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FAITHLESS [To All New Arrivals]

最高傑作

イギリス音楽界最強のエレクトロ・ユニット、フェイスレスFAITHLESS [To All New Arrivals]_f0045842_22435056.jpg3年振りの新作「To All New Arrivals」は、今までのフェイスレスを更に進化させた美しく幻想的なサウンドで、まさしく彼らの最高傑作でしょう。2005年にリリースされたベスト・アルバム「Forever Faithless:The Greatest Hits」で10年のキャリアを総括し、2006年は名門ハウス・レーベル「Renaissance」から素晴らしいMix CD「3D」をリリースしたばかりの彼らの新しい出発に相応しいアルバムです。

タイトルは「新たに到着した全ての人達へ」という示唆に満ちた言葉で、どこか外国の港町の夕暮れ時を描いた風景画のジャケットがとても美しい。

このアルバムは今まで以上にゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした曲がほとんどで、その多彩なヴォーカリスト達のバックで鳴る、シンセやピアノの音が霧のような靄のかかった美しい深遠なプログレッシヴなハウス・サウンドが幻想的な空間を作り出しています。仄かに80年代フレイヴァーが感じられるのも良いですね(これが過剰だと個人的にはダメです)。
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エコーのかかったコーラスが印象的な曲が多く一聴すると非常に美しいサウンドですが、それとは逆にマキシ・ジャズ(下写真)のポエトリー・リーディングのようなラップは実にソリッドでリリックを見ると実は意外とシリアスで現実問題を捉えたアイロニックなものばかり。幻想的なフェイスレスのサウンドに意外とサイケデリックな感覚が少ないのは、おそらくマキシ・ジャズのラップが強烈に聴く者を現実に引き戻す磁場を持っているからだろう。サイケデリックには聴くものを異次元に飛ばす力があるが、フェイスレスのサウンドは殺伐とした現実の中に幻想的な空間を作り出すような感覚がある。前作でも「Weapons Of Mass Destruction」などかなり強烈な詩が印象的だったマキシ・ジャズだが、今回もそのリリックは鋭く現実をえぐる。まさしく現代のリントン・クエジィ・ジョンソンです。
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今回のアルバム製作中にフェイスレスのメンバーのロロシスター・ブリスの2人には子供が誕生したそうで、それに呼応してサウンドや歌詞などにも親の視点で描かれた現実感のある歌が多い。

話題のリード・シングル「Bombs」は、ヴォーカリストに「KUBB」というイギリスのロック・バンドのHarry Collierを迎えての美しいハウス。「NEXTクリス・マーティン(Coldplay)」かと思うくらいの美声のコーラスに続くマキシ・ジャズのレバノンの空爆を題材にしたリリックが痛烈です。この曲は彼らのMyspaceでも視聴出来ますので是非聴いてみてください。
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その他The Cureロバート・スミス(またもや再評価か?)を迎えた曲(「Lullaby」をサンプリング!)や、そしてCat Powerを迎えた曲など様々なゲスト・ヴォーカルが楽曲を彩ります。もちろんロロの実妹Didoもヴォーカルで参加しております。

もちろんそのプログレッシヴで深遠なハウス・サウンドだけ聴いても十分機能しますので、車で流すのも部屋で聴くのにも最適ですし、その鋭い歌詞に耳を傾けるのも面白い。
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個人的には今年のベストアルバム候補の1枚。是非聴いてみて下さい。
by Blacksmoker | 2006-12-09 00:03 | ELECTRONICA
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