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GRINDERMAN [Grinderman]


f0045842_12164270.jpgパンク」というのはサウンドではなく、アティチュードだ。その意味では、最近よく思うことだが、この「パンク」という言葉に相応しいのは若いミュージシャンより圧倒的にオヤジのミュージシャンが多い。例えばスティーヴ・アールであったり、イギー・ポップであったり、トム・ウェイツであったり。しかもその「パンク」気質なオヤジ達というのは、得てして若い人間よりタチが悪い

そして、「パンク」を体現するオヤジの系譜にもう1人加えるなら、その筆頭は間違いなくニック・ケイヴだろう。
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オーストラリアで活動していた時のパンク・バンドのバースデイ・パーティを経て、その後1984年にアインシュテルツェンデ・ノイバウテンのリーダーであるブリクサ・バーゲルトを含むバンド、ザ・バッド・シーズを従え1stアルバム「From Her To Eternity」でデビューして以来、現在までに13枚ものアルバムをリリースし、アティチュード面でのパンクを体現するこのニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ
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2003年に「Nocturama」リリース後にザ・バッド・シーズの顔とも言えるブリクサ・バーゲルトが脱退し、バンドの行く末が心配されましたが、続く2004年の2枚組の大作「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」をリリース。ここでは何か吹っ切れたように生々しい爆音ロックンロール・サウンド(もちろんブルースやゴスペルや、ニックの得意とするバラードも入っています)を聴かせてくれ、その全く衰えを知らないアティチュードを見せ付けてくれました。同時期にリリースされたスピリチュアライズドのアルバム「Amazing Grace」を聴いた時、「全然ニック・ケイヴの方が凄いじゃないか!」と思ったほど。(個人的にはこのアルバムはニック・ケイヴのアルバムの中で最も好きなアルバムです。)
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そしてその後もB面曲集やライヴDVD、そして映画音楽を手掛けたりと多忙な中、先日14枚目となるアルバム「Dig!!! Lazarus Dig!!!」をリリースしたばかりですが、その前にもう1つ忘れてはならないこのGrindermanを紹介しましょう。

このGrindermanは何と2006年に結成されたニック・ケイヴ新バンドなのです!
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メンバーは4人。ニック・ケイヴがギター&ヴォーカル、ベースにマーティン・ケイシー、ドラムにジム・スクラヴノス、そしてその他のエレクトロニクスやヴァイオリンを担当するウォーレン・エリス・・・ってか全員ザ・バッド・シーズのメンバーじゃないか!!

そうなのです。現在8人編成となっているニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ(ドラマーも2人いる)を人数面でもサウンド面でも更にシンプルにしたのが、このGrindermanの正体。ジャム・セッションによりたった1週間で曲作りやらレコーディングまで完成させてしまった初期衝動漲る1stアルバムが本作。
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大所帯化しているザ・バッド・シーズ(しかもクセ者ばかりいる)からの息抜き的意味合いも存分にあるだろうこのGrindermanだが、やはりザ・バッド・シーズという制約の無くなったニック・ケイヴのはじけ振りが凄まじい

いつも楽器はピアノを弾いていることの多いニック・ケイヴが、今回はギターを手に取り吼えます。
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1曲目Get It Onから強烈にやさぐれたガレージ・ロック!しかもギターの音が尋常ではなく、完全な轟音ノイズ!とりあえずフルヴォリュームで爆裂させています。彼の原点であるバースデイ・パーティを否が応でも彷彿させるノイジィなガレージ・サウンドはまさしく「パンク」。メンバーが揃って連呼するコーラスもかなりガラが悪いです。私がこの曲に日本語タイトルを付けるとしたら、ぶっ殺すぞというタイトルにします。
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2曲目はトーキング・ブルース調ガレージ・ロックNo Pussy Blues。生々しすぎるドラムのハイハットに、ブーストしまくったベース、その上を延々と「いろいろ手は尽くすが彼女は振り向いてくれない」と恨み節のようなニック・ケイヴの語りが入ります。そして突如、雄叫びと共に雷のようなディストーション・ギターが鳴り響く凶悪なナンバー。日本語タイトルは女にうつつ抜かしてんじゃねぇぞブルースで決まりでしょう。
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3曲目以降はミディアム・テンポのブルーズっぽい曲を聴かせるが、音の不良ぶりがハンパじゃないです。「Nocturama」ではヴォーカリストとしての素晴らしさを存分に発揮していましたが、「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」以降はかなり荒々しいヴォーカル・スタイルになってきているのが凄い。以前と比べると頭頂部の髪が無くなってかなり衝撃的な風貌になってしまっている現在のニック・ケイヴですが、寂しいのは外見だけ。サウンドの方は更にイカツくなっています。

そしてブルーズ調の曲の中に時折挟まれるDepth Charge EthelHoney Bee(Let’s Fly To Mars)といったThe Stoogesばりの爆走ガレージ・ロック・ナンバーが最高です。ニックの唾が飛んできそうなくらいヴォーカルの音が生々しく録られています(プロデューサーは最近のニック・ケイヴの作品のほとんどを手掛けているニック・ローネイ)。
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完全な息抜き的プロジェクトといった趣だったこのGrindermanですが、その成果は予想以上に熱く濃く、しかもパンクなサウンドとして結実。いつも歌詞が示唆的で素晴らしいニック・ケイヴですが、今回はサウンドに合わせてかより直接的でストレートな表現になっています。ニック・ケイヴという男のパンク・アティチュード満載の初期衝動を詰め込んだ豪快なガレージ・ロック。
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ニック・ケイヴの歴史の中でも、おそらく後に重要な転機となった作品として評価されることになる作品でしょう。是非新作「Dig!!! Lazarus Dig!!!」と共にチェックして下さい。

「Abattoir Blues/The Lyre Of Orpheus」(下写真)も素晴らしいので是非!
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by Blacksmoker | 2008-05-29 00:13 | ROCK

RAPHAEL SEBBAG [El Fantasma De La Libertad]


f0045842_1151516.jpg艶やかなラテンのリズムの上に乗る、キューバ録音による現地ミュージシャンの情熱的な演奏。そして生演奏とプログラミングの絶妙なブレンド。ラテン・ジャズやキューバ音楽、そしてハウスやダブ・ステップまでも通過したサウンド。そして25年もの間、DJの現場で活躍するキャリアの中で培った説得力のある豊潤な音楽性。これぞ2008年、ラテン・ブレイクビーツの最高傑作です。

90年代にクラブ・ジャズ・シーンを牽引したUnited Future OrganizationのDJ、ラファエル・セバーグ
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1990年にUnited Future Organizationを結成し2002年までに5枚のアルバムをリリースし、日本だけでなく世界に認められる存在となったわけですが、それから6年。遂に初のソロ・アルバム「El Fantasma De La Libertad」をリリース。これはホントに素晴らしいアルバムです。

実はこのアルバムに先駆けること2年前の2006年、アルバムの顔見せ的ミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」(右写f0045842_1324447.jpg真)がリリースされており、本作にも収録されているBesosEl Fantasma De La Libertadがいち早くお披露目され、その曲の素晴らしさが更にアルバムへの期待を高めていたわけですが(ちなみにRemixも収録されていて、そこには何とThink TankKiller Bongなんかも参加していました)、それから2年という長い年月を掛けこのアルバムは完成したわけです。

「from “El Fantasma De La Libertad”」で垣間見れたラテン・ミュ-ジックへの傾倒はより深くなり全編に渡ってラテン・ミュージックへの愛に溢れている。
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タイトルになった「El Fantasma De La Libertad」とは「自由の幻想」という意味らしく、ルイス・ブニュエルの映画からそのタイトルは取られている。「本当の意味での自由とは?」をテーマにしたアルバムだそうだ。

そのテーマを受けてオープニング曲Alegria Africanaに登場するのは、キューバ人女性ラッパーのテルマリー(左写真)。キf0045842_126739.jpgューバ新世代ミュージシャンを代表するこのテルマリーの歌うこの曲がもうホントに素晴らしい!前述のミニ・アルバム「from “El Fantasma De La Libertad”」にも既に参加していた彼女だが、本作にも再び登場して「アフリカの自由」を訴えかける。ソリッドな切り口で弾丸のように詰め込んだポエットリー・リーディング調のラップを披露しているのだが、コレが鳥肌の立つほどカッコイイ。全編に歌うように流れる情熱的なピアノ、そして日本が誇るサルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスGenta氏によるアフロ・キューバンなパーカッションも加わってその素晴らしさは感動的です。しかしこの後にも何曲かで登場するテルマリーはほんと素晴らしい働きをしています。

そして次に登場するのは待望の新作がリリース間近のジューサ(Yusa)。こちらもテルマリーと同じくキューバ新世代ミュージシャンの1人で、ブエナ・ビスタ地区出身の天才シンガーソングライター(下写真)。シンガーソングライターでありながら、ブラジルの才人レニーニのワールド・ツアーに「ベーシスト」として参加するマルチ・インストゥルメンタリストでもあります。
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そんな実力派ジューサをボーカルを据えて、チューチョ・バルデスYemayaを哀愁たっぷりにカヴァー。情熱的なジューサの歌声も素晴らしいですが、この曲でバックを務めるのが、キューバのピアニストのロベルト・カルカセス率いる14人編成の大所帯ラテン・ファンク・バンド、インタラクティボ(Interactivo)。このキューバ最先端バンドのホーン・セクションが俄然盛り上げてくるラテン・ナンバーはかなりアツイ。特に中盤のトランペット・ソロからなだれ込む後半の展開はコーラスも被さって凄いです。しかしこの現代のキューバ新世代の筆頭とも言えるテルマリージューサインタラクティボ(下写真)という3者が揃って登場するなんて凄いですね。
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次はラテン・パーカッションが乱れ飛ぶダブ・ステップ的ダンス・ナンバーAndalu。ここでもピアノが効果的な演出でラテン的ムードを盛り上げます。そして、再びテルマリー登場のダブ・ステップ的なナンバーWindows And Mirrorsでは不穏な旋律にわざと感情を抑えたテルマリーのクールな高速ラッピングがむちゃくちゃカッコ良いです。

キューバ録音による「サルソウル」の大御所ヴィンセント・モンタナのカヴァーLos Bravos。これはホントに痺れますよ。インタラクティボジューサ、そしてオルケスタ・デ・ラ・ルスの3者が渾然一体となって奏でるファニアオールスターズばりの素晴らしいサルサ・ナンバー。トランペット、サックス、トロンボーンのファンキーなブラスに、ヴァイオリンの旋律が絡んでくる瞬間は何度聴いても痺れます。ロベルト・カルカセスの跳ねるようなピアノ、そしてファンキーに唸るベース、リズムチェンジして展開される後半のジャムっぽい演奏もカッコ良すぎますね。必聴です
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人的パーカッションがハウス的な高揚感を感じさせるViento Misterio、ダビィなベースラインがウネリまくるダブ・ステップ246‐20El Fantasma De La Libertadテルマリーの超高速ラップが炸裂)は古き良き伝統音楽とは一味違った近未来感を出しています。

哀愁漂うナンバーBesosもオススメ。これは前述の「from “El Fantasma De La Libertad”」に収録されていたのもですが、テルマリーが他の曲で見せていた攻撃的なラップを封印し、歌う様な知的なポエットリー・リーディングで聴かせます。しかしテルマリーという人は、色んな側面を見せてくれますね。ちょっと只者ではないですね。
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最後を飾るのは、ラファエル・セバーグ自身もヴォーカルで参加した実に落ち着いたラテン・ジャズ・ナンバーTout Oublie。サウダーヂ感のあるムーディなスロー・ジャズでしっとりと幕を下ろします。

とにかく徹頭徹尾ラテンへの愛情に溢れた一枚。そして世界的にも注目を集めるキューバ新世代ミュージシャンの起用も素晴らしい効果を生み出しています。特にテルマリーの働きは想像以上の素晴らしさです。彼女がいなければこのアルバムの印象も大きく変わっていたでしょう。そしてラテンへの郷愁だけでなく、未来も見据えた豊潤で刺激的なサウンド。何度も言うがこれはラテン・ブレイクビーツの最高傑作。
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個人的には2008年度ベスト・アルバム候補の1枚!是非チェックして下さい。
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by Blacksmoker | 2008-05-25 00:47 | TECHNO

NINE INCH NAILS [GhostsⅠ-Ⅳ]


f0045842_1951583.jpg個人的には、1999年のアルバム「The Fragile」以降のNine Inch Nailsからは遠ざかってました。

何か変にマッチョ化してしまったトレント・レズナーの風貌に比例して楽曲もマッチョ化してしまったようで、あまり好みではなくなってしまい、2005年の「With Teeth」と2007年の「Year Zero」はほとんど耳にすることなくスルーしてしまっていたわけですが、この新作「GhostsⅠ-Ⅳ」には少なからず再び興味を持ってしまいましたね。

最近のNINはレコード会社に所属しないフリー・エージェント状態で、レコード会社の足枷が無くなった事で、インターネットを駆使していろいろと面白い試みを始めています。

そして突如アナウンスされたこの新作「GhostsⅠ-Ⅳ」。何と全編インストによる2枚組36曲の大作。しかもこれがたった10日間でレコーディングされたというから驚きです。今のトレント・レズナーには制作意欲が溢れている事を証明するような作品。レコード店での発売に先駆けてオフィシャル・サイトで4つのヴァージョン(CD、DVDオーディオ、アナログ盤、mp3)で販売された話題の作品です。
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個人的にはNINの曲の中でも「Downward Spiral」Hurtや、「The Fragile」La Merといったインスト曲やアンビエント・サイドの曲に魅力を感じていたので、今回のこのアルバムには期待していたのですが、これが予想以上に面白いアルバムでした。

Ghosts」というタイトルで4つの楽章に分かれており、1つの楽章にそれぞれ9曲が収められている(2枚組なので1枚目が「Ghosts Ⅰ-Ⅱ」、2枚目が「Ghosts Ⅲ-Ⅳ」というわけです)。基本的にはトレント・レズナーアティカス・ロス(この人は元Bomb The Bassのプログラマーだそうです)の2人により作られた楽曲をアラン・モウルダーMy Bloody Valentineの新作には参加しているのでしょうか?)がミックスしたもので、そこに数人のゲスト・ミュージシャンを迎えて作られている。
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「Ⅰ」、「Ⅱ」、「Ⅲ」、「Ⅳ」のそれぞれに別段テーマがあるように思えないが(曲名もないし)、明らかにマッチョ化したNINとは別の顔を見せる実験的な楽曲が多く嬉しい限り。個人的にはこういう曲が大好きです。制作までにとてつもない時間と労力を費やした1999年の「The Fragile」にも似た雰囲気を感じます(まあ、あの「The Fragile」の途方も無い緻密で重厚な音作りに比べると、一気に制作しただけあって本作は軽めですが)。
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しかし「The Fragile」と決定的に違うのは、その楽曲のバリエーションの豊かさ。「Downward Spiral」期を彷彿させるような従来のNINを踏襲するカオスなサウンドももちろんありますが、それ以上に耳を惹くのがヴォーカルという制約のなくなった楽曲の自由度だ。ほとんどピアノ・ソロといった曲もあれば、初期の「ボディ系」と呼ばれていたいた頃のようなサウンドの曲もあるし、アインシュテルツェンデ・ノイバウテンのようなメタル・パーカッション的な曲もあるし、荒涼たる大地にバンジョーが鳴り響くEarthを彷彿させる曲もある。そして従来のNINからは全く想像も出来ないくらいのサントラのような曲もある。80年代エレポップのよなチープなシンセサイザーによるビートが鳴る曲もある。

そしてゲストのエイドリアン・ブリュー(下写真)の参加したディストーション・ギターが炸裂する曲などもあって、それぞれが楽しめます。1曲が3分くらいの短さでまとめられているのが、「作り込んだ」というよりも、思いついたアイディアを「詰め込んだ」といった感じです。
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個人的一番好きなのが「13曲目」。ブライアン・イーノ的アンビエントなピアノのフレーズに、明らかにフェネス以降のグリッチ・ノイズが薄っすらと導入されたこの曲の美しさは特筆ものです。是非とも5.1chサラウンドのDVDオーディオ盤でも聴いてみたいですね。

従来のNINとは違ったアナザー・サイドが窺える面白い作品。是非とも聴いてみて欲しいです。そういや長いことGuns ‘N Rosesに盗られていたギタリスト、ロビン・フィンクNINに戻ってくるようでこれからの彼らには注目ですね。
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と、思っていたら何とまた突如、全曲ヴォーカル入りの純然たる新作「The Slip」(下写真)がリリース!しかも無料ダウンロード!!
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いやぁ凄い事になってますね!

 
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by Blacksmoker | 2008-05-22 00:39 | ROCK

LALAH HATHAWAY @ Billboard Live Osaka 5/9(金) 2008


もはや「ダニー・ハサウェイの娘」という形容詞はいらない。
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レイラ・ハサウェイの歌声には独特のソウルがある。もちろん偉大なるレジェンドである父親から受け継いだソウルもあるが、彼女の才能はそれだけに留まらない。彼女は別に特徴的なダミ声でもなければ、極端に高音を出すわけでもない。派手さはないが、ハスキーで上品さの漂うその歌声にはレイラ・ハサウェイのオリジナリティがある。

しかしレコードでは、そのレイラのヴォーカルが周りの音に埋もれているようで、スッと入ってくる穏やかさなど良い部分があまり反映されていないように思えたんですが、プロダクションにも関わる彼女のことだから、おそらくそれは意図的なのだろう。
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今回のライヴで感じたことは、彼女の声はあまり前に出すぎない。主張することなく静かに穏やかに周囲の音と一体化する。これが新たに発見した彼女の声の魅力だ。声量がないので出来ないのではなく、あえてそういう風にしているというのは、今回のライヴを観てより鮮明に理解できました。何たって彼女は声を張り上げてちゃんと歌う事も出来るのだ。そしてその低くハスキーな声は周りの音と調和してしまうほどナチュラル(昨年リリースされたEarth, Wind & Fireのトリビュート・アルバム「Interpretations: Celebrating the Music of Earth, Wind and Fire」にレイラの歌ったLove's Holidayが収録されていましたが、初めて聴いたときは男の人が歌ってるのかと思ったほどです)。

復活した名門ソウル・レーベル「STAX」に移籍して4年振りとなるf0045842_23332989.jpg新作「Self Portrait」(右写真)が、今回の来日直前のタイミングでリリースされましたが、このアルバムも作曲者としてラサーン・パターソンや、レディシをブレイクに導いたレックス・ライドアウトレイラの前作「Outrun The Sky」にも参加してました)、そしてFamily Standのシンガーのサンドラ・セイント・ビクターなどを迎えた鉄壁な布陣で、さぞ「攻めの姿勢」でくる内容のアルバムかと思いきや、めちゃくちゃメロウで落ち着いたアルバムで意外だったんですが、今回のライヴを観た今となってはこの作風は理解出来る。

今のレイラは既存の「R&Bのゲーム」の中にはいない。斬新なサウンドでアヴァンギャルドになる必要もないし、有名ラッパーを迎える必要もないし、ましてやT-Painを迎える必要だってない。ただ気の向くままに気持ち良く歌っているのが、今のレイラ・ハサウェイの実態だろう。
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バンド・メンバーだって着飾ることなく、全員普段着のまま(リハーサルと思ってしまうほど)。レイラ自分が前に出るタイプではなく、各メンバーにもじっくりソロ・パートを担当させ、自身が音に一体化する事を楽しんでいるようです。ドラマーのエリック・シーツやキーボーディストのマイケル・アーバーグなど凄腕揃いだが、皆リラックスした雰囲気だ。

選曲は新作「Self Portrait」より1stシングルLet Goでスタート。この後もこのアルバムからの曲を披露。前作「Outrun The Sky」からの曲もチョイスされてましたが、やはりハイライトはルーサー・ヴァンドロスのナンバーForever, For Always, For Love
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インパクトのある決め曲がないと言われるレイラ。やはり曲が良いと素晴らしくその声も映えますね。ナチュラルに染み込んでくる声で歌われる名曲。いつまでも続いていて欲しいと思わせるほどの心地良さでしたね。

見た目や風貌はレディシによく似ているが、歌の聴かせ方は全く別のベクトルを向いています。このレイラ・ハサウェイには新たな歌の楽しみ方を発見させられましたね。

父親とは全く異なるタイプのシンガーですが、彼女も素晴らしいソウル・シンガーだと断言しよう。
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by Blacksmoker | 2008-05-19 00:11 | ライブレポート

EXTREME THE DOJO VOL.20 [出演:AT THE GATES, DILLINGER ESCAPE PLAN, MAYHEM] @難波Hatch 5/8(木) 2008


もはやBlacksmokerのライフワーク・イベントとも言える「Extreme The Dojo」シリーズ。

参戦率8割を超えるイベントですが、初めて参戦したのが2002年にEyehategodSoilent Greenが登場した「Vol.2」ですから、今年で早くも6年になります。2004年には開催10回目を記念したイベント(ヘッドライナーはAnthraxでした)が行われましたが、今回は20回目を記念したスペシャル・イベントです。

会場に着くと既にInto Eternityというバンドは終わっており、Pig Destroyerが演奏中。このPig Destroyerは観るのは2度目だが、相変わらずグラインド指数が異常に高い!
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Anal Cuntスコット・ハルによる12弦ギターから繰り出される超絶なスラッシュ・リフも強烈だが、やはりドラムのブラストビートの凄さには圧倒されます。SE担当もいてノイズまみれな素晴らしいグラインド・コアを炸裂させていましたが、そんな彼らが1000人は入るであろうデカいホールの会場で演奏しているのが面白かったですね。違和感ありすぎ。そして、あまりの超絶なスピードに観客も完璧に置いてけぼり。最高でしたね。

続いては今回、Blacksmokerの一番楽しみにしていたバンド、Mayhemの登場。
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90年前半に教会放火や殺人などの残虐な悪行で世界を震撼させた北欧ブラックメタル・シーン。そしてその中でブラックメタルに燦然と輝く最高傑作「De Mysteriis Dom Sathanas」(右写真)を創り上げf0045842_236843.jpgMayhem。その狂気を孕んだ時代の空気を凝縮したようなアルバムは、前任ヴォーカリストがショットガンで頭ぶち抜いて自殺、ギタリストのユーロニモスがナイフでメッタ刺しにされ殺害(しかも何とこのアルバムでベースを弾いているカウント・グリシュナックユーロニモスを殺害した張本人!)という、とんでもない話題性でもって今や伝説となっていますが、後続まで影響を与えることになるその残虐な音楽性も唯一無二のアルバムです。

そのMayhemが遂に初来日。伝説のEmperorのメンバーが結成したZyklonなど数々のブラックメタル・バンドが来日する中で、最後の大物ともいえるMayhemが遂に日本の地を踏むという、これはある意味「事件」なのです。

2007年に、「De Mysteriis Dom Sathanas」でヴォーカルをとっていた奇才アッティラ・シハー(左写真)がf0045842_239823.jpg復帰したアルバム「Ordo Ad Chao」をリリースしいまだにその影響力は絶大なこのMayhemアッティラ・シハーは、昨年日本を震撼させたSunn O)))の伝説の来日公演に参加しその呪術的なヴォーカルで観る者を震え上がらせたわけですが、そのアッティラをフロントに据え、ドラムには名盤「De Mysteriis Dom Sathanas」でドラムを叩いていたヘルハマー、そしてユーロニモス殺害事件後に加入したギタリストのブラスフェイマー、そしてベーシストのネクロブッチャー(初期Mayhemのメンバーで事件後に再加入)というメンバー構成。もうこの時点で「凄い」わけですがステージはさらに凄かったです。

まずはステージ中央には祭壇のようなものが置かれており、その祭壇には本物の豚の頭と足、そして地球儀、さらに2本の蝋燭が置かれ黒魔術的な異様な雰囲気を出している。そして薄暗い照明の中、遂にMayhem登場。
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最新作「Ordo Ad Chao」よりWalls Of Waterで幕を開けたステージ。既にスタンバイしたメンバーの中で一番最後にステージに現れたブラックメタル界でも唯一無二の奇才アッティラ。毎回異様で奇抜な衣装を身に纏い登場するわけですが(衣装というより特殊メイク)、今回は真っ白な作業着の衣装でエプロンをつけまるで料理人のような格好をして、顔にはゾンビのような特殊メイク!もう異常な存在感です。
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そしてそのヴォーカルは従来のブラックメタルを超越しています。Sunn O)))の来日公演でも披露したそのヴォーカルはやっぱり凄い。凄いというは怖い。オペラ的な声、地の底で蠢くような呻き声、狂気に満ちた咆哮など使い分けるその表現力はハンパじゃない。

そして、もう「要塞」とも言うべきドラムセットに囲まれたヘルハマーのドラムも常軌を逸しているとしか言いようのない壮絶さ。何なんだこの凄さは!そして全く動くことなく黙々とギターとベースを演奏するブラスフェイマーネクロブッチャー。動かないながらも出す音は邪悪そのもの。ちなみに1995年にヘヴィ・メタルを考察したドキュメンタリー映画「メタル:ヘッドバンガーズ・ジャーニー」の中に、このブラスフェイマーネクロブッチャーの2人のインタヴューが収録されていますが、最初から最後まで「Fuck You!」としか言っていない壮絶なインタヴューで必見です!
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選曲は最新作「Ordo Ad Chao」を中心に過去の代表曲をバランスよく配置。最新作でのスローパートも存分に盛り込んだ展開のある曲がカッコイイ。アッティラはナイフを振り回したり、奇怪な動きで、どんどんその異様な存在感を増していきます。豚の頭にナイフを突きたて、地球儀にワインをかけ、その宗教的儀式とも言えるパフォーマンスに目が釘付けになります。もの凄いおどろしい声で「オオサカ~」とか「アリガト~」とか言うアッティラには笑えましたね。
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後半になりアッティラのコールによりFreezing Moonが遂にドロップ。名盤「De Mysteriis Dom Sathanas」に収録されているブラックメタル屈指の超名曲!!震え上がりました。会場からの歓声もハンパなし。面白かったのは、ブラックメタルというものは、残虐性を際立たせるためにわざと音質を悪くしたサウンドにしているのですが(8トラックでのレコーディングなら「やりすぎ」らしい)、ライブでは逆に音の分離が良すぎてハイクオリティなサウンドになっていてそれがとても新鮮でしたね。しかもそういうハイクオリティなサウンドになることでより曲の凄さが際立っていましたね。
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最後はPure Fucking Armagedonアッティラも祭壇を破壊して、大盛り上がり。最後の大物Mayhemの初来日は観る者に最大級のインパクトを去っていきましたね。ブラックメタル界のレジェンドの噂通りのハンパない壮絶なステージング。完全に捻じ伏せられました。

さて次はカオティック・コアのキングDillinger Escape Plan
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新作「Ire Works」も好調な彼らですが彼らのライヴは3回目。正直言うとBlacksmokerDillinger Escape Planの初代ヴォーカリストのディミトリがいた頃のライヴの凄さを体感しているので、今のヴォーカリストのグレッグにはかなりの物足りなさを感じていたのですが(もちろんグレッグも凄いんですが、ディミトリの方が数倍狂ってます)、今回のステージではなかなかグレッグの堂々たるステージングも貫禄が出てきて見直しました。
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しかし毎回思うんですがコイツラの演奏はありえない!あんなテクニカルな演奏なのにギタリストはギターはブンブン振り回しすぎ!他のメンバーも暴れまくりで凄い。なんであんなに大暴れしているのに、こんな高度な演奏が出来るのかが分かりません。
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海兵隊あがりのような筋骨隆々のグレッグTestamentのTシャツもナイス!)はアンプをステージ前に引っ張り出してきてその上に乗って客を煽動。早くもフロアにはモッシュピットが出現。その後も客席にダイブかましたり最高すぎるアクションでガッチリと客をロックしてました。まさしくカオティック!

そしてヘッドライナーにはAt The Gatesが登場。
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1995年にメロディック・デスメタルの名盤中の名盤「Slaughter Of The Soul」(右写真)をリリースし翌96年に解散、その後このアルバムは数多くのフォロアーを生み出したスウェーデンのデスメタル界のカリスマ的存在At The Gates。先日スウェーデンの音楽専門誌「Close-Up」が1991年以降にf0045842_23263441.gifリリースされたメタル、ハード・ロック、ハードコア、パンクの中で最も優れたアルバムを100枚選ぶという企画を行ったところ、第1位が何とこのAt The Gates「Slaughter Of The Soul」でした(ちなみに2位がMetallicaの「Metallica」で、3位がPantera「Vulgar Display Of Power」)。正直言うと私自身このアルバムにはそこまで入れ込んでなかったんですが、このアルバムにそこまで影響力があるとは私も想像出来ませんでしたね。確かにKillswitch Engageとか、In Flamesとか、Shadows Fallとか明らかにAt The Gatesのフォロアーだろうバンドを数々生み出した功績は大きいです。

さてそんなAt The Gatesが2008年に一時的に再結成。その再結成初のライブがこの日本公演というから会場の気合いや熱気もハンパない。凄い歓声を受けてAt The Gatesのメンバーが登場。
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ボーカルはどこかで観たことあるなぁと思ったら、2002年の「Extreme The Dojo Vol.4」に登場したバンドLock UpNapalm Deathシェーン・エンバリーと故ジェシー・ピンタードによるプロジェクト)のボーカリストとして来日していた人でした。

一発目からいきなり名曲Slaughter Of The Soul!もう会場が爆発したといっても言い盛り上がり。
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その後もこのアルバムからのナンバーの応酬。ビシビシ決まる演奏が異常なほどのカタルシスを生み出します。いちいちキレの鋭いスラッシーなツイン・ギターやタイトなドラミングにもうアドレナリンが出まくり。Suicide NationNeedなど久しぶりに聴きましたが今でも十分に通用する殺傷力を持っています。
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アンコールは名曲中の名曲Blinded By Fear。さすがこの名曲の破壊力は凄かったですね。モッシュも激しくなりクラウド・サーファーが続出。当初この曲が聴ければもう十分だと思ってましたが、他の曲も圧倒的な演奏力の凄さで完全に捻じ伏せられたと言っても良いでしょう。参りました。

今回の「Vol.20」はお祭り的要素の高いイベントの様相でしたが、蓋を開けてみれば全くそんな事はない壮絶な演奏を見せ付けたバンドばかりでした。しかしこれでこそこのイベントの醍醐味。初めて体験するこの手のバンドの凄さに圧倒されるカタルシスは何物にも代えがたいですね。

次回もエクストリームなバンドを期待しています!

  
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by Blacksmoker | 2008-05-16 00:02 | ライブレポート

CHICKS ON SPEED [Art Rules] @ 京都国立近代美術館 5/3(土) 2008


東京で開催拒否され、愛知でも拒否され、日本では唯一京都国立近代美術館しか開催許可が下りなかったといういわくつきの公演「Art Rules」
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これはドイツのミュンヘンを中心とするエレクトロ・ユニット、チックス・オン・スピードを中心とするプロジェクトで、彼女達以外に美術・ファッション・音楽などそれぞれの分野で活躍するアーティストが加わりパフォーマンス/インスタレーションを行います。

世界各国の主要美術館を廻るこのプロジェクトですが、事前に彼女達が掲げたマニフェストというのがかなりパンク。とにかくいっぱいマニフェストが掲げてあるんですが、その中から抜粋すると以下の通り。

「セックスを売れ」
「マスコミと美術館の奴隷になるべからず」
「目で飲め、つま先で嗅げ」
「合理的になるな(合理的になると合理的であるために合理的に合理的でしかなくなるから)」
「くぐった扉はあけたまま、やってその後はとっちらかしていけ」


などなど、過激な事を言っています。
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すでにNY(ニューヨーク近代美術館)やパリ(ポンピドゥー・センター)などで公演を行い、その過激さが大変な話題となっています。実際にパリ公演を観た友人から聞きましたが、前列にいたオシャレにキメた客にペンキをぶっかけて大騒ぎになったようですね。今回の京都公演もその噂からか前売りチケット200枚が即完売。当日券も即完売してしまったようですね。実はチックスのメンバーは1ヶ月くらい前から京都入りし、制作にあたっていたようです。さて会場に入るとブラックライトが光るステージ上に赤いハイヒールとかミシンとか様々なものが置いてある。そしてステージ中央には大きなガラスケースが置いてあり、その中に全裸の男が1人入れられています。(下写真)
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汗まみれで、酸素がなくなって息苦しそうにしているこの男というのがスコットランド出身の現代美術家のダグラス・ゴードン(左写f0045842_482715.jpg真)。美術界では相当有名な人で、最近ではフランスのサッカー選手ジダンのプレーを17台のカメラで追ったドキュメンタリー映画「ジダン 神が愛した男」の監督としても有名です(ちなみにこの映画のサウンドトラックはMogwaiが手掛けています)。しかし、そんな人がなんで裸で苦しそうにガラスケースに入れられているんだ?

そうこうしてるうちにチックスのお姉さま方の登場。
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全員日本の着物を独自にアレンジした衣装(チックス・オン・スピード=COSと、着物=KIMONOを足してCOSKIMONOという名前だそうです・・・)で、顔にド派手なメイクを施して雄叫びをあげまくり。そしてチープなエレクトロ・ビートでダンスを始めたかと思うと、突然ステージに客を上げだしダンス大会(総勢30人くらいが上がっていたでしょうか)。もちろんBlacksmokerも上がってました。

その後、一旦客達はステージから降ろされ、ステージに置かれている教壇にはチックスが大学の教授ばりに上がりアートとセックスの関係について講義(日本語通訳付き)。様々な芸術家達の作品をスクリーンに映し出し、ユーモアを交えながら評していきます。前衛芸術家の草間彌生(下写真)の作品を写して「彼女こそ真のアーティスト」と絶賛していたのが印象的でした。
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その後、和服で正装した琴奏者を迎えてダグラス・ゴードンがその琴をバックに歌ったり、前衛舞踏家を交えてダンスを披露したり、チックスのお姉さん達が真っ裸で人拓を取るパフォーマンス映像を流したりと、前衛アートの歴史のオマージュ的なパフォーマンスが続々登場。

中盤からは大阪からOOIOO(下写真)がパフォーマンスに参加。
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楽器は持たず全員サンプラーを手にして日本民謡を輪唱。エフェクトの掛かった声がどんどん重なっていきトランス感を誘発させます。

終盤に進むにつれパフォーマンスはより過激に。どんどん肌の露出も高くなっていきます。突如メンバーがハサミを持ちメンバーの髪の毛をバッサリ切り落としたり、ダグラス・ゴードンを裸にしてアナログ・レコードを一枚一枚、彼のお尻で叩き割ったりとカオス度も高まって行きます。

そして5月にリリースされる新曲Art Rules(右写真)もf0045842_551243.jpg披露。以前はFashion Rulesなんて曲も出している彼女達ですが、今回のタイトルはArt Rules。そのタイトルにはどこかアート批判めいたアイロニーが盛り込まれていて面白い。スノッブになりすぎたアートというものは、実はこのある意味キワいパフォーマンスと紙一重なのだという事を証明してくれてる。あのダグラス・ゴードンを裸にして、般若の面を被せてギターを演奏させるなんて強烈なアイロニーだ(でもダグラスもとても楽しそう)。パリ公演の会場となったポンピドゥー・センターで前列のドレスアップしたスノッブな客にペンキをかけたというのもそういった意味を持っているに違いない(客はブチ切れてたそうですが)。この公演を世界の美術館で行うというのも、実に確信的。

最後は出演者が全員全裸で登場。スモークとストロボライトのフラッシュの中、お互いに体中ペンキを塗りたくって壁やら床やらにドローイング。
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これが壮絶。遠い過去にTVや写真で目にした事のあるような何か80年代のアンダーグラウンド・アートの1シーンを観ているかのような錯覚に陥りましたね(それこそアインシュテルツェンデ・ノイバウテンスロッビング・グリッスルのライブを生で観たような感覚でしょうか!)。
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そして壁には蛍光塗料で大きく「ART?」の文字。この言葉こそが本公演の本質。「これがアートかどうかは自身で判断しろ」という事です。まさしくマニフェスト通り。このアートの外側からのアートへの投げかけ。しかもそこにダグラス・ゴードンというアート界のど真ん中にいる人物まで取り込んでいるのがなかなか痛快です。要するにこの「アート批判」のパフォーマンスを批判することは、アートを批判する事になってしまうというパラドックスの構図。なかなか最高じゃないですか。
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視覚的・聴覚的にも面白い刺激的なパフォーマンス。観た後も軽い興奮と疲労感が残り、心地良い気持ちで帰途に着いた京都の夜でした。
 
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by Blacksmoker | 2008-05-11 03:29 | ライブレポート

AMEL LARRIEUX @ Billboard Live Osaka 4/28(月) 2008


グランジ/オルタナティヴ旋風の吹き荒れる1995年頃。思考や言動までもBeavis & Butthead化していた若き日のBlacksmokerですが、当時やたらMTVで流れていたGroove TheoryTell Meには耳を奪われた記憶があります(この曲と、あとMary J.BligeNot Gon Cryは特に)。

あれから10数年、そんなグランジロッカーだった私がアメールのライブに行くことになるとは奇妙な巡り合わせです。
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アメール・ラリュー。当時大ブレイクしたGroove Theoryを音楽性の違いから脱退しソロに転向。その繊細な歌声とエキセントリックな美貌の彼女だが個人的にはなぜか当時人気だったSadeなんかと被ってるような気がしてあまり進んで聴こうとは思わなかったんですが、ようやく今になって私の嗜好が合致してきたので、その中でのこのアメールの来日は絶好のタイミングです。

f0045842_1972947.jpg昨年リリースされたアメリカン・ジャズ・スタンダードを歌ったアルバム「Lovely Standards」(右写真)後のツアーなので、ライブの方もこのジャズ路線で来るのかと思いきや、意外や意外、アメール・ビギナーにも十分対応出来るヒット曲・代表曲満載の内容でした。

バックバンドには、キーボード、ドラム、そしてベース×2、バッキング・ボーカルの女性シンガーというメンバー。ベーシストが2人という構成はなかなか久しぶりに観ます(全然関係ないですが、ツイン・ベースと聞くとアメールと同郷NY出身のハードコア・バンドCop Shoot Copを思い出します・・・)。

さて当のアメール・ラリューは長かった髪を肩までバッサリと落としてガーリーな髪型。黒のドレスで身を包み、黒の扇子を持って登場。アフリカン・アメリカンとヨーロッパの血を受け継ぐアメールらしく、そのエキセントリックな風貌と、手足の長い抜群のスタイルをした出で立ちはホントに美しい
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ちなみにアメールが登場時に持っていた黒い扇子は、一緒に行っていたマイメン、シスタcathcafire氏が開演前にアメールにプレゼントしたもので、1曲目が終わったところでアメールがステージから僕らのいるテーブルまで降りてきてくれたのにはちょっとビックリしてしまいました・・・。

さてさてアメールは予想以上にアクティヴ。個人的にアメールにはかなり大人しく落ち着いたSadeのようなイメージを持っていましたが、まったく違ってよく喋りよく動く。マイクを両手でガッチリと握り締めカッと目を開いて歌う姿は初めて観たので、かなり新鮮でした。ベース2台の絡み(1台はほぼギターとして機能していて、もう1台はウッドベース)もなかなかでNYの地下音楽の先鋭的な臭いも感じましたね。

そしてアメールの横でもの静かに佇むアフf0045842_19125287.jpgリカ系の女性シンガー。この人の存在感が凄い。ステージではほとんどその歌声を披露することなくアメールのバッキング・コーラスをしていただけだったんですが、ついつい彼女に目が行ってしまうほどの存在感。「もしかしたらコイツはNYのNext Big Thingなのか?」と思いきや、この人既にキャリアもあるQueen Aaminahというシンガーでした。彼女のホームページで彼女の歌をチェックしてみたら、これがめちゃくちゃ良くて驚き!是非とも新しい音源を聴いてみたいですね。

セットリストの方は代表曲満載。最新アルバム「Lovely Standards」からは1曲目を飾っていたIf I Were A Bellをさらっと披露したのみでした。Sweet MiseryMake Me Wholeといった美しい曲も聴けたのが感動。特にピアノをバックに歌われたMake Me Wholeの儚さと力強さが同居した歌声は感涙モノでした。アメールはR&Bシンガーとしては決して特徴的な声をしているわけではないんですが、そのストレートな声の「通り」はズバ抜けて良い。ある種のマジックとも言えるストレートな響きがとても素晴らしいですね。
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あと日本公演という事で特別にMondo Grossoとの共演曲Now You Know Betterを披露。思いっきり記憶から遠ざかっていた曲でしたが、改めて聴いてみると素敵な曲です。

終盤はベース2台を活かしたGiving Something Up。ファンキーにロング・ヴァージョンで仕上げていてめちゃくちゃクールな出来栄え。それに合わせてアメールも50Centばりにドレスの股間をワイルドに握り締めラップしていたのが可笑しかったです。さすがブルックリン出身!こういう血も受け継いでいるんですね(笑)。最後は珍しくスキャットも披露してました。
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そしてイントロで会場が大爆発だったGet Up!私の最も好きな曲なのでこの素晴らしい盛り上がりに大感動。アメールも客席まで降りてきて客にコーラスを歌わせたりして(またマイク向けられた客も素晴らしい返しをしたりして)会場が一体となった瞬間でしたね。素晴らしい瞬間でした。アメールもご満悦の様子でステージを後にして去って行きました。

そしてアンコールには何とGroove TheoryTell Meアメールさん、やっぱやるんですね、この曲。今とはまったく音楽性が違うこの曲ですが、やっぱり演奏されると盛り上がります。ヒット曲の威力というのは凄いです。

予想以上にアクティヴなステージで会場をロックさせたアメール。個人的に持っていた大人しいイメージを粉砕してくれました。しかもフレンドリーで気さくなその性格も相まって私は今回のステージを観てよりアメールのファンになりましたね。

次のオリジナル作品がますます楽しみになりました。そしてアメールさん、是非あなたのレーベルからQueen Aaminahの作品を出してあげて下さい!

 
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by Blacksmoker | 2008-05-08 00:02 | ライブレポート

告知●●「チューバイカ Vol.15」 @common cafe●●


何かchbyka.comのホームページが消えちゃったみたいで告知遅くなりましたが、実は明日、

『チューバイカ vol.15』 開催します。

●●「チューバイカ Vol.15 @common cafe」●●

■2008年5月4日(日)
■17:30スタート
■入場無料

17:30-18:10 KBKW
18:10-18:50 N.O.Z.
18:50-19:30 Cameo
19:30-20:10 waterloo
20:10-20:50 TB Arkestra
20:50-21:30 mDA
21:30-22:10 q-ga
22:10-22:50 mojamaki
22:50-23:30 Blacksmoker


■food: 出張カフェ「太陽ノ塔」
■地図はこちら
http://www.talkin-about.com/cafe/map.html

<Notice!>
今回は終電までのイベントになります。

私、Blacksmokerはラストのいわゆるヘッドライナーとして登場します!

GWということで今回も手加減しません!

 
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by Blacksmoker | 2008-05-03 14:23 | 告知

ADRIANA CALCANHOTTO [Maré]


f0045842_2415731.jpg2007年にモレーノドメニコカシンというブラジル新世代の3人を引き連れて待望の初来日を果たし独特の存在感を見せ付けた大物個性派シンガー、アドリアーナ・カルカニョット。遂に新作「Maré」の登場です。

2004年の子供向けに作ったアドリアーナ・パルチンピン名義のアルバム「Adriana Partimpin」、そしてそのライヴDVD「Adriana Partimpim O Show」のリリースはありましたが、純粋なオリジナル作品としては2002年の「Cantada」以来6年振りの作品。これは今年のブラジル音楽界最大の話題作でしょう。

知的でアートさの漂うジャケットからも伺い取れる雰囲気はそのままに、アドリアーナ特有の物憂げなメロディが冴えます。
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Maré」とは「潮流」という意味だそうで、同じ海をモチーフにしたアルバムとして1998年の「Maritmo」を思い出しますが、どちらかと言うと前作「Cantada」よりも「Maritmo」に近い感じがします(ちなみにアドリアーナとしては海をテーマとしたアルバムをもう1つ作る予定だそうです)。

個人的にアドリアーナのアルバムは一聴してもなかなかその全貌を掴めないものが多く、最初はピンと来ない事が多い(まあ「Adriana Partimpin」は別でしたが)。しかしアルバムを何度か聴いていくと常に新しい発見があり、いつの間にか好きになっているという不思議な魅力を持っている。
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好敵手とされるマリーザ・モンチが音楽的にはどちらかというと王道的な路線で国民的人気を博するのに対し、アドリアーナ・カルカニョットは完全なオルタナティブ路線で国民的人気を博する。マリーザキャロル・キングとするならば、アドリアーナはさしずめジョニ・ミッチェル。日本で言うとUA的な存在ですね。今回のこの「Maré」も一聴すると、(メロディの際立った曲もありますが)どちらかと言うと地味目な印象を受けるのですが、聴く度にどんどんハマっていく魅力を持っています。
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そして、今回のアルバムはかなり話題になる要素が多い。

まずは何と言っても昨年の初来日公演にも帯同したモレーノドメニコカシンという曲者3人がアルバムに全面参加していること。来日時のアナウンスでは「今回のツアーの為だけの特別編成」という触れ込みでしたが、ライブを観た人ならお分かりのように3人との相性の良さは予想以上で、それを活かして今回のアルバムも作ってしまったのでしょう。
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この3人はバックの演奏だけでなく、曲作りにも関わっており、モレーノ(下写真)とアドリアーナの共作曲Maréや、カシンの作曲したUm Dia Dessesも収録されています。特にアコースティックの優しい響きが美しい牧歌的なUm Dia Dessesはとても素敵です。この曲は確か来日公演でも披露されてましたね(モレーノのコーラスがとても良いです)。
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そして最大の話題となるのはマリーザ・モンチの参加でしょう!マリf0045842_2521641.jpgーザの2006年のアルバム「Infinito Particular」アドリアーナ作のVai Saber?が収録されていましたが、今回は逆にマリーザが参加。ペリクレス・カヴァルカンチ作のPorto Alegreマリーザとデュエットしています。このブラジルの2大女王の揃い踏みはなかなか凄い。アルバム中、最もポップで軽快なメロディを聴かせます。必聴。

最終曲2曲はカエターノ・ヴェローゾOnde Andarásと、ドリヴァル・カイミSargaço Marという偉大なるブラジル音楽の先達のカヴァー。女カエターノと称されるアドリアーナだけあって、カエターノのカヴァーもお手の物ですね。そしてSargaço Marの方は1分30秒という小曲ながら何とヴィオラォンでジルベルト・ジルが参加。現ブラジル文化大臣であるジルベルト・ジル(9月に来日決定!)をこんな所で使うとは・・・贅沢すぎます。
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そして今作をプロデュースするのはアート・リンゼイ。アコースティックで生々しい感覚を残しつつも随所にアヴァンギャルドっぽい音を入れるサウンドはやっぱりカッコイイ。

全体的に昨年の来日公演のステージを観ているような作風。ドメニコがMPCを叩き、モレーノがファルセットで歌いながらギターを弾き、カシンが飄々とギターやベースを演奏する姿が目に浮かびますね。もちろんスタジオ録音だけあってホーン・セクションを採り入れた曲もあったりと遊び心も満載。
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一筋ならではいかないながらも、とても聴き応えのある実にアドリアーナ・カルカニョットらしいアルバム。何度も聴いてその素晴らしさを発見しよう。
 
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by Blacksmoker | 2008-05-01 02:14 | ブラジル