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CORNEL WEST & BMWMB [Never Forget : A Journey Of Revelations]


アメリカにおいて黒人であるという事はどんな意味を持つのか?

f0045842_13481080.jpg僕は日本人であり、日本という国に住んでいる。なので日本人ということに対してマイノリティ意識など持ったことがない。しかし多くのアメリカに住む黒人たち(もちろんアメリカ以外でも)は自国においてでさえいまだにマイノリティであり、差別の対象となったり、その人が受けるべき人生の権利でさえまともに享受できていない現状が存在しています。この作品「Never Forget: A Journey Of Revelations」はアフリカン・アメリカンというマイノリティの経験してきた不条理な歴史や文化を改めて啓蒙すると共に、現代社会へ問題提起する近年稀にみる意義のある作品と同時に、凄まじいパワーを持った作品でもあります。

さてこの作品を提唱するのがコーネル・ウェスト。彼はアメリカで最も有名な黒人の1人である。
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1953年生まれのエチオピア系アフロ・アメリカンであるコーネル・ウェスト。現在はプリンストン大学にてアフリカン・アメリカンの歴史研究を行う教授である。彼は1974年にハーバード大学を卒業し、プリンストン大学にて修士と博士を取得。その後数々の著作を発表し、アフリカン・アメリカンの歴史研究の権威として知られる人物です。当時教鞭をとっていたハーバード大学では2200人いる教授の中で14人しかいない「University Proffessor」という最も権威のある地位にいたそうです。2002年にはハーバード大学の学長との内紛で対立し、あっさりとハーバードを辞めてプリンストン大学に移った事件は有名です。
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そんなコーネル・ウェスト教授、相当な論客としても有名でスポークンワード活動も積極的に行っており、2001年にはポエットリー・リーディング・アルバム「Sketch Of My Culture」もリリースしています。

さて今作はコーネル・ウェストにとって3枚目となる作品で、これが教授に賛同するヒップホップ/R & B系のアーティストが大挙して参加した超豪華な内容!!コーネル・ウェストという人物を知らなくとも、このメンツを見ればその凄さが分かります。何たってタリブ・クウェリアンドレ3000ジル・スコットKRSワンブラック・ソートラー・ディガプリンスライムフェストジェラルド・リヴァートなどなど。この名前を見てピンとくる人は間違いなく買った方が良い。この豪華なゲスト陣と共に、全曲に渡ってウェスト教授がスポクン・ワードを入れる構成になっています。もちろんこういう内容の為、歌詞が非常に重要です。膨大な量のリリックなので是非歌詞・対訳の付いた日本盤をオススメしたい。
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このアルバムの一連のトラックを担当するのは、コーネル・ウェストを中心とするプロダクション・チーム「BMWMB」(このBMWMBとはBlack Man Who Means Businessという意味だそうです)。この中には教授の兄であるクリフ・ウェストもいるそうです。

そして今回のこのアルバムのリリース・レーベルが「ヒドゥン・ビーチ」というのもポイントです。98年に元モータウンの取f0045842_13594188.gif締役スティーヴ・マッキーヴァーによって立ち上げられたサンタモニカのレーベルで、ブレンダ・ラッセルカインドレド・ザ・ファミリー・ソウルなどかなり良質なR&Bアーティストの作品をリリースしています。ジャズやソウルを基盤にしながらもヒップホップの感触を持ったサウンドが特徴でもあるこのレーベル。ジャズ解釈によるヒップホップの名曲カヴァー集「Unwrapped」といった人気シリーズもリリースしているなかなか面白いレーベルです。長年ジル・スコットが在籍することでも有名ですね。

さてこのアルバムのオープニングを飾るのは先日の来日公演も記憶に新しいタリブ・クウェリ(右写真)によるBushonomics。レーガン大統領時代の経済政策「レーガノミクス」という言葉を、ブッシュ時代の「ブッシュオノミクス」に言い換えたf0045842_1415796.jpgこの曲ではタリブが先陣を切って経済政策を痛烈に批判。ブッシュの政策がいかに欺瞞であるかを早口のフロウで攻撃。フックに登場する「It’s like jungle sometimes」というリリックはグランドマスター・フラッシュ&フューリアス・ファイヴのクラシックThe Messageからの一節です!最後に教授が登場し「俺たちの手でヒップホップをルーツに戻すんだ」という語りで締められる重厚なる1曲です。

次はAmerica(400 Years)。この400 Yearsという言葉から察しがつくように、これは奴隷制度についての曲。要するに「あれから400年経っても俺たちの状況は何も変わっちゃいない」という怒りの告発です(解説では「ボブ・マーリィが取り上げた」と書いてありますが、これはピーター・トッシュの作った曲だという事は強調しておきます!)。この曲に登場するのはThe Rootsブラック・ソート、そして久々の登場の女傑ラー・ディガ(下写真)、そしてアイリーズの3人のMC。彼らの怒りのライムが抑圧された黒人達の心情を代弁します。
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個人的にラー・ディガはかなり好きなMCで、容姿も完璧、実力も十分なのに成功できないでいるのが非常にもどかしいですね(最近はバスタ・ライムスフリップモード・スクワッドも離脱してしまいましたが、バスタ・ライムス+Jディラのミックステープ・アルバム「Dillagence」では2曲も客演)。しかしドスの利いた迫力のフロウは健在。この登場は嬉しい限りです(ちなみにこの曲の日本語訳ではラー・ディガのリリックが男言葉で訳されているというかなりアホな間違いをしていますが…)。フックを歌うのはラッキー・ウィザースプーン。「Get up, Get up, Get up」というフックはボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズGet Up Stand Upからの引用ですね(この曲もピーター・トッシュ作曲ですよ!)。

f0045842_1483268.jpgDear Mr. Manでは何とプリンス(左写真)が登場。リリースされたばかりのアルバム「Plant Earth」では「お前を愛してるけど、俺のギターほどじゃないぜ!」なんてブッとんだ事をホザいていた殿下ですが、この曲ではかなりの政治的シリアス・モード。シーラ・Eメイシオ・パーカーといったお馴染みのメンバーも参加したミディアム・ファンクな曲です。内容はプリンスが地球レベルでの異変を訴えるプリンスマーヴィン・ゲイWhat’s Going On的ナンバー。プリンスというとどうしても「官能的世界の追求者」というイメージですが、かなりストレートでプロテストな内容で逆に新鮮です。

このアルバムならではのナンバーで非常に面白いのがThe N-Wordという曲。曲というより討論の実況。TV番組司会者のターヴィス・スマイリーをホストに、こちらも大学教授でありラジオ番組司会者f0045842_1412426.jpgでもある論客マイケル・エリック・ダイソン(右写真:かなり賢そうな顔してます)を迎えて、コーネル・ウェストマイケル・エリック・ダイソンが「N-Word」つまり“Nigga”という言葉の使い方の是非について議論を交わす12分にも及ぶナンバー。もう2人でずっと喋り続けています。どういう結論に着地するかは是非聴いてみて欲しいですが、この差別用語であるNiggaという言葉の持つ歴史的背景などがコーネル・ウェスト教授によって語られるところなどはかなり参考になります。この言葉(メソッド・マン&レッドマンの言うところの「Nigganess」)についての2人の知識人による考察がとても興味深いです。

その後も強力なナンバーの目白押し。自らも「エデュテインメント」(エデュケイションとエンターテインメントを合わせた造語)を提唱する御大KRSワン、そして過激な社会派ラップ・グループ、Df0045842_14145698.jpgead PrezからM-1(左写真)を迎えてブッシュ大統領に宛てたメッセージという形で展開する曲Mr.Presidentも見逃せません。特にコーネル・ウェスト教授からマイクを渡されるM-1(ジャマイカ系移民の2世だそうです)のラップのカッコ良さは個人的にこのアルバムの最大の聴き所。超ファストに弾丸のようにライムを詰め込んだM-1のハードライマーとしての素晴らしさを体感出来るでしょう。一方のKRSワンはいつも通りのオールドスクール・スタイルで、唾飛ばしまくる無骨なフローがアツイです(Rage Against The Machineザック・デ・ラ・ロッチャがいかにKRSワンのフローに影響を受けているかが良く分かります)。

その他にもキラー・マイクドゥーイ・ロックを迎えたファンク・チューンKeep’ In It P.I.アンドレ3000とのChronomentrophobia(これはOutkast「Idlewild」に収録されていた曲に教授のパートを加えたもの)など前半はラップ・アクトが続きますが、後半はシンガーもので統一。もちろんヒドゥン・ビーチからのリリースなら看板シンガーであるジル・スコット(下写真)ははずせません。
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軽快な曲調ながら「今どういう状況か分かってる?」というジル・スコットのシリアスなメッセージがズシリと響くWhat Time It Isも聴き応え十分です。その他にもダリル・ムーアがじっくり歌い上げるSoul Sistaや、デヴィット・ホリスターチャッキー・ブッカーという2人のアツい男による強力な歌唱が凄いEverything Gone Be Alright、そして故ジェラルド・リヴァートの魂の篭ったソウルフルな歌声をバックにウェイニー・ウェインがライムするプリンスばりのミディアム・チューンMan Gonna Getchaなどじっくり聴かせます。

そして最終曲What A Matter Of。この曲では何とあのTower Of Powerのヴォーカリスト、レニー・ウィリアムス(右写真)を迎えて、コーネル・ウェストが両親、そして自分の仲間達に感謝を捧げるナンバー。流麗なピアノをバックに歌われるレニー・ウィリアムスの素晴f0045842_14323325.jpgらしい高音の歌声のフックと共に、コーネル・ウェストの渋い声が、今は亡き父親への感謝を語るパートはマジに泣きそうなくらい感動的(個人的にこういうヤツには涙腺が弱いです・・・)。こういう曲を最後に配置して感動的に締めくくるなんて構成は普通ならかなりベタなんですが、曲が素晴らしいため全然OK。この感動的なラストは涙なしには聴けませんよ。

そんなわけで最初から最後まで聴き所が満載のこの作品。是非ともこの素晴らしいミュージシャンが奏でる歌の中に少しでもこの作品に込められたメッセージを受け止めて頂きたい。そしてこんな意義ある素晴らしい作品を作り上げたコーネル・ウェストに最大限の賛辞を贈りたい。アルバム・コンセプトから歌詞の内容、そしてアルバム・ジャケット(この写真は1868年にオランダの艦船ダフネ号上で撮影された奴隷たちの写真だそうだ)など全てにおいて教授のアツい熱意が込められています。
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この作品が1人でも多くの人に聴かれる事を望みます。
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by Blacksmoker | 2007-11-30 00:16 | HIP HOP

ELECTRIC WIZARD @ 十三Fandango 11/22(木) 2007

11月20日に施行された新入国審査制度。

日本に入国する外国人に指紋採取と顔写真の撮影に応じることを義務付ける制度ですが、果たしてちゃんと機能しているだろうか?

初日にこんな危険なヤツラを堂々と通してしまうなんて!!
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エレクトリック・ウィザード、奇跡の初来日!

このイギリスのドーセット出身のドゥーム・メタルの帝王。もはや誰もこんな日が来るとは思ってもみなかっただろう。これは2003年に実現したアメリカのストーナー/スラッジの王、Bongzilla(上物のマリファナが収穫される11月からしかレコーディングしないアホぶり!)の来日公演以来の快挙でしょう!(私もこの時観ましたが、これも壮絶極まりないライブでした…。)

何たってこのエレクトリック・ウィザード、その言動がハンパじゃない。このバンドのリーダーであるジャスティン・オボーン(Vo.&Gu.)は「マリファナを吸うのはこのバンドの本質だ!」と堂々と言ってのける。そしてアメリカのストーナー/ドゥーム・メタル・バンド達に対しては「どいつもこいつも甘い!ヤツラはステージではキメてないだろ?俺達は1日24時間、1年365日キメっぱなしだ!」と、もはや凄いんだか凄くないんだか分からない自信に満ち溢れた発言をしています。特に海外ツアーには「上質のブツを準備しなければ行かない」と宣言してました。その後そのジャスティンは吸い過ぎてオーヴァードーズで腎機能停止に陥って死に掛けたり、ドラマーが警察の車に火を付けて逮捕されたり、ベースが窃盗罪で逮捕されたりと、もうムチャクチャ。なので到底こんなヤツラが日本に来るなんて考えられなかったわけです。

まあそれがただのラリったバンドの戯言ならまだしも、彼らはストーナー/ドゥーム・ロック界にとんでもない名盤を数々残している恐ろしいバンドなのです。彼らの1997f0045842_47249.jpg年に出た2ndアルバム「Come My Fanatics…」(右写真)は、紫色の煙が立ち込めるストーナー/ドゥーム・ロックの教典としてSleep「Jerusalem」Kyuss「Welcome To Sky Valley」などの神盤と共に崇められるアルバムです。延々と続くノイズにまみれ歪みまくった轟音ギターのスラッジなリフが執拗に執拗に繰り返されるその壮絶なサウンドはもはや聴いているだけで異次元の彼方へトリップしてしまうほど強力な魔力を持っています。ライブも壮絶らしく、「世界一ヘヴィなバンド」と称されているのは有名な話です。

そしてそんな彼らが遂にやって来ました。今回の来日は新作「Witchcult Today」(日本語タイトルは「今日の魔女信仰」!)を2日前にリリースしたばかりという素晴らしいタイミング!しかも共演には日本が世界に誇るドゥーム・バンドChurch Of Miseryという素晴らしいカップリングです。

まずはChurch Of Misery。音源は持っていますが観るのは初めて。彼らは日本以外の海外でも人気だそうだが、ライブもめちゃくちゃカッコ良かったですね。いつの間にかギタリストが外国人になってましたが、全員が70年代から抜け出てきたような長髪にベルボトムのジーンズという風貌で、70年代のブラック・サバス直系の痺れるほどカッコいいリフを炸裂させていました。Vo.の怪しい動きがCathedralリー・ドリアンを彷彿させ、サウンド的にもCathedralのドゥーミーなサウンドと共通する70年代のイギリスのロック的なところがありましたね。

そしていよいよ帝王エレクトリック・ウィザード登場!
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オープニングは新作より「Witchcult Today」。前作より13(女Eyehategodとも称されたバンド)の女性ギタリスト、リズ・バッキンガムが加入して4人編成になってましたが(ドラマーもSlayerケリー・キングみたいなヤツに替わってました)、ジャスティンの弾くリフに、リズ・バッキンガムの弾くリフが合わさって更なる相乗効果を発揮した殺傷力満点の引き摺るようなスラッジ・ギター(2人とも揃いの赤のSG!)、そして下腹部まで響くベースの重低音、ドッカンドッカンとヘヴィに炸裂するドラムの恐ろしい破壊力と、文字通り「世界一ヘヴィ」の称号に嘘偽りなしの轟音ドゥーム曼荼羅なサウンドがハンパない。
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ジャス自身はおそらくキマってなかったと思うが(Bongzillaのヴォーカルは開演直前にトイレでバッチリキメて登場してましたが!)、そのサウンドはもう王者の貫禄出まくりの圧殺されそうな轟音スラッジ・サウンドで、観客をナチュラル・ストーン状態へと誘発。殺伐荒涼たる轟音に精神を委ねるとそこにはもうサイケデリックな桃源郷が広がっています。前座のChurch Of Miseryも凄かったですが、「ドゥーム発祥の地はこのイングランドなんだよ、よく憶えとけ!」と言わんばかりの格の違いを見せ付ける威風堂々たる地獄ドゥーム。素晴らし過ぎてチビリそうでした(ジャスはレコードで聴かれる断末魔のような叫び声ではなく、意外にもノーマル・ヴォイスでのシャウトでした)。
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新作からのナンバーを固めた後、圧巻はラスト2曲。ジャスの「This Song About……WEEEEED!!!!」というMCに続いてのイントロのリフに発狂寸前。2000年のアルバム「Doprthrone」よりタイトル曲である名曲Dopethrone!引き摺るリフに、ジャストなタイミングでキマる超パワフルなドラム!もう即死ですよ。ちなみにこの曲は「世界一ヘヴィなバンドになって、マリファナの大海を育て、みんなでそれを吸って永久に幸福になる」という大人としてどうかと思うラリったテーマを元にしたマリファナ賛歌。素晴らし過ぎます。

この曲で一旦ステージを去ったエレクトリック・ウィザードの面々。当初は「アンコールはやらない」といったジェスチャーをしてギターのシールドも外してアンプも切って帰っていったのですが、あまりの声援に再び登場。そして遂f0045842_4173220.jpgに投下されたのは永遠のドゥーム・アンセムSupercoven(左写真)!!個人的にこの曲はSleepJerusalem(1曲62分)、Monster MagnetTab…(1曲35分)と並ぶ地獄のドゥーム3大名曲の1つ(Supercovenは13分)。1リフを執拗に執拗に繰り返すトリップしたサイケデリック曼荼羅に全身が徐々に窒息させられていくかのようなの酩酊感を覚えましたね。ちなみにこの曲はベースも恐ろしいくらい重低音で五感を麻痺させます。後半でリフが変わるところではドラムとギターのタイミングがズレて失敗しちゃってるトコもありましたが、そんな事はお構いなしの音圧で観客をブチのめしてましたね。

やはり「世界一ヘヴィ」という噂は本物でした。終わった後も耳鳴りが止まない轟音に脳が溶けそうでしたよ。エレクトリック・ウィザード恐るべし!
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ちなみにジャスの着ていたGジャンの背中には「Saint Vitus」のロゴが!眩しすぎるぜ!
 
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by Blacksmoker | 2007-11-26 03:50 | ライブレポート

LEDISI @ Billboard Live Osaka 11/15(木) 2007


いやぁ凄いモノを観ました!

ヤバイ、ヤバイとは聞いていましたが、このレディシのライヴは凄まじかったです!まさしく怪物!!モンスターです。

f0045842_13501262.jpg実はこのレディシを聴いたのは今年出たばっかりのアルバム「Lost & Found」(右写真)が初めて。このアルバムでも彼女のボーカリストとしての素晴らしさは他のレディ・ソウル達と比べても、そのパワフルさにおいて頭一つ抜きん出たところがあると思いましたが、その後に聴いた彼女の1stアルバム「Feeling Orange But Sometimes Blue」や、2ndアルバム「Soulsinger」を聴いたら、その凄さにもうKOでした。新作「Lost & Found」も素晴らしい作品ですが、この前2作品を聴くと、このアルバムってとても控えめなんだって事がよ~く分かります。メジャー・リリースって事で、そのまま行くとかなり濃すぎるので少しライトな感触を持たせてあるんだと思いますが、やはり前2作品、特に「Feeling Orange But Sometimes Blue」の規格外ぶりに圧倒されました。

そして今回観たレディシのライヴは、そんな凄いアルバムの音さえも余裕で上回る強烈なインパクトを与えてくれました。全てが規格外。この言葉に尽きますね。
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ギター、ベース、ドラム、ピアノ、キーボード、そしてコーラス(男の人!)という6人編成のバンドをバックに登場したレディシは、何と右腕を怪我していてギブスを首から吊っているという何か痛々しい姿でした。(おいおい大丈夫なの?)

オープニングは新作よりタイトル曲であるLost & Foundでスタート。ピアノをバックに静かに始まるこの曲。比較的おとなしめのスタートだったので、やはりケガがあるのかという心配をよそに異常にテンションが高く陽気なレディシ嬢。突如2曲目から大爆発でした!

バンドの演奏と共にレディシがいきなりマウス・スクラッチを披露。「M,M,M,M,M,M,M,,,My name is Le,Le,Le,Le,Le Ledisi!」みたいなカンジで飛ばしまくり。一瞬で会場が盛り上がりましたね。しかもガンガンにスキャットを入れていきどんどんレディシ・ワールドに引き込まれます。しかしこの人はよく動く!しかもギブスしてるのを忘れて自分で手拍子をして「アォ!」とか言って笑っているくらい陽気です。「ほんまにアンタ、怪我してるのか?」と思うくらいにステージでも動きまくりで、ヘッドバンギングなんかも何度もやってましたよ…。
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続くThink Of Youで、レディシのボーカルが本領発揮。もうマイクなんていらないんじゃないの?って思うくらいの声量でシャウトする様は、彼女が霊長類すら超越した存在に見えるくらい壮絶でした。とにかく僕の想像の範疇を軽く超えていましたので、その時点で圧倒されっぱなしでした。

そして1stアルバムからのタイトル曲Feeling Orange But Sometimes Blueなどではより一層の歓声。前回の来日から5年振り(しかも前回は大阪公演のみ)ということなのでファンも心から待ち望んでいたんだなという事が分かります。続いては新作からの1stシングルとなるAlright。原曲では女性の複数のコーラスが盛り上げてましたが、今回は男性シンガーがその部分のコーラスを務めていました。その男性コーラスの歌う女声のファルセットのコーラスと、レディシの男前過ぎるボーカルがバッチリと噛み合ってましたね。この曲ではフェンダローズとキーボードの2人によるスペーシーな音が心地良かったです。

しかし途中で思いましたが、1曲1曲が長い!ほとんどの曲でレディシが凄いスキャットを披露していくので、曲がどんどん延びるんですね(その壮絶なスキャットだけやっていても十分に鑑賞に値するもんなんですが…)。でもそんな長さなどは観ていると全然気にならないくらいステージが面白い。
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あとドラムの若い兄ちゃんの叩く音が思いっきりロック!途中のソロ・パートでは、「このままいくとツーバスが入ってくるんじゃないか?」って心配するくらいハードロックなドラミングを披露してましたね。まあ通常のライブとは違って一切が規格外。

レディシもエネルギーの塊みたいな人なので、今までインディで自由な活動をしていたというのが良く分かります。今回の新作「Lost & Found」はメジャー・レーベルの「Verve Forecast」からのリリースだったで、幾分楽曲に控えめな部分も見られるのですが、どうやらライブでは、そんな控えめにする事は無理なようですね。

今回の来日公演は実はBillboard公演5日間×2ステージという10公演。この10公演を6日間で強行するというハードなスケジュール。私の観たのはその4日目の2ndステージだったのでレディシにとっては連続8公演の8公演目!途中で「もう8公演目なのよ!」とへばった真似してましたが、明日が休みという事もありかなり陽気でした(前日も観に行った人によるとかなり疲れが見えていたようです…)。
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カヴァー曲ではMy Funny Valentineを披露。じっくり聴かす歌唱力も見事で、強烈なシャウターでもありますが、ジャズ・シンガーとしても一級です(前日にはビリー・ホリデーGod Bless The Childをやっていたそうですね!)。曲順はもううる覚えなんですがギターの音とレディシのボーカルだけで始まったのがビートルズYesterday。じっくりと歌い上げてくれるので歌詞の一言一句が耳に入ってくるわけですが、改めて聴くとYesterdayって悲しい歌なんですね(中学校の時に英語の授業で習った時は何とも思わなかったけどさ)。このYesterdayは誰でも知ってる超有名曲なだけにギターとボーカルでやるのは実にもったいない、バンド・サウンドでも聴いてみたいなぁと思っていたら中盤からバンドが加わりダイナミックにやってくれました!(これには思わず拍手!)完璧。本編最後は2nd「Soulsinger」からTake Time。一層の歓声です。コーラスを客に歌わせて自在にスキャットしまくる圧巻のボーカル!まさにハンパなし!

そしてアンコールに登場したレディシは今まで履いていたヒールを脱いで思いっきり裸足!披露されたGood Lovin’では、もう腕を怪我している事など観ているコッチも忘れるほどレディシ嬢大暴れ。挙句の果てにはステージから飛び降りて会場中を隅々まで歌いながら練り歩く大サービスぶり。大歓声を受けてましたね。もうエネルギーありあまりってカンジ。
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もう終わった後は、あまりの凄さにしばらくは放心状態でした。ソウルシンガーという枠を越えてレディシはもっとヌスラット・ファテ・アリ・ハーン(死んだけど…)や、パバロッティ(これも死んだけど…)とか、そっち系の「何か超越してしまった人」と同種のモノを感じましたよ。いや大袈裟ではなく。まさしく全てが規格外!でも近寄りがたいカンジではなく、かなりフレンドリーで陽気な女性なのがカワイイです!

やはり彼女の本領はライブですね。レコードの10倍くらい凄いですよ。
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by Blacksmoker | 2007-11-23 00:44 | ライブレポート

スライドショー

こんな機能もあるんですね。

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by Blacksmoker | 2007-11-21 15:44 | Live Shots

畠山美由紀 @ 京都磔磔 11/14(水) 2007


日本人女性シンガーの中でも、最も好きな人でアルバムも全て持っているんですが、実は観るのは今回が初の畠山美由紀
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この人だけはなかなか観る機会に恵まれず、勝手に「東京の人」というイメージを個人的に持ってしまってましたがやっと観ることが出来ました。

今回のツアーは、アルバム「Summer Clouds, Summer Rain」、そf0045842_23591542.gifしてそのわずか数ヵ月後にリリースされたアルバム「わたしのうた」畠山美由紀 with Asa-Chang & ブルーハッツ名義)[右写真]の2枚のアルバムに伴うツアーで、比較的小規模な会場を選んで全国を廻るもの(岡山公演では「サウダージな夜」が会場です!)。なぜか今回は大阪公演はなかったので、京都の磔磔に観に行ってきました。磔磔と畠山美由紀なんてなかなかイメージが結び付きませんが、かなりアットホームなステージを間近に観れてかなり親近感が沸きました。

オープニング・アクトには青柳拓次(左写真)が登場。Lif0045842_23594814.jpgttle Creaturesや、畠山美由紀とのユニットPermafrost、そしてDouble FamousKama Aina、そして自身のソロなど多岐に渡って活動していますが、この人も今回観るのが初めて(この人も「東京の人」なイメージが強い!)。ギター1本で、静かにゆっくり歌い始めぐっと聴衆を惹きつける。京都で買ったという木魚だけで1曲やったりとなかなかマイペースな人です。個人的に青柳拓次の弾くギターのシンプルなアルペジオの繰り返しが大好きなので生で観ることが出来て感激でした。

さて本編にて畠山美由紀の登場。ステージにはギターの青柳拓次、そしてギター&ドラムのデュオHands Of Creationがバックを努める編成です。畠山美由紀はイメージよりは小柄で、綺麗な人です。「上品」という言葉がピッタリですね。
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オープニングは「Summer Clouds, Summer Rain」よりマリーザ・モンチのカヴァーUniverso ao Meu Redor。アコースティック・ギター2本の穏やか音をバックにポルトガル語で軽やかに歌うのですが、歌い上げるというわけではなく、じんわりと染み入るように歌い、これが実に品のある歌声なんですね。

続いてあなたみたいまぼろしSummer Clouds, Summer Rain浜辺の歌というアルバム「Summer Clouds, Summer Rain」のナンバーで序盤は固めて披露。このアルバムは以前にも紹介しましたが、全編をほぼジェシー・ハリスのギターと畠山美由紀の歌だけで作ったアルバムなんですが、特に畠山美由紀の歌に焦点を絞った作りになっていて、彼女の表現力の豊かさが感じられる素晴らしい作品ですが、今回のステージではバンド編成によるアレンジで色彩感覚が増しより魅力的なサウンドになっていましたね。
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つづいてはその「Summer Clouds, Summer Rain」とはまさしく正反対の性格を持ったアルバム「わたしのうた」からのナンバー私の青空を賑やかに披露したり、懐かしの1stソロ・アルバム「Diving Into Your Dreams」からの曲やら、アルバム「Reflections」からの曲、そして新曲、そしてテネシー・ワルツなどのスタンダードも挟みつつ新旧いろいろなファンが楽しめる選曲。

あらためて畠山美由紀がボーカリストとして凄い才能の持ち主だという事が分かります。彼女は決して圧倒的なパワーで捻じ伏せるタイプではなく、どちらかと言うと素朴だがじんわりと聴かせるタイプのシンガー。曲によっては声色を使い分け、じっくりと聴かすその声はまさしく天性のものでしょう。心を落ち着かせてくれる美しい声です。
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しかし、いろんな時代の曲が披露されてましたが、これらを聴くといかに「Summer Clouds, Summer Rain」のアルバムの曲が、抑えた歌い方になっていたかが分かります(このアルバムのレコ-ディングでは、ジェシーから抑えた歌い方をするように指示されたと畠山美由紀本人がステージで語ってました)。

青柳拓次Hands Of Creationによるバックの演奏が実にシンプルだが、小技の利いた演奏で畠山美由紀の歌をサポートしていたのも印象的。途中のHands Of Creationのソロ・パートでも、実に自然に彼らの曲が観客に受け入れられていたと思います。
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1曲1曲が終わる毎に、よく喋りよく笑い、とても気さくな人ですが、やはりその中にもどことなく漂う気品が感じられ、とても素敵な人でした。やはりこの人は想像通りの素晴らしいボーカリストでしたね。
 
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by Blacksmoker | 2007-11-21 00:37 | ライブレポート

BLU & EXILE [Below The Heavens]

これは「2007年版ピート・ロック&C.L.スムース」ではないか!

f0045842_2218251.jpgAloe BlaccとのユニットEmanonでも活躍するトラックメイカーのExile。そしてLA出身のアンダーグラウンドMCのBluの2人からなるこのユニットによる1stアルバム「Below The Heavens」は、「サンプリングのセンスの良さ」、「スクラッチのカッコ良さ」、そしてもちろん「ラップのカッコ良さ」と言った、最近では珍しいくらいにヒップホップを感じさせるアルバムであり、ヒップホップの最も良質な部分を再認識させてくれる素晴らしい傑作です。

Sa-Ra Creative PartnersSteve Spacekなどをリリースしている今最も注目されている重要HIP HOPレーベル「Sound In Color」からのリリースです。Exile(下写真)自身もこのレーベルに籍を置き、自身のソロ・アルバム「Dirty Science」をリリースしています。
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さてこのExileですが、世間では「J-Dillaの意志を継承するトラックメイカー」と言われているそうですが、このアルバム「Below The Heavens」を聴いてみて思ったのが、「J-Dillaというよりピート・ロックやんけ!」って事。

もうドラム・サウンドから、ソウル・ネタの印象的な使い方、スクラッチの入れ方まで、完璧なピート・ロック印(左写真)。大半をf0045842_2301637.jpg占めるメロウ&ジャジーなトラックを聴くと、もうピート・ロックの新作かと思うくらい完成度が高い。しかも完成度が高すぎてピート・ロック師匠を超えちゃった感もあります。もちろんJ-Dillaを彷彿させるあの独特のベースライン(AKAIのサンプラーに入っている周波数音のピッチを極限まで落とし、それをMPCで叩いてベースラインを作る)も聴けますが、やはりJ-Dillaと言うよりもピート・ロック色が強いですね。90年代後半のHIP HOPのあの空気感が漂っています。


そんなExileのトラックをバックにガッチリとマイクを握るBlu(下写真)も相当の技巧派MCです。その声質はC.L.スムースに似ていてやたらカッコイイです(その他にも初期の頃のモス・デフも彷彿させます)。軽やかで流れるようなフローに豊富なデリヴァリーを矢継ぎ早に詰め込んだスタイルはかなりの実力派。
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Juicen’ Dranksという曲では最初から最後まで”ai”という言葉で韻を踏み倒したリリックに久々にアツくなりましたね。(ここまで踏み倒してくれたのはBusta RhymesPut On Your Arms Where My Eyes Could Seeと、三善善三韻道以来です!)更には歌声まで聴かす曲もあり侮れません。

ストリングスをサンプリングしたSo(ul) Amazin’(Steel Blazin’)やソウルフルな声ネタが印象的なIn Remembrance Of MeMiguel Jontelなるシンガーを迎えたCold Heatedなど、とにかくソウルフルなトラックが素晴らしい。
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終盤の目玉となるのはPart1とPart2に分かれたThe World Is (Below The Heavens..)。Part1はNASのクラシックThe World Is Yours(これもピート・ロック制作ですね!)の中の必殺パンチライン「Whose world is this?」の声ネタをサンプリングし、Ghostface KillahBe Easyばりにバンギンするチューン(このBe Easyピート・ロック師匠作!)。そして一転してPart2ではゴスペル・コーラスが入って崇高に盛り上げる感動的な曲に仕上がってます。

この作品によってBluOthelloMoka Onlyなどの優れたアンダーグラウンドMC達と並ぶ存在として認識される事になるだろう。そしてExileJ-Dilla亡き後のデトロイト・サウンドの後継者として更なる評価を得るだろうし、今後シーンにExileプロデュースのビートが増えるのは間違いないでしょう(ピート・ロックと比べれば格段にギャラは安いし!)。
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とにかく素晴らしいアルバムです(ジャケも含めて)!ピート・ロックJ-Dilla、そしてSlum Villageなどの音が好きなヘッズはマストです。それ以外でもTalib KweliCommonなどのMCが好きなヘッズにも十分にオススメできるアルバムですよ。
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by Blacksmoker | 2007-11-18 00:07 | HIP HOP

WEEN [La Cucaracha]


2000年に行われたWEENの初来日公演。
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舞台はサマーソニック。運の悪いことに、WEENのライブの裏では復活を果たしたウィーザーが同じ時間帯で演奏する事になってしまい、Intex Osakaのだだっ広い会場にはハードコアなWEENファンと休憩中の客を併せてたったの50人くらい。そんな中登場したWEENの面々。開口一番、「We are WEEZER!」。

泣きましたね・・・。

f0045842_244851.jpgこのバンドもBlacksmokerの大好きなバンドの一つ。もちろんアルバムも全部持っています。そんなWEENの4年振りの新作「La Cucaracha」がリリースされたので、紹介しましょう。

まずこのWEENですが、1984年にディーン・ウィーンジーン・ウィーンの2人のおバカ兄弟(実は兄弟ではないですけど)によってペンシルヴァニアで結成されたユニット。しかし、1984年結成ということはWEENもかれこれ20年選手なんですねぇ。基本的にこのウィーン兄弟を中心に、ドラムやベース、そしてパーカションを加えたロック・バンド編成で活動しています(ミーン・ウィーンという妹までもいるらしいです・・・)。有名なトコロではWEENのベーシストを努めるアンドリュー・ワイス。この男はロリンズ・バンドのベーシスト(あの名盤「End Of Silence」に参加)でありながらWEENに専念するためにロリンズ・バンドを脱退し、その後はWEENのアルバムのプロデューサーを務めています。
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さて、WEENの音楽性なんですが、これが全くもって予測不可能。もうメチャクチャ雑多でどんな音楽が飛び出すか分かりません。まっとうなロックをやったと思いきや、ソウルフルなヴォーカルを聴かせるR&B的なナンバー、エレクトロニクスを駆使したエレポップ、ジャジーなラウンジ・ミュージック、爆走ハードコア、インプロヴィゼーションを交えたサイケデリック・ロックなど、実体を持たない軟体動物のような彼らの音楽を言葉で表すのは不可能に近い。毎回毎回アルバムを発表する毎に、ファンはいつも「今回はどんなアルバムなんだ?」とドキドキさせられます。ちなみに1996年にはいきなりナッシュビル録音の純度100%のカントリー・オンリーのアルバム「12 Golden Country Greats」(下写真)が発表されて倒れそうになりました(ちなみに内容はマジで最高でしたけど)。
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ただ、どんなサウンドになっても共通していることは異常なくらい耳に残るメロディです。どんな曲でもやたらポップで頭から離れないです。WEENがよく「変態ポップ」と言われるのは、そのムチャクチャな音楽性でありながらも、異常なまでのポップさに起因しているのは間違いないです。ちなみにあのエイフェックス・ツインことリチャード・D・ジイムスが「唯一才能を認めるバンド」としてWEENの名を挙げていたのはなかなか笑いましたね。類は友を呼ぶとはまさしくこの事です。

しかしそんなWEENですが、ただのヘンテコなだけのバンドではありません。
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当初は宅録を主体にしたチープで奇妙なサウンドでしたが、1994年「Chocolate & Cheese」、1997年「The Mollusk」あたりから楽曲の完成度がグンと高まり、よりメロディが際立った傑曲が並ぶようになってきて(叙情的で牧歌的な曲が増えた)、さらには2000年の「White Pepper」、2003年の「Quebec」ではバンド・サウンドを重視したダイナミックな楽曲も増えてきました。

2000年代に入ってからはライヴ活動も活発化し、その後はジャム・バンドの祭典「Bonnaroo Music Festival」の常連にもなり、ライヴ・バンドとしての位置を確立したと言ってもいいでしょう。ちょうどその頃のライヴ映像をWEENのDVD「Live In Chicago」(2003年のライヴ)で観ることが出来ますが、それはそれは凄いライヴで、あのWEENがこんな凄いライヴ・バンドになっていてかなり衝撃を受けましたね(この頃はあのPHISHもよくライヴでWEENRoses Are Freeをカヴァーしてましたね)。
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さてさてまた前置きが長くなってしまいましたが、本作「La Cucaracha」です。アルバムで言うと2003年の「Quebec」以来4年振りですが、2004年にはライブDVD「Live In Chicago」、そして2005年には未発表曲集「Shinola Vol.1」とリリースが続いていたので、そこまで久しぶり感はないですが、レーベルをメジャー・レーベルからカントリー系レーベル「Rounder Records」に移籍しています(実は1992年より2003年までWEENはメジャー・レーベルに在籍。まあ11年もWEENがメジャー・レーベルに在籍していた事自体が奇跡に近いですが…)。プロデューサーはお馴染みのアンドリュー・ワイスが担当しています。
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内容は相変わらずの実にWEENらしいバラエティ豊かなロック・アルバム。

1曲目から意表を突いたビッグバンド風のインストFiestaで幕開け。ヘタレなトランペットが俄然やる気を無くさせますが、続くBlue Balloonでは一変して怪しいハワイアン。いきなりゆるゆるです。3曲目Friendsは80年代を彷彿させるシンセサイザー・サウンドを大々的にフィーチャーしたエレポップ。続くObjectは60年代風ソフト・ロック、Learning To Loveはカントリー・パンク、With My Own Bare Handではビッグなギターリフの70年代ハードロックなどなど、もうやりたい放題。ヴォコーダー・ヴォイスでメロウに歌い上げる(しかもストリングス入り!)Spirit Walkerなども非常に怪しいですが、実にクセになりそうな曲です。

圧巻はWoman And Manでの約11分に及ぶサイケデリック・ロック・ジャム!ラテン・パーカッションと、轟音ディストーション・ギターが入り乱れる様子は初期のサンタナジミ・ヘンドリックスが合体したような壮絶さ。まさしくWEENのライヴ・バンドとしての本領発揮のナンバーです。

もう書いてるだけでムチャクチャなアルバムですが、これがいつものWEEN。そしていつものクセになる毒のようなポップさも効いていて聴いているとどんどんハマっていきます。
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ヴィジュアルに関しては相当なダメっぷりのWEENですが、曲は素晴らしいし、演奏も歌も上手い。こんなナイスなWEEN。マニア受けなバンドでいるには実にもったいないバンドです。

是非一度聴いてみる事をオススメします。
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by Blacksmoker | 2007-11-13 01:45 | ROCK

MARY J.BLIGE @ 大阪城ホール 11/5(月) 2007


ファーギーのショウビズ・ライクなエンターテインメント・ショーが終了し、遂にトリのメアリー・J・ブライジの登場。2004年以来の3年振りの来日です。
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2005年のアルバム「The Breakthrough」も大ヒット、そして2006年のベスト・アルバム「Reflections:A Restropective」も絶好調で、もはやキャリア史上ピークにある感のあるメアリーですが、今回の来日はおそらく11月にリリースされる8枚目の新作「Growing Pains」(下写真)のプロモーションも兼ねているのでしょう。
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ライブの内容としてはベスト・アルバム「Reflections:A Restropective」と趣を同じくしたベスト・ヒット集状態メアリーのファンなら知らない曲がないくらいの超有名曲・人気曲満載の豪華セットでしたね。

さて、大人数の生バンドをバックに、ステージ上方にある高台から登場したメアリー・J・ブライジ。黒のキャミソールに、黒のタイトなパンツ、そして黒のサングラスという超カッコイイ風貌。貫禄ありまくりです。そして毎回変わる髪型にも注目ですが、今回はかなりショートのブロンド。昨年「Reflections:A Restropective」がリリースされたときには何かかなり凄いゴージャスなカンジになってましたが、今回はシンプルにまとめたカンジですね。
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1曲目はザ・ゲームLove It Or Hate Itのトラックにメアリーが別ヴォーカルを加えたMJB Da MVPでスタート。「私こそがヒップホップクイーン どこにも行かないわ」と高らかに宣言する歌詞はオープニングにはバッチリです。最近はよくこの曲をオープニングに持っていっているそうですね。そしてステージの高台から降りてきてドロップされたのは何とReal Love!この永遠のギャル・アンセムに会場は早くも大熱狂。ファーギーLondon Bridgeはあまり盛り上がらなかったけど、メアリーのこの盛り上がりを見て「今日この会場にいるほとんどの人達はメアリー・J・ブライジを観に来ているんだ」ということをハッキリと理解しました(もちろん私もそうですが)。この後も大ヒット曲の連続投下で会場のレディー達も大熱狂。

そして11月21日リリースの8thアルバf0045842_265628.jpg「Growing Pains」から先行カットとなる新曲Just Fineのお披露目。メアリー得意のスロー/ミディアムな情念系ナンバーではなく、アップで軽快なディスコ・チューン。なかなかフロア映えするナンバーでかなり良かったですね。このJust Fineメアリーの新たな代表曲になるでしょう。

圧巻だったのはNo More Drama!!いやぁこの曲は凄かった!マジで震え上がりました。序盤は静かに歌い上げていき、最後に感情が込み上げてきて大爆発するこのドラマティックな曲はまさに鬼気迫るド迫力のパフォーマンスでしたね。やはりメアリーが数いる他の女性シンガー達と一線を画すのはこの感情移入の凄さでしょう。メアリーの歌声は、正直言うと段違いに上手いというわけではない。しかしメアリーが飛び抜けているのは歌に入れる情熱の量のハンパなさだ。まさしく全身全霊という言葉がピタリ。その凄さをまざまざと見せつけられたNo More Drama。ホントに震えました。

あと一番印象に残っているのが、アルバム「The Breakthrough」(右写真)からの曲の人気f0045842_291497.jpgの高さ!おそらくこの日一番の歓声を受けたのはこのアルバムからのバラードBe Without YouU2のカヴァーOneでした。特にBe Without Youなどは僕の左隣にいた女性(おそらくOver 35くらい)の女性は手を顔に当てて涙ぐんでいました。もちろんコーラス部分は会場中大合唱。正直こんな人気ある曲だとは思ってもみなかったですね。U2のカヴァーOneではスケールの大きな楽曲を完全にメアリー色に染め上げた素晴らしいナンバーで、原曲の良さもあってピースフルで感動的な空気が充満していましたね(ちょうど1年前にU2のライブでこのOneを聴いたのを思い出しました)。

アンコールではもちろんFamily Affair!これも大盛り上がり。大阪城ホールが小さなダンスホールのように錯覚してしまうほどメアリーは会場を支配していましたね。さすがの貫禄。やはりメアリーは女王でした。
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さてメアリーのステージもほぼ一時間で終了。そして全てが終わった後のステージに現れたのはメアリー・J・ブライジファーギー、そしてキャロル・キングの3人!この世代を超えた3人のヴォーカリストが同じステージに立つという珍しい光景に大歓声。そしてその3人によって披露されたのはマーサ&ザ・ヴァンデラスDancing In The Street!この曲はマーヴィン・ゲイが作曲したもの。マーヴィンに多大なる影響を受けたキャロル・キングなので、この選曲は納得ですね(デヴィッド・ボウイ&ミック・ジャガー名義でもカヴァーされてました)。

そしてもう1曲。これは予想通り!キャロル・キングの作曲で、さらにメアリー・J・ブライジもカヴァーしている曲といえばそうです、アレサ・フランクリン(You Make Me Feel Like)A Natural Womanです!3人がそれぞれソロを取り、最後のコーラスは3人で大合唱。キャロルメアリーファーギーも歌い上げまくりでした。これも時代を超えて輝き続ける名曲です。最後を飾るに相応しい曲で大団円を迎えてこのイベントを締めくくりました。
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メアリーももちろん良かったし、キャロル・キングも素晴らしく(ファーギーも健闘していたし)、このイベント、予想以上に良かったですね。

明日から東京公演だそうなので興味のある人は絶対観に行った方がイイですよ!
 
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by Blacksmoker | 2007-11-10 01:33 | ライブレポート

CAROLE KING @ 大阪城ホール 11/5(月) 2007


1990年の初来日から17年振りになるキャロル・キングの来日公演。
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今回の来日は「3 Great American Voices」というイベントでの来日で、共演にはBlack Eyed Peasファーギー、そしてメアリー・J・ブライジという異色の組み合わせ。当初この組み合わせを見た時は「??」なカンジだったのが正直な感想でした。

何たってキャロル・キングです!

まあ、70年代からリアルタイムでf0045842_1862949.jpgキャロル・キングを聴いていた人は別として、僕らの世代ではキャロル・キングなんて「名前は知っているが、しっかりと聴いたことがない」という人がほとんどじゃないでしょうか?正直言うと私も1971年の世紀の大名盤「Tapestry」(右写真)しか聴いた事がなかった人なんですが、今回の来日公演の前にキャロル・キングのレコードを改めて掘ってみたんですが、その偉大さに驚愕しましたね。しかしキャロル・キングがこんな偉大な人だとは思ってもみませんでしたよ…。

1942年ニューヨークのブロンクス生まれのキャロル・キング。今年で65歳。彼女は1958年からジェリー・ゴフィンと2人でソングライター・コンビで活動しているので、もう既に50年近いキャリアだ。1970年に入ってからはソロで活動していますが、このソングライター時代も含めキャロル・キングは数え切れないほどのヒット曲を手掛けています。
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何たってアレサ・フランクリン(You Make Me Feel Like)A Natural Woman(後に「Tapestry」でセルフ・カヴァー)や、グランド・ファンク・レイルロードカイリー・ミノーグがカヴァーしたLocomotionカーペンターズがカヴァーしたIt’s Going To Take Some TimeA-HAがカヴァーしたCrying In The Rain(個人的にA-HAで初めって買ったレコードでした…)など、全部キャロル・キングが作った曲なんですね。

さて前置きが長くなりましたが、この「3 Great American Voices」。当初は疑問なこの顔ぶれだったんですが、これが予想に反して物凄い充実したイベントでした!これは予想外でしたね。

まずはこの3組のトップを飾ったのがキャロル・キング

誰もが最後に出てくるだろうと思っていたところに、いきなりの登場したのでおそらく会場中が面喰ったハズです。暗闇の中たった一人で登場したキャロル・キング。もう「おばさん」というより「おばあさま」に近い風貌。小さなランプの置かれたグランドピアノに座り、名盤「Tapestry」からのBeautifulを歌い始めた瞬間から一気に会場を惹きつけました。
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なんたってその声の若々しさ!!まるで70年代のキャロル・キングのレコードで聴ける声そのまま!(弱冠高音は出しづらそうでしたが)この声の若々しさと、グランドピアノの力強い伴奏。もうこれだけで勝負アリだったと思います。一気に会場が優しい空気に包まれたような雰囲気になりましたね。続くWelcom To My Living Roomなど、曲が進むにつれて、メアリー・Jのファンやファーギーのファンまでも完全に掌握していましたね。(私も含めて)おそらく会場の大半が初めて観るキャロル・キングだったと思いますが、何年経っても色褪せる事のないエヴァーグリーンな輝きを放つクラシックな名曲が次々に披露されるので、会場中が「驚き→感動」という状態になっていましたね。

途中からはギタリストとベーシストの2人が加ってより色彩豊かな音色に。特にストーンズチャーリー・ワッツ爺さん似の老ギタリストの渋いアコースティック・ギターの音が良い味を出していましたね。

以降も「Tapestry」からSo Far AwayWhere You Leadなど名曲を次々に披露。始める前にキャロル自身の解説入りで演奏されたWill You Love Me Tomorrow?も素晴らしかったですね。この曲は1961年に黒人女性コーラスグループのシュレルズに提供し全米1位を記録した曲で、今でも歌い継がれている名曲です。ロバータ・フラックもカヴァーしていましたね。アレサに提供した(You Make Me Feel Like)A Natural Womanといい、意外にもキャロルはブラック・ミュージックとの繋がりも多いです。
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しかしキャロル・キングの曲は、1960年代はソングライターとして活躍していただけあって、曲の作り方が「上手い」。全ての曲が3分程度でまとめられているので、ムダに長くなく、しかも小気味良いテンポで名曲群が繰り出されるため、まったくダレることがなかったですね。曲もピアノとヴォーカルの歌うメロディに焦点を絞っているので、曲を知らなくても一気に引き込まれます。キャロルを知らない人でも「あ、この曲どこかで聴いた事がある!」って人も多かったでしょう。

一際大歓声だったYou’ve Got A Friendでは、ギタリストがジェイムス・テイラーばりに優しい歌声を聴かせ、キャロルとデュエットする一幕もありました。後半になるにつれキャロル自身のテンションも上がってきて、よく笑う、よく喋る、よく動くはで意外にも躍動的なライブでしたね。アルバム「Music」からはSweet Seasonsも披露。この曲の激しいピアノの演奏はいつ聴いても絶品です。
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結局「Tapestry」からは合計8曲も披露。一時間弱のステージでしたが、充分すぎるほどの名曲のオンパレードで大満足でしたね。トップを飾るという意表を突いた出番も、このメンツから考えると意外にもハマっていたし、デカいホールもその大きさはほとんど感じられず、キャロル・キングの偉大さを堪能出来た感動のライブでした(今回のこのイベント、毎公演出番が変わるらしく、翌日はメアリーがトップで、キャロルがトリだったそうです!)。

この後、イベントの最後にキャロル・キングは再び登場するのですが、それは次回に紹介します。
 
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by Blacksmoker | 2007-11-08 00:35 | ライブレポート

MARY GAUTHIER [Between Daylight And Dark]


f0045842_1154883.jpg前回紹介したジョー・ヘンリーの素晴らしい新作「Civilians」と同日に発売されたこのアルバム。このアルバムもそのジョー・ヘンリーによるプロデュース作品。ルイジアナ出身の女性シンガー・ソングライター、メアリー・ゴウシェの新作「Between Daylight And Dark」。現代オルタナティヴ・カントリーの名門レーベル「Lost Highway」からリリースとなるこの作品ですが、いやぁこれも素晴らしいです!

モノクロームな写真に物憂げに写るこのメアリー・ゴウシェ。あまり日本では知られてない人ですが、実はあのボブ・ディランも認める才能で、アメリカのカントリー界でも一目置かれる存在です。

さてこのメアリー・ゴウシェですが、実は曲作りを始めたのが35歳からという超遅咲き。しかもその前はアルコール中毒などにもなっていたそうで、かなりの破天荒な生活を送っていたようです。しかしこういうメチャクチャな人生を送ってきた人間が更正した時に生み出される音楽というのは実に説得力があります。人生のどん底から這い上がって来た者のみが表現出来る非常に業の深い音。ハスキーだが穏やかな声がじんわりと心に響きます。
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音楽的には、一言で言ってしまうと「カントリー」という事になるのだろうが、全くそういう次元を超越した、純粋に素晴らしい音楽を聴かせてくれます。「カントリーの枠を超えた」という点においてはまさにそのサウンドはエミルー・ハリスに近いかもしれませんが、エミルーのような色気のある女性的な声ではなく、メアリーのそのしゃがれた声にはルシンダ・ウィリアムスと同種の「やさぐれさ」を感じます。実に穏やかなんですが、実に説得力のある声。まあ普通の生活を送っている人間には絶対出せない声ですね。
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そしてこのメアリー・ゴウシェのバックを務める演奏陣の素晴らしいこと。基本的にジョー・ヘンリー「Civilians」でバックを務めていた演奏陣とほぼ同じ(ビル・フリーゼルだけはいませんが)。ヴァン・ダイク・パークスも1曲参加していますし、ラウドン・ウェインライトもコーラスで参加という、ゲストに至るまでほぼ「Civilians」と同じ布陣なので、おそらく「Civilians」と同時進行的に録音されたのでしょう。グレッグ・リースの弾くスティール・ギターも表情豊かに深くて美しいし、パトリック・ウォーレンの格調高いピアノやハモンド・オルガンの懐かしい音も実に雄大です。特に素晴らしいのはこのパトリック・ウォーレンで、ヴァン・ダイク・パークス以上に格調高いピアノでこのメアリー・ゴウシェのサウンドを更に情感豊かなものにしていますね。

とにかく「ジョー・ヘンリー・サウンド」と呼んでもいい、弦の鳴りを強調したサウンドとメアリー・ゴウシェの歌声がかなり高次元で混ざりf0045842_125392.jpg合って、泣きそうなぐらい素晴らしいサウンドを聴かせてくれます。ジョー・ヘンリー「Civilians」の感動的な出来にも参りましたが、このメアリー・ゴウシェのアルバムも全くそれに退けを取らない傑作です。特にトーキング・スタイルで歌われるカントリーLast Of Hobo Kingsの素晴らしさは是非聴いてもらいたい。

正直、この作品は大々的に宣伝される事もないだろうし、話題に上ることもないだろう。だからあまり聴かれる事なく終わってしまうかもしれない。しかし、これはアメリカ音楽の懐の深さを改めて実感させてくれる作品であり、真摯なブルーズ・アルバムとも言えるでしょう。
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人々に聴かれる事なく終わったとしても、私の中には確実に深く刻み込まれる作品になる事でしょう。
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by Blacksmoker | 2007-11-03 00:55 | COUNTRY / BLUEGRASS