NAS & DAMIAN MARLEY [Distant Relatives]


Distant Relatives」=「離れた親戚

これがどういう意味なのかはアルバム最後に収録されたAfrica Must Wake UpでのNasのヴァースを聴けば分かる。「俺達はみんな同じ場所から来た アフリカだ。世界中の人たちがみんな家族。あちこちに散らばっているだけなんだ。だから遠い親戚たち 故郷へ帰ろう

f0045842_17353938.jpgヒップホップ界の最も崇高なリリシストNasと、レゲエ界のロイヤル・ファミリーの末弟ダミアン・マーリィによるコラボレーション・アルバム。しかし単なるコラボレーションという枠を超えてブラック・ディアスポラとしての2人、さらにはソウル・ブラザーとしての2人の渾身のアルバムと言って良いだろう。

アフリカン・アメリカンであるNas、そしてボブ・マーリィの末子であるジャマイカ人のダミアン・マーリィ。人種も宗教も違うこの2人だが、表題のようにアフリカをルーツにすれば皆が同じ兄弟。特にヒップホップとレゲエという「レベル・ミュージック」として音楽を選んだ2人の親和性はなおさら高い。
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Nasボブ・マーリィを聴いて育ったし、そのボブの息子であるダミアンNasを聴いて育った。この音楽的輪廻で繋がった2人が初めて邂逅したのが2005年のダミアンのアルバム「Welcome To Jamrock」の中のRoad To Zionだった。当時はその意外な組み合わせに驚いたが、その後この2人がどんどん親睦を深めていった事でこのコラボレーション・アルバムの登場にはそこまで驚きはしなかったが、実際にこんなとんでもなく凄いアルバムを完成さす事になるとは予想もしなかったですね。

f0045842_17421767.jpgとにかく今、この2人のラッパー/ディージェイとしての凄さは群を抜いている。個人的には、特にNasは90年代中期~後期にかけては精細を欠くアルバムが多かったが、2001年の強力なボムOne Mic以降、見事にハズレなしだ。最近のアルバムなんて震えるくらいスリリングなリリシストぶりを発揮していてますます孤高の存在感を放っている。(ちょっとケリスとの結婚&離婚で足を引っ張っられたけど・・・。)

そしてもう1人のダミアン・マーリィ。傑作「Welcome To Jamrock」でこちらも強力な存在感を身に付けて一皮剥けた彼ですが、その後マライア・キャリーグウェン・ステファニーアリシア・キーズといったポップ・フィ-ルドで活躍するアーティストとの競演から、スティーヴン・マーリージュリアン・マーリィといったレゲエ・ロイヤル・ファミリーの兄弟達への客演、さらにはB-RealGuruといったハードコアなヒップホップ・アーティストへの客演と、その行動範囲をジャンルレスに展開している。
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ここ数年で鍛えられたその声は「Welcome To Jamrock」の頃と比べても、まるで別人。弱冠の不安定さも見せたその声も、今では抜群の安定感と存在感を誇る。ディージェイだけでなく、シンガーとしての素晴らしさも特筆すべきだろう。今回のアルバムではプロデュースまで手掛けており、その音楽性の高さには舌を巻くばかりだ。ヒップホップ寄りでもなく、レゲエ寄りでもない、ちょうどそのど真ん中を行くサウンドはダミアンの折衷感覚の鋭さのなせる技だ。

更にはマーリィ家の次兄スティーヴン・マーリィ(右写真)が、このアルバムの制作に関わっている事も大きい。f0045842_17552183.jpgスティーヴンというと、全ての楽器を操る裏方的なイメージが強い人だが2007年に初のソロ・アルバム「Mind Control」をリリースしてマーリィ・ブラザーズとしての誇りとレゲエの「レベル」を受け継いだ精神性を見事に知らしめた男であるが(ちなみにこのアルバムは、決して派手ではないが、何年かあとに絶対聴きたくなるアルバムだ)、このスティーヴンがこのアルバムに関わる事で、深みが断然増しているのは間違いない。LeadersIn His Own Wordsで披露される父親にそっくりなその激渋な歌声もこのアルバムのレゲエ・サイドを担っていてヤバイです。このアルバムはNasダミアン名義ではあるが、ヒップホップのNas、レゲエのスティーヴン、そしてその真ん中を行くダミアンという3つ巴のアルバムと言っても良いだろう。
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パーティ・アルバム的な要素は排除して、実に重厚なメッセージ性の高いアルバムになっているのも良い。「レベル・ミュージック」として、エッジが立ちまくった攻撃的なアルバムだ。そしてもちろんRedemptionもある。大物でありながらストリートなザラついた感覚を漂わせてるのもカッコイイです(まあ、ケリスと離婚して月に1000万円の養育費を払えるNasと、家にはロールスロイスが何台もある豪邸を持つロイヤル・ファミリーの一員であるダミアンのどこが「ストリート」なのかという話もありますが・・・)。
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更にはゲスト陣もなかなか興味深い人選。特にルーツ・レゲエ界のレジェンド、デニス・ブラウンThe Promised Landの声をサンプルで使ったLand Of Pomiseは、まさしく過去と未来を繋ぐ意義を持つ1曲。更にロイヤル・ファミリー専属のスタジオ「Tuff Gong」の鍵を預けられたソマリア生まれの若きラッパーのK’naan(ワールドカップで大ブレイク!)、f0045842_18172646.jpgそして現在のアメリカのヒップホップ・シーンの寵児とも言えるリル・ウェイン(左写真)の参加も大きい。特にこのMy Generationというテーマ的にも非常に重厚な曲に召喚されたリル・ウェインなんて、こんな強烈なカリスマ2人の前ではフザけたオートチューン・ヴォイスのラップなんて披露したら、絶対に怒られるのは確実なので、最近のリル・ウェインには珍しく真摯なラップでめちゃくちゃ好印象。ヤレばできるじゃねーか!

本国ジャマイカでもヒットした1stシングルAs We Enter(2小節ごとにマイク回しをキメる2人が異常にスリリング!)から、アフリカン・ドラムに重厚なストリングスの絡むTribes At War、先日のSummer SonicNasも披露してたStrong Will Continueダミアンの堂に入ったシンガーぶりが素晴らしい)と、アルバム頭3曲でもうこのアルバムは凄い事になるのが分かりますね。いつものように異常にリリカルなNasの鋭いラップも冴えまくっている。一方のダミアンは旧約聖書に基づくラスタファリズムが全面に出た宗教色の濃いリリックスで、Nasの現実のストリートに根差した直接的なリリックの対比も面白い。
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ブラック・ディアスポラとしてのアイデンティティを持ったこの2人(スティーヴン・マーリィも合わせれば3人)による、レゲエとヒップホップの枠を超えた傑作。Nasのファン、ダミアンのファン、それぞれのファンも唸る素晴らしい作品です。

今のところBlacksmokerの2010年のベスト・アルバム間違いなく断トツの1位です!是非チェックしてみて下さい。

   
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by Blacksmoker | 2010-08-24 17:18 | REGGAE
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