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DAVID BYRNE & BRIAN ENO [Everything That Happens Will Happen Today]


これは、ここ何年間の「」への探求を続けるデイヴィッド・バーンの活動の中でも集大成ともいえる作品だ。

しかも今回バーンのパートナーとなるのは、あのブライアン・イーノ

この2人といえばトーキング・ヘッズ時代のプロデューサーという関係以外にもかなり密接で、1981年に2人の共同名義で「My Life In The Bush Of Ghosts」というアルバムをリリースしています。(↓若かりし頃の2人)
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このアルバムは1981年という、サンプラーが登場する以前の時代にテープ・コラージュを使ってサンプリング的にアフロ音楽や中近東音楽など世界中の音楽をカットアップして作り上げたインストゥルメンタル作品で、その斬新さは音楽史に多大なる影響力を与えたと言っても過言ではないくらいのエポック・メイキングな作品でした(2006年にはNonesuchからリマスターされ未発表音源を追加して再発されて話題になっていましたね)。

f0045842_153158.jpgそんな2人が実に27年振りの時を経て邂逅した本作「Everything That Happens Will Happen Today」。ただ、これは驚く事に「My Life In The Bush Of Ghosts」の音楽性とは180度違うベクトルを向いた作品に仕上がりました。

そもそものきっかけは2006年の「My Life In The Bush Of Ghosts」の再発を機に2人が顔を合わせた事。ブライアン・イーノがストックしていたインストゥルメンタル曲(イーノは歌詞を書くのが嫌いみたいです)を聴いたデイヴィッド・バーンが、その上に歌詞をのせることでこの作品は作られ始めたそうです。要するにイーノが音、そしてバーンが歌と、完全分業制で作られたのが本作だ。そしてこの方法を取ることで、この作品は1981年の「My Life In The Bush Of Ghosts」とはまた別の意味で素晴らしい作品となりました。
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今回のこの作品は、イーノの得意とする抽象的なアンビエントなサウンドとは全く逆の、牧歌的なフォーク/ゴスペルを主体としたサウンドで、その上にバーンの歌心全開のボーカルが被さるという作品になっている。ここ最近のデイヴィッド・バーンの作品の中で最もメロディに優れた極上のボーカル作品になっています。バーンの声に抗する事の出来ない程の魅力を感じている人間にとってはもはや「これを待っていた」的な傑作でしょう。

おそらくバーンにとっても、自分の書く曲では考えられないコード進行をする曲の上に歌を乗せるという事で、今までにないほど新鮮なメロディが生まれたのでしょう。トーキング・ヘッズ時代やソロになってからの作品で聴ける以上の瑞々しいメロディがホントに新鮮です。こんな清々しいメロディを持った作品は、今までのどこか屈折したメロディを持ったバーンのどの作品でもお目に掛かった事はないですね。
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個人的にバーンの声が好きという事もありますが、それを抜きにしてもこんな凄い作品が出来上がるのかと感嘆せずにはいられません。1曲目のHomeから、続くMy Big Nurseの高揚感は堪りませんね。他にもLife Is Longや、The Riverの高揚感のあるメロディが素晴らしすぎます

バーンが全編でボーカルをとっているので、もはやバーンの新譜と言っても差し支えない程ですが、一方のブライアン・イーノの存在抜きに語れないのも本作の魅力である。
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シンプルなフォーク的サウンドかというと全くそんな事はなく、イーノ特有の幾重にも重ねられた幽玄なサウンド・テクスチャーがこれまた凄い。一見シンプルなサウンドに見えてもまったくそんな事はなく、1曲目のフォーク的なHomeからして、その驚異的な残響音処理や浮遊感のある効果音に驚かされます。イーノ・サウンドの特徴とも言える、低音の響きにこだわったサウンドはここでも威力を発揮しています。是非しかるべき音響設備で聴いてみてその凄みを体感して欲しいですね。

ちなみにイーノは、ほとんどの曲でバッキング・ボーカルも担当。その意外に太い声を披露してくれています。イーノf0045842_282195.jpg歌を披露するのは、2005年の「Another Day On Earth」以来じゃないでしょうか?あのアルバムも28年振りのボーカル・アルバムとして話題になりましたね。イーノの声って重厚な声で個人的には結構好きなんですけどね。

さらにはウィットに富んだバーンの歌詞も知的で面白く、小説の一部を切り取ったようなWanted For Life、愛という言葉を音楽に例えて置き換えたStrange Overtones、聖書のように示唆的なThe Lighthouseなど一見の価値あり。こういう文学的で抽象的な歌詞はバーンの昔から得意とするところ。素敵です。

牧歌的な曲が多数を占めますが、それ以外にも「2008年版トーキング・ヘッズ」とも言えるストレンジなマシーン・ファンクPoor Boyや、不気味なピアノの旋律が怪しく光るインダストリアル的なI Feel My Stuff、そしてXTCっぽいWanted For Lifeなどいろんな曲調の曲が入っているのが面白いです。このプロジェクトの制作過程において様々な形態の音楽が生まれたのが分かります。未発表テイクとか結構ありそうですね。いつか発表してもらいたいものです。
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そしてこのアルバムのアートワークからジャケットの中のイラストまでを手掛けたのは、2003年にRhinoから出たトーキング・ヘッズのボックス・セット「Once In A Lifetime」(下写真)のあの印象的な細長い箱のデザインを手掛けたNYのデザイン・チーム「Sagmeister Inc.」。中ジャケには、アルバム・ジャケットに出てくる家の内部のイラストが描かれていますが、これがどこかデイヴィッド・リンチ的な、変な雰囲気を醸し出していて興味深いです。
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デイヴィッド・バーンの歌心を全開に引き出し、ブライアン・イーノという音職人が丁寧に作り上げた極上の作品。ロック界でも屈指の2人のクセモノが、お互いの力を存分に引き出し完成させた素晴らしいアルバムだ。常に同じ事をするのが嫌な2人なので、将来的にもう一度この2人が集まってもこんなアルバムを作ることはないだろう。そういう意味でも奇跡的な作品とも言える。
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個人的にBlacksmoker2008年のベスト・アルバムに決定です!

  
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by Blacksmoker | 2008-12-31 01:33 | BRIAN ENO

DAVID BYRNEの声。


なぜこのデイヴィッド・バーンの声というのは、こうも人を惹きつけるのだろうか?
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やはり従来のロック的ではないところだろうか?過剰に演劇的なところか?粘着性のある声は何か不敵な感じだし。しかも最近多い「女性的なフェミニン」声でもない。どちらかというとおもいっきり男性的。そしてその声からはかなりの知性が滲み出ているのも、クセモノっぽさを感じさせる。なかなかこの声は代替できるものがないです。個人的にもミュージシャン、そして一流のボーカリストとして最も好きな人ですね。

しかし私はトーキング・ヘッズをリアルタイムで聴いていた世代ではなく、初めてこのデイヴィッド・バーンの声と「遭遇」したのは1997年でした。彼の5枚目のソロ・アルバム「Feelings」(右写真)からの1sf0045842_2355131.jpgtシングルMiss AmericaのPVをたまたまMTVで観て、その声の異様さと妙にクセになるメロディ、そして欧米的ではないリズムを持った曲に一発でヤラれてしまったのが初めての出会い。そこからどんどんこのデイヴィッド・バーン、そしてトーキング・ヘッズ、さらには彼の主宰する「Luaka Bop」レーベルの音楽の魅力にハマっていきました(このレーベルのCornershopがブレイクしていたのも同時期ですね)。そしてちょうどこの頃にトーキング・ヘッズの映画「Stop Making Sense」もリバイバル上映されて映画館に観に行って、その凄さに完璧にヤラれてしまいました。
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その後に出た2001年の6枚目のアルバム「Look Into The Eyeball」も素晴らしかったし、2003年にはスリル・ジョッキーからリリースされたデイヴィッド・マッケンジー監督の映画「Young Adam」のサウンドトラックとなる「Lead Us Not Into Temptation」の不思議な美しさに聴き惚れ、そして2004年にはNonsuchからのリリースとなった7枚目のアルバム「Grown Backward」の完成度の高さに驚き、どんどんこの人の音楽の魅力の虜になってきたわけです。

しかし、この人の声の魅力に憑りつかれている人は、やはり世界各地にいるようで、いろんな所でデイヴィッド・バーンの声を耳にする機会が増えました。ソロとしての作品は寡作にもかかわらず、最近でもこの人の声の存在は増すばかりです。
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例えば2002年に全英チャートを席巻したX-Press 2のダンス・ナンバーLazyにボーカリストとしてfeat.されてたり、そして2005年にはアメリカのDJユニット、Thievery CorporationThe Heart's a Lonely Hunterという曲にも参加していたし、さらには2007年のPaul Van DykFall With Meでもfeat.されていました。ここ最近のバーンのクラブ・シーンでのモテぶりはハンパじゃないですね。ダンス・ミュージックという時代の先端の音楽とデイヴィッド・バーンの声の相性の良さがバッチリなのが面白いです。

そしてダンス・ミュージックだけでなく、他のバンドへの参加曲もなかなか素晴らしく見逃せません。特にオススメしたいのは、2006年にリリースされたNY在住のブラジル民族音楽集f0045842_032074.jpgForro In The Darkのアルバム「Bonfires of São João」(右写真)にボーカリストとして参加した2曲。Asa Brancaルイス・ゴンザーガのカヴァー)とI Wishという曲ですが、これはかなり良いですよ。フルートやバリトン・サックスなどを散りばめた祝祭ムード溢れた楽しいノルデスチの音楽に、瑞々しい素晴らしいボーカルを披露してくれてます。実に高揚感溢れる曲です。

そして個人的に最もイチオシなのが2004年にリリースされたThey Might Be Giantsジョン・フランスバーグが主催した反ブッシュ政権f0045842_011228.jpgのベネフィット・コンピレーション「Future Soundtrack For America」(左写真)の中に収録されているソロ曲Ain’t Got So Far To Go。この曲は個人的にデイヴィッド・バーンの曲の中でもフェイヴァリットな1曲。Morcheebaがプロデュースしているのでおそらく「Feelings」の時の曲でしょう。オーケストレーションを使用し、バーンの声の魅力を最大限に活かしたとんでもなく素敵な1曲。この曲だけの為に私はこのアルバムを買ったくらいです(このアルバムにはそれ以外にも超豪華なメンツの未発表曲が揃っているので必聴)。それほどまでに素晴らしい曲なんです。是非とも聴いてみて欲しいですね。

あと2006年にはブラジル音楽界の女王マリーザ・モンチのアルバムUniverso ao meu redor」(私のまわりの宇宙)の中の曲Statue Of Libertyでもボーカルで参加。1分少々という短さでありながらやはり抜群の存在感を見せ付けていました。初めてこの曲を聴いた時、ヒューマン・ビートボックスと共に突然バーンの声が出てきてビックリしましたね。
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そしてそして、さらに驚かされたのが2008年に入ってから、Fatboy Slimノーマン・クックによる噂の新ユニットThe BPA(The Brif0045842_055779.jpgghton Port Authority)からの1stシングルToe Jamにもディジー・ラスカルと共にfeat.されていたこと!イギリスでは、これまたスマッシュ・ヒットを記録したこの曲は、ノーマン・クックの能天気で陽気なビートに乗せて、バーンの粘着性のある声が全編に渡って楽しめる曲で、やはりダンスビートとバーンの声が完璧にマッチした傑曲(PVも最高です!)。途中で入ってくるディジー・ラスカルの高速ラップも最高にクール。バーンの声を入れる事でちょっと異国的なカンジがしてくるのが不思議ですね。バーンの声がノーマン・クックのビートにちっとも負けていないです。またもやダンス・ナンバーにもバッチリ映える事を証明してしまったようです。

思うにデイヴィッド・バーンの魅力はやはりその「歌の力強さ」だ。「生命力の高さ」というべきだろうか、聴いていて生きている事を実感出来て、さらに高揚感をもたらすこの粘着性のある声は本当に魅力的だ。さらにアメリカ人でありながらその声は純に欧米的ではなく、どこかアフロ的要素も含んだ演劇的でドラマティックな声。だが逆に聴く者に非常に安堵感を与える声でもある。どこにいても異様な存在感を放つ独特の声ですね。
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さらに声だけでなくサウンド的にも実験的で冒険的。作品を出すごとに毎回こんなワクワクさせられる人も珍しいです。

さて前置きが非常に長くなってしまいましたが、そんなデイヴィッド・バーン。2008年の暮れになってとんでもなく素晴らしい作品を届けてくれました。
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次回はそのアルバムを紹介します!

 
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by Blacksmoker | 2008-12-25 23:19 | ROCK

ATOMIC @ nu things 12/5(金) 2008


北欧ジャズシーンのスーパーグループ、Atomicが3年振りの来日。
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今回の日本ツアーのタイトルは「アトミック忘年会」・・・ってかこんな凄いの観たら年なんて忘れられないですよ。

北欧ジャズ・シーンと言えば、やはり北欧独特の幻想的サウンドを奏でるジャズが人気で、その他にも最近ではフィンランドのThe Five Corners Quintetを筆頭とするクラブ・ジャズが人気だ。しかしこのAtomicのジャズはストレートアヘッドなジャズ。お洒落さや洗練さではなく、凄腕のジャズメンが本気でぶつかり合う、60年代の流れを汲むジャズ。

まずはそのメンバー。

マグヌス・ブルー(Trumpet)
フレデリク・ユンクヴィスト(Sax)
ホーヴァル・ヴィーク(Piano)
インゲブリクト・ホーケン・フラーテン(Bass)
ポール・ニルセン・ラヴ(Drum) 

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北欧ジャズと言っても、それぞれのメンバーの拠点はまったく違う。マグナス・ブルーフレデリク・ユンクヴィストがストックホルム、ホーヴァル・ヴィークがベルリン、そしてインゲブリクト・ホーテン・フラーテンはシカゴ、ポール・ニルセン・ラヴがオスロという多国籍な集団だ。

まず注目は新作「Retrogradf0045842_972991.jpge」(右写真)。3枚組となるこの作品は2枚がスタジオ盤、そしてもう1枚がライヴ盤という内容。前作において、ある程度完成したかに思われた音楽性を更に進化させビルドアップさせたAtomicのサウンドの最新型が聴ける。この作品の中でやはり最も聴いて欲しいのが3枚目のライヴ盤。スタジオ盤よりかなり生々しく激しいこの緊迫感のあるライヴはスタジオ盤が霞んでしまうほどの素晴らしさ。これだけでも聴く価値ありです。そんな作品を引っさげてのツアーなので嫌が応にも期待が高まります。

そしてやはり注目なのは、ドラムのポール・ニルセン・ラヴ(左写真)!もうf0045842_982759.jpgこの人だけでも十分に観る価値があるでしょう。北欧ジャズ・シーンだけでなく、現在のジャズ・シーンにおいてもおそらく「最強」の称号を与えられるだろうこの鉄人ドラマー。マッツ・グスタフソンとのユニットThe Thingや、ラオル・ビョーケンハイムとのユニットScorch Trioなどでその尋常ではない人間離れしたドラミングを見せ付けてくれたこの男。特にScorch Trio「Luggumt」で見せた恐ろしいまでの破壊力を持ったドラミングは、今でも鮮烈に記憶されています。今回のこのAtomicの来日公演もこのポール・ニルセン・ラヴに最大の注目が集まるのは至極当然の事でしょう。

しかし今回その期待は、良い意味で予想を覆された感じとなりました。

ポール・ニルセン・ラヴのドラム以上に、このバンドはサックス奏f0045842_9113970.jpgフレデリク・ユンクヴィスト(右写真)の存在感がとてつもなく大きい。今回このライヴを観た人なら、もはや彼がこのバンドを牽引するリーダーだと言っても異論は無いでしょう。このフレデリク・ユンクヴィストのブロウしまくるサックスをメインとして、マグヌス・ブルーのトランペットが色を付け、そして他の3人のメンバーが付いていくというスタイルだ。なのでポール・ニルセン・ラヴのドラムは、Scorch Trioの時に見せた鬼のようなドラミングと比べるとかなり抑制されているが、それ以上にフレデリク・ユンクヴィストが予想外に大暴れしてくれていたのが嬉しい誤算でしたね。

1曲目から力の限り吹きまくるフレデリク・ユンクヴィスト。もの凄い熱量。アツい!1曲目が終わった後、ふと「スゲェなぁ・・・」と思わず呟いてしまっている自分がいました。
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2曲目は新作「Retrograde」からPapa。やはりスタジオ盤よりライヴ盤の方が素晴らしいように、ライヴ盤よりも生で体感するほうが圧倒的に素晴らしい。現在の細分化されたジャズ・シーンの中でも、このAtomicにはそのもっと源流にある原始的とも言えるストレートなジャズを感じます。この感覚はEric Dolphy「Out To Lunch」を初めて聴いた時の感覚に似ている。これぞ「This Is JAZZ」な感じ。
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ピアノのホーヴァル・ヴィークは、主役はフレデリク・ユンクヴィストに譲りながらも随所にインプロヴィゼーションを挟んだプレイで存在感をアピール。マイナー調のフレージングが北欧的な幽玄さを微かに匂わせています。

そしてフロント2管、鉄人ドラマー、そしてピアニストに囲まれ、寡黙にウッドベースをプレイするインゲブリクト・ホーケン・フラーテン。とにかくこの人もアツいです!
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寡黙ながらも、その動きはかなり激しく必死の形相で弦を弾くようなプレイ。跳ねるようなベースラインが印象的です。ほとんど無軌道にエネルギーを放出する他のメンバーのプレイを冷静に捉えリズムをキープする姿はまさしくベーシストの鑑です(彼はScorch Trioでもラオル・ビョーケンハイムポール・ニルセン・ラヴという恐ろしい2人に囲まれながらもその存在感をアピールしていましたね)。
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そしてポール・ニルセン・ラヴですが、予想していたよりは控えめながらもはやり尋常ではない手数。このドラミングは以前紹介したHellaザック・ヒルに近いものがありますが、ポール・ニルセン・ラヴのドラムは手数の多さだけでなく「重さ」もしっかり備えている。非常にグルーヴィー。これは基礎体力の問題でしょうが、それにしても圧巻です。終盤で披露したドラム・ソロには会場中呆然とする壮絶さでしたよ。やっぱ凄いわ。
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Db GestaltKing Kolaxなどよりライヴ感を増した最新作からの曲を中心にしたセット。オープニングのテンションを持続しつつ(スローな曲でも緊迫感はそのまま)、休憩を挟んだ2部構成で、正味2時間の熱演。さらに進化したAtomicの姿を見せ付けてくれたライヴでした。
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こんな凄いライヴなら何時間でも飽きずに観れますね。北欧ジャズ・シーンという括りだけでなく、現在の全てのジャズ・シーンを代表するバンドの素晴らしい熱演が観れて幸せでした。

ちなみに今回の大阪公演の会場となったnu things。初めて行ったんですが、カフェのようなお洒落さを備えた素敵な会場でしたよ。
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by Blacksmoker | 2008-12-16 08:53 | ライブレポート

中山うり @ クラブ月世界 11/28(金) 2008


中山うりを初めて観たのは大阪初公演となった2007年8月。それ以降の彼女の躍進は想像以上でした。

1stアルバム「DoReMiFa」の半年後には2ndアルバム「エトランゼ」をリリース。その半年後の2008年4月に映画「あの空をおぼえてる」の挿入歌となった夏祭り鮮やかにを収録したEP、そして10月にはシングル夕焼け空に摩天楼と、かなり順調なペースでリリースを重ねてきています。決して派手なブレイクをしたわけではないけれど、静かに、そして着実にそのファン層を広げていると言ったほうが良いでしょう。

f0045842_451315.jpgそして満を持してのフル・アルバム「ケセラ」(右写真)がリリース。前2作の世界観をさらに押し広げ、より歌への深度を増した名曲がいくつも収録されたこれもまた素晴らしい作品です。そしてこのアルバムのリリースに伴うツアー「ツール・ド・ケセラ2008」に行ってきました。関西公演は大阪や京都ではなく神戸が選ばれました。

今回のこのツアーにはなかなか面白い会場ばかりが選ばれており、この神戸公演は「クラブ月世界」。三宮にあるクラブで、昔キャバレーとして使われていた建物をそのまま改装した面白いクラブで、何とも昭和的なレトロで妖艶な雰囲気を醸し出していて、中山うりにふさわしい会場だ。
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ソファやテーブルなどもキャバレー時代に使っていたものをそのまま使っていてレトロ感覚全開。照明なんかもかなり独特の昭和感です。

4人のバンド・メンバーを連れて登場した中山うりは、前回観た時よりもさらに堂々とした雰囲気。良い意味でとてもプロっぽい風格になっておりましたね。

1曲目から、私の最も好きな曲月とラクダの夢を見た。イントロから身震いするくらいのホント名曲です。
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この月世界の昭和的なレトロな雰囲気と、彼女の無国籍だがどこか昭和的歌謡の要素も持った音楽性が見事に融合していて、とても幻想的な空間が早くも創られていましたね。前回のライブでも印象的だったギタリストが、今回もやはりかなり素晴らしい演奏。この人なしでは中山うりの音楽は完成しないんじゃないかと思うくらいの貢献度。
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そして新作「ケセラ」から陽気なカーニバルの午後に中山うりの吹くトランペットに加え、トロンボーン奏者とクラリネット奏者も加わり演奏に華を添えます。軽やかでノスタルジック。彼女の新しい魅力が感じられる曲ですね。加えてミラーボールのようなライティングがホントに幻想的で、この月世界はホントに中山うりの世界観を表現するのに最適な場所なんじゃないかと思ってしまいます。マドロス横丁なんかも最高にハマってます。

そして新作「ケセラ」から、新たな代表曲となるであろf0045842_56178.jpg夕焼け空に摩天楼。名曲です。初めて聴いた時よりもどんどんその良さが染み入ってくる深い曲ですね。低い声のトーンが心地良い。レコードでのイントロの印象的なピアノは、ライブではギターで演奏していましたが全く違和感ないアレンジだし、原曲の良さを120%活かすバンドの演奏にもただウットリと聴き入るのみでしたね。

いまだに現役の美容師でもある彼女なので、その美容師のエピソードもMCで交えて紹介されたショートカットや、昭和的な猥雑な雰囲気を持ったマルガリータなど新しい曲でさえも、あたかも以前からあった代表曲のようにすんなりとセットに収まっていているのもなかなか面白い。彼女の音楽の魅力であるシャンソン、マリアッチ、そして昭和歌謡などがミックスされた無国籍な音楽世界はどのアルバムでも健在なのです。
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そして以前のライブでも披露されていてかなり印象に残った歌を忘れたあなたへ。ライブではお馴染みの彼女が初期の頃に作った曲で、新作で遂に新録され収録されていましたが、やはりこの曲は歌詞が格別に素晴らしく、そしてそれに付随するメロディの切なさがが泣けそうです。前回のライブで観た時は静かにしっとりと歌っていましたが、今回は若干軽やかなアレンジ。でも曲の素晴らしさはちっとも変わりません。
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インストのジャワの夜はふけて白猫黒猫なども挟み、笑う月中島みゆきばいばいどっくおぶざべいなど様々な曲調の曲を並べ、それを飽きさせる事なく、逆にぐいぐい引き込んでいくその声の魅力は更に求心力を増したような気がします。バンドの演奏力の高さも特筆モノですね。最後にアンコールで披露されたほろ酔いブランコも魅惑的な雰囲気で素敵でした。
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静かに、そして徐々に聴く人の耳に浸透していく彼女の声と音楽。これからもどんどんそのファン層を拡大していく事になるでしょう。彼女のレコードを聴いて気に入った人は、必ず生でその音楽を体感してみるべきだと思います。


 
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by Blacksmoker | 2008-12-08 03:30 | ライブレポート

VYBZ KARTEL [The Teacher’s Back]


うおぉぉコイツはヤベえ!

これはストリートでリアルでハードコアなダンスホールレゲエ・アルバム!一枚聴き通すだけでこんなに体力を消費するアルバムは最近ではなかなかない。最後まで聴くともうグッタリです。それほどまでにこのバッドマンDJ、Vybz Kartel(ヴァイヴス・カーテル)の新作「The Teacher’s Back」は超強力な大傑作アルバムだ。

f0045842_8395272.jpgまずジャマイカにおいて「バッドマンDJ」と言えば、まず何はなくとも一番に挙げられるのはNinja Man。これに異論のある人はいないだろう(先日も超久々に来日していてかなりアツいパフォーマンスを見せてくれた模様・・・観たかったです)。そしてそのNinja Manの直系にあたるのは、もちろんBounty Killerであり、その彼の率いるAlliance Crewの面々。

そして、そのBounty Killerの次を狙うバッドマンDJの筆頭に挙げられるのが、Busy Signalであり、Mavadoであり、今回紹介するVybz Kartelだ。昨年のMavadoの「Gangster For Life」、そして9月にリリースされたばかりのBusy Signalの新作「Loaded」と強力なアルバムが続きましたが、その中でもこのVybz Kartelの新作「The Teacher’s Back」は更に強力。

1978年ジャマイカのキングストン生まれのこのVybz Kartelは、とにかく話題性には事欠かない「バッドマンDJ」。最も有名なのはf0045842_8473814.jpg2003年のジャマイカ最大級のフェス「Sting」において、大先輩にあたるNinja ManとのDJクラッシュにおいて口だけでなく本気で手を出してしまった事件でしょう(その後彼はNinja Manに謝罪)。そして師匠Bounty KillerのライバルであるBeenie Manとつるんだ事によりAlliance Crewを脱退したり、最近ではMavadoとのバトルなどかなりのバッドマンを地で行く人物。

ただVybz Kartelの魅力はバッドマン/ガンマンぶりだけではなく、そのスキルの高さにもあります。ガチガチに韻を踏む技巧的な言葉使いや、安定したフロウなどは同世代のDJの中でも群を抜いて凄い(Bounty Killerの数々のヒットを作っていたのも実はこのVybz Kartelだ)。更にどんなリディムも自由に乗りこなせる天才型DJ。Missy Elliottの2005年のアルバム「The Cookbook」に収録されている、その名もズバリなBad Man(共演にM.I.A.)でのギラリと光る鋭い客演も印象的でした。(ちなみにこのMissy Elliott「The Cookbook」は個人的に大傑作だと思います!)
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Mavadoのアルバムはまだまだかなりの荒さや不安定さも残っていましたが、Vybz Kartelのアルバムは非の打ち所がないくらい完璧。

更にこのアルバムは、シングル単位市場のダンスホール・レゲエ界において、アルバム一枚を一つの作品として聴かせるコンセプト・アルバムになっている。ゆえに全曲新録のブランニューのみで構成されている。ジャマイカのリアルな現状を「Teacher」であるVybz Kartelが激しく描写する内容だ。このリアルでハードコアな、ヒリヒリとした感覚は最近のダンスホール・レゲエではなかなか味わえないスリルがあります。

そしてこのアルバムの全ての曲を手掛けたのがジャマイカ・ダンスホール界の神童スティーヴン・マクレガー(下写真)だというのも話題の一つ。レゲエ界のレジェンド、フレディ・マクレガーの息子であり、今のジャマイカ・ダンスホール・シーンはこの男を抜きに語れないほどの数々のヒット曲を生み出す天才プロデューサー。
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その歳を聞くと驚愕の、何とまだ16歳!!要するにまだ高校一年生!そんな男の子が今やSean PaulMavadoElephant Manなどを手掛けているわけですが、そんな若さが信じられないくらいの強力でハードコアなダンスホール・チューンの連続です。しかし勢い一発なだけではなく、驚くほどゆれ幅の広い多彩な楽曲にも唸らされます。ホント、天才ですね。

前半はもう怒涛のダンスホール・チューン。初っ端からDreamCourt CaseAddi Add Addiなど重厚なリディムに畳み掛けるVybz KartelのDJに鬼気迫るものを感じます。
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得意のスラックネス(下ネタ)・チューンやガンジャ・チューンも随所に挟みながら最後まで聴き通させるのは、やはりVybz Kartelのスキルの高さゆえ。そしてスティーヴン・マクレガーの強力なリディムゆえでもありますね。お互い天才肌同士のぶつかり合いがこんな凄いアルバムを完成させてしまったわけです。

そして、こんな息もつかせない緊迫感のあるアルバムゆえに最後のワン・ドロップ的なLove、そしてメロウなLife Storyが非常に効果的。アルバムの構成としても完璧ですね。
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アルバム一枚を聴き通すのに相当な気力と体力を要するアルバムですが、現在のダンスホールDJの中で最も勢いのあるこの男の凄さを体感出来る強力なアルバムです。是非聴いてみて欲しいです。

ちなみに日本盤には、Broad DaylightWhat A Boy Canといった最近のVybz Kartelのヒット曲が 7曲も収録されているという更に凄い内容なので絶対に日本盤をオススメします!
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by Blacksmoker | 2008-12-03 08:33 | REGGAE