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MARIO BIONDI [Handful Of Soul]


現代のジャズ・シーンを引っ張っているのは間違いなくイタリアだ。

ニコラ・コンテをはじめとして、ジャンニ・バッソディノ・ビアナ擁するidea 6など現代のジャズ・シーンにおいてイタリア人ジャズ・ミュージシャンの数々の素晴らしい演奏が収められた作品が、ジャズ・シーンを席巻している状況に異論がある人はいないでしょう。

その現代のジャズ・シーンにおいて「クラブ・ジャズ」という括りで語られるレーベル「Schema」(スケーマ)。2006年はこのレーベルの創始者であるルチアーノ・カントーネパウロ・フェドレギーニマルコ・ビアンシと組んだユニットThe Invisible Sessionsで素晴らしい1stアルバムをリリースしました。たしかそのアルバムがリリースされた時にルチアーノ・カントーネが雑誌のインタビューでこんな事を言っていた。

次にSchemaからリリースするのはマリオ・ビオンディという男性シンガーのアルバムなんだ。

Schemaが男性シンガーのアルバムを出すなんて珍MARIO BIONDI [Handful Of Soul]_f0045842_145294.jpgしいなと思いましたが、それから約一年。その男マリオ・ビオンディの1stソロ・アルバムとなる「Handful Of Soul」がリリースされたわけですが、これがSchema史上最大のヒットを記録。イタリア国内だけでも2万枚の売上げを記録しているそうです。このジャケットに写るスキンヘッドのオッサンがそのマリオ・ビオンディ。あまりSchemaらしくないジャケットが異色ですが、これが文句なしにカッコ良いジャズ・アルバム!これは是非とも全ての人にオススメしたいジャズ・アルバムです。

このマリオ・ビオンディは、1970年生まれの37歳。イタリアのシチリア島出身。身長は何と190cmもあるそうですね。Was A Beeというユニットのボーカリストでもあったそうです。
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この人の特徴は何と言ってもその魅惑的な声です。まるで60歳くらいの大物ソウル・シンガーのようなディープさ、そして野太いワイルドな歌声がもう最高にカッコイイのです!少しハスキーでド渋なロウ・ヴォイスが堪りません。

これだけでも十分に鑑賞に余りある素晴らしさなのですが、このアルバムにはもう一つのジャズ・ファンには堪らない重要なトピックがあるのです。それはマリオ・ビオンディのバックの演奏を務めるのが、イタリアの若手実力派5人組ジャズ・クインテット、「ハイ・ファイヴ・クインテット」(下写真)なのです!
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もうこのハイ・ファイヴ・クインテットという名前だけでも触手の動くジャズ・ファンもいるでしょう。天才トランペッターのファブリツィオ・ボッソとテナー・サックス奏者ダニエル・スカナピエコの2枚看板をフロントに擁するイタリア屈指のハードバップ・ジャズ・バンド。特にファブリツィオ・ボッソに関しては、その活躍はもはやイタリア・ジャズ・シーンを越えて、世界的トランペッターの地位を確立しています。「イタリアのジャズがアツい!」と言われる理由の半分くらいがこのファブリツィオ(下写真)の活躍によるものと言っても過言ではないですね。ファブリツィオ自身もブルーノートからアルバムをリリースしている超実力派です。
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ハイ・ファイヴ・クインテット自体も今までに3枚のアルバムをリリースしていて、特にオススメしたいのが2004年の3rMARIO BIONDI [Handful Of Soul]_f0045842_234749.jpgd「Jazz Desire」(右写真:このジャケットはオリジナル盤)。これは個人的に今でもしょっちゅう聴いている素晴らしいハードバップ・ジャズ・アルバムで、ここでのファブリツィオのトランペットとスカナピエコのテナー・サックスの掛け合いは鳥肌が立つくらいカッコイイですね。ちなみにQUEENAnother One Bites The Dustの本気なのか遊びなのか分からない凄いカヴァーも収録されているので(おそらく遊びでしょう!)、是非ともチェックして欲しいアルバムです。

さて、このマリオ・ビオンディのアルバム「Handful Of Soul」は、そのハイ・ファイヴ・クインテットとのコラボレーション・アルバムになります。ハイ・ファイヴ・クインテットは、バック・バンドという一歩下がった位置付けではなく、バリバリ全面にフィーチャーされており、もはやハイ・ファイヴ・クインテットのアルバムと言っても良いくらいです。

曲構成もしっかりしており、マリオ・ビオンディの歌が終わると同時に各パートのソロがキッチリと演奏され、そのソロが終わるとまた切り込むようにマリオ・ビオンディの歌声が入ってくる曲の構成はめちゃくちゃ考えられていますね。
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そしてこのアルバムの中で是非オススメしたいのは、3曲目のThis Is What You Areです。これはマリオ・ビオンディの元所属ユニット「Was A Bee」での持ち歌だそうですが、この曲をハイ・ファイヴ・クインテット流に調理しなおした、おそらくクラブ・ジャズ史上に於いて最もポップでスピリチュアルな曲でしょう。ダブル・ベースによるイントロからラテン・パーカッション、そしてピアノという形で入ってくるオープニングだけでももう失禁モノ。そしてフロント2人によるハードバップがもう最高の一言。終盤に出てくるファブリツィオによる滑らかなフロウのトランペット・ソロの素晴らしさは感動的です。もはやこの曲だけでも十分に買う価値のあるアルバムです。

そして、その他の曲もフロント2人の掛け合いが凄いです。と言っても、マイルス・デイヴィスのバンドのような楽器の殺伐としたバトルではなく、エンターテインメンMARIO BIONDI [Handful Of Soul]_f0045842_2133298.jpgト性をそなえた余裕のある大人な「技の見せ合い」がたまらないですね。特にオーソドックス的なハードバップを聴かせるA Handful Of SoulI Can’t Keep From Cryin’ Sometimesアル・クーパーのカヴァー)での、後半のトランペットとテナー・サックスの掛け合いなどは絶品です。今回はファブリツィオのトランペット以上に耳を惹くのがダニエル・スカナピエコ(左写真)のテナー・サックスです。湧き上がる泉ような流れ出るテナー・サックスのフロウが素晴らしいですね。ついつい人気者のファブリツィオ・ボッソの影になりがちなダニエル・スカナピエツコの実力も十二分に発揮されていますね。

ラウンジ・ジャズからラテン・ジャズまでも余裕で歌いこなすマリオ・ビオンディのド渋なヴォーカルは最初から最後までインパクト大。そして、その声とハイ・ファイヴ・クインテットのハードバップ・サウンドとの融合が、このアルバムを名盤と呼ぶに相応しいものにしています。最終曲のビル・ウィザースのムーディーなカヴァーI’m Her Daddyもハマリすぎです。
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個人的には是非次回の「007」の映画の主題歌を歌って欲しい男であります。
 
by Blacksmoker | 2007-10-15 01:01 | JAZZ
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