KRIS KRISTOFFERSON [Closer To The Bone]


クリス・クリストファーソンという名前を聞くと、僕個人としてはミュージシャンというより映画俳優という印象が強い。
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古くは1973年サム・ペキンパー監督の映画「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」のまだ初々しいビリー役として、そしてここ最近の当たり役と言えばやはり、ウェズリー・スナイプス主演のSFアクション映画「ブレイド」でしょう[下写真]。ブレイドの相棒役として3シリーズ全てに出演している人気キャラだったので覚えている人も多いでしょう(だから「ブレイド3」であのあっけない死に方をさせた脚本は許せん!)。
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しかしクリス・クリストファーソンという人は、映画俳優以上に本国アメリカではカントリー・ミュージシャンとしてウィリー・ネルソンジョニー・キャッシュ、そしてボブ・ディランらと並び賞されている偉大な人なんです。ジャニス・ジョプリンの1971年の名作「Pearl」の中でも有名なMe And Bobby McGeeや、ジョニー・キャッシュのカヴァーしたSunday Morning Coming Downもこのクリス・クリストファーソンの曲なんですよね。

f0045842_143082.jpg今回紹介するのは、そのクリス・クリストファーソンの3年振りの新作「Closer To The Bone」(右写真)。「俺も死に近づいている」という意味でしょうか。意味有りげなタイトルです。ジャケットに写る白髪で皺の刻まれた顔の御大も現在73歳。71歳で逝去した盟友ジョニー・キャッシュを思うとこのタイトルにも納得がいくというものです。

さて中のブックレットを見て驚いたのですが、「このアルバムをソウル・ブラザーのスティーヴン・ブルトンの魂に捧げる」という一節とその彼の写真が載っていました。テキサス出身のシンガー・ソングライターのこのスティーヴン・ブルトン(下写真)。私は2006年にThe Resentmentsのメンバーとして来日した時に彼を観てるんですが、どうやら2009年に50歳という若さで癌で亡くなっていたようです。
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The Resentmentsのライヴに感動しただけに(その時のレポートはコチラ)、彼の死をこういう形で知ったのはショックでしたね。今年のアカデミー賞でジェフ・ブリッジスが主演男優賞を獲った映画「Crazy Heart」なんて、このスティーヴン・ブルトンをモデルにしているみたいだし何とも残念な話だ(サントラ盤も彼が担当している)。そういう事実を知ると、この「Closer To The Bone」というタイトルは更に重く響きます。
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内容はほぼクリス・クリストファーソンによる弾き語り(クレジットを見るとドン・ウォズがベースを担当し、ジム・ケルトナーがドラム、スティーヴン・ブルトンがギターと意外と豪華な面子が揃っているんですが、クリス・クリストファーソンの声とギター以外はほとんど印象に残りませんね)。全てがオリジナル曲だ。これくらいの歳になるとカヴァー曲やスタンダード曲ばかりが目立つようになるミュージシャンの中で、全てオリジナル曲が占めるアルバムをリリースするなんて、この人の才能はまだまだ枯渇していないようです。

クリス・クリストファーソンの激渋の深い声、一発録りのようなアコースティック・ギターの生々しい響きなどムダを削ぎ落としたシンプル極まりないサウンドは、ジョニー・キャッシュの晩年の作品「American」シリーズを思わせる。確かに晩年のジョニー・キャッシュの声と、今のクリス・クリストファーソンの声はどこか共通するものを持っていますね。
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ただ、かと言ってクリス・クリストファーソンがもうすぐ死ぬんじゃないかと言う話ではない。僕が言いたいのは、この歳になってもまだまだこんな素晴らしい音楽を創る彼の凄さなんです。人生訓を含んだ含蓄のある歌詞、さらにヴォーカルの圧倒的な説得力など聴いていて心に迫ってくるものがありますね。実に渋く、そして実に深い魂の一枚です。

そういや今作にはSister Sineadという曲が収録されています。歌詞を読むと、これはシネイド・オコナーがローマ法王の写真を破いた事件の事を歌っています。1992年のボブ・ディランのデビュー30周年記念コンサートのTV中継の時、シネイド・オコナーがその事件のせいで大ブーイングを受け歌えなくなった時に、唯一彼女を介抱していた優しい男がこのクリス・クリストファーソンだったのを思い出しました。
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この曲を聴いてシネイド・オコナーは涙を流しているに違いない。

  
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by Blacksmoker | 2010-05-22 00:01 | COUNTRY / BLUEGRASS
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