2012年7月7日(土) チプルソ -傷だらけのB-BOY- ワンマン・ライヴ決定



今、関西のヒップホップ・シーンでは最も注目されているラッパーの「チプルソ -傷だらけのB-BOY-」のワンマン・ライヴが決定しました!ライヴがホントに素晴らしいので是非観て欲しいです。

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2012年7月7日(土)
■開場18:00 開演19:00
ばんまい (大阪府池田市鉢塚3丁目15-5A)
TEL:072-761-0064 ホームページhttp://teshigotoya.org/
■料金2,000円(1ドリンク付き)


大阪は服部緑地公園を拠点とするラッパー「チプルソ-傷だらけのB-BOY-」。
http://tipleso.blog3.fc2.com/blog-category-2.html
ヒップホップ・シーンでは既に天才的なフリースタイラーとしての絶対的評価を得ており、2011年には、日本最大のMCバトル「ULTIMATE MC BATTLE(UMB)」のグランド・チャンピオンシップ全国大会に大阪代表として出場し、準々決勝まで勝ち上がっています。

しかし、この男の凄さはフリースタイルだけではありません。昨年末にリリースされたアルバム「一人宇宙 -起源FREESTYLE-」では演奏・録音・ミキシング・マスタリングまで全て独りで行い、しかもその内容の凄さに関西のヒップホップ・シーンでは相当な話題となりました。さらにライヴでは、「NO DJ & 1 MC」という全く独りだけでギターとMPCとヒューマンビートボックスのみを使って行われる斬新なスタイルで観た者にかなり衝撃を与えます。3月に刊行された月刊「新潮」において、まだほとんどアルバムが流通していないにもかかわらず、20ページもの特集を組まれました。http://www.shinchosha.co.jp/shincho/4649/201203.html

そしてアルバム以上に衝撃を受けるのが、ライヴの凄さ。痛々しい剥き出しのリリックは涙が出るくらい揺さぶられます。そしてこの男はヒップホップの世界だけでなく、もっと幅広い老若男女に聴かれるべきだと思います。

そんなわけで、今回チプルソの世界を存分に堪能して頂くためにあえて彼の「ワンマン・ライヴ」を企画しました。彼にとってもワンマン・ライヴというのは、ほとんど経験が無いと思いますので、今回のライヴは絶対に貴重な体験になるはずです。その凄さを是非体感して下さい。

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個人的にも何度かチプルソのライヴを観た事がありますが、神門やTHA BLUE HERB、そしてNORIKIYOらに通じるアツく感動的なステージで、マジで涙してしまいました。それくらい素晴らしいです。

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もちろんヒップホップ好きはマストですが、非ヒップホップの人にこそこのライヴは是非観て頂きたいです。
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# by Blacksmoker | 2012-05-30 11:08 | 告知

2012年9月8日(土)「ピーター・バラカン音楽紀行 特別編:グレイトフル・デッドの世界へ」

 

私が企画でこんなイベントを開催します!

遂に我が師匠であるこの方がやってきます。しかもかなり攻めた企画です。こんなイベントが観れるのはおそらく日本でもココだけでしょう。


「ピーター・バラカン音楽紀行 特別編:グレイトフル・デッドの世界へ」

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■日程:2012年9月8日(土) 開場14:00 開演15:00
■会場:逸翁美術館 マグノリアホール(定員140名)
    〒563-0058 大阪府池田市栄本町12-27
    TEL 072-751-3865
逸翁美術館HP : http://www.itsuo-museum.com/top.html
■ゲスト:松本純一(Bear's Choice代表)
■料金:前売3,000円 / 当日3,500円
■予約 : Bear's Choiceにて電話及びメールで受付けます。
    TEL 06-6654-5510(10:00~18:00 / 月曜~金曜)
    E-mail :info@bearschoice.com (E-mailの場合、件名は「9/8 ピーター・バラカン・イベント」として頂き、お名前と枚数を電話番号を記入下さい)
    Bear's Choice HP : http://www.bearschoice.com/

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〜ピーター・バラカンと行くグレイトフル・デッド探求の旅〜

ヒット曲などほとんどなくヒットチャートとは無縁ながら、ライヴには毎回数万人が集まり、アメリカでは毎年コンサートの年間収益で常に一、二を争うバンド、グレイトフル・デッド。今やアメリカでは最も影響力を持つ伝説的な存在となっている。1995年にリーダーのジェリー・ガルシアの死によって解散してもなお、現在においてその影響力は衰えるどころか増していると言っても良い。

しかし日本の地を一度も踏むことがなく解散してしまった為、同じ時期に活動したビートルズやローリング・ストーンズやピンク・フロイドなどに比べて日本での知名度は圧倒的に低い。しかも初めて聴こうと思っても、膨大な数のライヴ盤がリリースされていたりして、どこから聴けば良いか分からないのも事実です。

そこで今回「グレイトフル・デッドとはこんなにも素晴らしいバンドなんだ」という事を、デッドファンを公言するブロードキャスターのピーター・バラカン氏をお迎えし、彼らの歴史から音楽、そしてその魅力について存分に語りまくって頂きます。デッド初心者はもちろん、デッドマニアまで十分に楽しめる内容でお贈りします。これで僕らもデッドヘッズです!

さらに今回は創業25年の関西屈指のグレイトフル・デッド専門店「Bear's Choice」にも協賛頂き、終演後にはデッドのCDやグッズなどの販売も行う事が決定!乞うご期待。

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というカンジです。是非ともご予約お待ちしています。ピーター・バラカンさんのイベントはいつも人気がありますので、毎回ソールドアウトします。是非お早めにご予約を!
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# by Blacksmoker | 2012-05-01 22:33 | 告知

2011年の12枚。

久しぶりの更新です!

今年は今までの価値観が変わるような事がたくさん起きました。しかし聴く音楽に関しては、より自分の好きな音楽を深く追求する方向に進んで行った気がします。エレクトリック/ダンス・ミュージックは今年は聴く機会が少なく、歌謡曲に関しては全く興味がなくなってきましたね。10枚に絞るのは難しかったので今年は12枚選びました。

そんな訳で行ってみましょう、2011年総括です。


<2011年の12枚>

■第1位
AMOS LEE [Mission Bell]
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「良いシンガーソングライター」から「アメリカを代表する素晴らしいミュージシャン」に変化した瞬間を捉えた傑作。
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新たな出発と別離を描いたこのアルバムは、今年を象徴していましたし、その音楽の素晴らしさも飛び抜けていました。ビルボードチャートで奇跡的に1位を記録したのも個人的には嬉しかったです。


■第2位
SAKAKI MANGOO & LIMBA TRAIN SOUND SYSTEM [Oi! Limba]
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アフリカの楽器リンバと鹿児島弁の見事な化学反応(でも住んでいるのは大阪の高槻)。この2ndではさらにポップさを増して聴きやすくなっている。こんな凄い事をやっているのは世界でも稀だ。世界に誇れる日本のバンドの一つ。
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この後に出たマリンバ集団Gajumaru Ensembleとの共演ライヴも凄いのでチェックして欲しい。

■第3位
小林勝行 [神戸薔薇尻]
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今年の日本のヒップホップ界で最も待たれていた神戸の伝説の"蓮の花"男の神戸薔薇尻が、本名の小林勝行の名義で発表した1stアルバム。精神的に病んでいたりして復帰は無理かと思われていましたが、地元の後輩達のバックアップにより奇跡の復活。これがとんでもなく壮絶なアルバムでした。オープニングを飾る9分の独白「108 Bars」を聴いた時は軽い衝撃で動けませんでした。

■第4位
ANDRE MEHMARI [Canteiro]
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ブラジルのサンパウロ出身の天才ピアニストが豪華ヴォーカリスト陣を迎えて発表した2枚組の大作。ピアノ以外にもアコーディオンやギター、バイオリン、ヴィオラ、フィドル、チャランゴ、フルート、ピッコロ、オルガンやローズなど様々な楽器を自身で演奏し、歌まで歌い、レコーディング、ミックス、マスタリングまでも自分でやってしまう奇才。歌に焦点を当てた優しく美しい曲に平伏すばかりです。果てはエグベルト・ジスモンチか?日本盤のみの500セット限定のボックス仕様も素晴らしいです。


■第5位
VINICIUS CANTUARIA & BILL FRISELL [Lágrimas Mexicanas]
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ビル・フリーゼルのアルバムは全てチェックしてしまう私ですが、このブラジル人ヴィニシウス・カントゥアリアと2人だけで作られたこのアルバムは面白かった。ビルが昔組んでいた多国籍弦楽器バンドThe Intercontinentalsのメンバーでもあるヴィニシウスのブラジル色が強く、ビルのギターがよりサウダージ感を演出している。

■第6位
BETTY WRIGHT [The Movie]
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The Roots全面バックアップの復活作。今このヴィンテージ・ソウルなサウンドを作らせたらクエストラヴの右に出るものはいないんじゃないか。そしてそのサウンドをバックに、堂々と圧倒的な歌声を聴かせるベティ御大。もう完璧な組み合わせ。ゲストのLil WayneやSnoop DoggやJoss Stoneが子供扱いです。


■第7位
神門 [神門]
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小林勝行(神戸薔薇尻)を復活させた張本人とも言える神戸のMC神門の4枚目。もはやその言葉は、谷川俊太郎にも通じる偉大なる詩人の域に到達しています。ピアノを使った印象的なトラックもイイ。

■第8位
Seun Anikulapo Kuti & Egypt 80 [From Afica With Fury : Rise]
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偉大なる父親Fela Kutiのアフロビートを、果敢に次なる次元へ発展させようとする意志がはっきりと感じ取れる作品。ブライアン・イーノのプロデュースがまるで80年代のTalking Headsを彷彿させます。

■第9位
toto [○ to ○]
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東京の女性詩人totoによる1stアルバム。幻想的なトラックに全編ポエトリー・リ−ディングのメルヘン・トリップな作品。

■第10位
FARMERS BY NATURE[Out Of This World's Distortions]
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NYのピアニストのクレイグ・テイボーンによるジャズ・トリオによる即興スタジオ録音盤。ベーシストにウィリアム・パーカー、ドラマーにジェラルド・クリーバーという一癖も二癖もあるメンバーで、ちょっと想像を絶する凄い演奏を聴かせてくれます。

■第11位
WOLVES IN THE THRONE ROOM [Celestial Lineage]
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アメリカのワシントン州オリンピアで山奥に籠り自給自足の生活を続ける新世代ポスト・ブラックメタル。禍々しさを超越した神々しいまでの神秘的なサウンドが凄まじい。

■第12位
FLEET FOXES [Helplessness Blues]
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60年代のCSN&Yのようなフォークロックのようでありながら、確実に現代にしか出せない音楽。前作から更に進化した美しき大衆音楽の結晶。
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# by Blacksmoker | 2011-12-31 22:18 | 2011年総括

NAS & DAMIAN MARLEY [Distant Relatives]


Distant Relatives」=「離れた親戚

これがどういう意味なのかはアルバム最後に収録されたAfrica Must Wake UpでのNasのヴァースを聴けば分かる。「俺達はみんな同じ場所から来た アフリカだ。世界中の人たちがみんな家族。あちこちに散らばっているだけなんだ。だから遠い親戚たち 故郷へ帰ろう

f0045842_17353938.jpgヒップホップ界の最も崇高なリリシストNasと、レゲエ界のロイヤル・ファミリーの末弟ダミアン・マーリィによるコラボレーション・アルバム。しかし単なるコラボレーションという枠を超えてブラック・ディアスポラとしての2人、さらにはソウル・ブラザーとしての2人の渾身のアルバムと言って良いだろう。

アフリカン・アメリカンであるNas、そしてボブ・マーリィの末子であるジャマイカ人のダミアン・マーリィ。人種も宗教も違うこの2人だが、表題のようにアフリカをルーツにすれば皆が同じ兄弟。特にヒップホップとレゲエという「レベル・ミュージック」として音楽を選んだ2人の親和性はなおさら高い。
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Nasボブ・マーリィを聴いて育ったし、そのボブの息子であるダミアンNasを聴いて育った。この音楽的輪廻で繋がった2人が初めて邂逅したのが2005年のダミアンのアルバム「Welcome To Jamrock」の中のRoad To Zionだった。当時はその意外な組み合わせに驚いたが、その後この2人がどんどん親睦を深めていった事でこのコラボレーション・アルバムの登場にはそこまで驚きはしなかったが、実際にこんなとんでもなく凄いアルバムを完成さす事になるとは予想もしなかったですね。

f0045842_17421767.jpgとにかく今、この2人のラッパー/ディージェイとしての凄さは群を抜いている。個人的には、特にNasは90年代中期~後期にかけては精細を欠くアルバムが多かったが、2001年の強力なボムOne Mic以降、見事にハズレなしだ。最近のアルバムなんて震えるくらいスリリングなリリシストぶりを発揮していてますます孤高の存在感を放っている。(ちょっとケリスとの結婚&離婚で足を引っ張っられたけど・・・。)

そしてもう1人のダミアン・マーリィ。傑作「Welcome To Jamrock」でこちらも強力な存在感を身に付けて一皮剥けた彼ですが、その後マライア・キャリーグウェン・ステファニーアリシア・キーズといったポップ・フィ-ルドで活躍するアーティストとの競演から、スティーヴン・マーリージュリアン・マーリィといったレゲエ・ロイヤル・ファミリーの兄弟達への客演、さらにはB-RealGuruといったハードコアなヒップホップ・アーティストへの客演と、その行動範囲をジャンルレスに展開している。
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ここ数年で鍛えられたその声は「Welcome To Jamrock」の頃と比べても、まるで別人。弱冠の不安定さも見せたその声も、今では抜群の安定感と存在感を誇る。ディージェイだけでなく、シンガーとしての素晴らしさも特筆すべきだろう。今回のアルバムではプロデュースまで手掛けており、その音楽性の高さには舌を巻くばかりだ。ヒップホップ寄りでもなく、レゲエ寄りでもない、ちょうどそのど真ん中を行くサウンドはダミアンの折衷感覚の鋭さのなせる技だ。

更にはマーリィ家の次兄スティーヴン・マーリィ(右写真)が、このアルバムの制作に関わっている事も大きい。f0045842_17552183.jpgスティーヴンというと、全ての楽器を操る裏方的なイメージが強い人だが2007年に初のソロ・アルバム「Mind Control」をリリースしてマーリィ・ブラザーズとしての誇りとレゲエの「レベル」を受け継いだ精神性を見事に知らしめた男であるが(ちなみにこのアルバムは、決して派手ではないが、何年かあとに絶対聴きたくなるアルバムだ)、このスティーヴンがこのアルバムに関わる事で、深みが断然増しているのは間違いない。LeadersIn His Own Wordsで披露される父親にそっくりなその激渋な歌声もこのアルバムのレゲエ・サイドを担っていてヤバイです。このアルバムはNasダミアン名義ではあるが、ヒップホップのNas、レゲエのスティーヴン、そしてその真ん中を行くダミアンという3つ巴のアルバムと言っても良いだろう。
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パーティ・アルバム的な要素は排除して、実に重厚なメッセージ性の高いアルバムになっているのも良い。「レベル・ミュージック」として、エッジが立ちまくった攻撃的なアルバムだ。そしてもちろんRedemptionもある。大物でありながらストリートなザラついた感覚を漂わせてるのもカッコイイです(まあ、ケリスと離婚して月に1000万円の養育費を払えるNasと、家にはロールスロイスが何台もある豪邸を持つロイヤル・ファミリーの一員であるダミアンのどこが「ストリート」なのかという話もありますが・・・)。
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更にはゲスト陣もなかなか興味深い人選。特にルーツ・レゲエ界のレジェンド、デニス・ブラウンThe Promised Landの声をサンプルで使ったLand Of Pomiseは、まさしく過去と未来を繋ぐ意義を持つ1曲。更にロイヤル・ファミリー専属のスタジオ「Tuff Gong」の鍵を預けられたソマリア生まれの若きラッパーのK’naan(ワールドカップで大ブレイク!)、f0045842_18172646.jpgそして現在のアメリカのヒップホップ・シーンの寵児とも言えるリル・ウェイン(左写真)の参加も大きい。特にこのMy Generationというテーマ的にも非常に重厚な曲に召喚されたリル・ウェインなんて、こんな強烈なカリスマ2人の前ではフザけたオートチューン・ヴォイスのラップなんて披露したら、絶対に怒られるのは確実なので、最近のリル・ウェインには珍しく真摯なラップでめちゃくちゃ好印象。ヤレばできるじゃねーか!

本国ジャマイカでもヒットした1stシングルAs We Enter(2小節ごとにマイク回しをキメる2人が異常にスリリング!)から、アフリカン・ドラムに重厚なストリングスの絡むTribes At War、先日のSummer SonicNasも披露してたStrong Will Continueダミアンの堂に入ったシンガーぶりが素晴らしい)と、アルバム頭3曲でもうこのアルバムは凄い事になるのが分かりますね。いつものように異常にリリカルなNasの鋭いラップも冴えまくっている。一方のダミアンは旧約聖書に基づくラスタファリズムが全面に出た宗教色の濃いリリックスで、Nasの現実のストリートに根差した直接的なリリックの対比も面白い。
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ブラック・ディアスポラとしてのアイデンティティを持ったこの2人(スティーヴン・マーリィも合わせれば3人)による、レゲエとヒップホップの枠を超えた傑作。Nasのファン、ダミアンのファン、それぞれのファンも唸る素晴らしい作品です。

今のところBlacksmokerの2010年のベスト・アルバム間違いなく断トツの1位です!是非チェックしてみて下さい。

   
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# by Blacksmoker | 2010-08-24 17:18 | REGGAE

TOTAL FUCKING DESTRUCTION @ 心斎橋Hokage 5/23(土) 2010


全国320人のグラインドコア・ファン待望のTotal Fucking Destructionの初来日公演に行って来ました!

Brutal Truthのドラマーとしてグラインドコア・マニアから絶大なる支持を得るリッチ・ホーク。1人ノイズ・ユニットPeacemakerとしても活動するその彼がリーダーとして率いるグラインドコア・バンドがTotal Fucking Destructionだ。2000年より活動を開始し、今までに数々のスプリット盤やデモ音源の編集盤を出してグラインドコア・フリークにその存f0045842_14302261.jpg在を知らしめてきたこのバンド。2007年にその全貌を現す1stアルバム「Zen And The Art Of Total Fucking Destruction」(右写真)で強烈極まりないグラインドぶりでマニアを狂喜させた。もちろん私もマメにスプリット盤までチェックしていた方なので完全にブチのめされましたね。激烈極まりないハードコアも最近ではメタルコアやデスコア、カオティックコアなどよく分からん細分化がされてますが、こちらは正真正銘の純粋無垢な真性グラインドコア!「よく分からん細分化はいらん!」と言わんばかり、とにかくもうジャンルの壁をブチ壊してブラストビートで統一させたような究極のグラインドコアでした。

さてそんなTotal Fucking Destructionの初来日。前座には日本のアンダーグラウンドの猛者達が迎え撃つラインナップですが、やはりTotal Fucking Destructionのパフォーマンスは演奏の壮絶さ、そして見せ方においても頭一つ抜きん出てましたね

ちなみに始まる前に普通にドラム・ペダルを持ってリッチ・ホークが客席の方にいたので、「以前にKKKに入ったって噂があったけど本当?」って聞いたら、「そんなわけねーだろ!」って言ってました。やっぱりデマだったようです(笑)。

さてリーダーのリッチ・ホーク以外は謎のTotal Fucking Destructionですが、ギターとベース、そしてドラムというトリオ編成。絶対に1stの頃とギターとベースはメンバーチェンジしてますが、そんな事は誰一人として気にしていないです。ギターのオッサンはバンダナ巻いて顎鬚を生やした木こりみたいなデカい風貌で超イカつく、ベースのオッサンは小柄だがなぜか5弦ベースでした。そして上半身裸になったリッチ・ホークはドラムに座る前に一人気合を込めて絶叫してましたね。(下写真)
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一曲目は2ndアルバムからの発狂寸前の残虐グラインドBio-Satanic Terroristic Attack!(なぜか1stアルバムにアコースティックVer.が入ってましたが。)ドドドドドド!ガガガガガガガ!ムグォォォォォォッと思考回路すらストップさせる超絶グラインド・ノイズ地獄の始まりです。
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もうその後は阿鼻叫喚のグラインド地獄へ直行。もう最悪で最高の素晴らしきグラインド・タイムです。とにかくリッチ・ホークさん、アンタはスゲェよ。何であんな壮絶なドラム叩きながら、さらに歌まで歌えるんだ?こんな壮絶な光景は見た事ないぞ。もうムチャクチャ。あッ、でもやっぱり酸欠になってるわ。鯉みたいに口をパクパクさせてます。ちゃんと息出来ているのか?大丈夫?でも何とか大丈夫そうだ。しかし壮絶極まりないぞ!と、あらゆる感情が一気に噴出する状態に突入。もう凄すぎて笑いが止まりません。
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全く初心者を寄せ付けない残虐極まりない過激な音楽であるにもかかわらず、あまりにも過激すぎて、もう一周して「笑い」に昇華してしまっているのです。
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タイトルだけでもバカバカしくて笑ってしまうFuck The InternetKill The Jocks And Eat Their Brainsなどの極悪な名グラインド・ナンバーの連発に、会場中ももう笑うしかない人と、完全に置いてけぼりの人に二極化されていましたね。
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しかし、その会場を1つに出来るのがリッチ・ホーク先生の凄いところ。ドラム・セットから客を指名して「お前1曲歌え!」とステージに上げて歌わしたり、更にはスタッフにまで歌わせてRamonesI Wanna Be Sedatedのカヴァーで盛り上げたり(でもこいつがこの曲知らなくて適当に吼えていてグダグダでしたが)と、リッチ・ホーク先生のサービス精神たるや敬服せざるを得ないです。最後には完全に会場が1つになってましたね。
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あっと言う間に駆け抜けた1時間。ってか観る側も演奏する側もこの時間が限界!血生臭いアンダーグラウンドのグラインドコア臭ぷんぷんの素晴らしい時間を堪能させて頂きましたよ。終わった後もあまりの体力消耗に気が抜けて地面に体操座りしてボーっしてるリッチ・ホーク先生の姿(下写真)がこれまた最高に可愛かったです。
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体力的にあと何年このバンドを続けられるか少々心配ですが、まだまだ現役のリッチ・ホーク先生の涙ぐましい活躍を俺は心底応援するぜ!

     
     
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# by Blacksmoker | 2010-08-16 14:48 | ライブレポート

維新派 [台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき]@犬島精錬所跡地 7/27(火) 2010


1970年から活動する一風変わった演劇団「維新派」。
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彼らは「しゃべらないセリフ、踊らない舞踏」と言われる独特な表現方法を持ってる。つまり明確なストーリー性を排除し、断片的なセリフの反芻を中心として舞台は進行する。それに合わせるような踊りは一切なく、アルタード・ステイツなどの活動で知られるギタリスト/ダクソフォン奏者の内橋和久の創る独特の変拍子のリズムのエレクトロ・ミュージックに合わせて動く役者達の異様な動きも維新派の特徴だ。

そしてもう一つの特徴はその舞台。

毎回毎回公演の度に自分達の手でステージを建設し、公演が終われば解体すると言う「Build & Scrap」スタイルで、しかもその舞台の規模の大きさが毎回話題となる(ちなみに前回は琵琶湖に水上ステージを建設した)。

今回の舞台は瀬戸内海に浮かぶ離島「犬島」。
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ここは明治後期から銅の精錬所として栄えた島だが、昭和初期には銅の価格暴落のため閉鎖され現在では廃墟と化している。今では人口70人の島の中にその精錬所の廃墟化したレンガ造りの巨大な煙突や変電所跡が島のあちこちに残されたままになっており、不思議な時間が流れている。もちろん犬島に渡るには船を使うしか方法は無い。
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その精錬所跡地に4000本もの丸太を使って組み上げられたステージが今回の舞台だ。瀬戸内海を見下ろし、更には精錬所の巨大なレンガ造りの煙突や建物の廃墟までも舞台として組み込まれた圧巻のロケーションでしたね。
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さて今回の公演「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」は2007年から続く「<彼>と旅する20世紀三部作」の最終章にあたる3作目。漂流・移民をテーマとしてきた維新派の、世界を舞台に展開される壮大なサーガの完結編。2007年の1作目「Nostalgia」は南米を舞台とし、2008年の2作目「呼吸機械」は東欧を舞台にしてきましたが、今回の完結編の舞台はアジア。海で繋がるアジアの島々が舞台となる。

公演タイトルの「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」は、一風変わったタイトルだが、これはウルグアイの詩人ジュール・シュピルヴィエルの1930年に書かれた詩からの引用で、その詩の内容は以下の通り。


灰色の支那の牛が

家畜小屋に寝ころんで

背伸びをする

するとこの同じ瞬間に

ウルグアイの牛が

誰かが動いたかと思って

振り返って後ろを見る

この双方の牛の上を

昼となく夜となく飛び続け

音も立てずに

地球のまわりを廻り

しかもいつになっても    

とどまりもしなければ

とまりもしない鳥が飛ぶ


なかなか不思議な詩である。この詩には時間軸が存在していない。一つの場所で起こった出来事は、同時に全く違う場所で起こりうるということに気付いているのは鳥ということになるが、この鳥というのは神の視点のように思えます。それとも…。この不思議な詩の解釈の仕方で、この難解とも言える公演の内容の理解度も違ってくる(劇中で2回この詩が引用される)。

そしてこの詩のように、時代も場所も全く違うアジアの島々を舞台に、そこへ移民したり、漂流したりした日本人達を中心に進行していく。まるで20世紀という時間を飛び続ける鳥のように、現代から戦前の時間を飛び回る断片的なストーリーの連続は難解ではあるが、後半にそれらが一気に完結へ向かう流れの凄さは圧巻だ。
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一見意味の無いような断片的なストーリーでさえも、しかりとした伏線でありそれも収束されていく。彼らを繋げるものは「戦争」という大きな力だったことが分かります。そしてその大団円に現れる4mを超える<>という巨大化した人間。「20世紀という時代」の概念メタファーとして1作目に登場し、2作目では20mを超える大きさに肥大化してきたこの<彼>が最後に銃を肩に掛け軍服を着て現れる衝撃は観る者の心に深く刺さります。戦争はまだ終わっていないという意味だろう。
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あと劇中では内橋和久によるエレクトロニックな音が流れるが、その本人が客席側からギターを使って効果音やノイズをリアルタイムで挿入していく姿も印象的でしたね。しかも客席後方のPAシステムのエンジニアを担当しているのは、FishmansBoredomsのエンジニアで有名なZAK。個人的にはディジリドゥ奏者GOMAが率いるバンドNight Jungleでステレオ録音のような浮遊感のあるモノラル録音に驚愕させられましたが、そのZAKが今公演をLive Mixしているという点も注目でした。演劇だけでなく音楽も彼らの舞台には重要な要素を含んでいるのです。維新派が音楽面の細部までこだわっているのが分かります。

廃墟となった巨大建築物まで舞台の一部として使い、奥行きのある巨大なステージを遺憾なく使用した壮大なセットの中で示される示唆的なエンディング。こんな圧巻な舞台は維新派ならではのカタルシス。観終わった後でも何時間でも内容について議論していられる印象的な作品でした。野外公演の特性を活かした夜の満月の灯りも幻想的すぎる光景でしたね。この犬島という島が持つ独特の時間の流れと、維新派の今公演の内容が見事に融合して忘れられない体験をさせてもらいました。
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公演が終わってからも、アジアの雑踏の中にいるような屋台村や、大道芸人によるパフォーマンスなどもう完全な祝祭空間を化した雰囲気も最高でした。ちなみに私の観た日は、公演前と公演後に何とあふりらんぽオニと、内橋和久の貴重なゲリラ・ライヴがありました(あふりらんぽは、前日に解散ライヴをやっていたようです)。
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僕は数ヶ月前に出たオニの1stアルバム「Sunwave Heart」がめちゃくちゃ好きだったので、これはほんとビッグ・サプライズ。オニがギターを弾き語りして、そこに内橋和久がギターで効果音を入れるというライヴで、その1stアルバムからの曲を中心に公演前・公演後を合わせると2時間近くライヴやってましたよ。オニの子供も出てきてたりして完全なアットホームなライヴでした。

さて次回の維新派公演はどんなものになるんでしょうか?舞台の内容だけでなく、その周りの空間自体も含めて非常に楽しみですね。是非皆さんにもチェックして欲しいです。

  
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# by Blacksmoker | 2010-08-10 23:20 | ライブレポート

ULTIMATE MC BATTLE 2010 大阪予選 @Fanj Twice 4/28(土) 2010



世代交代の波到来!
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さあ、今年もやってきましたULTIMATE MC BATTLE大阪予選!私も初めて観に行ってからとうとう5年を迎えましたね。今回は私Blacksmokerはベスト16から決勝戦まで審査員をやってきました!

2009年の大阪予選の模様はコチラ。 
2008年の全国大会決勝の模様はコチラ。 
2008年の大阪予選の模様はコチラ。 
2007年の大阪予選の模様はコチラ。 
2006年の大阪予選の模様はコチラ。 


今年の大阪予選を見て、もはやMCバトルは新しく若いMC達の登場で完全に次なるステージにもの凄い勢いで移行している事を実感しましたね。
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最近のMCバトル・シーンは関西を見渡してみても、コペルR指定ふぁんくあきらめんTakaseちゃくらメンソールKZなど若い世代(10代後半から20代前半)の実力派MC達が続々と台頭しており、Coe-La-Canth(シーラカンス)勢や韻踏合組合勢が席巻した数年前とはもはや様変わりしている。
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しかし、かと言ってもはや「ベテラン」と分類されるであろうCoe-La-Canth勢(と言っても彼らもまだ20代中盤ですが)や韻踏合組合勢のレベルが下がったと言ってるわけではなく、その彼らもしっかり活躍しているし、更にはおそらく関西では最年長のMCであろう大超、キワモノから純粋にスキルで勝負してきたおこじょなどの健闘し、若いMCとベテランMCがバランス良く群雄割拠しているという非常に面白い状況になっている。

ただ今年の大阪予選は、若い世代がベテラン世代を凌駕した瞬間でしたね。その最大の目玉は何と言っても今回の大阪予選で優勝を果たしたR指定。若干18歳!昨年、Eroneを倒して「ENTER」の年間チャンピオンに輝いたこのR指定(当時はまだ受験生)は、全てを圧倒していました。見た目はラッパーとは到底思えない格好のR指定(最近はこういう普段着のラッパーが増えましたね)。

とにかく言葉が速い!速すぎる!弾丸のように詰め込まれた言葉を高速ライミングに乗せて畳み掛けるR指定のスキルはもう一回戦から異彩を放っていましたね。一回戦のバトルからもう会場が「おぉー!」ってなってましたからね。さらには相手のフローまでも余裕で自分のモノにしてしまう適用能力の高さは、会場を沸かせるには十分すぎる。この男のフリースタイルだけでもの凄い盛り上がりを見せるのです。その最もたるものが「大超 vs. R指定」のバトル。[下写真]
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もう無骨で男臭いオールドスクール路線を極めた大超に対して、その大超のフローを即興で完全に模倣してみせ、たたみ返したR指定の圧倒的にテクニカルなスキルの高さは今回の大阪予選のハイライトであったことに異論を唱えるものはいないでしょう。審査員席から見ていても鳥肌が立ちましたよ。

それに対するベテラン勢。そのベテラン格の筆頭であるHidaddyは今回は完全に精細を欠いていた。もしくは若い才能に圧倒されたかのどちらかだ。[下写真右]
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今年の初めに喋ったときに「引退宣言を撤退して今年のUMBは出る!今年こそ優勝を大阪が取らなあかん」と意気込んでいたにもかかわらず、1回戦から延長戦までもつれこむ苦戦ぶり。「おいおい大丈夫か!?」と不安になったのもつかの間、結局続く2回戦であっさりとルードに完敗。あらら…。

さらに昨年は大阪予選を制し、全国大会で鎮座ドープネスと熾烈なバトルを繰り広げたEroneの方でさえ、ベスト16でふぁんくに敗れ去っていきました。[下写真](ちなみにその前に行われた「ふぁんく vs. あきらめん」という実力派対決は最後あきらめんが噛んでしまって非常に残念な負け方をしてました。)
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あとBlacksmokerのリスペクトする大超[下写真]ですが、今回もベスト8の準々決勝まで勝ち残りましたが、R指定という強敵の前にここで残念ながら敗退。
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毎年最年長MCとして奮闘する大超ですが、やはり冷静に考えるとあのスタイルで勝ち残るのはベスト8くらいが限界かもしれませんね。でも個人的には大好きな大超なので、あのスタイルを極めきって、いつの日か貫禄で若いMC達を圧倒して優勝してくれる日が来ることを願ってます(ところで2009年中に出すって言ってた「大超デモ・トラックス Vol.3」早く出してくれ!ってかアルバム出してよ)。

決勝は「吉田のブービー vs. R指定」。
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毎年毎年、この大阪予選でも善戦するCoe-La-Canth吉田のブービー。彼も高いスキルの持ち主なので、「もしかすると?」と思いましたがやはり今回は相手が悪かった。実は最後のバースまで試合の行方は分からなかったが、最終ヴァースで完璧に客を沸かせたR指定が上回ってましたね。かくしてR指定ENTER優勝に続いて、UMB大阪の優勝までもさらっていきました。
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ベテランの奮闘と、若い才能の台頭で鋭い牙を持ったタレント性のあるMC達が群雄割拠する今年のUMB大阪予選。その中を頭一つ抜きん出たスキルとエンターテインメント性で制覇したR指定。ギャングスタでもオタクでもない普段着のラッパー。ゆえにそのスタイルはあらゆる局面に対して柔軟だ。なおかつ超高度なスキルは間違いなく今年のUMB全国大会決勝の目玉になることは間違いないでしょう。今年、大阪に初の優勝をもたらす男はこのR指定かもしれないです。


 
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# by Blacksmoker | 2010-06-29 21:25 | ライブレポート

WILCO @Big Cat 4/22(月) 2010


日本に来るのは7年振りだけど、ここにいる人で7年前にも観てくれた人はいる?
このステージ上からジェフ・トゥイーディが言った一言に対して、ほとんど誰も手を上げてませんでしたが、俺は行ってたぜ!

実に7年振り。前回は2003年に開催された「Magic Rock Out」というオールナイトのフェスでの来日で、Foo Fighters「One By One」をリリース直後でした)や、Death In Vegasらと共に神戸ワールド記念ホールでライヴを見せてくれましたが、それ以来の来日公演です。
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当時は、紆余曲折の末に生まれた傑作「Yankee Hotel Foxtrot」をリリース後のツアーで、Wilcoにとってもターニング・ポイントとなる時期でした(ほんと、この時期はWilco周辺は盛り上がっており、来日直前にドキュメンタリー映画「Wilco Film:I Am Trying To Break Your Heart」もDVDで日本発売されましたし、その他にもジェフ・トゥイーディとドラマーのグレン・コッツェ、そしてジム・オルークによるユニットLoose Furのアルバムも日本発売されましたし、グレン・コッツェのソロ・アルバム「Mobile」もリリースされてました)。そして個人的にもモノ凄い期待感を持って観たWilcoのライヴは予想以上に凄かったのを覚えています。

「Yankee Hotel Foxtrot」からの曲を中心に披露されてましたが、驚いたのは全ての曲の終わりが轟音/ノイズまみれになってに終わるんです。これはかなり衝撃的でした。ただ当時はFoo Fightersがヘッドライナーのフェスだったので、Wilcoの時間は1時間くらいしかなかったのでやはり単独公演でじっくり観たいと思いましたね。そんな轟音大好きWilcoが7年というインターバルで遂に単独公演を実現させてくれました。

この7年という歳月でWilcoというバンドは、一介のインディーズ・バンドからアメリカを代表するロック・バンドに変貌しました。毎回3時間を越えるライヴを披露するというライヴ・バンドとして絶対的評価も得ているし、さらにはセールス的にも好調だし、Wilcoは今最も勢いのあるバンドと言っても良いでしょう。この7年でこれほどの変貌振りには驚くべきものがありますね。しかもアメリカ本国と日本での人気の差から、Wilcoがこんなライヴハウスで観れるなんて凄いことですよ。以前にModest MouseMy Morning Jacketも本国との人気の差でクアトロなんて小さいハコで観れたりしましたが、今回のWilcoもしかりで日本ではこういう奇跡的な事がたまに起こってくれるのがありがたい。
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しかし、今回のBig Catの公演は僕が思った以上に満員!入口でスタッフが話しているのが聞こえたんですが、当日券もあと10枚くらいしか残ってなかったそうですね。やはり日本でも人気が出てきたんですね、嬉しいかぎりです。

さて轟音大好きWilco。5人編成だった7年前と違い、今は6人編成。大きな違いはやはりネルス・クライン(下写真)の加入でしょう。

f0045842_14454161.jpgそもそもネルス・クラインという人はアヴァンギャルド/フリー・インプロヴィゼーション系のジャズ・ギタリストとして地下世界では有名で、この人がWilcoに正式加入した事はかなりの驚きでした。ただでさえドラマーのグレン・コッツェというクセモノがいるのに、更にこんな凄いヤツまで加入させてどうするんだと。ただ正直言うと、クセモノ揃いではあるがアルバムではその変人達の本領が音に表れておらず、そこが謎だったんですが、ライヴを観たらその謎が容易に解けましたね。トンでもない暴れっぷりなんです!

特にネルス・クラインは最初っから最後まで異物感たっぷりのギターを弾きまくり。轟音やフィードバック・ノイズをガンガンにぶち込んでくるし、そうかと思えばアコースティック・ギターやラップ・スティールまでも操るし、そのネルス・クラインから繰り出される様々な音がWilcoというバンドのサウンドに奥行きを与えているのは間違いない。さすがはマーク・リーボウジム・オルークと並ぶアヴァンギャルド畑の主要人物。しかも、ほぼ1曲おきにギターを変えるという徹底ぶり。
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さらにグレン・コッツェの叩くとんでもなくラウドなドラミングも強烈だ。アルバムの音とは別物と言って良いでしょう。Nonesuchから出ているこの人のソロ・アルバム「Mobile」もかなり実験的で油断出来ないくらい凄いアルバムでしたが、こういうアカデミックでエクスペリメンタルな音を出す人がロック・バンドのドラマーとして座っているのです。ネルス・クラインもそうですがロック畑出身じゃない人間が純然たるロック・バンドのメンバーであるというWilcoのねじれぶりは面白すぎます。

そもそもWilcoというバンドのサウンドの特徴の最もたるものは、ジェフ・トゥイーディの優しいメロディ・センスに他ならないが、レコードでは顕著なそういう部分を完全に埋れさすような容赦ない轟音っぷり。
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しかもジェフ・トゥイーディも含めてWilcoには3人のギタリストがいるので、その3者による音が凄まじいです(ちなみにジェフもほとんど1曲ごとにギターをチェンジしていましたね。ステージ脇に並べられた30本以上はありそうなギターが壮観でした!)。そこにキーボードとオルガンの2人まで加わってくるんだからそのカオスぶりは途轍もない。7年前に観た時以上にカオスな音をしてましたね。ジェフの歌う優しいメロディと相反する轟音のミスマッチがこのバンドをただならぬ存在にしている。強烈なライヴ・アクトですよ、このバンドは。アルバムではモロにNeu!的なサウンドをみせるSpiders(Kidsmoke)だって、ライヴでは全く違うロック・サウンドになってますからね。

会場は満員だけあって凄い熱気で、一曲一曲終わるごとに大歓声が巻き起こる。新しい曲から古い曲までみんなちゃんと反応しているので、会場中にとても良い空気が充満している。それが最も顕著な形で現れたのが終盤で登場したJesus,etc。本国では全部の歌詞を観客が大合唱することで有名な曲ですが、日本でも合唱が巻き起こっていたのはちょっと感動しましたね。日本のファンだって海外のファンに負けてなかったですね。

アンコールを含めて2時間を越える濃密なライヴ。ラストはI Am Wheelで、曲の最後にはメタル・バンドみたいにグレン・コッツェがドラム・セットに立ち上がり、他のメンバー達もギターやベースを空高く突き上げてポージングする姿に大喝采が起きてました。
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本国では途中にアコースティック・セットやカヴァー曲も挟み3時間のライヴをやるので、今回の2時間強というのは、彼らにしては短かったのかもしれませんが、それでも十分に素晴らしいライヴでした。しかしこんな濃いライヴを3時間もやるなんて、恐ろしいポテンシャル!最強です。

今回のライヴでWilcoも日本で人気があるんだと認識したはずなので、次こそは時間を空けずに来日してもらいたいですね。

  
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# by Blacksmoker | 2010-06-16 14:22 | ライブレポート

MEDESKI, MARTIN & WOOD @ Club Janus 4/8(金) 2010


今回初めてメデスキ・マーティン&ウッドを観て思ったこと。

客がヒッピー系ばっかり。
ジョン・メデスキが異常にブライアン・イーノに似てる。
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2006年以来の久しぶりの来日公演だというのに、そんなことしか思いつかないのか?と思われそうですが、初めて観た第一印象はそんな感じ。

①なんですが、客層は勝手にスノッブな感じだろうなぁなんてイメージをしていたので、その落差に驚き。Grateful DeadPhishのライヴに大量にいてるクサ吸ってそうな麻の服着たヒッピー系の若者ばかりじゃないですか。やはりジャム・バンドの筆頭だけあってそっち系のファン達を完全に取り込んでる様子です。そして②ですが、これはあまりにも似すぎていて錯覚してしまうほどでしたよ。体系も目の鋭さも、ハゲあがりぶりも、もうまんまブライアン・イーノ。こんなに似てたっけかこの人。

さて、このMM&W。個人的にはしばらく離れていたのですが、また最近かなり熱くなってきてます。と、いうのも2008年から2009年にかけてリリースされた「Radiolarians」シリーズf0045842_22485776.jpg3部作(右写真は「1」)が凄かったんです。久々にこれはキましたね。これは従来の「作曲レコーディングツアー」という流れを解体し、「作曲ツアーレコーディング」という流れで作ったアルバムで、ライヴにおいて曲が形作られていき、それが後にアルバムに収録されるという企画で、中身の音の方もMM&Wのラフでアヴァンギャルドなサイドが炸裂した最高のアルバムでした。(ただ、こういう変則的な流れで作られたアルバムでも、結局日本ではアルバムがリリースされてからライヴで披露されるわけですから、いつもと同じなんですけどね…。)

しかし、個人的にはこの「Radiolarians」シリーズで一気にMM&W熱が再発したと言ってもいいでしょう(その後、その3枚に未発表曲やRemix、更にDVDも追加した5CD+1DVDの「Radiolarians Evolutionary」というボックス・セットもリリース)。

そんな「Radiolarians」プロジェクト後のツアーというだけあって、並々ならぬ期待を寄せて行ったのは大阪で新しく出来たClub Janus(ジャニス)。クアトロのステージをさらに横に大きく延ばしたような形で、音響もクアトロよりは数倍良いですね。なにより横に大きいのでステージが観やすいというのがイイ。
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今回は1時間強のステージを2セット。MM&Wのライヴを観るのは初めてでしたが、まず最初に目が行くのがやはりジョン・メデスキ。このMM&Wというバンドは、要塞のように組み上げられたオルガンにキーボードに四方を囲まれ、さらにはアップライト・ピアノや鍵盤ハーモニカなども操るこの男を司令塔にしているのがよく分かります。
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そしてこのジョン・メデスキを中心にしてベースのクリス・ウッドと、ドラムのビリー・マーティンが絡んでいく。クリス・ウッドはファズをかけたギターのようなエグイ音を出すベース、さらにはウッドベースを使い、そしてビリー・マーティンはドラム以外にも、後ろに並べれた様々なパーカッションを使います(カウベルなんかもありましたね)。

今回のツアーも、もちろん彼らの醍醐味であるインプロヴィゼーションを挟みながらジワジワ盛り上がっていくのですが、その時間は案外短く曲をどんどん披露していくカンジ。しかも面白いのが、披露される曲の流れが見事なまでに全然違う曲調なのです。サイケなロック・テイストばりばりのジャズの後に、いきなりロマンチックな50年代のモーダル・ジャズっぽい曲になったり、その後にレゲエになったりとその構成は見事なまでに無秩序状態。1曲ごとにグルーヴが全く異なるというのは、昔観たTortoiseのライヴでも経験したことですが(こちらは曲ごとにメンバーの担当楽器まで変わりますからね)、こういった事は各プレイヤーのジャンルを超越した強力な演奏能力がないと成立しないわけで、これだけ見てもこれだけの揺れ幅を持たせられるMM&Wの各メンバーの能力に感嘆させられます。
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そして、そういう状態をジョン・メデスキがしっかり統率している(ように見える)。今回はクリス・ウッドも前面に出てきて引っ張る姿も随所に観られましたが、やはりあくまで司令塔はジョン・メデスキですね。意外とビリー・マーティンは控え目でした。怒涛の2セットを終えてアンコールで登場したのは恒例のカヴァー。今回はジミ・ヘンドリクスHey Joe。スローで結構地味目なヴァージョンで披露されてましたね。
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延々と続くインプロヴィゼーションとサイケデリックなジャムを期待してたので、今回は案外とあっさり目なカンジだったので少々残念でしたが、このバンドの底知れない実力は十分に堪能出来ました。次回のツアーではもっともっと壮絶なジャムを観てみたいですね。
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# by Blacksmoker | 2010-06-10 21:44 | ライブレポート

KRIS KRISTOFFERSON [Closer To The Bone]


クリス・クリストファーソンという名前を聞くと、僕個人としてはミュージシャンというより映画俳優という印象が強い。
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古くは1973年サム・ペキンパー監督の映画「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」のまだ初々しいビリー役として、そしてここ最近の当たり役と言えばやはり、ウェズリー・スナイプス主演のSFアクション映画「ブレイド」でしょう[下写真]。ブレイドの相棒役として3シリーズ全てに出演している人気キャラだったので覚えている人も多いでしょう(だから「ブレイド3」であのあっけない死に方をさせた脚本は許せん!)。
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しかしクリス・クリストファーソンという人は、映画俳優以上に本国アメリカではカントリー・ミュージシャンとしてウィリー・ネルソンジョニー・キャッシュ、そしてボブ・ディランらと並び賞されている偉大な人なんです。ジャニス・ジョプリンの1971年の名作「Pearl」の中でも有名なMe And Bobby McGeeや、ジョニー・キャッシュのカヴァーしたSunday Morning Coming Downもこのクリス・クリストファーソンの曲なんですよね。

f0045842_143082.jpg今回紹介するのは、そのクリス・クリストファーソンの3年振りの新作「Closer To The Bone」(右写真)。「俺も死に近づいている」という意味でしょうか。意味有りげなタイトルです。ジャケットに写る白髪で皺の刻まれた顔の御大も現在73歳。71歳で逝去した盟友ジョニー・キャッシュを思うとこのタイトルにも納得がいくというものです。

さて中のブックレットを見て驚いたのですが、「このアルバムをソウル・ブラザーのスティーヴン・ブルトンの魂に捧げる」という一節とその彼の写真が載っていました。テキサス出身のシンガー・ソングライターのこのスティーヴン・ブルトン(下写真)。私は2006年にThe Resentmentsのメンバーとして来日した時に彼を観てるんですが、どうやら2009年に50歳という若さで癌で亡くなっていたようです。
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The Resentmentsのライヴに感動しただけに(その時のレポートはコチラ)、彼の死をこういう形で知ったのはショックでしたね。今年のアカデミー賞でジェフ・ブリッジスが主演男優賞を獲った映画「Crazy Heart」なんて、このスティーヴン・ブルトンをモデルにしているみたいだし何とも残念な話だ(サントラ盤も彼が担当している)。そういう事実を知ると、この「Closer To The Bone」というタイトルは更に重く響きます。
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内容はほぼクリス・クリストファーソンによる弾き語り(クレジットを見るとドン・ウォズがベースを担当し、ジム・ケルトナーがドラム、スティーヴン・ブルトンがギターと意外と豪華な面子が揃っているんですが、クリス・クリストファーソンの声とギター以外はほとんど印象に残りませんね)。全てがオリジナル曲だ。これくらいの歳になるとカヴァー曲やスタンダード曲ばかりが目立つようになるミュージシャンの中で、全てオリジナル曲が占めるアルバムをリリースするなんて、この人の才能はまだまだ枯渇していないようです。

クリス・クリストファーソンの激渋の深い声、一発録りのようなアコースティック・ギターの生々しい響きなどムダを削ぎ落としたシンプル極まりないサウンドは、ジョニー・キャッシュの晩年の作品「American」シリーズを思わせる。確かに晩年のジョニー・キャッシュの声と、今のクリス・クリストファーソンの声はどこか共通するものを持っていますね。
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ただ、かと言ってクリス・クリストファーソンがもうすぐ死ぬんじゃないかと言う話ではない。僕が言いたいのは、この歳になってもまだまだこんな素晴らしい音楽を創る彼の凄さなんです。人生訓を含んだ含蓄のある歌詞、さらにヴォーカルの圧倒的な説得力など聴いていて心に迫ってくるものがありますね。実に渋く、そして実に深い魂の一枚です。

そういや今作にはSister Sineadという曲が収録されています。歌詞を読むと、これはシネイド・オコナーがローマ法王の写真を破いた事件の事を歌っています。1992年のボブ・ディランのデビュー30周年記念コンサートのTV中継の時、シネイド・オコナーがその事件のせいで大ブーイングを受け歌えなくなった時に、唯一彼女を介抱していた優しい男がこのクリス・クリストファーソンだったのを思い出しました。
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この曲を聴いてシネイド・オコナーは涙を流しているに違いない。

  
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# by Blacksmoker | 2010-05-22 00:01 | COUNTRY / BLUEGRASS

JOE HENRY @京都磔磔 3/30(火) 2010


ここ数年、気になるルーツ系ミュージックのレコードのほとんどがジョー・ヘンリーのプロデュース作だ。
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軽く振り返っても、

Elvis Costello & Allen Toussaint「The River In Reverse」
Solomon Burke「Don’t Give Up On Me」
Ani Difranco「Knuckle Down」
Mary Gauthier「Between Daylight And Dark」
Loudon Wainwright Ⅲ「Starnge Weirdos」
Allen Toussaint「The Bright Mississippi」
Ramblin’ Jack Elliott「A Stranger Here」
Carolina Chocolate Drops「Genuine Negro Jig」
Mose Allison「The Way Of The World」
Salif Keita「La Différence」 (これは一部のみですが)

などなど膨大な数に及ぶ。

これらのほとんどがジョー・ヘンリーの所有するカリフォルニアのサウス・パサディナにある「ガーフィールド・ハウス」というスタジオで録音されているのです。

そのジョー・ヘンリーの作るサウンドは、どこかノスタルジックでロマンチックさが漂うモノクロームな音像が特徴だ。さらには楽器の鳴りがとても生々しく響き、あたかも目の前で演奏されてるかのような感覚に陥ります。(ちなみにどのレコードも、ドラムがいつも印象的な音をしているなと感じていたんですが、僕の後輩曰く「それはジョー・ヘンリーがいつも使っているドラマーのジェイ・ベルローズの出す音なんですよ。ジェイ・ベルローズジョー・ヘンリー以外のアルバムでも同じドラムの音出してますよ」との指摘が。なるほどね。)
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さらに、プロデュース作だけでなく自身のソロ・アルバムもリリースしており、2003年の「Tiny Voices」、2007年の「Civilians」、そして2009年には「Blood From The Stars」とそれぞれ文句なしに素晴らしい作品でしたね。

1986年にソロ・キャリアをスタートさせているという結構長いキャリアを持つジョー・ヘンリーですが、今回の来日が何と初来日となります。やはり、ここ最近の注目度の高さを物語るようにこの日の磔磔は、普段僕が行く磔磔のライヴより俄然多い客入りでしたね。
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今回はジョー・ヘンリー以外はベーシストのデイヴィッド・ピルチ、そしてキーボードのパトリック・ウォーレンというトリオ編成。この2人は最近のジョー・ヘンリーの作品では必ず参加しているメンツですね。ちなみにデイヴィッド・ピルチインディア・アリーマデリン・ペルー、そしてパトリック・ウォーレンボブ・ディランブルース・スプリングスティーントム・ウェイツリズ・ライトなど錚々たるミュージシャンのアルバムに参加している超凄腕ミュージシャンです。
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さてライヴの方ですが、結論から言ってしまうと「今年観た中で最も素晴らしいライヴの1つ」と言っても良いでしょう。かなり感動的なライヴでした。まさかあのジョー・ヘンリーの作品の中のノスタルジックでロマンチックな世界観をライヴでも体感出来るとは驚きです。もう途中で何度もウットリし、何度も涙腺が緩む瞬間がありました。

まず第一にジョー・ヘンリーの声の魅力だ。49歳にもかかわらず若々しく、それでいてどこか哀しさが漂うその声は、サウンド以上にノスタルジック。さらには彼の弾くアコースティック・ギターの音と絡むとその効果は何倍にも増長する。決して一流のボーカリストではないが、そうでなくても心の琴線に触れる声の持ち主だ。
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バンド・メンバーもジョー・ヘンリーと旧知の仲だけあって妙なチグハグさなんて微塵も見せない息の合いよう。特にパトリック・ウォーレンのキーボードはオルガンやシンセやSEなど大きく活躍しており、トリオ編成とは思えないほどの音の厚さを見せていました。デイヴィッド・ピルチも同様に素晴らしく息の合った演奏で、足に鈴を巻きつけてドラムの代わりもやっていましたね。

新作「Blood From The Stars」の曲を中心に、長いキャリアのそれぞれから代表曲を随所に配置した構成は、この人が昔からいかに素晴らしい曲を書いてきたかをまざまざと見せ付けられている気がしましたね。個人的には911にインスパイアされたFlags、そしてピアノの弾き語りで披露されたOur Songがハイライトでしたね。僕が最も好きなOur Songの弾き語り(そして後半にバンドの演奏が加わる)は何と感動的な瞬間だったろうか!
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さらにはジョー・ヘンリーの奥さんの姉である、あのマドンナがアルバム「Music」に入れた「Don’t Tell Me」の原曲Stopもしっかり披露。ホントつくづく曲が素晴らしく、まだ持っていない初期のソロ・アルバムも全部揃えたくなりましたね。

やはり感動的なライヴというのは体感時間が短く、1時間半があっと言う間。でもその間はジョー・ヘンリーの創るノスタルジックで、ロマンチックな世界にずっぽりと浸かっていました。終わった後も、その余韻がなかなか抜けませんでしたよ。
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今回は初来日というだけあってキャリアの代表曲を網羅した形でしたが、これからはジェシー・ハリスのように毎年来日してもらって、その長いキャリアの中にあるもっともっと様々な素晴らしい曲を披露して欲しいです!(プロデュース業が忙しくて難しいか…)

ホント素晴らしいライヴでした!
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# by Blacksmoker | 2010-05-13 21:41 | ライブレポート

AC/DC @ 京セラドーム大阪 3/16(火) 2010


世の中には2タイプの人間が存在する。

AC/DCを観た人」と「AC/DCを観てない人」だ。
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前日に観たボブ・ディランもそうでしたが、それ以上にこのAC/DCほどライヴを観た人とそうでない人との違いがハッキリするバンドはいない。

僕自身それを初めて体感したのは今から9年前の2001年の大阪城ホール。その時はアルバム「Stiff Upper Lip」リリース後のワールドツアーでの来日で、AC/DCが日本でライヴをやるのは何と1982年以来の18年振り。一種異様な盛り上がりを見せる中、初めて観たAC/DC(しかも前から7列目という目の前の席でした)は今までのライヴ人生の中で確実にハイライトとなる衝撃的な体験でしたね。
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欧米においてAC/DCがなぜここまで絶大的な人気を誇る存在であり続けるのか?その答えは「ライヴ」なのです。あんな強力で、破壊力のあり、なおかつエンターテインメントの極みのようなとんでもないライヴを見せつけられたら、もうどんな人でも降伏するしかありません。簡単に言ってしまえば、ライヴを観れば誰だって確実にAC/DCのファンになるのです。つまり、「AC/DCを好きな父親がライヴに子供を連れてくる→ 子供も好きになる→ さらにファンが増える」という図式が成り立っていくわけです。AC/DCのライヴの客層が老若男女さまざまなのはそういう事なのです。
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しかし、対する日本の状況は大きく違ってくる。ツアーをすればするほどどんどんファンが増える欧米とは違い、実はまだAC/DCは1975年のデビューから35年間で、たった3回しか来日していないのです(1981年と1982年、そして前回の2001年)。そんな状況の日本ではやはりAC/DCの凄さが分かっている人の数が根本から違うわけですね。

そしてそのAC/DCのライヴの凄さはもう筆舌に尽くしがたいほど圧倒的
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もう批判を恐れずに言ってしまいますが、”ロックが好き”と言っていきながらAC/DCを観ていないヤツなんてまったくもってフェイクなんです。AC/DCを観てないでロックを語るヤツの話なんて信用に値しないのです。
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そんなわけで「つべこべ言わず観ろ!」という事をこの9年の間、いろんな人に言ってきたんですが、啓蒙活動不足のせいか僕の周りで今回の来日公演に行ったヤツはほとんど皆無。結局僕と一緒に行ったヤツは9年前にも一緒に行ったヤツだったという何とも寂しい状況でした。やっぱり行ったヤツにしかこの凄さは理解してもらえないのか…。僕の周りの人間で今回行かなかったヤツは大いに反省するように!!

さて、そんな私の周りの状況とは一転して京セラドームは西日本のハードコアなAC/DCファンが集結して大盛況で、始まる前から会場周辺はお祭り状態。周りを見渡せばアンガス・ヤングのスクールボーイの格好をしてるヤツばっかだし、至る所でファン同士のエアギター大会が行われ、外国人はすれ違う人みんなに「AC/DC!」と挨拶のように声を掛けていたりと、みんな一様にテンション高いです。グッズ売り場なんて余裕で200人くらいは並んでます。Tシャツとかタオルとかちょっと欲しかったですが、こんな状況では買えません(ちなみに9年前の来日公演の時にも、ライヴ終了後テンション上がって「Stiff Upper Lip」柄のTシャツを買ってしまいましたが、見事に1回も着てないです…)。

しかし今回のグッズの中で一番のヒットは、やはり「アンガスの赤く光る角」でしょう!頭に装着し電池式で赤い角が点滅するものなんですが、客の装着率が異常に高い。一体この日だけでどれだけ売れたんでしょうか?10人に1人くらいの割合で付けていたんじゃないでしょうか。そしてそれが会場内で点滅するもんだから、アリーナからスタンドまで赤い光の海
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その光景は圧巻でした。

さて定刻が過ぎステージ後方のスクリーンにアニメーションが流れ出す。爆走する機関車にAC/DCのメンバーが乗っており、先頭車両には悪魔の格好をしたアンガス!ここでもう観客から地鳴りのような大歓声が響きます。そしてアニメーションの中の機関車がステージに突っ込んだ所で、会場にも巨大な機関車が現れメンバー登場。曲は新作「Black Ice」からRock’N Roll Train
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ステージにはブライアン・ジョンソンアンガス・ヤングマルコム・ヤングクリフ・ウィリアムズフィル・ラッドの不動の5人。最年長のブライアン・ジョンソンは御大62歳。そんな高齢でありながら9年前と何ら変わらぬ超パワフルな歌声です。
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そして永遠のギター少年アンガス・ヤング54歳)!少し髪が薄くなった気もするが、それ以外はこちらも全くもって変わらないキレのあるステージ・アクション。ダックウォークも軽快にキメまくり。衰えなんて微塵も感じられません。完全にキャラクタライズされたムダのないパフォーマンスにもう大歓声です。
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その後はもう名曲のオンパレード。「この人達はどんだけ名曲があるんだ」ってくらい必殺曲ばかり。あらためてとんでもないバンドなんだと実感します(マイケル・ジャクソン「Thriller」に次いで全世界で最も売れたアルバム第2位がAC/DC「Back In Black」ですからね。そう考えると凄いですね)。
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そしてそんな名曲の中に挟まれても何ら変わらぬ輝きを放つ「Black Ice」からの曲群(Rock'N Roll Trainを始めとして、Big JackBlack IceWar Machine)にも脱帽。ライヴになると一段と殺傷力を増します。

ブライアン・ジョンソンの声はもうダミ声の域をさらに超越したひき潰されたような声にも関わらず、めちゃくちゃライヴ映えするから凄いです。
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高校生の頃初めてこの声を聴いた時は「なんだこの変な声は!?」と思いましたが、今となってはもうブライアンの声以外ではAC/DCは考えられなしですね(ボン・スコットの声でさえ違和感を感じるくらい)。前日に観たボブ・ディランと年齢的にもあまり変わらないのに、こちらは超パワフルHells Bellsの時に、ステージ上からどデカい鐘が下りてきて、その鐘からロープが垂れ下がっているんですが、そこへ全力疾走でそのロープにジャンプしてしがみついて鐘をゴーンとならすというパフォーマンスなんて、観ているこっちがヒヤヒヤするほどのハイパーぶりです。

そしてそのブライアン・ジョンソンを上回るド派手な動きをみせるアンガス・ヤング。こちらもギターを弾くという事以外にも見せ場たっぷりで、The Jack(渋い!)の時なんて一枚一枚服を脱いでいくストリップ・パフォーマンス(最後はズボンを脱いだらAC/DCのロゴの入ったパンツが登場!)。
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本編最後のLet There Be Rockではアリーナの中に設置された円形ステージに移動。
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そして、そのステージが上空に上がり、大量の紙吹雪の中でギター・ソロを弾きまくる。もう最高という言葉以外出てこないです。
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そしてその派手なフロントマン2人を支えるリズム隊の3人のあまりにもタイトな演奏は観た人なら感動するほどの鉄壁さ。コーラスの時だけスーッと前に出てきてコーラスを取るマルコム・ヤングクリフ・ウィリアムズのサイドマンぶり(アンガスが大暴れしているバックではこの2人ガッチリとリズムをキープしているのです!)と、くわえタバコでクールにドラムを叩くフィル・ラッド(ライヴでタバコくわえながらドラム叩いている人など初めて観たぞ!)のジャスト・ヒットなドラミングはAC/DCというバンドの根幹を成している超重要なファクターですね。
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さらにこのAC/DCの最高のパフォーマンスに応える観客もまた最高だ。もうほぼ全編において大合唱。Whole Lotta Rosieでのアンガス・コール、そしてT.N.T.での掛け声、さらにはThunderstruckのサンダー・コールなど完璧です。日本のAC/DCファンだって海外のファンに負けないくらいアツイんです。

アンコールはHighway To Hell。そして最後はFor Those About To Rock (We Salute You)。ここでは最後とばかりにステージ後方から巨大な大砲が登場。その大砲が曲に合わせてドカンドカンと次々に発射しまくり、もう会場全体のボルテージもMAXに。
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そして2時間にも及ぶ圧巻のステージは終了しました。もう声も枯れるくらい叫び倒したのでグッタリです。観てるコッチも体力をかなり消耗します。AC/DCのライヴは観客参加型のスポーツみたいなもんですね。

いやぁ~あらためて考えても、ホントとてつもないバンドです。60歳にもなるオッサン達がこんな凄いライヴを見せるんですから、若者はたまったもんじゃないですね。「解散」とか「これで最後の来日」とかいろいろ噂では言われてたりしますが、ハッキリ言ってそんなネガティヴな言葉とは一切無縁でしたね。あんなライヴを観ると、まだまだ彼らはやってくれるのはまちがいないでしょう。次回は何年先になるか分かりませんが、次回も必ず参戦します(次回は息子も連れて行きます!)

とにかく今回あれだけ言ったにも関わらず来なかった人は、大いに心から反省して次回こそはつべこべ言わずに参戦するように!それまではAC/DCのライヴDVDを観てしっかり勉強しておけ!


     
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# by Blacksmoker | 2010-05-10 00:30 | ライブレポート

BOB DYLAN @ Zepp Osaka 3/15(金) 2010


世の中には2タイプの人間が存在する。

ボブ・ディランを観た人」と「ボブ・ディランを観ていない人」だ。
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大袈裟な言い方だが、そう言っても過言ではないほどに、前者と後者ではディランに対する捉え方が大きく違ってくる。なぜこの人がそれほどまでに「伝説」なのかは、観た人とそうでない人では大きな隔たりがあると言って良い。その存在感や歌声、それに纏う空気感も含めて体感した人でないとその凄さの本質は理解しづらいかもしれない。

今回のツアーで遅ればせながら初めて体感したディラン。たしかに得体の知れぬとてつもないオーラとそのライヴを観た事で、その凄さが少しでも分かったつもりでしたが、それはまだ小僧の戯言でした…。まだ序の口だったのです。

3/12から1公演挟んでの私の2回目(大阪公演4日目)となる3/15のディランは完全な「ロックンロール・モード」!60年代の曲連発の3/12とはうって変わり、この日はハードにドライヴするロックな曲が満載。ちょっとでも分かったつもりでいた僕を嘲笑うようなディランの変化ぶりに完全にヤラれました。

この日は黒いジャケットに白いハットで登場したディラン。オープニング・ナンバーは初日3/11のオープニングと同じくWatching The River Flowでスタート。2曲目からはライティングが雪の結晶のような模様を映し出し、曲は78年のアルバム「Street Legal」からSeñor (Tales of Yankee Power)
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ツアーでは60年代の曲は結構披露するんですが、70年代の曲をあまり演奏しないディランだったので、この曲は結構貴重です!ちなみにこの印象的なライティングは前回観た時の2曲目Lay Lady Layの時も同じライティングだったので、毎回2曲目にはこのライティングなんでしょうね。

今回はその他にも初登場したのはDesolation Row!お馴染みCold Irons Boundのヘヴィな演奏の流れから登場したこの曲。個人的にもディランの曲の中でも大好きな曲だったんですが、正直に告白しますと、途中まで何の曲か気が付きませんでした(笑)。チャーリー・セクストンがフロントで目立ちまくっていて、観客もやたらに盛り上がっていたので「一体何の曲だ?」と思っていたら、歌詞の「Which Side Are You On?」ってトコでようやくDesolation Rowだと気が付きました。
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この日はこの他にもHigh Water(For Charley Patton)The Levee’s Gonna Breakなどロックンロール曲が多く、ディランもかなり上機嫌に演奏しているのが観ていて分かります。この日はさらにStuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues AgainMan In The Black Coatなどディランのキャリアの中では比較的地味めな曲も披露していました。

後半は3/12とほぼ似ていて最強の演奏をみせるHighway 61 Revisited(後半のジャムも凄かった)、そしてThunder On The Mountain、ヘヴィで重厚なBallad Of A Thin Manなどは共通でしたが、今回はアルバム「Modern Times」からのSpirit On The Waterが追加。個人的にこの曲はこのアルバムの中でも、さらに言うと最近のディランの曲の中でも一番好きなくらいの曲なので、この曲が生で聴けて最高に嬉しかったですね。ドニー・ヘロンのペダル・スティールとディランのハーモニカの演奏も素晴らしかったです。
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最後のアンコールは不動の3曲。Like A Rolling StoneJolene、そしてAll Along The Watchtower。(この後の東京公演ではAll Along The Watchtowerに替わってBlowin’ In The Windが登場したようですが。)

この日はアンコール最後のAll Along The Watchtowerが始まる前にちょっとしたハプニングがありました。最前列にいた客にスチュ・キンボールが何か話しかけており、その後何とその客からディランにギターがップレゼントされたのです。スチュからそのギターをチャーリー・セクストンが受け取り、ディランの所まで持って行って手渡したら(ギターには何か手紙が挟まっていました)、ディランが声をあげて笑ったのです。ステージ上で全くMCをしないディラン(「Thank You」さえ言わない)のめったに見れない一面が見れた貴重な瞬間でしたね。その後チャーリーが客席を煽って、ディランに何かやらせようとしましたが、結局ディランは何もしなかったですが…。最後はまたメンバー全員で整列。そしてお馴染み無言のままディランは立ち去っていきました。
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今回ディランのライヴを観て感じたのは、観た2回ともそれぞれ全く違う印象だったこと。3/12ディランは「重厚なディラン」であり、3/15のディランは「若々しいエネルギッシュなディラン」。観る日によって全くキャラクターが違うのは、この人ならではの面白さ。そういえば1978年の武道館のライヴも、1日目と2日目では「全く違う人のようなライヴだった」というエピソードを思い出しましたが、ホントにこの人は観る日によって全く違った姿をみせるようですね。これがまた3日・4日間観るとまた印象が違ってくるのだろう。

ディランという人は様々な側面を持っているからこそ、様々な時代に対応し、様々な層のファンを獲得している。そしてディランを好きな人でもディランを好きなポイントがそれぞれ違うのも面白い。ディランの熱狂的なファンでさえも、「あの時代のあの曲はダメ」という意見を「絶対」持っていますからね。

僕は90年代にディランを「発見」し、2000年代のディランにヤラれた人間なので、今回のライヴにはとても感動しましたが、60年代~70年代からのファンは今回のライヴをどう感じたか、非常に知りたいところですね。

現在68歳ディラン。まだまだ次回も日本に来てもらい、その圧倒的な存在感で日本を沸かせてもらいたいですね。

  
 
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# by Blacksmoker | 2010-05-04 00:54 | ライブレポート

BOB DYLAN @ Zepp Osaka 3/12(金) 2010


2009年末に突如として発表されたボブ・ディランの来日。発表時点では「ホントか?」とまだまだ半信半疑でしたが(何たって毎年毎年噂に上がっては立ち消えになっていたので)、チケットを予約したあたりから、ようやく「本当に来るんだなぁ」と現実味を帯びてきましたね。

前回の来日から9年。1988年6月からスタートした「Never Ending Tour」は現在も継続中。しかも今のディランは音楽的にも人気的にも、さらにセールス的にも絶頂期を迎えている状況だ。
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さらに今回のジャパン・ツアーは、ディランの意向によりオールスタンディングのホールが選ばれており、大阪・名古屋・東京ともに会場は全てZeppという1500人規模の会場で連日行われるというファンには(いやファンでなくとも)堪らない形式だ。こういう同じ会場で連日ライヴをやる時は、いつもディランは日毎に大幅にセットリストを変えてくるので、何日か足を運ばないと全貌が分からないのです。

今回はディランのスケールからすると異常に小さい会場だけあってチケットは発売と同時にほぼ瞬間的にソールドアウト。日本でも未だに衰えぬディランの人気の高さが証明されたわけです。その後、追加公演も発表され、結局は3/11~3/29の18日間に渡って、大阪5公演・名古屋2公演・東京7公演の全12公演というとんでもなく長期ツアーになりました。かくして2009年11月のニューヨーク 3Days以来の3ヶ月振りのツアーにして2010年最初のツアーが幕を開けたわけです。

さて、今回僕が観たのはまずは2日目の3/12(初日の公演を取ったのに、追加公演が出て2日目になってしまった…)、会場に入ると開演30分前にも関わらず異常な込み具合と、かつてないオッサン率の高さに驚きます。

f0045842_2259121.jpgステージには既に全ての楽器がセッティングされており、カーテンに囲まれ青い照明で照らされたステージは60年代のジャズクラブのような雰囲気。ディランの座る右側のキーボードのアンプの上に目をやると、やはりありました!有名な”あのトロフィー”が。これは2001年にディランThings Have Changedでアカデミー賞主題歌賞を受賞した時に貰ったオスカー像。ツアーでは必ずディランの横のアンプの上に置いてある事で有名だ。噂では聞いてはいましたが、本物を見ると感激してしまいますね。何か歴史の証人にでもなったみたいな高揚感がこみ上げてきます。

そうするうちに開演時間になり、ステージ上にお香(ナグチャンパ)の香りが充満し出したところでBGMがアーロン・コープランドロデオの一節ホークダウンが流れ出す。そして暗がりの中でバンド・メンバーが登場。

そして、お馴染みのステージ・マネージャーのアル・サントスのMCが会場に響きます。

Ladies & Gentleman ロックンロールに賞賛された詩人に拍手を。60年代のカウンター・カルチャーの希望の声。フォークとロックをベッドインさせた男。70年代には化粧を施し、薬物乱用の靄の中に消え、そして神を発見し突如姿を現した男。80年代には過去の人と見なされ、90年代後半に突如ギアをスフトして強力な音楽をリリースして、またキャリアを始めた男。Ladies & Gentlemen コロムビアのレコーディング・アーティスト、ボブ・ディランです
もうこのMCが生で聴けただけでも鳥肌でしたが、黒いテンガロン・ハットを被って黒いスーツに身を固めたディランの登場に会場に割れんばかりの歓声が響きます。
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無言でキーボードに座ったディラン。1曲目は「Blonde On Blonde」からLeopard-Skin Pill-Box Hat!超ダミ声で今の68歳のディランが歌うこのブルーズは、1966年に25歳のディランが歌ったそれよりも非常に強力に響きます。その上にバンドのラウドでロックな演奏がより拍車を掛けます。

全員グレーのスーツに黒いシャツで身を固めたバンド・メンバーは、リズム・ギターにスチュ・キンボール、ベースにトニー・ガルニエ、ドラムにジョージ・リセリ、ペダル・スティールにドニー・ヘロン、そしてリード・ギターにチャーリー・セクストン

ディラン・ファンの間でも人気の高いチャーリー・セクストンが昨年からバンドに復帰した事でバンドにロック色が強くなったと言われいるが、なるほど確かにこの男のステージ上でのパフォーマンスや存在感は非常に大きいですね。
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チャーリー・セクストンと言えば、個人的には90年代に結構好きだったCharlie Sexton Sextetセクステットなのに4人組)のリf0045842_23105553.jpgーダーとして知られる男で、1995年のアルバム「Under The Wishing Tree」(左写真)はかなりよく聴いたので、この再会は感慨深いものがありましたね。(ちなみにこのChalie Sexton Sextetは今聴くと「少し早すぎたルーツ・ロックバンド」と言えるかもしれません。あと個人的にはどの曲もサビが致命的に弱かった非常に惜しいバンドだったと分析しています。)

あとチャーリー・セクストンがロック色を強めている原因の一つではあるが、ドラムのジョージ・リセリの叩く音がかなりデカく、これもロック色を強くしている原因の一つでしょう。

2曲目になり、ステージのライティングが雪の結晶のようになり、ステージを囲むカーテンに美しく映し出されます。キーボードから立ち上がりステージ中央に出てきたディラン。曲はLay Lady Lay!バンド演奏のイントロでは何の曲だか分からなかったですが、ディランのヴォーカルの歌い出しで観客も大歓声。この曲でのディランの歌声は素晴らしく、低い声が会場に拡散されていく瞬間はホント身震いがしましたね。
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いつも言われている「最近のディランは原曲を崩しすぎていて何の曲だか分からない」というセオリーに反して、意外にもヴォーカルは原曲に忠実に歌っていたのが印象的。後半では長いハーモニカ・ソロも披露。このハーモニカを吹く姿がめちゃくちゃキマっています。

続いては新作「Together Through Life」からBeyond Here Lies Nothin’。ドラムの荒々しい乱打に、チャーリー・セクストンのルーズなギターが絡む渋いヘヴィ・ブルーズ・ナンバー。よく観るとドニー・ヘロンがトランペットを吹いていました(この人はこの後も様々な楽器を演奏してましたね)。

そして次に登場したのは何とDon’t Think Twice, It’s All Right!2009年の全米ツアーでもほとんど披露された事のないこの曲が日本で遂に登場です。ディランがここで初めてエレクトリック・ギター(デューセンバーグ製)を手にしてリズムを刻む。
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同じ曲でも「Freewheelin’」に入ってる原曲のヴァージョンではなく、「Bootleg Series Vol.6」の1964年のフィルハーモニック・ホールのヴァージョンでもなく、1974年のThe Bandとの復活ライヴ「Before The Flood」の時のヴァージョンでもなく、1978年の武道館ライヴのヴァージョンでもなく、現在のディラン流にアレンジされた軽快なカントリーのDon’t Think Twice, It’s All Right。この曲はかなりアレンジされていて歌詞を聴いていないと判別が出来なかったくらいのテンポの速いヴァージョンに変化していて面白かったです。

そしてその速いテンポのまま次のThe Levee’s Gonna Breakに突入。アルバム「Modern Times」からのロックンロール・ナンバf0045842_23225632.jpgーだ。ディランは再びキーボードに戻り、トニー・ガルニエのウッドベースとジョージ・リセリのドラムが全体を牽引し、そこにチャーリー・セクストンがギターを弾きながら動き回る。スチュ・キンボールがリズム・ギターで小気味良くリズムを刻み、ドニー・ヘロンのスチール・ギターが素葉らしいフレージングで色を添えていく。ここでバンドの一体感はマックスに。

ただ、よく観るとチャーリー・セクストンは動きまくりながらも、目はチラチラとキーボードのディランの方へ目をやっているし、スチュや他のメンバーもディランの動きを目で追いながら、ディランの一挙手一投足を見逃さないように緊張感の張り詰めた演奏をしているのが分かります。なかなかこのバンドの一員でいるのも難しそうです。
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次は演奏のテンポをぐっと落とし披露されたのはJust Like A Woman!この曲はイントロを聴いた瞬間にこの曲だと分かりました。たまたま数日前にジョージ・ハリスンの1971年の「コンサート・フォー・バングラデシュ」のDVDを観ていてJust Like A Womanジョージ・ハリスンレオン・ラッセルとの共演)をやっていたのを観て「この曲も聴けたらイイなぁ」と思っていたので、あまりのタイミングの良さにちょっと感激してしまいましたよ。コーラス部分を超早口で「Just Like A Woman」と呟くディランのダミ声さえも感動的なのです。さらにドニー・ヘロンの弾くペダル・スティールの音色が涙を誘います。

この後は「ギアをシフトした」以降のアルバムから4曲が続けざまに登場。まずはアルバム「Love & Theft」からTweedle Dee & Tweedle Dum。中盤ではキーボードから離れてステージ中央にゆらゆらと歩いてきたディランがハーモニカを即興で吹きまくっていました。そしてキーボードに座ったままで、アルバム「Time Out Of Mind」からMake You Feel My Love、そしてまたもや「Love & Theft」からHonest With Me、さらにPo’ Boyと速い曲の次にはゆっくりの曲と緩急つけた流れで、じっくり魅せてくれます。特にPo’ Boyでのヴォーカルは高音域も出ていて素晴らしかったです。こうやって普通の声も出せるディランを聴くと、今のダミ声はわざと出しているんだなということが分かります。
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そしてここからが後半のハイライト。曲はHighway 61 Revisited。バンドの演奏も勢いが付きまくっていて、ディランもキーボードから身を乗り出すようにしてシャウト気味に歌います。ここでもディランのヴォーカルは最強と言っていいでしょう。さらにドラムがドカンドカンと叩きまくりで、後半にジャム・セッションに突入。ディランのキーボードに絡むチャーリー・セクストンのギターの応酬が凄まじい。観客のオヤジや若者全員含めて大歓声だ。しかし68歳なのにとんでもない演奏を見せるな、ディランは。

この後再びメロウなI Feel A Change Comin’ Onが続いた後、アルバム「Modern Times」のオープニングを飾るThunder On The Mountain。こちらもかなり軽快に飛ばすロックンロール・ナンバー。この曲の歌詞は変えてくるのかと思って聴いていたら、しっかり原曲通りに「Alicia Keysの事を考えると泣かずにはいられない」ってちゃんと歌ってましたね(超早口でしたけど)。

そして本編ラストはBallad Of A Thin Man。照明もダークになり、それに合わせて演奏も超ヘヴィに。ディランが仁王立ちで佇む姿の何と威圧感のある事!怒涛のようにハーモニカを吹く姿は息を飲むほどの迫力がありました。

一旦ステージから消えたバンドがアンコールで再び登場。ステージ後方にフリーメイソンばりの「目の模様」をした紋章が掲げられる。アンコールで披露される曲はここ数ヶ月のツアーでは不動の3曲。Like A Rolling StoneJolene、そしてAll Along The Watchtowerの3曲だ。
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ディランのジャムっぽいキーボードからドラムのカウントで始まったLike A Rolling Stoneでは初めて客席から合唱が起きていましたね。でもその合唱をかわす様な早口な歌い方が偏屈なディランっぽい。そして軽快にキメるJolene、最後はもう原曲完全解体の爆走All Along The Watchtowerで大団円。ディランがメンバー全員を紹介して大歓声の中、終了しました(終わった後、後ろにいてたオッサン2人組が「最後の曲ってWatchtowerやったんか!?全然分からんかったわ」って驚いて話してました)。

最後はバンド全員がステージ前に一列に並ぶ。だがディランはお辞儀をすることもなく、拍手で称えあうこともなく、不敵な笑みを浮かべて手を少し広げて仁王立ち。
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これもディランのライヴでは恒例の「儀式」だ。その後無言のままサッとステージから消えて行きました。

ホント噂に違わぬ何とも掴まえ難い人です。ただライヴの迫力の尋常のなさは、これまたディランならでは。昔からずっと世間の期待をスルっとかわし、そして全く予想もしないところで伝説を作る男ボブ・ディラン。1960年代から2010年代まで50年近くも音楽界に軌跡を残し続ける男を一日で理解する事は不可能だが、その伝説の片燐は今でも十分に感じることが出来ましたね。

何か分厚い歴史の本を読み終えたような重厚なライヴでした。纏う空気感も含めて伝説の男。言葉では説明しづらいんですが、これは観た人にしか分からない感覚でしょう。観た人ならわかってくれるはず!

いやぁ~かなり長くなってしまいましたのでボブ・ディラン・ライヴ第2夜のレポートは次回!


     
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# by Blacksmoker | 2010-04-20 22:27 | ライブレポート

ISIS & BARONESS @ 心斎橋クラブクアトロ 3/3(水) 2010


超強力タッグ!

ヘヴィ・ロック界のカリスマ、アーロン・ターナー率いるISISの来日公演。もちろんISISは新作「Wavering Radiant」リリース後のツアーというだけあって、前回の来日(Sunn O)))Borisなどが出演した轟音イベント「Leave Them All Behind」)よりも更に進化した姿を見せてくれるのはもちろん楽しみだが、今回のもう一つの楽しみは初来日となるBaroness(下写真)だ。
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2007年のアルバム「The Red Album」(個人的には2007年度のベスト10にランキング!)でヘヴィ・ロック好きに衝撃を与えたジョージア州サバンナ出身のBaroness。その後2009年の「Blue Record」(右写真)において、前作f0045842_21471944.jpgを更に凌駕したプログレッシヴ的な展開でファンを唸らせ(これはMastodonの新作での変化に匹敵する)、その地位を確立したと言って良いでしょう。

さらにはBaronessのヴォーカル兼ギターの、ジョン・ベイズリーの病的だが美しい独特のアートワーク(他にもPig DestroyerKylesaのアルバム・カヴァーも手掛けている)にも個人的には注目です。

まず最初に登場したBaroness。アーティスト写真で観ると長髪だったヴォーカルのジョン・ベイズリーは坊主になっていて、アゴ髭を伸ばした伝統的なハードコア・スタイル
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その彼をセンターにベースとギター、そしてドラムというオーソドックスな4人編成。ドラマー以外のフロント3人は全員黒のカットTシャツというのも由緒正しきメタル・マナーです。

1曲目はザクザクのリフで始まる「Blue Record」のオープニング・ナンバーThe Sweetest Curse。2本のギターから繰り出される強力なリフと雷鳴のごときドラムからして、凡百のヘヴィロック・バンドとは一線を画しているのは一目瞭然。展開が次々に変化する曲も、かなり複雑で面白く、中盤ではIron Maidenばりのツイン・ギターのユニゾンが綺麗にキマる瞬間なんて最高のカタルシスです!根は生粋のヘヴィメタル・バンドながら、ハードコアを通過し、卓越した演奏力でプログレッシヴ・ロックのような展開に進む姿は、ホントに最近のMastodonにかぶりますね。
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ドラムはConvergeにも通じるハードコア的なタイトなドラム。ワイルドに爆走するメタル/ハードコア的側面と、静的なパートが混在した楽曲はライヴ映えしまくります。レコードで聴けるようなアコースティック・ギターの導入は残念ながらライヴでは観れませんでしたが、それを補って余りある堂々たる迫力のパフォーマンスは観に来ていたISISのファンも充分に捻じ伏せられるものでしたね。
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そして見た目は非常にイカついヴォーカル兼ギターのジョン・ベイズリーの真摯なMCも高感度高し(個人的な統計ですが、こういう見た目のイカついミュージシャンは得てしてイイ奴が多いです)。1時間弱のステージでしたが、日本初登場となったBaronessは日本の轟音好きに大きな拍手を持って迎えられたと言っても良いでしょうね。やっぱりコイツらはハンパなかったです。

続いてはISISの登場。
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ISISというバンドは結成当初からメタル/ハードコアの本流にいるバンドではなかった。そういった本流とは対極の位置にある「極北」で独自のスタンスを築き上げ(更にはそこからも進化して)、最新作「Wavering Radiant」で今や誰も手の届かない真の意味での孤高のバンドになったわけですが、こちらは貫禄のステージングでした。

そのISISの頭脳であるヴォーカル兼ギターのアーロン・ターナーは、こちらはBaronessジョン・ベイズリーが坊主頭になっていたのとは逆に、写真では坊主頭だったが、今は伸びきった髪とヒゲの風貌はまるで「世捨て人」。
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それとは逆にアーロン以外の4人のメンバーはと言うと、見た目は完全に「職人集団」。アーロン・ターナーの脳内音楽を忠実に再現する鉄壁の凄腕プレイヤー達。まるでTortoiseのごとき隙のない緻密な演奏が、静寂→緊張→爆発という大きな流れで大海原で起こる津波のようなスケールで迫ってくる様は圧巻!アーロンのノーマル・ヴォーカルと、鬼の形相から繰り出される咆哮ヴォーカルのコントラストも凄まじかったですね。

メタル/ハードコアの本流にいては決して生まれないノイズ/アンビエントの要素やヒップホップの要素も飲み込んだ壮大なサウンドに、観客も息を飲まずにはいられないほどの圧倒されまくっていました。
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セットリストは、前作「In The Absence Of Trurh」からHoly Tearsや、アルバム「Panopticon」からWillie Dissolveなども組み込んでいましたが、ほぼ8割が新作「Wavering Radiant」から。流れを途切れささない息もつかせぬ1時間半。数年前に観たISISよりも断然スケールアップしたバンドに進化してました。

最後は何と初期の名曲Celestial(The Tower)が登場!まだまだBlack Sabbathの名残りを感じさせるスラッジの範疇にある音楽性だった頃のISIS必殺曲
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今のバンドによる演奏の殺傷力の高さが更にこの曲を暴力的なものにする凄い演奏でしたね。最後はギター・ノイズのフィードバック音をステージに響かせバンドは去って行きました。

今回は、未だ日本では得体の知れない存在だったBaronessと、完璧な孤高の存在であるISISの現在進行形の姿を両方目の当たりにする事が出来た素晴らしいライヴ。少し前もBrutal Truth & Convergeという最凶のカップリング・ツアーがあったし、「Extreme The Dojo」シリーズでもスタイルの違った3バンドのカップリング・ツアーもあるし、こういうバンドというのは最低でも2バンドくらいでツアーをやってくれるとかなり楽しめます(個人的に3バンドは少ししんどい・・・)。是非ともこういう轟音バンドによるカップリング・ツアーはどんどん増やして欲しいですね。例えば「Wolves In The Throne Room & Nachtmystium」とか「Shrinebuilder & High On Fire」とか「Minsk & Rwake」とかそんな組み合わせを期待したいです!



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# by Blacksmoker | 2010-04-13 20:41 | ライブレポート