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ANTHONY HAMILTON [The Point Of It All]


で、前回のターシャに続いて今度は旦那アンソニー・ハミルトンの3作目「The Point Of It All」

ANTHONY HAMILTON [The Point Of It All] _f0045842_13123692.jpg2005年の前作「Ain’t Nobody Worryin’」から4年も空いていますが、その間にもかなりの数の客演をこなしたり、未発表曲を集めたアルバム「Southern Comfort」が出たり、さらには映画「American Gangster」への出演に、そのサウンドトラックへの曲提供、最後は嫁ターシャのデビューなど話題には事欠かかないカンジですが、やはり正式なアルバムとなると俄然期待してしまうのがこの男です(そもそもこの男の声が聴けるだけでいいというファンも多いでしょう)。

そんな稀代のソウルマン、アンソニー・ハミルトンの新作は、名盤だった前作の路線とは若干意匠を変えてきました。
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今回のアルバムを一聴して気付くのは、そのサウンドの違い。前作「Ain’t Nobody Worryin’」はモロに南部路線でしたが、今回は若干サウンドがヒップホップ・ソウル路線。前2作と違って非常に「都会的な」ジャケットも象徴的ですね。前作を期待した人は少々面喰うかもしれません。
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何たって、このアルバムからの1stシングルCoolからして、今までと様相が違います。まるで80年代後半のヒップホップのようなドラムマシンによるビートに、ボトルネック奏法のギターの音の1フレーズをサンプリングしただけという超シンプルな「1ループ」トラック。そして後半にデイヴィッド・バナーの野太いナスティなラップが出てくるという今までのアンソニー・ハミルトンには無い新機軸な1曲です。前作の1stシングルだったCan’t Let Goとはかなり違いますね。しかしアンソニーの声が入るとそれだけで十分魅力的な曲になるのが不思議です。

これ以外にもトラックがヒップホップ・ソウル的なものが多いです。The Day We MetFallin’ In Loveなんて、メアリー・J・ブライジが歌ったらバッチリなトラックですよ。

そもそもアンソニー・ハミルトンという男はレーベルの倒産ANTHONY HAMILTON [The Point Of It All] _f0045842_1326837.jpgなどでデビュー作のリリースが見送られてお蔵入りになり、So So Defに移籍して新しく作った1stアルバム「Comin’ From Where I’m From」が大ヒットした経歴がある。そんなアンソニーの見送られたアルバムの内容は「ヒップホップ・ソウル的なもの」だったと言われている。ですので、アンソニーは前2作のディープ・ソウルな泥臭いサウンドを踏襲せずこの新作では、デビュー前のヒップホップ・ソウルな洗練されたサウンドへ向かったことになりますね。

おそらくこれはアンソニーの意向なのでしょう。最近の彼の参加した曲やアーティストを見ると、かなり多彩になってきているのが分かります。カントリー系シンガーとの共演(Josh TurnerJohn Rich)や、ファンク路線の曲などもあります(前作ではレゲエにも挑戦していたし)。
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これは1人のシンガーとしてのステップアップとして捉えるべきでしょう。アンソニーはド渋なディープ・ソウルな曲以外でも、どんな多彩な楽曲も乗りこなす力量も持ち合わせているのです。ただ、どんな曲でもあの声が被されば自然にアンソニー印になってしまうわけですけどね。

しかし、今までと全く違ってしまったかというとそんな事も無く、以前からのファンも納得させられる曲もしっかり収録されているのもニクイ。ホーン・セクションが絡むPlease Stayや、都会的な洗練さとサザン風味が見事に合わさったThe Point Of It Allなどは名曲ですね。ボビー・コールドウェルが歌いそうな若干AOR調なバラードHer Heartも新機軸だがハマっています。
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そしてラストに歌われるのは、このアルバムを聴く人へ捧げるようなゴスペルFine Again。以前のファンも、新しいファンも、さらにはこのアルバムの方向性に違和感を感じている人でさえも、この「きっとまた良くなるさ」と歌われるこの曲に全ての感情を持っていかれる事でしょう。

サウンドは変わってもこの男のスピリットは全く不滅。前2作にも劣らない作品だと思います。

    
by Blacksmoker | 2009-06-24 13:09 | R&B / SOUL
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