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VYBZ KARTEL [The Teacher’s Back]


うおぉぉコイツはヤベえ!

これはストリートでリアルでハードコアなダンスホールレゲエ・アルバム!一枚聴き通すだけでこんなに体力を消費するアルバムは最近ではなかなかない。最後まで聴くともうグッタリです。それほどまでにこのバッドマンDJ、Vybz Kartel(ヴァイヴス・カーテル)の新作「The Teacher’s Back」は超強力な大傑作アルバムだ。

VYBZ KARTEL [The Teacher’s Back]_f0045842_8395272.jpgまずジャマイカにおいて「バッドマンDJ」と言えば、まず何はなくとも一番に挙げられるのはNinja Man。これに異論のある人はいないだろう(先日も超久々に来日していてかなりアツいパフォーマンスを見せてくれた模様・・・観たかったです)。そしてそのNinja Manの直系にあたるのは、もちろんBounty Killerであり、その彼の率いるAlliance Crewの面々。

そして、そのBounty Killerの次を狙うバッドマンDJの筆頭に挙げられるのが、Busy Signalであり、Mavadoであり、今回紹介するVybz Kartelだ。昨年のMavadoの「Gangster For Life」、そして9月にリリースされたばかりのBusy Signalの新作「Loaded」と強力なアルバムが続きましたが、その中でもこのVybz Kartelの新作「The Teacher’s Back」は更に強力。

1978年ジャマイカのキングストン生まれのこのVybz Kartelは、とにかく話題性には事欠かない「バッドマンDJ」。最も有名なのはVYBZ KARTEL [The Teacher’s Back]_f0045842_8473814.jpg2003年のジャマイカ最大級のフェス「Sting」において、大先輩にあたるNinja ManとのDJクラッシュにおいて口だけでなく本気で手を出してしまった事件でしょう(その後彼はNinja Manに謝罪)。そして師匠Bounty KillerのライバルであるBeenie Manとつるんだ事によりAlliance Crewを脱退したり、最近ではMavadoとのバトルなどかなりのバッドマンを地で行く人物。

ただVybz Kartelの魅力はバッドマン/ガンマンぶりだけではなく、そのスキルの高さにもあります。ガチガチに韻を踏む技巧的な言葉使いや、安定したフロウなどは同世代のDJの中でも群を抜いて凄い(Bounty Killerの数々のヒットを作っていたのも実はこのVybz Kartelだ)。更にどんなリディムも自由に乗りこなせる天才型DJ。Missy Elliottの2005年のアルバム「The Cookbook」に収録されている、その名もズバリなBad Man(共演にM.I.A.)でのギラリと光る鋭い客演も印象的でした。(ちなみにこのMissy Elliott「The Cookbook」は個人的に大傑作だと思います!)
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Mavadoのアルバムはまだまだかなりの荒さや不安定さも残っていましたが、Vybz Kartelのアルバムは非の打ち所がないくらい完璧。

更にこのアルバムは、シングル単位市場のダンスホール・レゲエ界において、アルバム一枚を一つの作品として聴かせるコンセプト・アルバムになっている。ゆえに全曲新録のブランニューのみで構成されている。ジャマイカのリアルな現状を「Teacher」であるVybz Kartelが激しく描写する内容だ。このリアルでハードコアな、ヒリヒリとした感覚は最近のダンスホール・レゲエではなかなか味わえないスリルがあります。

そしてこのアルバムの全ての曲を手掛けたのがジャマイカ・ダンスホール界の神童スティーヴン・マクレガー(下写真)だというのも話題の一つ。レゲエ界のレジェンド、フレディ・マクレガーの息子であり、今のジャマイカ・ダンスホール・シーンはこの男を抜きに語れないほどの数々のヒット曲を生み出す天才プロデューサー。
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その歳を聞くと驚愕の、何とまだ16歳!!要するにまだ高校一年生!そんな男の子が今やSean PaulMavadoElephant Manなどを手掛けているわけですが、そんな若さが信じられないくらいの強力でハードコアなダンスホール・チューンの連続です。しかし勢い一発なだけではなく、驚くほどゆれ幅の広い多彩な楽曲にも唸らされます。ホント、天才ですね。

前半はもう怒涛のダンスホール・チューン。初っ端からDreamCourt CaseAddi Add Addiなど重厚なリディムに畳み掛けるVybz KartelのDJに鬼気迫るものを感じます。
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得意のスラックネス(下ネタ)・チューンやガンジャ・チューンも随所に挟みながら最後まで聴き通させるのは、やはりVybz Kartelのスキルの高さゆえ。そしてスティーヴン・マクレガーの強力なリディムゆえでもありますね。お互い天才肌同士のぶつかり合いがこんな凄いアルバムを完成させてしまったわけです。

そして、こんな息もつかせない緊迫感のあるアルバムゆえに最後のワン・ドロップ的なLove、そしてメロウなLife Storyが非常に効果的。アルバムの構成としても完璧ですね。
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アルバム一枚を聴き通すのに相当な気力と体力を要するアルバムですが、現在のダンスホールDJの中で最も勢いのあるこの男の凄さを体感出来る強力なアルバムです。是非聴いてみて欲しいです。

ちなみに日本盤には、Broad DaylightWhat A Boy Canといった最近のVybz Kartelのヒット曲が 7曲も収録されているという更に凄い内容なので絶対に日本盤をオススメします!
by Blacksmoker | 2008-12-03 08:33 | REGGAE
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