カテゴリ:2017年総括( 2 )

2017年の12曲。

人種差別や#MeToo運動などが目を引いた2017年。分断/格差/利己主義に陥った世界にはマイノリティの声が届かない。そんな中で音楽で自分のアティチュードを示すのがミュージシャンだと思いますので、どんどん社会的・政治的になっていけば良いし、それとは別にラヴソングだった共存したって良いと思う。Kamasi Washingtonの曲でもありましたが、異なる価値観が融合することが「真実」なのです。レコードで聴くようになってからシングル単位で聴かないので、今年も1曲ずつ選ぶのが難しかったですが、自分の中で2017年という年を象徴してる曲なんじゃないかと思います。今年は12曲!


<2017年の12曲>

第1位
中川五郎 “トーキング烏山神社の椎ノ木ブルース"
f0045842_00423204.jpg
1923年の関東大震災の発生直後に起こった朝鮮人虐殺の中で、世田谷のある橋の上で発生した事件とその後を描くフォークソングのルポルタージュとしての側面を存分に発揮させた曲。そして烏山神社に立てられた13本の椎木の恐ろしい真実。
f0045842_00423708.jpg
1曲17分にも及ぶ現在の日本のフォークソングが到達した一つのマイルストーン。



第2位
J.Cole “4 Your Eyez Only"
f0045842_00423434.jpg
凄い凄いと聞いていたが、ここまで凄い内容のアルバムだとは思わなかったアトランタのラッパーJ.Coleの新作。
f0045842_00420632.jpg
そのアルバムの最終曲は自分の亡き友人の娘に宛てた手紙という内容で、パーソナルで強く優しいメッセージに心打たれました。ほんと凄いリリック書く人です。



■第3位
Father John Misty “Leaving LA"
f0045842_00415951.jpg
これも長い曲で13分あります。歌詞を理解できないと魅力が半減する曲(アルバム自体もそう)だが、直接的じゃなくシニカルにLAを批判する面白さが分かればこれほど面白い男はいない。
f0045842_00424251.png
優雅なストリングスの上を堂々と歌い上げる一流のエンターテイナー。



第4位
Rhiannon Giddens “Birmingham Sunday"
f0045842_00425203.jpg
1963年にアラバマ州バーミンガムで起きたKKKのメンバーによる教会爆破事件で犠牲になった4人の女児を歌ったJoan Baezの曲を、50年以上経った現在に蘇らせたRhiannon Giddens。
f0045842_00425235.jpg
今の世界の状況への警鐘でもある重要曲です。ピアノが素晴らしい。



第5位
幾何学模様 “Nobakitani"
f0045842_00430171.jpg
日本のバンドなのにもう完全に海外の方が大人気のスペース・サイケデリック・バンドKikagaku Moyoの最新EPから。
f0045842_00421294.jpg
全5曲でもう一つのような作品ではあるので1曲を選ぶのは難しいんですが、和のテイストがここまでうまく融合したサイケデリックな音はないんじゃないか。とにかく素晴らしいバンド!


■第6位
Kamasi Washington “Truth"
f0045842_00515099.jpg
異なる価値観を表現した5つの楽曲が最後に一つの”Truth”という名前の楽曲に集約されるEPからその13分に及ぶ大曲。全くダレないし飽きないしずっと感動させられ続けました。
f0045842_00430889.jpg
これこそローカルでありグローバルであり、真のフリーダム。


第7位
Ben Ottewel “Watcher"
f0045842_00434545.jpg
日本では誰もが忘れたUKバンドGomez。さらにそのメンバーのソロアルバムとなるともうその注目され無さ加減がハンパではないんですが、そんな逆境でもこの男の声の求心力はいまだに私の心を捉えて離さなかった。この1stシングルのいなたさと清涼感に涙しました。


■第8位
Joan Baez “Nasty Man"
f0045842_00434923.jpg
ドナルド・トランプはフォークの女王の心まで動かし遂に25年振りの新曲を発表させてしまった。”不快な男”と題して優しく美しい声で徹底的にコキ下ろしているんですが、曲の完成度がもの凄く高いので聴きいってしまいます。やはりプロテストソングというのは歌詞もそうだが曲も素晴らしくないといけないという当たり前の事実を改めて教えてくれました。


第9位
Preservation Hall Jazz Band “Mad"
f0045842_00434976.jpg
ニューオーリンズの伝統音楽を守って伝えてきたミュージシャン達が年齢や病気で亡くなり続けている中で、この老舗バンドのメンバーも新旧の入れ替わりがある状況で新たに見つけた方向性は伝統を残しつつもその音楽を未来に繋がるようにアップデイトさせることでした。新作の中からニューオーリンズの過去と未来が同居したようなこの曲には希望を感じました。来日公演も良かったです。



第10位
David Rawlings “Lindsey Button"
f0045842_00580747.jpg
寡作なGillian Welchとその寡作な夫David Rawlingsですがようやく新作が出ました。もちろんGillian Welchも全面参加。昔からあるフォーク・ソング/アパラチアン・ソングを新たにアレンジし直して違った曲に蘇らせるんですが、この曲も古い曲だそうですがもうシンプルなアレンジで素晴らしい曲に生まれ変わりました。



第11位
Neil Young + Promise of The Real “Already Great”
f0045842_00435373.jpg
再びPromise of The Realと組んだアルバムからの先行シングル曲。トランプ大統領のスローガン"Make America Great Again”へのカナダからの回答"もうすでにGreatだぜ”。サウンドもアメリカのゴスペルやニューオーリンズなどのルーツ音楽を取り入れてて上手い。




第12位
Bell Witch “Mirror Reaper"
f0045842_00440482.jpg
1曲83分! シアトルのドゥームデュオによるとんでもない地獄度のフューネラル・ドゥーム。とにかく陰鬱で長い。最高。
f0045842_00440032.jpg
ドラマーの死を乗り越えて完成させた本物の葬送曲。(まあ曲というよりアルバムなんですけど。)


■次点
Lee Ann Womack “The Lonely, The Lonesome & The Gone"
f0045842_00440081.jpg
テキサスのカントリーシンガーの新作からのタイトル曲。郷愁的なカントリーソングですが、”この心の痛さは、古いHank Williamsの曲のよう / 孤独で、寂しくて、過ぎ去ったもの”という歌詞が凄い好きでした。

スカパー!

冬の5大テーマ祭り「海外ドラマ」をもっと見る




第2回プラチナブロガーコンテスト



[PR]
by Blacksmoker | 2017-12-31 22:58 | 2017年総括

2017年の12枚。

トランプが1月に大統領に就任してからというもの常に彼の言動に世界が左右されていた2017年。音楽にもトランプが与えた影響は大きく、良くも悪くも「トランプ以降」というフェーズに入った今の音楽界は混沌としていた気がします。ただサウンドは80’s色全開な音が世界を席巻してますがどうも苦手。26年前に同じ状況を1枚のアルバムで破壊したNirvanaのようなバンドが再び現れるのでしょうか?

さて、CDはどうなっていくのか?今年買ったCDはおそらく10枚以下。その他はアナログばかり。新しい音楽よりも、古い音楽を買ってる割合の方が多かった2017年。おそらく2018年もその傾向は続くでしょう。

ということで今年は12枚。トランプ以降を象徴するアルバム、ベテランの復活作、欧米以外の極地からの革新的なサウンドなど。今回もほぼアナログ盤での評価です。


<2017年の12枚>

■第1位
Orchestra Baobab [Tribute to Ndiouga Dieng]
f0045842_16270981.jpg

西アフリカのセネガルの首都ダカールで1970年に結成された大所帯バンドの10年振りの新作。2016年に亡くなったオリジナル・メンバーNdiouga Dieng(ンジュガ・ジェン)に捧げられたアルバム。
f0045842_16182589.jpg
アフリカの音楽ではあるんですが、根底にあるのは大西洋の向こう側にあるキューバ音楽。そこにアフリカ的な味付けをしたダンスミュージックなのですが、今回から西アフリカの伝統楽器コラを演奏するメンバーが正式に加入し、土着的なサウンドと違った美しい側面も見せてくれる素晴らしい傑作。


■第2位
Afghan Whigs [In Spades]
f0045842_16252033.jpg
90年代に一際異彩を放っていたグレッグ・デュリ率いるこのバンド。2001年に解散したんですが、2014年に再結成。今作は再結成2作目。
f0045842_16213455.jpg
ますます異形な才能が気持ち悪くもそれを格好良さが上回る特異なバンドですが、今作はグレッグのヴォーカルもますます凄みを増して、サウンドもヘヴィでドラマティックに。90年代の傑作を超える最高傑作ではないでしょうか。しかしこの後ギタリストが急逝。どうなってしまうんでしょうか。


■第3位
Open Mike Eagle [Brick Body Kids Still Daydream]
f0045842_16282582.jpg
昨年はPaul Whiteとの共同名義でのアルバムが傑作でしたが、今回はソロ名義。自身の生まれ育ったシカゴに1960年代に実際に建てられた低所得者層向けの大規模高層アパート[ロバート・テイラー・ホームズ](70年代には犯罪の巣窟と化して取り壊されたプロジェクト)を擬人化してラップするという普通では考えられないコンセプトのアルバム。
f0045842_16360998.jpg
前作のPaul Whiteの多彩なトラックよりミニマルなトラック中心だが、ラップの内容が面白すぎる。天才。ちなみにOpen Mike Eagleのことを関西のどのヒップホップのレコード屋で聞いても知られてないのが悲しい。


■第4位
Monolord [Rust]
f0045842_16365332.jpg
スウェーデンの極悪スラッジトリオの新作。Sleep直径の重低音リフにエコーの効いたヴォーカルが酩酊感を倍増。
f0045842_16371815.jpg
Electric WizardやUfomammutのようなアチラ側へ行ってしまわず、一歩手前のギリギリのところにいる感じが良い。

■第5位
Les Filles De Illighadad [Eghass Malan]
f0045842_16405778.jpg
西アフリカのニジェールの砂漠イルリダダット出身の女性デュオLes Filles(レ・フィールズ)の新作。今作から女性ギタリストが参加して3人編成に。
f0045842_16410005.jpg
TinariwenやTamikrestがロックへ向かって行く中で、彼女たちはより母性的でプリミティヴなサウンドへ。


■第6位
Iron & Wine [Beast Epic]
f0045842_16381797.jpg
昨年Jesca Hoop & Sam Beam名義での作品も素晴らしかったですが、本体Iron & Wineの新作はほぼライヴ録音で声とギターの音色の美しさ極限まで引き出したサウンドに震えました。
f0045842_16390033.jpg
実に映像が喚起されるサウンド。しかし相変わらず歌詞が難解です。


■第7位
Jlin [Black Origami]
f0045842_16425745.jpg
米インディアナ州の女性トラックメイカーの2nd。これは衝撃でした。Flying Lotusを初めて聴いた時のようなインパクト。もの凄い重低音とトライバルでポリリズミックなリズムの嵐。ぜひアナログ盤で聴いて欲しい。


■第8位
Julie Byrne [Not Even Happiness]
f0045842_16445569.jpg
ニューヨークの女性シンガーソングライターの2nd。中音域の透き通る歌声はもろにJoni Mitchellの系譜を受け継ぐシンガーですが、その中でも曲の完成度が群を抜いてます。ギターの弦の動きまで聴こえる録音も素晴らしい。



■第9位
Quantic + Nidia Góngora [Curao]
f0045842_16450109.jpg
イギリス人プロデューサーWill HollandのプロジェクトQuanticの新作はコロンビアの女性歌手Nidia Góngoraを前編ヴォーカルに迎えた作品で、彼女の生まれた街ティンビキに伝わるクルラオという音楽をクラブミュージックの文脈で解釈し直しています。女性クワイアが印象的。


■第10位
Joey Bada$$ [All-Amerikkkan Badass]
f0045842_16460183.jpg
Kendrick Lamarの何重にもひねったリリックやアルバムのトータルコンセプトも素晴らしかったですが、こっちはもっとシンプルに分かりやすくポリティカルなラップを聴かせてくれます。トラックはKendrickよりも上だったと思います。



■第11位
Chronixx [Chronology]
f0045842_16465879.jpg
ニューラスタ・リヴァイヴァルの中でも人気実力ともに頭一つ抜けているChronixxの待望の1stアルバム。地に着いた歌詞と、自身のバンドによる素晴らしい演奏。カリスマ性とも合わせて時代を超えたレゲエの名作の誕生。


■第12位
Fleet Foxes [Crack-Up]
f0045842_16472734.jpg
実に6年振りの復活作。重厚なコーラスと文学的な歌詞による幽玄でバロック的なフォークロック。一度聴いただけではなかなか理解できない複雑な曲構成は忍耐力のなくなったリスナーに対する挑戦状のようです。


■次点
鬼 [火宅の人]
f0045842_16445876.jpg
福島県いわき市小名浜のラッパーの3度目の逮捕・実刑の後の5年振りの新作。昭和の闇を背負ったその人生とストリートの文学性が染み付いたリリックはもう誰も到達できない領域まできた感がある。抜け出せないカルマまで含めた底辺の人間の崇高な美学が輝いている。


[PR]
by Blacksmoker | 2017-12-30 16:49 | 2017年総括