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GILBERTO GIL @ 大阪厚生年金会館芸術ホール 9/9(火) 2008 

 
2008年という年は、日本とブラジルの交流が始まってちょうど100周年にあたるそうだ。

1908年4月28日、第一回日本人移住者781名(この他に自由渡航者10名)を乗せた笠戸丸(かさとまる)が神戸港を出航し、約2カ月の航海の後、6月18日にブラジル・サントス港に入港し、日本人のブラジル移住が始まったされている。

そんな訳で今年は文化やスポーツ、そして芸術面で交流100周年を記念したイベントが日本各地で行われています。そして音楽面においては、100周年を祝うべくこんなスペシャルなゲストが来日しました。

              ジルベルト・ジル
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もう説明不要のブラジル音楽界のレジェンド。御大66歳。「現役ブラジルの文化大臣」というコピーは実は間違いで、この7月30日をもって5年間就任していた大臣職を辞任している。何でもその理由が「音楽活動に専念したいから」。いかにもジルらしい!就任中は常日頃から「音楽活動の時間が無い!」と漏らしていたらしいので、今回の辞任によって音楽に専念したジルのライブを観れる素晴らしいタイミングなのです。
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日本公演を行うのは実に10年振り。さらに大阪にやってくるのは18年振りというまさしく待望のジャパン・ツアー初日の大阪公演に行ってきました。

今回のツアーは素晴らしい新作「Banda Larga Cordel」(右写真)を引っさげてのツアー。新作タイトルにもあるBanda Largaというのはブロードバンドという意味でf0045842_3104154.jpgあり、新しい情報社会に突入した人類のあり方を提示する内容になっている。そして凄いのが全公演録音・録画・撮影が許可!ジル本人が「撮った映像や、画像はYoutubeにどんどんアップしてくれ」と奨励しているのです。ブラジル文化大臣がこんな著作権や肖像権無視な試みを進んでやっているのはとても心強い。ここまでやってくれたら別にブート盤が出回ることはないでしょうね。

まずステージにプレゼンテイターとして現れたのが宮沢和史。もちろんブラジル音楽を日本に広めた人物としてこの人の功績も忘れてはいけません(最近のGanga Zumbaの活動も注目です)。何でも昔に宮沢和史The Boomでアルゼンチンのフェスティヴァルに出演した際、そこでジルと初めて会い、その時にジルにThe Boomのアルバム「TROPICALISM-0℃」を手渡した時にジル本人から「そこの若いの、トロピカリズモは音楽のジャンルではない。トロピカリズモは自由な精神なんだ」と言われたというエピソードを話してくれましたが、非常に印象的な話でしたね。

そして6人編成の自らのバンド「Banda Larga」を引き連れてジルベルト・ジル御大の登場。
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広いシャツに黒いタイトなパンツ、そして白いスニーカーという品のある出で立ち。髪はドレッドの長髪を後ろで束ねている。66歳には見えない若さ溢れる風貌だ。

1曲目はPela Internat!97年のこの曲は「インターネットの情報の海に小舟で出て行こう」という新たに宣言した曲で、ブラジル国内で初めてインターネット配信されたのもこの曲だ。今回のツアーのオープニングには最適な曲と言えるでしょう。サビで「ア~ウア~ウア~」と叫ぶジル御大の声も非常に伸びやかで衰えを微塵も感じさせません。全体的にバンドはロックなアレンジ。最後はストーンズSatisfactionに繋げるエンディングで会場は早くも熱狂です。もちろん撮影可能なのでほとんどの人が手にカメラや携帯を持って写真を取りまくっていましたね。
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続くは新作からのBanda Larga Cordelジルに扇動され2曲目にしてもう観客総立ち。ジルの盟友であるカエターノ・ヴェローゾの音楽が今では芸術性を追求しているのとは対照的に、今のジルの音楽は大衆性を追及している。そんなジルの音楽を座って聴くなんてありえないのです!

そして3曲目にはTempo Rei。この曲は非常にギターの音色が印象的なのですが、そのギターを弾くのはジルの息子ベン・ジル(左写真)。やはりブf0045842_3395643.jpgラジル人は、親子の絆が日本では想像出来ないくらい強い。カエターノのバンドにもカエターノの息子やその友人らが参加しているし、マリーザ・モンチのバンドでも親子ほど歳の離れたメンバーが普通に混在している。ブラジルでは2世ミュージシャンが親のバンドに入っている事はまったく珍しくない光景だ。そしてそのベンの若い感性がこのバンドのサウンドの重要な部分を担っているのは観ていて実感出来ますね。

ジル御大も非常に上機嫌でよく喋り、よく動く。しかしその動きの中にもどことなく上品さが漂っているのもジルらしい。
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そして「今からサンバをやるぞ!」というMCで始められたのはAndar com FeChiclete com Banana、そして新作から日本のゲイシャに恋してしまったと歌うGueixa No Tatami。弱冠ロックなアレンジを加えていますが、非常に軽やかなサンバのリズムが心地良い。

サンバの次はバイーアだ!」というMCと共に新作からの3曲を披露。
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Nao Grude NaoO Oco do Mundo、そしてNao Tenho Medo da Morte。パーカッションの叩くバンデイロがブラジル特有のリズムを叩き出し、演奏も徐々に熱を帯びてきます。つられて会場中の観客が皆踊りだす。とても素晴らしい光景。ジル御大もステージを左右に動き回り、最前列まで行って観客と触れ合うなど常に上機嫌。ほんとにステージ慣れしています。バンドとの息もピッタリで難易度の高い演奏もビシッとタイトに決めていました。
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そしてひとしきり盛り上げたところで今度はレゲエ3連発。ジルとレゲエの関係は今ではかなり親密で切っても切れない関係だが、その発端は1970年。ジルがイギリス亡命時代の滞在先ノッティング・ヒルでレゲエの洗礼を受けたそうだ(ノッティング・ヒルといえばやはりレゲエ的にはアスワドの出身地!)。

80年代に入ってからジルボブ・マーリィ亡き後ウェイラーズとレコーディングしたVamos Fugirを発表したり、ジミー・クリフと共演しブラジルにレゲエを知らしめたりとその歴史はかなり古い。

そんなもはやジルの体の一部であるレゲf0045842_347197.jpgエですが、今回披露されたのはボブ・マーリィThree Little Birds、そしてジョビンのクラシックイパネマの娘、そしてビートルズSomethingThree Little Birdsは原曲がレゲエなのだが、あのボサノヴァのイパネマの娘Somethingなどのレゲエ・アレンジはなかなか面白い。もはや原曲の面影などなく歌詞を聴いてようやく判別できたくらいです。しかしジルの軽やかな歌声はレゲエには非常に相性が良い。個人的にジルのやるレゲエは大好きですね。ベースもかなり唸っていましたよ。

そして今公演のハイライト。ジルの紹介によって宮沢和史がステージに登場。「ジルとこの曲を歌うのが夢でした」と言って披露されたのは、やはりというか(でもちょっと意外というか・・・)島唄!なぜ島唄なのかはよく分かりませんが、生で聴くとやはりこの曲は名曲と認めざるを得ません。
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4年くらい前に宮沢和史のソロ公演を観に行った時に初めて生でこの島唄を聴いて不覚にも涙してしまったんですが、今回のこの島唄でも涙腺緩みまくり。やはり20年に一度級の名曲だ。日本人なら一度は生で島唄は聴いておいた方が良い。
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ジルはというとカンペを見ながらたどたどしい日本語でしたが、徐々に雰囲気を掴んできて最後はロックに大団円。バンドの演奏もこれまた完璧で(おそらく)日本に来て練習したばかりとは思えないほどの見事な演奏でしたね。日本とブラジルの音楽的融合に会場中が大合唱となりました。まさしくこの日のハイライトと言っても良いでしょう。

そんな島唄の余韻も覚めやらぬまま、次に披露されたのはSarara Miolo
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70年代のジルの代表曲で、個人的にジルの中でも最も好きな曲です。このキャッチーさと軽やかさが堪らなく好きなので、この曲をやってくれたことにまたもや感動。全体的に少々スピードアップした感じの演奏で、ジルの「サラ、サラ、サラサララ」の掛け声もホントに素敵でしたね。

f0045842_3583448.jpgKaya N' gan Dayaと続き、その後はPalcoへ。これは観客の反応も凄くジルの中でも人気なのが分かります。原曲のアース・ウィンド&ファイア的なサウンドをもっとファンキーにアレンジしたバンドの演奏がとてもライブ的で映える。そして例のコーラスももちろん大合唱。ジルの曲はやはりみんなで歌えるのが良いですね。

アンコールには前述したレゲエのVamos Fugir。ここでは息子ベン・ジルのギターのカッティングが威力を発揮。そしてロックなサウンドのドラムなので、ラウドなレゲエになっていましたが、ライブにはこれくらいのサウンドの方がちょうど良い。ジルと観客とのコール&レスポンスも完璧でした。さすがブラジルに最もノリが近い街、大阪。
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最後はジルの長いキャリアの中で最も人気の高い79年のToda Menina Baiana!最初のギターの音色だけですでに鳥肌が立ちますね。ジルの音楽性を最も端的に表しているとも言えるこの曲には、ポジティヴなエネルギーが詰まっている。アフロ的なリズムがとてもファンキーで、じっとしていられなくなります。ジルの方も変な踊りを披露したりしてかなりご機嫌。終始笑顔のままステージを後にしました。
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正味2時間。ブラジル音楽の伝統、そして今のブラジル音楽の楽しさをじっくりと堪能出来たかなりの満腹感のあるライブでしたね。66歳という歳というのが信じられないくらいのエネルギー。ジルを動かしている原動力は純粋に音楽への愛情に他ならない。
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そんな簡単だが実に難しい事を身をもって教えてくれたレジェンド、ジルベルト・ジル。観た後にこんな笑顔になれるライブもそうはない。音楽の力を信じるジルのパワーに圧倒されたライブでした。

そしてレジェンドの割りに異常に人懐っこいその性格も素晴らしいじゃないですか。

 
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by Blacksmoker | 2008-09-18 02:27 | ライブレポート

レゲエ馬鹿道場(VERSION) 第八回。


早くも夏が終わりましたね。今年の夏はクラブに行くのも、DJするのもダンスホール・レゲエが中心で、ルーツ・レゲエの方をすっかりお座なりにしておりました・・・。

しかしルーツ・レゲエを忘れてはいけません!ダンスホール・レゲエもルーツ・レゲエなくしては存在しないのです。

という訳で今年の夏の贖罪の意味を込めまして「レゲエ馬鹿道場」前回から1年半ぶりの再開です。

ではいってみましょう!久々のレゲエ馬鹿道場。第八回はこの人の登場。ちなみに今日は9月11日、いわゆる「911」。レゲエ界にとって「911」はこの人の命日でもあります。

PETER TOSH Equal Rights
 ピーター・トッシュイコール・ライツ

今回登場するのは大物ピーター・トッシュ。Blacksmokerの最もリスペクトするレジェンドを紹介しましょう。

f0045842_2243411.jpgボブ・マーリィの兄貴分にして、レゲエ界で最もパンク気質を体現する「歩くカミソリ」ピーター・トッシュ。1944年ジャマイカのキングストンにある貧困街トレンチタウンに生まれたピーター・トッシュは1962年に同じトレンチタウン出身のボブ・マーリィとバニー・ウェイラーらと共にコーラス・グループ「The Wailing Wailers」を結成。その後The Wailersに名前を変え、1970年にベースとドラムにカールトンアシュトンバレット兄弟らを迎えたバンドとなった彼らは1973年にアイランドからメジャー・デビュー盤「Catch A Fire」をリリース(下写真左がトッシュ)。
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ボブ・マーリィのカリスマ性で一躍人気を博しますが、2nd「Burnin’」リリース後の1974年にThe Wailersを脱退(同じくバニー・ウェイラーも脱退)。

脱退の原因はツアーに疲れ果てたという事だが、本当の理由はボブ・マーリィをメインにして「Bob Marley & The Wailers」として売り出したいアイランド・レコードとの確執が原因だと言われています。
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確かに1st「Catch A Fire」の中の400 YearsStop The Trainなどピーター・トッシュがリード・ボーカルを取る曲も収録されているくらいなので、この扱いには耐え難いものがあったのでしょう。

その後ソロになった彼は1976年に1stアルバム「Legalize It」をリリース。
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トッシュがマリファナ畑の真ん中で一服しているジャケットのインパクトが強烈ですが、サウンドの方もボブ・マーリィを除いたThe Wailersアイ・スリーズのコーラス隊までも参加)全員が参加していながらも、ボブ・マーリィのサウンドとは全く違うずっしりとヘヴィなレゲエでこれまた強烈なインパクトを与えました。
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そしてその翌年の1977年にリリースされた2ndアルバムが、この「Equal Rights」。このアルバムの特徴はズバリ、全曲捨て曲なし。こんな素晴らしい曲が詰まったアルバムはそうはない。トッシュの物悲しいメロディ・センスが爆発している素晴らしい曲ばかりだ。

そしてもう一つの特徴はあまりにもストレートに真理を突くそのf0045842_238481.jpg歌詞。前作「Legalize It」にあったWhy Must I CryKetchy ShubyTill Your Well Runs DryBrand New Second handといったラブ・ソングは一切なし。切なく哀愁のあるメロディに乗って歌われるのは、抑圧された者の怒り、自分を誇示するアイデンティティー・ソング、そしてJah賛歌のみ。かなりハードコア度の高い過激な歌詞になっている。「Legalize It」で新たな一歩を踏み出したピーター・トッシュが更に孤高の道を進み始めたと言ってもいいでしょう。

サウンドの方も、前作に参加していたThe Wailersの面々を一新し「Word Sound & Power」という名の自身のバンドを結成。ドラムとベースにはSly & Robbieを迎え、前作でのずっしりとヘヴィな土着的なサウンドよりもさらにドラムの音を強調し、さらにキーボードを全面に出す事でより曲に幅を持たせているのが特徴だ。コマーシャルになったという意味ではないがより聴き易くなっています。
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このアルバムの中で最も印象的なのがEqual Rights

誰もが平和を望むが 正義を望むものは誰もいない
誰もが天国に行きたがるが 死を望む者は誰もいない
俺には平和など必要ない
俺が欲しいのは平等の権利、そして正義だけだ
平和などいらない
平等と正義さえあれば犯罪もなくなる


こんなハングリーで真理を突いた歌詞はこれ以前にも以降にもお目に掛かった事がない。彼の視点でしか絶対に歌えf0045842_2494418.jpgない曲。世界的に名声を得てしまったボブ・マーリィには絶対歌えない歌でしょう。30年以上経った今でもこのメッセージの鋭さは全く衰えてないのが凄いです。レゲエ界屈指の名曲。そういえばAnthony B(右写真)が2001年にリリースしたアルバム「That’s Life」の中で、このEqual Rightsをカヴァーしていましたが、過激なラスタファリアンで有名なAnthony Bがこれを取り上げたのは至極納得が出来ますね。これも名カヴァーなので必聴です。

そしてオープニングを飾るGet Up, Stand Up。これはBob Marley & The Wailersの曲としてアルバム「Burnin’」のオープニングをボブ・マーリィのボーカルで飾っていましたが、ピーター・トッシュ版では「この曲を作ったのは俺だ!」という明確な意思表示をヒシヒシと感じます。「一体誰がボブ・マーリィにギターを教えたと思ってやがる!」という怒りが聴こえてきそうです。途中の歌詞が変えてあるのもトッシュの自己主張の表れでしょう。ちなみに同年1977年にリリースされたバニー・ウェイラー(下写真左)の2ndアルバム「Protest」にもこのGet Up, Stand Upが収録されています。
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We Want Truth!」という掛け声と、ホーンを加えてよりファンキーさを増したこのバニー・ウェイラー版も最高にカッコイイ(トッシュも参加)ので是非この3つを聴き比べてみるのも面白いでしょう。

そして映画「Rockers」のサントラに収録されていたStepping Razor。「俺は歩くカミソリ 俺は危険な男だ」と、まるでギャングスタ・ラップのように自分を誇示するトッシュのテーマ・ソングと言っても過言ではない曲だ。今では完全にトッシュの曲として認知されているが、この曲は実は若き日のThe Wailing Wailersに歌を教えた師匠ジョー・ヒッグス(左写真)の曲。今年になってジョー・ヒッグスf0045842_2543339.jpg名盤「Life Of Contradiction」が遂にCD化されましたが、私もこのアルバムを初めて聴いて分かったんですが、この曲というのはかなりジョー・ヒッグス特有のメロディを持った曲なんだという事が分かりましたね。自分を誇示する内容でありながらも「俺を正当に扱ってくれ」という歌詞が哀愁を感じますね。他にも「俺は俺以外の何者でもない」と歌うI Am That I Amでも「俺の能力を過小評価しないでくれ」という歌詞がとても切ない。

その他にも1977年の時点で人種差別政策を糾弾したApartheid、弾圧者に警告するDownpressor Manなどシリアスな内容の歌詞が、トッシュの低く伸びる声で歌われます。
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レゲエ界屈指の名曲ばかりが揃った超名盤。ルーツ・レゲエを聴くものなら避けては通れないアルバムです。ちなみにこのアルバムは日本盤として発売されているらしいのですが、レコード屋で売っているのは見たことがありません。もし廃盤になっているのなら、いち早く再発化されるべき作品ですよ。

この後トッシュローリング・ストーンズに認められ、彼らの主宰するレーベル「Rolling Stones Records」と契約し3枚目となる「Bush Doctor」をリリース、ボブ・マーリィと違った方向で世界的な人気を博していくわけですが、1987年9月11日の夜、自宅で何者かに射殺される。享年43歳。
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警察発表では「強盗」ということになっているが、ジャマイカではあまりにも過激な存在であるトッシュを警察が「暗殺」したという説が今でも有力だそうだ。1stアルバムに収録されているLegalize Itの中で「ラスタファリアンが神の贈り物として崇拝するマリファナを解禁せよ」という過激なメッセージを歌ったトッシュが過激なラスタの先導者として警察から敵視されていたのは容易に想像出来る。真相はどうにせよ、あまりにも惜しい死。もし彼が生きていたなら、今どんなレゲエを聴かせてくれていただろう。
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最後に一言。

数年前に日本で「タミフル」というインフルエンザに効く薬を飲んだ子供達が、言動がおかしくなってベランダから転落したりして死亡する事故が相次ぎましたが、この一連の事故を知った時に、Legalize Itの中でトッシュが「なぜインフルエンザにも効くのにマリファナを規制するんだ」と歌っていたのを思い出しました。症状からみても「タミフル」にマリファナの成分「THC」が入っていた事は間違いないんじゃないでしょうか?あまり言うと私も消されてしまいますのでこの辺で・・・。
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JAH RASTAFARI!!!

 
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by Blacksmoker | 2008-09-11 01:39 | レゲエ馬鹿道場(VERSION)

ESPERANZA SPALDING @ Billboard Live Osaka 9/3(水) 2008


恐るべき才能!!

2008年のジャズ界の台風の目、エスペランサ・スポルディングの初来日公演は観た者に強烈なインパクトを与えたまさしく「衝撃の初来日」と言っても良いでしょう。観れなかった人は大いに後悔して下さい。
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1984年アメリカのポートランド生まれのベーシスト。バークリー音楽院の最年少講師を勤めたこともあるという(ちなみにエスペランサの前の最年少記録はパット・メセニー)おそるべき才能。

もうその立ち位置からして異端。まずそのド派手な髪形もインパクトがありますが、ウッドベースを弾きながらスキャットしまくるというスタイルが超斬新
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1stアルバム「Junjo」では数曲を除いてほとんどがスキャット中心でしたが、最新作であるHeads Upからのメジャー・デビュー盤「Esperanza」(右写真)では自作曲中心に固めスキャット以外のボーカル曲も存分にf0045842_2503431.jpg披露。しかもこれがとんでもなく素晴らしいボーカルで、さらに自作の曲も素晴らしく、おまけにベーシストとしての腕前も超一流という化け物みたいなアルバムで、間違いなく2008年のジャズ界の大本命アルバムと言っても良いでしょう。そのアルバムを引っさげてエスペランサが遂に初来日を果たしました。あまりチケットが売れていないという噂もありましたが、蓋を開けてみるとほぼ満員の大盛況でした。

今回の初来日はエスペランサを中心とするトリオ。エスペランサがベース&ボーカル、ドラムのオーティス・ブラウン、ピアノのレオ・ジノベーゼという編成。要するにピアノ・トリオ+ボーカル。アルバム「Esperanza」のレコーディングと同じメンバーですね。

ステージに現れたエスペランサは小柄でホントに可愛く、見た目なんてまるで学生のような風貌。どう見てもそんな凄い人間には思えないですが、演奏が始まるとすぐにこのエスペランサの強烈な才能に圧倒。天才と凡人の埋まることのない圧倒的な差を見せ付けられた気分になりましたね。
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オープニングは何とベティ・カーターで有名なスタンダードJazz Ain’t Nothin’ But The Soulで静かに幕開け。意外にもジャズ・マナーに沿った演奏で予想外でしたが、この優雅な演奏はかなり心地良い。無駄を削ぎ落としたトリオというシンプルな編成がエスペランサの表現力を最大限に発揮させていて、彼女の才能が存分に堪能出来るという点でこのトリオは大正解。伴奏に徹したラテン色の濃いピアノがかなり素晴らしい。
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続いてはこちらもスタンダードBody & Soul。エスペランサのスペイン語ボーカルの素晴らしさが特に際立つナンバーで、彼女はボーカリストとして見ただけでも十分に凄い。さらに中盤から盛り上がってくるピアノとエスペランサのスキャットが凄すぎ。もちろんそこまでやっておきながらボトムを支えるベースラインも全くブレていないという驚異的な演奏。もうこれは努力でどうのこうの出来るレベルではないです。目をつぶって全く指先を見ることなく頭を振りながら演奏する姿はまさしく直感的な動物的感覚でしょう。
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ストゥールに座った時にスカートの中が見えそうになって「初めての人なのにそこまでは見せられないわ」なんてジョークも飛ばす陽気な性格でまさしく「明るい変態」とう言葉がピッタリでしょう。

f0045842_2581887.jpg続くはウッドベースをエレキベースに持ち替えてI Know You Know。裏のリズムで入るボーカルがいかにもベーシスト的発想だが、この流れるような早口のフローをみせる素晴らしいボーカルがメロディアスで絶品。しかしこんな恐ろしいまでの難易度の高いメロディラインを歌いながら、何ら苦にする事もなく普通にベースも弾いているというのが常人の理解を超えてます。


そして新作のオープニングを飾っていたミルトン・メシナント作のPonta De Areia。アルバムの中でも随f0045842_317598.jpg一の優しいメロディを持ったこの曲は、やはり人気も高いようで会場からも一層の拍手が起こります。この曲を聴いて実感させられるのはミルトン・メシナントの作曲能力の素晴らしさ以上に、エスペランサのアレンジのセンスの良さだ。もう完全にエスペランサ色に染め上げたこのナンバーでは控えめなドラムのオーティス・ブラウン(右写真)のこれまた控えめなコーラスも絶妙。ピアノの優雅な演奏も完璧です。

そして次はフランク・シナトラで有名なこちらもスタンダードI Fall In Love Too Easily。こういうメロディの立った曲ではやはりエスペランサのボーカルの素晴らしさが映えますね。前半部をスタンダード曲や自作曲の中でもメロディアスな曲で固めた構成もかなり功を奏していましたね。
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その後はスキャットを交えたインプロヴィゼーション主体の曲を中心に持ってきてドラム、ピアノとのスリリングな絡みを見せてくれましたが、それ以上にスキャットがヤバイ。完全に即興でやっているスキャットなのに、そのスキャットと全く同じメロディラインをベースで同時弾いているのです。ありえない!もう完全に感覚で弾いているんですが、それが高い次元で芸術的なパフォーマンスとして昇華しているところがエスペランサの凄いところ。

本編最後はShe Got To You。この曲は彼女の曲のレパートリーの中でも最もアップな曲で、原曲に入っていたサックスを抜きにしても十分に通用するドライブ感を持ったドラムが疾走し、そこにスーっと入り込んでくるクールなボーカルがカッコイイ。中盤以降のインプロヴィゼーションの応酬もハンパなし。
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一度ステージから去った後で再び登場したエスペランサ。おもむろに1人でマイクに向かいアカペラでスキャットを始め出す。これがホントに鳥肌の立つくらい壮絶なスキャット!以前生で観たレディシのスキャットにも匹敵する迫力がありましたね。そこから最後の曲I Adore Youに流れ込む瞬間は感動的でしたね。ほとんどがスキャットのこのキャッチーな曲に入っていくという最後を飾るに相応しい展開に会場中大喝采!サンバとジャズが合体したようなこの曲も持つ力強さはライブで聴くとそのアドレナリン効果は絶大でしたね。
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そして会場から惜しみない拍手が鳴り止まない中、エスペランサ・スポルディングの初来日公演は終了。まさしく衝撃的なインパクトを与えられました。これから彼女がジャズ界の天才(しかも優等生キャラ)として大物の仲間入りを果たすのは時間の問題でしょう。そんな未来への期待までも見えた感動的なステージ。

何度も言って申し訳ないが、今回のライブを観なかった人は後悔して下さい!
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by Blacksmoker | 2008-09-07 02:17 | ライブレポート