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湯川潮音 @Big Cat 1/27(木) 2010


湯川潮音は「正統派フォークシンガー」としてコアなファンを持っている。
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インディーズ盤「逆上がりの国」から始まり、メジャー・デビュー盤「湯川潮音」でその幽玄なフォーク・ミュージックでファンを獲得し、最近作である2008年の「灰色とわたし」ではもろにトラッド・フォーク色を強めた素晴らしい音楽でファンを唸らせてきました。

f0045842_23343520.jpgそれゆえに初のカヴァー・アルバムとなった「Sweet Child O’ Mine」は賛否両論だった(いや、むしろ否の方が多かったように思える)。「灰色とわたし」を録音したイギリスのスタジオに再び単身渡り出来上がったのは、何と全編英語詞による、いわゆる「洋楽ヒット曲カヴァー集」でした。

その選曲がOasisGuns N’ RosesMR.BIG、さらにはAerosmithThe PretendersRadioheadというまるで中学生のような「浅い」選曲にファンは腰砕けになったに違いない。まあカヴァー曲集なんで、そこまで怒るもんでもないとは思うんですが、たしかに最初は驚きましたね。(ほぼ時期を同じくしてリリースされた中山うりのカヴァー・アルバム「7 Colors」が昭和歌謡曲を中心とした選曲で、彼女のイメージを崩さず、さらに鋭い選曲が評価高かったのとは対照的でしたね)。

さて今回のツアーはそのカヴァー・アルバム「Sweet Child O’ Mine」リリース後のツアー。僕は今までに彼女のライヴを観た事がなかったので、今回初めて観てきました。

Big Catにイスが置かれているのも初めてですが、客席はだいたい7割くらいだったでしょうか。ギター1本で湯川潮音が歌うステージを想像していたら、ギター、ベース、ドラムを従えての4人組バンド編成。ベースはLittle Creaturesの鈴木正人、ドラムはBoredomsウリチパン郡でお馴染みの千住宗臣という凄腕揃い。
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1曲目からバンド・サウンド全開。イントロを聴いても何の曲だか分かりませんでしたが、英語詞のヴォーカルが入りやっとOasisDon’t Look Back In Angerだと分かりました。原曲のじわじわ盛り上がってくる感じではなく淡々としたフォーク調にアレンジされています。湯川潮音の凛としたキーの高い歌声が非常に逞しくヴォーカリストとしての力量も充分ですね。

続いては、またまたコーラスが来るまで分からなかったJackson 5I Want You Back。これも大胆すぎるアレンジで見事にオリジナル曲に変貌してました。バンドという編成なので、湯川潮音本人もヴォーカリストとして、アコースティック・ギターを弾きながらステージを縦横に動き回ります。
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カヴァー曲を2曲通してようやくオリジナル曲風よ吹かないでが登場。重厚なトラッド・フォークに日本語詞による透き通る美しい声のこの曲を聴くと、やはりこういったフォーク・タイプの曲をやらせたら右に出るものはいないくらいハマります。

この後もAerosmithAngelMR.BIGTo Be With Youとカヴァー曲は続きます。完全にレゲエ/ダブな曲調に大変身したGuns N’RosesSweet Child O’MIneなどバンドという特性を最大限に活かして、いろんなタイプの曲を披露していきます。フォーク・シンガー以外の側面も見せていて、聴いていると「まあ、こっちもありなんじゃないかなぁ」なんて気にもなっていきす(「誰もが知ってる曲」というのもポイントかもしれませんが)。
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中盤以降はHarlemしずくのカーテンひなげしの丘など代表曲も盛り込んできますが(そういや逆上がりの国もやってました!)、ロック・バンドのようにかなりラウドな音を出してる曲もありましたね。本人もMCで「今まで私のコンサートを観に来てくれてる人はうるさくてビックリしたんじゃないかな?」と言ってたくらい。今までの大人しいイメージとかなり違ってて面白い。メジャー・デビュー曲となった緑のアーチなどもちゃんと演奏してくれたのは嬉しかったですね。

その後はしっとりとRadioheadNo SurprisesThe PretendersDon’t Get Me Wrongのカヴァーも登場。どの曲も知ってる曲だけあって、崩し方が面白くてついつい最後まで聴いてしまいます。もう今後こういった変わった形態のツアーはないと思うので、これはある意味貴重な体験かもしれないですね。

アンコールは、独りでギターを抱えて登場。以前からライヴでは演奏しているがまだレコーディングされていないという曲ルビーを弾き語り。これは「今までの湯川潮音像」を踏襲した歌で、これならばレコーディングして発表すれば従来のファンを充分に喜ばせられるでしょう。
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今回は湯川潮音にとって、従来の音楽性と新しい音楽性のちょうど中間地点に位置するミュージシャンとしての過渡期のライヴだったと思います。そしてファンの戸惑いと新たな驚きが混在したとても興味深いライヴでした。個人的にはもう少しオリジナル曲を聴かせて欲しかったと思いますが、それはまた新作がリリースされた時を楽しみにしておこう。そして彼女には紆余曲折を経て独自の道を進んで行って欲しいですね。

  
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by Blacksmoker | 2010-02-27 23:08 | ライブレポート

CAROLYN WONDERLAND & SHELLY KING @ 京都磔磔 1/21(木) 2010


今まで全く知らなかったミュージシャンだったが、ライヴを観てそこで一発でファンになってしまった経験というのは、音楽好きなら少なくとも一度はあるだろう。

さて、今回僕が出会ったのは、キャロライン・ワンダーランドシェリー・キングという2人のミュージシャン。

2人ともテキサス出身で地元を中心に活動するシンガー・ソングライター達である。それぞれがお互いに結構なキャリアを積んで活動しており、実は2009年にこの2人で日本ツアーも行っており、今回は2度目の来日公演になるとの事だ。前回の来日公演時と同様に、今回も普段はあまりミュージシャンが行かないような場所にも足を運ぶツアーで京都の綾部や、愛媛の松山、さらには石川の白山などかなり郊外まで廻ります(そういえばDamon & Naomiの先日のツアーもそうでしたね)。個人的には家から一番近場の、大阪の能勢にある「Cafe 氣遊」という場所に行きたかったけど(それでも車で30分かかる山奥みたい)、あいにく時間が合わず、おなじみの(笑)京都の磔磔へ行ってきました。

大した宣伝もなく、まともに彼女のレコードを取り扱っている店もない状況だったで、客は僅かに10人少々という超厳しい入りでしたが、もうそうなると逆に客席にも一体感が出来てくるというモノ。会場も妙にアットホームな雰囲気になっていましたね。そんな中にギターを抱えた2人が登場。
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ステージ左側に赤い髪にテレキャスターを持っているのがキャロライン・ワンダーランド。そして右側のアコースティック・ギターを持った60年代のヒッピー風のフラワーなファッションに身を包んだロングヘアーのシェリー・キングシェリー(下写真)の方は事前に見ていた写真よりも横幅がかなりBIGになっていて、その風貌はまるでHEARTアン・ウィルソン並みです。
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ほぼ1曲ごとにお互いのボーカルでそれぞれの持ち歌を披露していくのですが、度肝を抜かされたのはキャロライン・ワンダーランド!!こんな凄いミュージシャンがまだまだ知られないままでいるのか!ソロ・アルバムも何枚も出しているキャリアの持ち主みたいですが、彼女の存在を知らなかったことを思わず後悔してしまうほどの強烈なインパクトを与えてくれましたね。

キャロラインのスタイルは完全に「ブルーズ」だ。フィンガー・ピッキングでテレキャスターの弦をハジく姿はまるでマディ・ウォーターズハウンドドッグ・テイラーが乗り移ったかのような鬼神のごときパフォーマンス!チョーキングも泣きまくりです。
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そして更に輪を掛けて凄いのが、そのボーカルなんです。華奢な見た目とは裏腹にそのドスの利いたド迫力の声が響き渡ります。声質なんかはメリッサ・エスリッジに近い。何か叱られたらチビってしまいそうなくらいの迫力だ。

ステージに上がる前のキャロラインは物静かで大人しいたたずまいだったので油断してましたね。全くキャラが違います!曲が終わるとビールの入ったグラスを客席に向けて「カンパイ!」と笑顔。ステージに立つとキャラが変わる人の典型のような人ですね。シェリー・キングの体のデカさに目を奪われていたら横からぶん殴られたカンジです。
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対するシェリー・キングはと言うと、こっちは「カントリー」。流麗なアコースティック・ギターでテキサスの広大な大地に響くようなカントリー・ソングを歌います。こちらはキャロラインと違って、聴いていて落ち着きを与えられるような歌ですね。そのBIGな体から発せられる太くて優しい声も素敵ですね。こちらはカントリー専門のラジオ局とかで頻繁にかかってそうなキャッチーなカントリー系ソングが満載です。
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何でもシェリーは「テキサス州認定の音楽大使」という称号を最年少でもらったほどの実力者だそうですね。キャロラインと違って「州公認音楽大使」というだけあって、こちらはステージ上でもステージ外でも陽気なキャラでした(途中休憩の時に、「一緒に写真撮ろう」って言われて写真撮られたくらいのフレンドリーさ)。

お互いの持ち曲を交互に披露していくのですが、どの曲でもコーラスのハモリを入れたり、リズム・ギターでバックアップしたりと妙に相性抜群のコンビネーションで、もう何年も一緒に活動してるかのような息の合いっぷりも見事。

後半になると、キャロラインはギターをラップ・スティールに持ち替えてギュインギュインに弾きながら歌を披露したり、かと思えばかわいくウクレレを弾いたりとかなりマルチ・プレイヤーぶりを発揮。何でも出来るんですね~。とんでもない実力派だ、この人は。
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個人的にはヘッドバンギングばりに赤い髪を振り乱しながら弾く姿に惚れましたね。カッコイイ!客が10人なのがもったいないくらいの物凄い熱量と気合の入った90分のライヴでしたね。

最後は2人で客席に下りてきて、完全アカペラでAmazing Grace。2人のハーモニーが美しすぎて息を呑みます。観ているこっちも自然と歌ってしまうほどの吸引力。やはりカントリーとブルーズのルーツはゴスペルだということを再認識させられる名場面でした。
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つくづく客が10人しかいなかったことが悔やまれるライヴでした。他の会場もそうだったのだろうか?そうだとしたらほんとにもったいない話だ。僕の中では今回観たキャロライン・ワンダーランドシェリー・キングのライヴはアメリカ人ミュージシャンの層の厚さをまざまざと見せ付けられた気がしましたね。特にキャロライン・ワンダーランドというブルーズ・ウーマンが観られただけでも、最高に価値のあるライヴだったと思います。

もしまだ彼女の存在を知らない人は是非ともチェックしてみて下さい!Youtubeで彼女の動く姿を見てもらえるとその凄さが分かりますよ~。
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by Blacksmoker | 2010-02-18 22:53 | ライブレポート

EELS [End Times]


f0045842_1493159.jpg2009年6月にリリースされたアルバム「Hombre Lobo」から数ヶ月後、Eelsのホームページに「End Times Are Coming」という謎の言葉と共に数字のカウントダウンが始まったので、「End Times」って何だ?解散でもするのか?なんて思っていたら、何と新作「End Times」のリリース日のカウントダウンでした!

前作から僅か半年しか経っていない中での新作リリースとはいやはや恐れ入ります。リリース日の発表のタイミングから考えて、前作と同時期には録音されていたのでしょう。
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アルバム・ジャケットには寂しげなホームレスの老人が夜に外を歩いている絵が描かれているのですが、今回の新作「End Times」のアルバム・ジャケットの絵を描いているのは、Eelsの作品ではお馴染みのエイドリアン・トミーネ。シングル盤「Cancer For The Cure」のジャケットや、3rdアルバム「Daisies Of The Galaxy」の中ジャケのギターを弾くEのイラストなどを手掛けているアメリカ人コミック作家。

余談ですが、僕はこのエイドリアン・トミーネの絵が大好きで、彼のポスターや本などたくさん持っています。家に飾ってあるポスターもエイドリアンのものばかりで、7~8年くらい前にエイドリアンの個展に行って本人に似顔絵を描いてもらったことがあるんです。

エイドリアンの描く絵は、カラフルだが寂しさが漂う人物が多く(エイドリアン本人が日系の血が入っているので登場人物も日系っぽい顔の人が多い)、「孤独感」があり、そこが僕がエイドリアンの絵を好きな理由でもあります。
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彼の短編集「Optic Nerve」をまとめた「Sleepwalker」という本が、日本語版も出ているのでチェックして欲しいですね(ちなみにEelsのアルバムには、こういったオルタナティヴ・コミック作家の絵が良く使われていて、これも僕が好きなSethというアーティストの絵も良く使われています)。

そのエイドリアン・トミーネの孤独感漂うジャケットの「End Times」ですが、アルバムの内容も内省的でメランコリックで孤独感や喪失感が溢れています。前作「Hombre Lobo」とはまさしく正反対な出来といえます。
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アルバム全編に渡って歌われるのは、一人の女性との「別れ」。最初から最後までこの女性との思い出や後悔が延々と続くのです。噂ではこのアルバムはEの離婚をテーマにしていると言われるのですが、それにしても全編このトーンで占められているのは凄いです。

1曲目The Beginningからして、「最初は全てが美しく自由だった・・・」と思い出に耽りまくっています。その後もGone ManIn My Younger DaysEnd TimesI Need A MotherOn My Feetなど徹底して別れからくる孤独感の歌ばかりです。
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Eelsというと「」という影が常に付きまとうバンドとして有名だ。Eは姉や母親を相次いで亡くし(ツアー・マネージャーの突然の死で初来日が中止になったこともありました)、その喪失感を歌にしたのが初期の作品であり、さらにはそこから立ち直ってロックなアルバムをリリースしてきたわけですが、今回は離婚という「喪失」をしてしまったわけですから、つくづくEという男は孤独な人なんだなぁと思います。
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しかし皮肉な事にEが孤独感を感じれば感じるほど、メランコリックで素晴らしい音楽を生み出してくれることを我々は知っている。この「End Times」も例に漏れず、とても美しくて優しくて、そして哀しい素敵な曲が満載だ。まさしく全世界の孤独な人の為のベッドルーム・ミュージック。あのトム・ウェイツEelsの音楽にゾッコンなのも理解出来ますね(もちろん僕の人生にもEelsの音楽は不可欠です)。
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今まで以上にシンプルなサウンドながら(ほとんどが4トラック・レコーダーで録音されているようです)、今まで以上に心に沁みる素朴だが美しいメロディを持った作品です。前作では名前の消えていたドラマーのButchの名前が復活しているのも嬉しいですね。

ちなみに日本盤にはないのですが、輸入盤には4曲入りのCDが入った2枚組仕様があります。これも素敵な曲が入っていますので、買おうと思っている人は是非こちらをオススメします。
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by Blacksmoker | 2010-02-09 01:13 | ROCK

OK GO [Of The Blue Colour Of The Sky]


完全に化けました!

f0045842_1152736.jpgYoutubeで爆発的ヒットとなったHere It Goes Againを収録したアルバム「Oh No」以来、実に4年振り。シカゴ出身のロック・バンドOK Goの3rdアルバム「Of The Blue Colour Of The Sky」は前作から全く別のバンドかと思えるほどの変貌ぶりに度肝を抜かれます。

変貌と言っても「後ろ向きな方向」や「ガッカリな方向」へ行ったのではなく、完全にバンドとして前進したと言っても良いでしょう。これは嬉しい誤算です。OK Goといえば、いわゆるギターを中心としたロック・バンドというのが一般の共通認識だと思いますが、今回のアルバムではその認識は覆されるでしょう。
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この3rdアルバム「Of The Blue Colour Of The Sky」OK Goが向かったのは、サイケデリック・ロック・サウンド。今まで、このバンドを好きな人にはこの変化はもしかしたら賛否両論かもしれませんが、個人的にはめちゃくちゃハマリましたね。

さて今回のアルバムのプロデューサーに迎えられたのは何とデイヴ・フリッドマン

マーキューリー・レヴの元メンバーにして、フレーミング・リップスMGMTClap Your Hands Say Yeah、さらには日本のZazen Boysなど手掛ける「サウンドの魔術師」。この人の作り出すサウンドは、ベースやドラム中心ノリズム・オリエンティッドなサウンドで、いびつなくらい歪んだミックスが特徴でもある。前作「Oh No」をプロデュースしたのがThe CardigansFranz Ferdinandの1stを手掛けたスウェーデンのトーレ・ヨハンソンだった事を考えると、この変化は相当なものだという事が分かります。

そしてその成果は1曲目の1stシングルであるWTF?(下写真)からして、もう一目(一聴)瞭然。またもや面白過ぎる映像のPVが話題のこの曲ですが、一発でデイヴ・フリッドマンと分かる残響音のあるドラムと、恐ろしく歪みまくった重低音ベースからしてもう全く違うバンドです。
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さらに全編ファルセットのヴォーカル、そしてギターはカッティング中心の音に抑えられ、ハンドクラップ音やコーラスなど様々な音は左右のスピーカーに分離して散りばめられています。ミックスもヴォーカルを前に出さずに楽器の音の中にわざと埋もれさせるデイヴ・フリッドマン独特のミックスになっています。最初聴いた時はかなり面食らいましたが、強力なリズムと微妙なキャッチーさはハマるとつい口ずさんでしまうほどクセになります。

続く2曲目の2ndシングルThis Too Shall Pass。これも一発録りのPV(下写真)が最高な曲ですが、この曲の歪みっぷりも凄いです。
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超ポップなのに音はエゲつないくらい凶暴です。普通のスピーカーなら音割れするヘヴィ過ぎるベースとドラムを中心に、キャッチーなコーラスにピアノ、そして子供の合唱隊も入ってきてかなり賑やかな曲で、彼らの代表曲になるだろう出来ですが、今までのOK Goとは全く違うサウンドです。よく聴くと色々なサイケデリックなエフェクト音が挿入されてたりしてて面白く、車のスピーカーで聴いてると気付かない仕掛けが、高出力のスピーカーで聴くとちゃんと聴こえてくるので驚きますね。

次の曲All Is Not Lostでは、ようやく従来のOK Goらしいメロディが出てくるが、やっぱりベースとドラムの音はもの凄い歪んでいます。さらにその上にアコースティック・ギター2本が左右のスピーカーに振り分けられていて、その上を浮遊するファルセット・ヴォーカルが被さります。これがとてもサイケ感覚を増長させてくれますね。
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とにかく冒頭3曲で、このひねくれぶりだが、この後も全く新しいOK Goのサウンドに驚かされるでしょう。前作「Oh No」の中では異色だった曲Oh Lately It’s So Quietが、今回のアルバムのサウンドに最も近いような感じがします。

レコーディング時にメンバーが一番聴いていたのがプリンス「Purple Rain」だったみたいだが、なるほどこの作り込んだ密室感やファルセットの歌声、ベース中心の適度なファンキーさ、後半の80’s感はその影響がありますね(I Want You So Bad I Can’t BreatheEnd Loveなんて特に!)。プリンスだけでなくTalking Headsの影響も見え隠れするのもポイントですよ。
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ギター1本の弾き語りLast Leafでさえも、シド・バレットジョン・フルシャンテのソロのようなあやうい幽玄な雰囲気が漂っているし、Back From Kathmanduも普通なら爽やかなアコースティック・ソングであろう曲が、中期のビートルズ(はたまた「Their Satanic Majesties Request」期のストーンズ)を彷彿させる緻密に作りこまれたなアシッドなソフト・サイケデリック・サウンドに変身しています。終盤のドリーミーなWhile You Were Asleepなんてもはや以前のOK Goの面影さえ残していませんね。
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このように以前のギターポップ・バンド的なサウンドを期待していた人には、この変化がどう映るか分かりませんが、個人的にはこの方向は大正解だと思います。こんなポテンシャルを持ったバンドだとは思いもしませんでしたね。そこをデイヴ・フリッドマンが上手く引き出し見事なまでのサイケデリック・ポップ・アルバムとして結実させた大傑作

フレーミング・リップス好きなら絶対チェックして下さい!

  
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by Blacksmoker | 2010-02-05 10:49 | ROCK

V.A. [People Take Warning! Murder Ballads & Disaster Songs 1913 -1938]



2010年1月12日に起こったハイチ大地震。これにより20万人とも言われる死者が出ていると言われている。
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その地震から11日後の1月23日に様々なミュージシャンや俳優が集まり「Hope For Haiti Now」というチャリティが行われた。その中でU2のボノジ・エッジ、そしてJay-ZリアーナによってStrandedという曲が発表され歌われた。

思えば人類は遥か昔から何度も天災や災害に見舞われ、その都度そこから立ち直ってきたわけです。そして、どの時代でもそういった状況に置かれた人々の心の支えになったのは「」でした。人々は歌う事によって苦しみや悲しみを乗り越えてきたのです。

天災や戦争や災害が起こるたびに人々は歌によって自分達を勇気付けたり、その歌から人生の教訓を学んだりしました。そしてその歌は、時代が変わっても、その時によって歌詞を変え、意味を変え、後世の人々に歌い継がれてきたのです。

例えば「Hope For Haiti Now」のコンサートでブルース・スプリングスティーンによって歌われたWe Shall Overcomeは1960年代のアメリカの黒人の公民権運動の歌だし、メアリー・J・ブライジによって歌われたHard Times Come Again No Moreは1854年に書かれた南北戦争の歌だったりします。時代は違えど、そこに内包されるメッセージは人々に勇気を与えるものなのです。

最近でも我々は様々な天災や災害を目の当たりにしています。2004年のスマトラ沖地震、2005年のハリケーン・カトリーナ、そして阪神大震災など・・・。そしてそこには必ずと言っていいほど歌が生まれています。まさしく災害の歴史は、ディザスター・ソングの歴史でもあるのです。

さて本日紹介するのは、ニューヨークのTompkins Square Recordsから2007年にリリースされた3枚組BOX「People Take Warning! Murder Ballads & Disaster Songs 1913 -1938」(下写真)。
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これは1913年から1938年の間(要するにアメリカの大恐慌時代)にリリースされたディザスター・ソングを集めたもので、さらにはタイトルにもあるようにディザスター・ソングだけではなく、その時期に起こった殺人事件の歌(マーダー・バラッド)なども収録されています。全70曲中、30曲以上がこのBOXによって初めて公開される音源だそうです。ちなみに表紙の絵は1912年のタイタニック号の沈没が描かれています。

3枚のCDは、それぞれテーマ別に分けられており、

Man V Machine ⇒事故や災害
Man V Nature ⇒自然災害
Man V Man (And Woman, Too) ⇒殺人

と、なっている。

48ページのブックレットが付いてるのですが、これが秀逸で、1曲1曲について解説や災害の詳細、さらには当時の写真などが載っています。
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1曲目のタイタニック号沈没を歌ったHi Henry Brown & Charlie JordanTitanic Bluesから始まり、飛行機事故や列車事故の歌、そしてミシシッピ大洪水(下写真)、さらにはイナゴの襲来や、嵐、竜巻、堤防の決壊、大火災、干ばつ、大地震など様々なディザスター・ソングが収録されています(ちなみにタイタニック号沈没を歌った曲が5曲くらいあって、いかに当時この事が人々に衝撃を与えたのかが分かります)。
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その他にも最近の我々にも共通する話題であろうインフルエンザ大流行を歌ったElder CurryMemphis Fluなどもあります。Led Zeppelinがカヴァーしたことで有名なWhen The Leeve Breaksの元曲(Kansas Joe & Memphis Minnie)そして最後は実名入りのマーダー・バラッドが満載です(イントロダクションの文章はトム・ウェイツが担当しています)。
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面白いのはその歌詞にも見受けられる。キリスト教的世界観による思考が我々日本人とはかなり異なっている。マーダー・バラッドはともかくとして、やはりディザスター・ソングなどでは「こういう災害にも負けず、立ち上がろう」という内容よりも、「これは神が我々に与えた試練なのだ」という内容のものが多い。
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昔の日本でも「他力本願」という思想があったが、これも「極楽浄土に行けないのは、仏様への祈りが足りないから」だとする考え方で、思想的には共通するものがあるかもしれません。ただひたすらに救済(Delivarance)の時を待つ無力な人々の心が聞こえてくるようです。


ブルース・スプリングスティーンがアルバム「We Shall Overcome」をリリースした時にこういう事を言っていた。

素晴らしい曲でもいつかは忘れ去られていく。新たな文脈を与えられずに忘れられていく曲もある。現代に当てはめると生き返る曲もあるのに歌われないままなんだ。歌に込められた魂や生き様を忘れたままにしたくない。
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さらに、ボブ・ディランも最近のアルバムでは、昔のブルーズのメロディや歌詞を彼なりに曲に盛り込んで伝承してしている。そこには昔の曲の中にあるメッセージを後世に伝えていこうという使命感が感じられる。ブルースディランのこの使命感は、このボックスが作られた意図とも共振するものですね。
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この「People Take Warning! Murder Ballads & Disaster Songs 1913 -1938」を聴いて、我々はこの災害から立ち上がる勇気、そして人生の教訓を学ばなければならないですね。


   
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by Blacksmoker | 2010-02-02 01:47 | GOSPEL