによるイントロからラテン・パーカッション、そしてピアノという形で入ってくるオープニングだけでももう失禁モノ。そしてフロント2人によるハードバップがもう最高の一言。終盤に出てくるファブリツィオによる滑らかなフロウのトランペット・ソロの素晴らしさは感動的です。もはやこの曲だけでも十分に買う価値のあるアルバムです。

そして、その他の曲もフロント2人の掛け合いが凄いです。と言っても、マイルス・デイヴィスのバンドのような楽器の殺伐としたバトルではなく、エンターテインメンf0045842_2133298.jpgト性をそなえた余裕のある大人な「技の見せ合い」がたまらないですね。特にオーソドックス的なハードバップを聴かせるA Handful Of SoulI Can’t Keep From Cryin’ Sometimesアル・クーパーのカヴァー)での、後半のトランペットとテナー・サックスの掛け合いなどは絶品です。今回はファブリツィオのトランペット以上に耳を惹くのがダニエル・スカナピエコ(左写真)のテナー・サックスです。湧き上がる泉ような流れ出るテナー・サックスのフロウが素晴らしいですね。ついつい人気者のファブリツィオ・ボッソの影になりがちなダニエル・スカナピエツコの実力も十二分に発揮されていますね。

ラウンジ・ジャズからラテン・ジャズまでも余裕で歌いこなすマリオ・ビオンディのド渋なヴォーカルは最初から最後までインパクト大。そして、その声とハイ・ファイヴ・クインテットのハードバップ・サウンドとの融合が、このアルバムを名盤と呼ぶに相応しいものにしています。最終曲のビル・ウィザースのムーディーなカヴァーI’m Her Daddyもハマリすぎです。
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個人的には是非次回の「007」の映画の主題歌を歌って欲しい男であります。
 
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by Blacksmoker | 2007-10-15 01:01 | JAZZ

XASTHUR [Defective Epitaph]


聴いていると死んでしまいたくなるような音楽だ。この音楽には何の希望も未来もない。

f0045842_23385591.jpgブラック・メタルの世界において、最近特に注目を集めているのがアメリカ。ブラック・メタルと言えばノルウェーを発祥とするものだが、ここ最近は「ブラック・メタルの第三国」であるアメリカから強力なバンドが多く登場しています。そのアメリカのブラック・メタル・シーンの中で最高峰とも言えるのがこのXASTHURザスター)です。そのXASTHURの6枚目となる最新作「Defective Epitaph」が奇跡的に日本盤発売ということで、是非ともこの恐ろしいアルバムを紹介しましょう。

MAYHEMBURZUMの精神を受け継ぐ現在最も過激で、最も鬱なこのXASTHUR。実はバンドではなくカリフォルニア出身のMaleficマレフィック)という男による一人ブラック・メタル・プロジェクトなのです。
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カリフォルニアという圧倒的に開放的な環境にありながら、人との関わりをほとんど拒絶し、自宅にてもくもくと陰鬱なブラック・メタルを作り続けるこのMalefic。一人ブラック・メタルなのでもちろんライヴ活動もしたことがありません。「人々の絶望・憎しみ・怒りといった全てのネガティヴな感情を引き出すためにXASTHURをやっている」と平然と言ってのけるMaleficよる、あまりにも救いようの無い絶望感に包まれたこの音楽は、全世界の自殺志願者達の気分をさらにドン底まで突き落としてくれるに違いない。

このXASTHURの名をブラック・メタル界以外の外界へ知らしめたのは、やf0045842_0123661.jpgはりSUNN O)))の現在のところ最新作であり最高傑作でもあるアルバム「Black One」(左写真)への参加でしょう。ブラック・メタルへのオマージュでもあるこの作品でMaleficはヴォーカリストとして参加。その絶望的な断末魔であのアルバムを更に恐ろしい作品にする事に手を貸している。ちなみにSUNN O)))のライヴ・ツアーにも参加していました(その時の強烈な映像はコチラです)。

このXASTHURしかり、XASTHURと並びアメリカのプリミティヴ系ブラック・メタルの2大巨頭とも言われるLEVIATHANしかり、北欧のブラック・メタル勢とこのアメリカ産ブラック・メタルの決定的な違いは威圧的でデカダンスな宗教色があまり濃くない事。まあ、最近は北欧のブラック・メタル・バンド達も、あくまでキリスト教的範疇の中にあるサタニズム主義を捨て、キリスト教以前の北欧神話の世界を崇拝するようになっていますが…。XASTHURの表現するのは退廃・荒涼・殺伐的な精神的に絶望的な世界。その点において、その世界観はKHANATE(昨年解散してしましましたが…)に近い。
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前作と今作とリリース元がISISアーロン・ターナーが主宰するレーベル「HYDRA HEAD」(ハイドラ・ヘッド)というのもなかなか興味深い。HYDRA HEADのアーティスト達(PELICANや、ISIS)の表現する世界と、このXASTHURが表現する世界には共通点を見い出せます。

しかしHYDRA HEADからのリリースではありますが、音楽性に関しては正真正銘の純度120%混じりっ気なしの真正ブラック・メタル。先程「宗教色が濃くない」と言いましたが、アルバム後半はそれを嘲笑うかのように荘厳なキーボードをフィーチャーした禍々しいスロー・テンポなナンバーの応酬。今回のアルバムは今までより一層この荘厳なキーボードが使われていますね。残響音まみれのギター・リフのカオス・ノイズと相まって、アンビエント感すら漂わせています。今回のレコーディングにはチェロなども使われているようですがハッキリ言ってどこで使われているのか分かりません…。
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そしてブラック・メタルの最大の特徴と言ってもいい「くぐもったサウンド」はここでも健在。禍々しさを表現するためにあえて質の低い録音機材を使って生々しさを出すバンドが多いブラック・メタル界(最近は4トラックでレコーディングした生々しいRAWなサウンドを創るブラック・メタル・バンドまで出てきている始末ですが・・・)。このXASTHURも8トラックによる録音だそうで、その独特なモコモコした生々しすぎるカオスなサウンドが強烈です。ドラムの音なんてモノラル音源かと思うくらいのリアルな音です。シンバルの音がヤバいです。個人的にはコリン・リチャードソンにプロデュースさせれば整合感のある最高にカッコ良いサウンドになると思うんですが、まあそんな事は誰も望んでいないでしょうね…。

Maleficによる断末魔のような呻き声によるヴォーカルも絶望感たっぷり。聴いてると段々鬱になってきます。最終曲まで聴き終える頃には冥府の扉が開いて引き込まれそうになりますね。まさに病的な世界です。
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自殺志願者は間違いなく聴かないほうが良い危険極まりないサウンドです。これこそが本物のエクストリーム・ミュージック

是非とも絶望の淵を経験して欲しい。
 
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by Blacksmoker | 2007-10-06 00:18 | 極北

MAVIS STAPLES [We’ll Never Turn Back]


偉大なるソウル・コーラス・グループ「ステイプル・シンガーズ」。
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50年代から活動し、ゴスペルからプロテスト・ソングをはじめとした多くのメッセージ・ソングを歌ってきたそのステイプル・シンガーズですが、ソウル・ファンにはやはり「Respect Yourself」といった作品などが、ロック・ファンにはやはり「Last Waltz」でのザ・バンドとの共演など、その活動は音楽史に残る偉大なグループです。

そしてそのステイプル・シンガーズのリード・ヴォーカリストとして活躍したメイヴィス・ステイプルズ
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ソロになってからはアレサ・フランクリンとの共演や、80年代にはプリンスとの邂逅などが有名ですが、今年で68歳になるこのメイヴィス・ステイプルズによる3年振りとなるソロ・アルバム「We’ll Never Turn Back」。この作品は決して無視することの出来ない、まさしく2007年という時代が生んだ素晴らしい傑作です。商業性にまみれた歌が氾濫する世の中。そんな歌とは100万光年離れた位置にあるメイヴィスの崇高で深いメッセージ・ソングに心が洗われる事でしょう。

f0045842_105684.jpg今回この「We'll Never Turn Back」をリリースするレーベルは何とあの「Anti」(アンタイ)。パンク・レーベル「Epitaph」傘下にあるこのAntiには、トム・ウェイツをはじめとして、マイケル・フランティダニエル・ラノワニーコ・ケースなど通好みなアーティストが顔を並べ、その他にも2002年にはソロモン・バークの復活アルバムやベティ・ラヴェット、以前にも紹介したランブリン・ジャック・エリオット、そしてレゲエのブジュ・バントンまでもリリースした事のある非常に信頼の置けるレーベルです。

そのAntiからのリリースというのも面白い話題ですが、今回このアルバムのもう一つの大きな話題としては、このアルバムを全面制作しているのが、何とあのライ・クーダー(下写真)なのです。
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今年は傑作「My Name Is Buddy」をリリースし、アメリカの現状を皮肉ってみせたライ・クーダー。初期作品のリマスター盤も一気にリリースされ再評価が高まるライですが、今回このメイヴィス・ステイプルズと組んだアルバムで取り上げるのは50年代後半から60年代半ばのいわゆる公民権運動の全盛期に民衆の間で歌われたプロテスト・ソングの数々。公民権運動をリアル・タイムで経験してきたまさしく歴史の証人でもあるメイヴィス・ステイプルズが、今回再び2007年という時代にこれらの曲を歌う理由はやはりアメリカ国内の政治状況の悪化に大きく関連しているのは容易に想像出来る。あの時代で歌われた曲の内容は、今の時代にも何の違和感もないくらい当て嵌まってしまう。そんな状況下においてメイヴィスはあの頃の精神やメッセージを現代に伝えるという責任を負ってこのアルバムを制作したわけです。アルバム・タイトルでもある「We’ll Never Turn Back」という言葉が語るように「我々は決して引き返さない」という強いメッセージが込められたアルバムなのです。
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シカゴのブルーズマン、J.B.ルノアーヴィム・ヴェンダースの映画「Soul Of A Man」でも取り上げられていました)が60年代に歌ったDown In Mississippi(後半にはメイヴィスが実体験を盛り込んだ歌詞にアレンジし直しています。この曲はライ・クーダーが1986年に手掛けたサントラ「Crossraods」にも収録されています。この時はテリー・エヴァンスが歌っていました)、公民権運動の象徴というべきEyes On The PrizeWe’ll Never Turn BackIn The Mississippiなどトラディショナル曲でほぼ全編占められています。オリジナル曲はライメイヴィスによる1曲のみ。そしてメイヴィスの歌を際立たせるようなライ・クーダー自身による控えめながらも味のある素晴らしい演奏も特筆ものです。ドラムにはライの長年の盟友でもあるジム・ケルトナー、そしてベーシストにはフィオナ・アップルの復活の立役者マイク・エリゾンド、そしてライの息子ホアキン・クーダーがパーカッションを担当しています。この編成はライ・クーダー「My Name Is Buddy」の録音メンバーと全く同じ編成なので、この「My Name Is Buddy」のレコーディングと同じ時期に作られたと思われます。
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My Name Is Buddy」の時は幾分リラックスした演奏でしたが、今回はメイヴィス・ステイプルズが相手だけあって演奏もシリアスでどっしりとしています。力強い演奏がメイヴィスの歌を更に強調しています。そして多くの曲でコーラスを担当する結成30年以上の南アフリカのコーラス・グループ「レディスミス・ブラック・マンバーゾ」と、ジョージア州アルバニーのコーラス・グループ「SNCCフリーダム・シンガーズ」の存在もかなり重要な役割を果たしており、メイヴィスの歌う楽曲に華を添えています。
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ここには若かりし頃のステイプル・シンガーズのリード・ヴォーカリストとしての歌声はありません。しかし、ここにあるのは歴史の変遷を体験しながら歌い続けてきた一人のヴォーカリストとしての深い深い年輪の刻まれたようなソウルフルな歌声です。体の芯から唸るように出される凄みのある歌声に必ずや圧倒されるでしょう。

これが本物の「ソウル」です。
 
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by Blacksmoker | 2007-10-03 00:41 | R&B / SOUL

SUPER FURRY ANIMALS [Hey Venus!]


2005年のアルバム「Love Kraft」リリース後に行われたスーパー・ファーリー・アニマルズの来日公演はめちゃくちゃ面白かった。
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開演前にある映像が流されたわけですが、そこには、蛍光塗料を塗った宇宙服のような衣装に身を包んで車に乗り込んだスーパー・ファーリー・アニマルズのメンバーが映し出されていて、その車が段々会場に近付いてくるのです。そしてその車が会場前に到着し、階段を駆け上がるメンバーの姿。そしてその映像が終わると、実際のステージに映像と同じ格好をしたメンバーが登場(ロッキーのテーマと共に!)。もうこのオープニングだけでも最高でしたが、ライヴも映像を使ったアイディア満載の非常にカラフルでサイケデリックな素晴らしいショーでした。

そもそもデビューしたての頃はプライマル・スクリームと並んでライヴが超ヘタクソなバンドとして有名だったこのスーパー・ファーリー・アニマルズ。彼らがこんな素晴らしいライヴ・バンドに成長するなんてあの時だれが想像出来たでしょう。
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90年代中盤のブリット・ポップ全盛期において数々のハイプ達がブレイクしていった中で、評価は高いわりにブレイクせず、地味な存在でい続けたウェールズのカーディフ出身の彼ら。だが、どうだろう?あのブリット・ポップ・ブームの中で今でもまともに活動しているバンドがこのスーパー・ファーリー・アニマルズ以外にいるか?

そして音楽性に関しては一大傑作となった2001年のアルバム「Rings Around The World」以降、よりポップに、よりサイケデリックになっていくその斬新なサウンドはアルバムごとに更に高みを増していきます。
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今、イギリスのバンドで毎回こんなアルバムが楽しみなバンドはそうはいないでしょう。スーパー・ファーリー・アニマルズはいつのまにかマニアックなバンドからエクスペリメンタルな人気ポップ・バンドという位置を確立したのです。

f0045842_0395466.jpgそして前作「Love Kraft」より2年。スーパー・ファーリー・アニマルズの新作「Hey Venus!」の登場です。前作はマリオ・カルダートJr.がプロデュースし、1曲ごとにテクノっぽい曲からラテン・テイストな曲、そしてソフト・ロックな曲からオーケストラを使った壮大な曲など目まぐるしく変わる面白すぎるアルバムでしたが、今作も更にポップに、サウンドは更に凝った作りで、よりアシッドなサイケデリック感を全面に出しています。ビートルズの「Sgt.Peppers Lonely Hearts Club Band」の世界に、ビーチ・ボーイズばりのコーラスが融合し更にエレクトロニクス音で装飾した一大サイケデリック絵巻。グリフ・リースの抜けた脱力ヴォーカルの歌うメロディが心地良すぎます。

あまり大作になり過ぎず、全曲3分ほどにまとめた作りも逆に新鮮。40分にも満たないコンパクトな作りであっという間に全曲聴き通してしまうので、またリピートして最初から聴きまくってしまう事になるのは確実なドラッギーなポップ・アルバムです。ジャケットのアートワークを担当したのはサイケデリック・アートの第一人者、田名綱敬一スーパーカーのアルバムも手掛けていたこの田名綱敬一のアートワークもサウンドとマッチしていてなかなか良いですね。
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どうやらこのバンドに「停滞」という言葉は存在しないらしい。漲るアイディアを全て昇華し、独自のサウンドを確立するこのスーパー・ファーリー・アニマルズ。ほんと、ここまで素晴らしいバンドになるとは昔は誰もが想像しなかったでしょう。

最新作が最高傑作。まさに理想的なバンドです。11月に行われる来日公演もかなり楽しみです!このバンドは被り物が大好きなので今回はどんな衣装で登場してくれるんでしょうかね?ちなみに彼らはこんな格好↓でライヴもやってた事があります。
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by Blacksmoker | 2007-10-01 00:21 | ROCK