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FLYING LOTUS [Los Angeles]


新たなる才能。

f0045842_22261044.jpgこれは次世代エレクトロニカか?ヒップホップのNextレベルか?その両方をも内包する孤高のサウンド・クリエイター、Flying Lotus。LA出身の25歳、スティーヴン・エリソンによるソロ・ユニットであるFlying Lotusの新作「Los Angeles」がイギリスのテクノ・レーベルの名門「Warp」からのリリース。個人的には2007年に、同じ「Warp」からリリースされたBattlesの1stアルバム「Mirrored」以来の衝撃です。

ビート・ジャンキー達は挙ってFlying Lotusを「ポスト・Jディラ」的存在として捉えているようだが、Flying Lotusのビートはサンプリング主体ではなくあくまでデジタル主体。
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たしかにドラムのビートの強度はヒップホップ的だが、Flying Lotusの場合はどちらかと言うとエレクトロニカからヒップホップへ接近したサウンドで、個人的にはJ・ディラというよりスコット・ヘレンPrefuse 73に近い存在だ。(Prefuse 73の2005年のアルバム「Surrounded By Silence」も多数のラッパーを迎えたヒップホップ・アルバムでしたね。)

しかしPrefuse 73と違って、Flying Lotusのサウンドはもっとダークでありサイケデリックであり、もっと近未来的。

近未来的」というと誰もが「ブレードランナー」の世界観を思い浮かべると思いますが、確かにそういう世界観も十分にありますが、それ以外にも個人的には「バットマン」のゴッサム・シティのようなダークな雰囲気や、「マトリックス」のザイオンのようなフューチャリスティックでありながらも退廃的な雰囲気も感じます。いずれも映像を喚起させるサウンドです。
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CamelMelt!といったトライバル・ビートを採り入れたダークでサイケデリックなインストゥルメンタル曲などはかなりクセになります。その他に注目なのはアリス・コルトレーンのハープをサンプリングしたAuntie's Harp。実はアリス・コルトレーンは彼の叔母にあたるようで、この曲は2007年1月に亡くなったその叔母であるアリス・コルトレーンに捧げられている。
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そしてビートの面白さも革新的ですが、Flying Lotusが今後ヒップホップやR&B界でJ・ディラSa-Ra Creative Partnersのような存在がなりうるかは彼の作るビートとボーカルの相性の良さが問われるでしょう。その意味において3曲のボーカル曲はより注目。

Dollyという女性ボーカルを迎えたRobertaflackや、Laura Dalingtonという女性シンガーを迎えたAuntie’s Lock / Infinitumでは浮遊感のある幽玄なサイケデリックなエレクトロ・フォークがとても美しく、ボーカルとの相性も良いように思えます(ヒップホップやソウルっぽい曲ではないですが・・・)。ただJ・ディf0045842_22322834.jpgSa-Ra Creative Partnersのようなネタ感のあるサンプリングの黒いソウル度はほとんどないので、その点が今後R&Bシンガーとの仕事が増えるかどうかの課題でしょう(余計なお世話か・・・)。The Gaslamp Killerとのコラボレーションでも知られるシンガーGonja Sufi(左写真)のスモーキーな歌声をフィーチャリングした唯一黒いフィーリングを聴かせるナンバーTestamentのダーク・ソウル感はかなり痺れますよ。

全17曲。ジャンルを拒否する新たな刺激的サウンドの詰まったFlying Lotus「Los ngeles」。日本人の想像するLAのイメージではなく、LAに住むスティーヴン・エリソンなりのLA感を具現化したサウンド・オマージュ。LAという街の裏側を見事に捉えた作品です。
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実に映像的であり、フューチャリスティックなビートが素晴らしい2008年度要注目作。ダークでサイケデリックなサウンドに是非耽溺して頂きたい。
 
 
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by Blacksmoker | 2008-06-23 00:13 | ELECTRONICA

OM @ 十三Fandango 6/6(金) 2008


人生をドロップアウトしたマリファナ騎士団がボングを手にして煙のエルサレムを目指す」というとんでもない内容の、全1曲52分のストーナー/ドゥーム界の禁断なる神の名盤「Jerusalem」(下写真)を1996年にレコーディングするが、あまりにもヤバすぎる出来にレーベルにリリースを拒否され、結局解散してしまった伝説のバンドSLEEP。(「Jerusalem」は1998年に正式にリリース。)
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その後ギタリストだったマット・パイクHigh On Fireを結成し、爆走ヘヴィ・ロックの鬼人と化してロック界の新たなヒーローになりつつあるが、あまり表立った活動の無かった残りのメンバーであるベース/ボーカルのアル・シスネロスと、ドラムのクリス・ハキアスの2人が2004年に結成したのがこのOM
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ギターの無いベースとドラムという編成ながら「Jerusalem」期の路線をモロに継承したヘヴィ・ドゥームで、さらには初期Pink Floydにも通じるサイケデリック・フレイヴァーまでも融合し唯一無二の孤高の音楽性を奏でる現人神OMの奇跡の初来日公演。

来日前に何とドラムのクリス・ハキアスが脱退してしまうという事態に見舞われるが、代わりにGrailsエミル・アイモスが加入して行われた今回の初来日公演。High On Fireの初来日もかなり壮絶でしたが、今回のこのOMのステージはHigh On Fireとは別のベクトルで神懸かったものでした。
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開演前から客席をうろついていたデカい体格のアル・シスネロスは寡黙そうで近寄りがたい雰囲気をしていましたが(何たってあの「Jerusalem」を歌っている張本人ですから、コッチにしてみればとにかく神に近い存在です・・・)、意外にもフレンドリーな人で驚き。しかし出す音の凄さはまさしく神。

とにかく2人しかいないという編成ながら、まったくギターレスという事を感じさせない壮絶なベースの音圧。ディストーションのかかりまくったほとんどギターのようなベースが空間を支配し一気に意識を持っていかれるほどの酩酊感。ヤバすぎます。アル・シスネロスのヴォーカルもこの手のバンドには珍しく、耳に残る呪文のようなヴォーカルが更に酩酊感を増していきます。
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レコードではスラッジ特有の1リフの単調感が強調されているので、果たしてステージングはどんなものになるのか心配(期待)していましたが、これが単調さなどまったくない躍動感ありまくりのステージ。完全に杞憂でしたね。笑えたのが、アルは1曲終わるごとに必ずレッドブルを1本丸々一気飲みしてました。どんだけ飲むんだ?ってカンジでしたね。マリファナの次はカフェインでしょうか?

そして凄いのはアル・シスネロスのベースだけでなく、エミル・アイモス(下写真)のドラミング。
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正直SLEEPにせよOMにせよレコードではやはりスラッジ・リフに耳がいってしまいドラムまでは注意して聴いていなかったのですが、OMの孤高の音楽を構成する要素としてはこのドラミングは絶対に欠かせません。それほどまでに強烈な印象を残すドラミング。何と言ってもこのテクニカルで手数の多いドラミングにはもう圧倒されっぱなし!脱退してしまったクリス・ハキアスのドラミングを生で観た事はありませんが、このエミルの凄さもおそらくそれに匹敵するほどのものでしょう。あまりにもドカドカと叩きすぎて、マメが潰れたのか1曲終わるごとに指にテーピングを巻きまくっていたのが印象的でしたね。
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1stからはKapila’s Theme、2ndからAt Giza、そして3rdからBhima’s Themeなど強力過ぎるナンバーの目白押し。嬉しかったのは2006年にリリースされたCurrent 93とのスプリット・シングル「Inerrant Rays Of Infallible Sun(Blackship Shrinebuilder)」に収録されていたRays Of The Sun/To The Shrinebuilder!これはOMの中でもかなり好きな曲なので昇天寸前。終盤に近付くにつれ2人の演奏の熱もどんどん上がってきて、同時にベースの音量もぐんぐんフル・ヴォリュームになり完全に意識が持っていかれそうになりましたね。
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今回のこのOMの初来日公演は観るのものを完全な別世界に誘う壮絶なライヴ。もはや神と化したSLEEPの伝説の一部を感じるだけでなく、OMという新たなる伝説を体感出来た素晴らしすぎるものでした。何かが降りてきてるんじゃないかと錯覚を起こすほどのトリップ感。いつまでもこの酩酊感が続いていて欲しいと思わせる至福の時間でしたね。
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EyehategodBongzillaSunn O)))の初来日公演を体感した時にも通じる「伝説を体感した夜」になったのは間違いありません。もう一度観てみたいです!
  
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by Blacksmoker | 2008-06-18 00:13 | ライブレポート

YUSA [Haiku]


f0045842_1153324.jpgキューバのミュージシャンと言えば個人的にすぐ思いつくのがブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブだが、もちろん伝統的なキューバ音楽ばかりでなく、現在のキューバにも新世代のミュージシャンは存在する。

その筆頭となるのが、テルマリーであり、インタラクティボであり、そしてこのジューサである。(以前に紹介したラファエル・セバーグの1stアルバム「El Fantasma De La Libertad」にはこの3者が一同に参加している凄いアルバムです。必聴!)

そのジューサの3年振りの新作「Haiku」。これがとても素晴らしい。タイトルの「Haiku」はもちろん「俳句」のこと。5・7・5という非常にミニマルな制約の中で万物を表現するこの日本文学にヒントを得て、シンプルで最小限の表現で、深い世界を表現するテーマで作られたそうだ。
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注目は、今作をプロデュースするのが、マリーザ・モンチ「Infinito Particular」トリバリスタス「Tribalistas」、その他にもアルナルド・アントゥニス「Qualquer」カルリーニョス・ブラウン「A Gente Ainda Não Sonhou」を手掛けたブラジル人のアレ・シケイラ。ブラジル音楽界でも重要なこれらのアルバムを手掛けているというだけでも、この人の凄さが分かるでしょう。「ミニマルな表現」という提案はジューサの潜在能力を存分に引き出す為にアレ・シケイラから出されたものだそうです。
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そのアレ・シケイラが関わってハバナ録音だけでなくリオデジャネイロ録音も行っているためだろう、今回のジューサのアルバムは今までのキューバ色が後退し、その代わりに非常に「ブラジルっぽさ」が全開。サンバっぽい曲などジューサの新境地と言ってもイイでしょう。キューバっぽさがないという人もいるだろうが、別にジューサは昔からキューバ音楽をやると宣言していたわけではないからその意見はお門違い。彼女はもっと大きな視点で見るべき存在のミュージシャンだ。
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マルチ・インストゥルメンタリストでもあるジューサは、このアルバムでもギターだけでなく、ベース、キーボード、シンセサイザー、パーカッション、カホン、ピアノ、コンガ、そしてコーラスも含め一人で大活躍。凄い才能です。ミッシェル・ンデゲオチェロにも通じる天才ぶり。そしてこの「Haiku」は、ンデゲオチェロで言うと「Comfort Woman」的なアルバムかもしれません。Walking HeadsMínimumの2曲は、ジューサ1人による多重録音で仕上げた曲で、特にWalking Headsはもの悲しいメロディと印象的なギターの旋律が素敵な名曲ですね。
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ただ個人的に魅力を感じるのが多重録音の曲より生演奏によるグルーヴを感じる曲。No Tengo Otro Lugarのホーン隊やの高揚感や、Y Te Aparecesのヴァイオリンの美しい旋律、Conga Pasageraでのトランペットやコンガ、インタラクティボのヴォーカルのフランシス・デル・リオを迎えたGente Simpleでのストリート色全開のサンバなどがやはりキューバ独特のリズム感があって素敵です。

そして、ここでも耳を惹くのがロベルト・カルカセス(下写真)の躍動感あるピアノ。
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ラファエル・セバーグのアルバムでも一番気になったこのロベルト・カルカセスのピアノはほんとの今のキューバの至宝と言ってもいいんじゃないだろうか。素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

ジューサのハスキーなヴォーカルも、ほんとに優雅であり、深く大きく包み込む包容力があって感動的。曲数もぐっと10曲に絞った分、それぞれの曲がより存在感を増していて1曲たりとも無駄がない。
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キューバ音楽シーンだけでなく、世界を代表するミュージシャンのこのジューサの素晴らしい新作。是非とも聴いてみて欲しい。オススメです。
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by Blacksmoker | 2008-06-13 00:11 | R&B / SOUL

DAVID SYLVIAN [When Loud Weather Buffeted NAOSHIMA]


瀬戸内海に浮かぶ離島「直島」に滞在してました。
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過疎化の進む小さな島に現代美術作品やインスタレーションなど様々な芸術活動を展開し、世界的に有名な「アート・アイランド」として再生した直島。島に残る自然と現代アートの見事な融合が素晴らしく、島民の人達の独特な時間の流れも相まって、この島だけ時間が止まっているような錯覚に陥ります。
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安藤忠雄の建築した「地中美術館」や「ハウスミュージアム」、「OVAL」、そしてSANAAによって設計された「海の駅」など素晴らしい建物も圧巻ですが、それ以上に印象的なのが「本村地区」という古い村の中に、既存の建物を使って展開される「家プロジェクト」。

由緒ある古い街並みという「日常」の空間の中に突如として現出する「非日常」の空間。これがほんとに面白い。そしてそのアートの数々を丁寧に親身になって説明してくれるのが全て島民の人たちというのが素敵です。いかにこれらの作品が彼らに愛されているのかが分かります。

その中で直島では2006年10月と2007年2月に「Naoshima Standard2」という展覧会が行われたのですが、そこに参加したアーティストの中の1人がデヴィッド・シルヴィアン
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この人はソロ以降の作品が本当に魅力的だ。特に自身のレーベル「Samadhisound」を立ち上げてからが特に面白く、即興ギタリストのデレク・ベイリーや、ラップトップ・アーティストのフェネス、さらには日本の高木正勝らとのコラボレーションなど、そして新バンドのNine Horsesのアルバムなど刺激的な作品を展開してくれている。
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Samadhisoundからは他にもデレク・ベイリーの作品や、自身のアルバム「Blemish」Nine HorsesのアルバムのRemix盤も出ていて必聴です。

今回、デヴィッド・シルヴィアンが「Naoshima Standard2」に提供したのは「When Loud Wf0045842_050755.jpgeather Buffeted NAOSHIMA」と名付けられた作品(右写真)。これは冬の時期に直島を訪れたデヴィッド・シルヴィアンが暴風雨に晒される直島をイメージして作られたサウンド・インスタレーション作品で、当時は「Naoshima Standard2」を訪れた人にiPodが貸し出され、この作品を聴きながら直島の街を歩く事が出来たそうです(その時に行ってみたかったですね)。

直島に滞在し、シルヴィアン自身が自らフィールド・レコーディングした風の音や鳥の声、雨の音など様々なサウンドがコラージュされた作品で今回SamadhisoundからリリースされたCD盤の方では実際の展示作品に手が加えられたものになっているそうです。シルヴィアン以外に数人のミュージシャンが参加しています。そこにはフェネス、ノルウェーのSupersilentのトランペット奏者アルヴェ・ヘンリクセン(下写真)といったもの凄い面子が名を連ねています。
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その他にも尺八奏者のクリーヴ・ベル(下写真)、そして作曲家のアキラ・ラブレーといういずれもクセ者ばかりです。
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内容ですが、全1曲70分21秒のサウンド・コラージュ。曲として一定のリズムがあるわけでもなく、細切れにされた音が連続する。時折現れるフェネス(下写真)による美しいグリッチ・ノイズ。クリーヴ・ベルによる尺八。そして消え入りそうなファルセットの歌声の断片などが更に不思議な雰囲気で、一種のアンビエント作品と言ってもいいでしょう。
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インナー写真には暴風雨にさらされる海辺の家のモノクローム写真が1枚あるだけだが、鶴見幸代によるアートワークなども含めて不気味で幻想的な雰囲気を持っている。直島に残る昔ながらの自然信仰(天変地異も含めて)の尊さ、そしてそれと同時に畏敬の念が表現されているようにも思えます。
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一度でも直島に行ったことのある人ならば、あの島の風景を思い出しながら聴くとより楽しめる作品。個人的には直島に滞在していた時は非常に天候に恵まれていたので、雨の吹き荒ぶ状況が想像し辛いですが・・・。

いつかはそういう天候の時に、この作品を聴きながら直島を歩いてみたいものですね。
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by Blacksmoker | 2008-06-08 00:28 | ELECTRONICA