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STEVE EARLE [Washington Square Serenade]


この人こそがリアル・パンク。アメリカ・ロック界の裏ボス、スティーヴ・アール
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高校をドロップアウトし、放浪生活を経て20歳からミュージシャンとして活躍するベテランだが、私生活は超ワイルド。これまでに6回の結婚・離婚を繰り返し、更には90年代にはドラッグに溺れヘロイン中毒になり、逮捕され、数年間刑務所暮らしも経験するという超アウトロー。出所後は立ち直り、今度はモチベーションを創作活動へとシフト。怒りを前面に出したスタイルは相変わらずだが、その後は次々と傑作を連発し、プロデュース業(Lucinda Williamsの傑作「Car Wheels On The Gravel Road」の彼のプロデュース)や他ミュージシャンへのアルバム参加なども精力的にこなすアメリカ・ロック界の重要人物です。
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スティーヴ・アールの曲というのは、どんな曲でも必ずシンプルだが印象的な強いメロディがあり(しかもそれがサビの部分ではなく、1stヴァースからいきなりメロディ全開な曲が多い)、必ず耳に残ります。特にサントラなどにもよく参加しているので耳にする機会が多いのですが、必ずそのサントラの中で一番印象に残っているのがスティーヴ・アールの曲だったりします(例えば、「ブロークバック・マウンテン」「デッドマン・ウォーキング」など)。

STEVE EARLE [Washington Square Serenade]_f0045842_21254432.jpgさて、そんなスティーヴ・アールの新作「Washington Square Serenade」は、レーベルを心機一転「New West」に移籍した注目作。プロデューサーには何とダスト・ブラザーズジョン・キングが起用されています。Beckのアルバムなど有名(ストーンズも起用していましたね)なダスト・ブラザースならではの音作りで少しToy感覚のある打ち込みビートなどを導入したりしています。ダスト・ブラザーズが手掛けたEELSBeckのアルバムのような「遊び過ぎ」な感覚は控えめですが、バンジョーのループ音などを導入したりとなかなか面白い音作りになっています。ただ音作りに凝ってはいるが、いつものスティーヴ・アール特有の軽快なメロディや骨太な歌声は健在。従来のファンも十分納得させられる出来になっています。

そして今回のアルバムでの最大のトピックは、何と言っても「結婚」だろう。もう何度目か分からんくらいの結婚だが、今回のお相手は美人カントリー・シンガーのアリソン・ムーア(下写真)。
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彼女は以前よりスティーヴ・アールのツアーに参加したり、スティーヴの方もアリソンのアルバムのプロデュースをしていたりしています。最近ブレイク中のシェルビー・リンの実姉だそうですね。

しかしこの2人の相思相愛ぶりは凄い。はっきり言ってもう「デレデレ」なんである。観ているとコッチが恥ずかしくなるくらい。硬派なパンク気質のアウトローが何とも情けない姿ですが、ファンの間では早くも「今回も長く続かないだろう」という予測がされてます・・・。ちなみにアルバムのインナースリーヴには以下のような文が載っています。

「In the next life, the first time I’ll do is find Allison before anyone else does and then I’ll carry her away with me to live in New York City」
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・・・何と言ったら良いのか分かりませんが、幸せなようです。まあそういう幸せな状態なので、今作の作風は以前の怒りを前面に出したハードな作風ではなく、随分と落ち着いた穏やかな雰囲気のアルバムになっています。

ただ穏やかになっていると言っても、そこは永遠のアウトロー。穏やかさの中にも反骨精神が潜んでいます。Guitar Townへのアルバムのアンサー・ソングでもあるTennessee Bluesを始めとして、Satellite RadioJericho RoadRed Is The Colorなどなかなかパンク気質。タイトル通りピート・シーガーへ捧げたような合唱系フォーク・ソングSteve’s Hammer(For Pete)、そしてトム・ウェイツのカヴァーWay Down In The Holeなど聴き応え十分。
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レコーディング・メンバーもオルガンなどでジョン・メデスキが参加したりして多彩な音作りに一躍買っています。もちろんアリソン・ムーアもヴォーカルで参加。

毎回傑作揃いのスティーヴ・アールのアルバムですが、この作品も素晴らしいです。ちなみに先日発表されたグラミー賞において、このアルバムはライ・クーダーの「My Name Is Buddy」トム・ウェイツ「Orphans」などを抑えて「Best Contemporary Folk/Americana Album」を受賞しています。
 
by Blacksmoker | 2008-02-28 00:13 | ROCK
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